Japan
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株式会社キッツ様
3Dモデルを起点に生産までのBOMを自動展開
「年間10万件の受注設計」という独自の強みをPLMでさらに強化
- 業種:
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- 製造・プロセス
- 業務:
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- 設計・開発・製造
- 生産管理
- 共通業務
- ソリューション・サービス:
-
- 共通業務/PLM
事例の概要
課題背景
- 受注設計や紙と人手に依存した作業によって業務プロセスが非常に複雑
- 40年運用の汎用機基幹システムではグローバル化への対応に限界
- 情報の分散を解消し、高度に活用。強みを発揮できる環境を整備したい
成果
3Dモデルを起点とするエンジニアリングチェーンの情報連鎖で受注設計を高度化
受注仕様から3D CAD、設計BOMや生産BOMが自動展開され、SAPにシームレスに連携する仕組みを実現。多様な製品バリエーションに対応しながら受注設計を効率化し、QCD(品質・コスト・納期)を大幅に向上した。
蓄積してきた独自の強みを新システム受注コンフィグレータに継承
素材の組み合わせパターンのコード化、複雑な仕様バリエーションなど、フルスクラッチシステムで実現していたノウハウを新システムにも継承。受注設計における独自性を発揮できるシステムに刷新できた。
3Dデータドリブンで情報利活用するシステム基盤が整った
受注から生産まで、さまざまな情報を一元管理。集約・蓄積された情報を分析・活用して次期標準品の開発や新たな保守サービスの提供など、付加価値を創造する環境が整った。
導入ソリューション
PLMでは、見積システムから連携された受注仕様情報から、生産実績や仕様適否判断し、受注設計品はSOLIDWORKSで3D設計を実施。その3Dモデルを起点として、CAD BOM、設計BOM、生産BOMが自動展開され、SAPまでBOMがシームレスに連携される仕組みを実現
事例の詳細
導入前の背景や課題
40年にわたる運用の中で複雑化したシステムの維持が困難に
私たちの生活や産業に欠かすことのできない水や空気、石油、ガスなどの流体を流したり、止めたりして制御するバルブ。その多様なニーズに素材開発から一貫生産で応えているのが総合バルブメーカーのキッツ様です。グローバルにビジネスを展開している同社のバルブ製品は、石油・化学プラントや機械装置のプロセスラインをはじめ、LNG(液化天然ガス)基地、ビルの空調設備など、さまざまな場所で流体のコントロールに活用され、社会を支えています。
「バルブは、配管を流す流体の種類に応じて求められる要件や仕様が大きく変わります。流体によっては、特殊な素材や耐食加工を用い、独自の形状を設計しなければなりません。標準製品だけでなく、そうした特注仕様の受注設計品についても、素材開発、鋳造から設計、生産まで一貫して自社で対応し、お客様の細かなニーズに対応できることが私たちの大きな強みです」とキッツの小出 幸成氏は紹介します。
このような受注設計品に対応するために、同社は独自のロジックを盛り込んだ受注、設計、生産、財務・会計プロセスを構築しています。従来は、それをホストシステムにフルスクラッチで反映してきましたが、約40年にわたる運用と改修の中でシステムが複雑化。維持が困難になってきていました。
また、経営計画の中でも「真のグローバル企業への進化」を重要な柱に据えており、そのためにはシステムの多言語化や運用時間などの変更といったグローバル対応、周辺システムとの連携、デジタル変革(DX)に向けた課題の解決なども必要。このような背景から、システム基盤の刷新が求められていました。
「CADで作成した設計データを受けてBOMを登録する作業など、周辺システムと基幹システムの連携の多くを、紙と人手に依存していました。バルブの特性上、使用環境や流体の条件による材料違いや特殊な塗装など仕様バリエーションが多様であり、特注仕様の対応を強みとして、受注設計の件数は年間10万件にものぼるため、その業務負担は膨大です。また、各工程の成果物である設計図や計算書なども各所に散在しており、検索して再利用するのも難しい。これらのプロセスの改善を図るには、新しいシステムが必要でした」と同社の安藤 弘氏は言います。
選択のポイント
経験を活かしてシステムのあるべき姿を提案
そこで同社は、長期経営計画の中で経営基盤の強化を掲げてシステムを刷新することを決断。フルスクラッチではなくパッケージシステムを採用すること、設計を高度化するための3D設計移行、受注・設計・生産のエンジニアリングチェーンに関する情報を一元管理するPLMの構築、そして、それら技術情報とERPとの連携を大きな柱に据えました。
具体的なソリューションとしては、まず3D CADにSOLIDWORKS、ERPにはSAP ERPを導入することを決定。その上でPLMにはNECの「Obbligato」を採用しました。
「まず評価したのがObbligatoの実績です。特に国内において圧倒的な導入実績を誇っていました。さらに採用を後押ししたのがNECの経験と知見です。当社が実現したいプロセスを理解して、そこに独自の知見を反映しながらシステムに落とし込む。将来、発生し得る改修を見越して、長期的な視点に立ってシステムを設計するといった提案を高く評価して、パートナーとして採用を決めました。また当社の強みである多様な受注設計を効率よく処理するためにキーとなる仕様/機能/バリエーションを管理する機能をObbligatoが標準で備えていたことは、他社にはないNECの強みでした」と同社の相川 隆氏は言います。
