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OSS貢献活動

オープンソースの取り組み〜CNCJの挑戦:クラウドコンピューティングとオープンソースで拓く日本の未来

2023年12月25日公開

2023年12月15日、日本OSS推進フォーラム (JOPF)、独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) 主催の『new windowOSSフォーラムJAPAN ~オープンソースが変える未来の世界~』において、NEC ソリューションイノベータの武藤 周が「オープンソースの取り組み〜 CNCJ の挑戦:クラウドコンピューティングとオープンソースで拓く日本の未来」と題する講演を行いました。

CNCJ は、new windowCloud Native Computing Foundation (以下 CNCF) の Japan Chapter として設立された new windowCloud Native Community Japan (以下 CNCJ) のことであり、ベンダ中立な立場で日本のクラウドネイティブの普及と OSS コントリビューションの促進を目的としたコミュニティです。

CNCJ

詳しくは、こちらのnew windowブログ記事をご覧ください。

この講演では、CNCJ の紹介、および CNCJ 設立の一つの目的である「日本からの OSS コントリビューションの促進」に着目した、コントリビューション活動の動機づけとコントリビューションの始め方について説明しました。

コントリビューションの動機づけ

OSS は、ほとんどの製品やサービスに無視できない割合で含まれるほどに普及しています。この OSS 普及に、どのような意味や価値があったのかを、「モノ:OSS そのもの」、「カネ:かかるコスト」、「ヒト:OSS 開発者・貢献者の意図」、「コト:ソースがオープンである意味と価値」の観点で考察し、コントリビューションの動機について言及します。

「モノ:OSSそのもの」

OSS には、ダウンロードすれば無料ですぐに使える「簡単すぎる調達」という、とても強い価値があります。一方で、導入した OSS によって起こる課題として、OSS ライセンスの内容の確認不足が起こり得ます。ライセンスの内容をよく確認せずに導入すると、ライセンス違反やライセンスの範囲を超えた開発者に対する要求をしてしまい、利用者としての評価を落としかねません。

「カネ:かかるコスト」

「簡単すぎる調達」によって、OSS は大いに利用され、ソフトウェアの依存関係はとても複雑になりました。これら大量の OSS を安全・安心に利用、維持するためのコストが発生します。調達は無料でも、利用は無償ではないのです。また、利用している OSS の存続、自らのユースケースに合わせて作成した独自のパッチやドキュメントの陳腐化などのリスクにも対応しないといけません。これらのリスクに対する有効な手段として、自らの解決策やノウハウを OSS 開発元に共有する方法である「アップストリームファースト」があります。この OSS に貢献して OSS にその解決策を取り込んでもらう方法が、根本的な解決手段となり、またオープンに認知され評価に繋がる手段となり得ます。

「ヒト:OSS開発者・貢献者の意図」

OSS の開発者や貢献者にとっての開発者満足度について、実体験を交えて説明しました。コントリビューションは、多大で多様な学びと刺激が得られる活動です。技術だけでなく、カルチャーやコミュニケーションスキルも習得できる場になっています。また、オープンでグローバルな実績を残せる場でもあります。これらは大きな開発者満足度に繋がっているのですが、マネタイズには遠い価値であることから、積極的に取り組む判断を難しくしている点でもあります。しかしながら、その大きな開発者満足度は、組織におけるコントリビューション活動の可否と繋がり、組織の人材獲得チャンスや人材流出リスクにも影響しているというレポートもあります。

「コト:ソースがオープンである意味と価値」

ソースがオープンである、ということは、世界中の開発者や利用者がそこに集まって、コラボレーションする場になっていると言えます。その場に多様性や包括性が備わり、イノベーションが起こります。そのイノベーションに参加することが、開発者や企業が OSS 開発や貢献を行う動機になっています。これもまた、マネタイズには直接的でない価値であり、やってみないことには得られない可能性です。しかしながら、この投資によって得られた価値は大きいと答える企業が多い、とするレポートもあります。

コントリビューションを通じて、組織や国境を超えて協力して OSS に関する課題を解決すること、OSS コミュニティとともに発展する方法としてのオープンソースの価値を得ることを広めていきたいと思います。

コントリビューションの始め方

コントリビューション活動を始めるときの不安を払拭することを第一の目的とした日本人向けのセミナー、new windowKubernetes Upstream Training をご案内しました。

kubernetes-upstream-training

CNCJ では、このセミナーの開催を計画しています。詳細が決まり次第、new windowCNCJ のサイトにて公開されますので、ご確認いただければ幸いです。

執筆者

武藤 周 (Shu Muto)
NECソリューションイノベータ (NEC Solution Innovators, Ltd.)

クラウドコンピューティングを支える最も重要な OSS の一つである Kubernetes 、その開発者5万人以上が参加するコミュニティで日本人として初の SIG Chair ( SIG UI Chair ) を務め、Kubernetes Dashboard の開発をリードしています。また、CNCF Ambassador、および CNCF の Japan Chapter である Cloud Native Community Japan の運営メンバを務めています。(2023年12月時点の情報)

Muto shu