導入後の成果
受注仕様をきっかけにCADからPLMを介してSAPまでBOMを自動展開
新システムは、これからのキッツを支える文字通り「基幹」システム。同社は、システム移行にあたり業務効率低下などの影響がないように、NECと共に、段階的かつ慎重にプロジェクトを進めました。
そうして完成したシステムはSOLIDWORKSからSOLIDWORKS PDM、Obbligato、SAPまでがシームレスに連携。標準製品だけでなく受注設計品も含めて、人手作業の転記や再インプットで間違いや不整合が起きていた各種BOMの生成などが自動化されるなど、3Dモデルを起点に受注~設計~生産がシームレスに情報連携し、QCDの大幅な向上に寄与しています。
「見積システムから受注情報がSAPに、受注仕様情報がObbligatoに連携。Obbligatoには、製品の仕様オプションのバリエーションを管理している『製品定義管理』や、生産範囲の条件や、付帯構造などの受注仕様の組み合わせが適しているかの適否判断が組み込まれており、それらと受注情報が引き当てられて、受注可能かどうかの判断を行ったり、可能な場合は過去の設計実績を参照してBOMを自動展開したりします」と同社の大久保 篤氏は説明します。
コード化された材料の組み合わせパターンなどは、同社が蓄積してきた独自のノウハウ。その強みが既存システムから新システムに継承されています。過去に適切な実績がなかった場合は、完全受注設計品と判断され、設計者に設計が依頼されますが、もちろん、その成果物は、後に実績として登録され、次回以降はBOMが自動展開される受注生産品となります。
「複雑で多様なバリエーションに対応するために、3D CADを起点に、CADから連携されたCAD BOM、選択可能な全部品の品番を構成するSuper BOM、製品品目ごとに部品構成を展開する設計BOM、手配に必要な工程品番を加えた基準生産BOM、SAPで手配属性を追加した生産BOMという、5つのBOMがシームレスに連携する仕組みを実現しています。現状、受注の約8割がBOM自動展開されており、大幅な効率化につながっています。また、CADとPDM、PLMが連携することで受注ごとに作成していた納品図書も、図面とBOMと仕様が自動作図・構成され、お客様と受注仕様を取り交わす重要な図書の不整合もなくなり効率化されているのも改革のポイントです」と相川氏は紹介します。
加えて、あらゆる技術情報が受注情報とひも付くかたちでObbligatoに集約され、過去の資産をスムーズに検索したり、二次利用したりすることが可能になったことも大きな成果です。
「例えば、受注情報からお客様ニーズを分析し、設計者が次期標準品の開発や設計に活かす。また、受注から提供までのあらゆる情報が即座にトレースできるようになったことを活かし、新しい保守サービスを提供するなど、さまざまな可能性を感じています」と小出氏は強調します。
長年蓄積してきたノウハウを継承しながらシステムのモダナイズを図る。そのシステムをベースにデータを高度に活用した製品やサービスの開発を進める。同社の取り組みは、まさに「ものづくりDX」というべきもの。同社の成長を加速させる大きな力となっています。
NEC担当スタッフの声
エンジニアリングチェーン全体の最適化に貢献
キッツ様のプロジェクトにおいて重要なポイントとなったのが膨大な製品バリエーションへの対応でした。その課題を解決する上で、大いに力を発揮したのがObbligatoの「製品定義管理」というアプリケーションです。この機能によって「どういう口径のバルブに」「どの素材を採用し」「どのようなアクチュエータを搭載するか」といった製品の仕様や機能、付帯構造の組み合わせをマトリックス上で表現。それをマスター情報として参照することで、受注可否の判断、BOMの自動展開のベースとしています。
この機能に代表されるように、Obbligatoは様々な機能をアドオンすることが可能。今回は、その柔軟性によってキッツ様の強みである受注設計の高度化に貢献することができました。
また、Obbligatoの導入だけでなく、3D CADであるSOLIDWORKSの導入までをNECに任せていただけたことも、プロジェクト成功のポイントだと考えています。NECがSOLIDWORKSに関する豊富な経験とノウハウを持っていることはもちろん、設計から生産まで、ものづくり全体の最適化や変革を実現できるNECの強みが発揮できたからです。
今後もObbligatoのチーム、SOLIDWORKSのチームが密接に連携し、キッツ様のエンジニアリングチェーンのトータルな最適化に貢献していきます。
お客様プロフィール
株式会社キッツ
所在地 | 千葉県千葉市美浜区中瀬1-10-1 |
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設立 | 1951年1月26日 |
従業員数 | 5,090名(連結)、1,383名(単体) |
概要 | 水、石油、蒸気、ガスなどの流体をコントロールするバルブ製品のメーカー。「常により良い品を、より安く、早くつくること」を理念に、一貫生産を基本として、素材となる鋳物の鋳造から加工・組立・検査・出荷に至るすべての工程を自社でまかなえる体制を整えている。 |
URL | https://www.kitz.co.jp/ |
この事例の製品・ソリューション
(2022年3月14日)