サイト内の現在位置を表示しています。

徹底解説! マイナンバーカード、その普及を進める政府施策のポイント

デジタル庁が各省庁や自治体と連携して取り組んでいるマイナンバーカード普及と利用拡大に関して、「国の政策紹介」、「マイナンバーカードが必要となる社会的背景」、「自治体の取組み紹介」の3回に分けて、ご紹介していきます。

第1回 徹底解説! マイナンバーカード、その普及を進める政府施策のポイント

第2回 なぜ、今、マイナンバーカード??

第3回 自治体が取り組むマイナンバーカードの普及策

1 政府が進めるマイナンバーカード普及 ~デジタル社会のパスポート~

2022年10月13日、河野デジタル大臣は記者会見の冒頭に、「デジタル社会を作っていくうえで、マイナンバーカードはいわばパスポートのような役割を果たすことになる」と発言しました。

日本が目指すデジタル社会の実現に向けて、これから社会全体でデジタル技術の活用が進み、様々なサービスや手続がサイバー空間から提供されるようになるでしょう。その社会では、利用者となる住民一人ひとりのサイバー空間での本人確認・認証の仕組みが必要となり、この役割を担うのがマイナンバーカードというわけです。

この会見の中で、マイナンバーカードの普及をさらに強力に推し進めるための施策も公表しています。

政府として進めてきた各施策の実現時期の前倒し・義務化等を示唆する内容です。特に、紙の健康保険証の廃止は、実質的にマイナンバーカードの義務化ではないかという議論を呼びました。
政府は、デジタル庁を牽引役として、全国民へマイナンバーカードをいきわたらせるための施策を計画的に推進しているといえるでしょう。


こうしたマイナンバーカードの普及の取組みは、政府政策の中にどのように記載されているのでしょうか。

まず今回は、マイナンバーカードの普及が我が国の各種政策の中でどのように位置づけられ、どのような計画でその施策が進められているのかを紐解いてみましょう

2 デジタル関連の政府方針・計画におけるマイナンバーカードの位置づけ

2022年6月、今年度の政府方針や計画が閣議決定し公開されました。「閣議決定」とはすべての閣僚の意思決定手段の中で最上位に位置づけられるもの。マイナンバーカードの普及も重要政策としてこの政策の中に記載されています。

デジタル化に関する計画等の中で、特にマイナンバーカードの普及促進について記載されているものは、以下の二つと言えるでしょう。

3 デジタル社会の実現に向けた重点計画における位置づけ

マイナンバーカードの普及及び利用の促進の目標として「令和4年度(2022年度)末までにマイナンバーカードがほぼ全国民に行き渡ることを目指す」ことが明記されました。健康保険証としての活用(*1)や、運転免許証や在留カードとの一体化の検討に加え、具体的な利活用拡大の施策として、以下が挙げられています。

  • 「オンライン市役所サービス」
    スマホから様々な手続の実施やお知らせが受領できるサービス
  • 「市民カード化」
    マイナンバーカードをかざすだけで市町村サービスが利用可能に
  • 「民間ビジネスでの利用促進」
    本人確認機能の民間活用に向けた電子証明書手数料の当面無料化の検討

今回は特に、行政手続に係る①、②について、デジタル田園都市国家構想 基本方針からその具体的な内容を見てみましょう。

4 デジタル田園都市国家構想 基本方針における位置づけ

国と地方が協力し、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を実現するための基盤としてマイナンバーカードの普及・利用拡大へ取り組むこととされ、前述の①、②の施策については次のように記載されています。

  • オンライン市役所サービス
  • 引っ越し手続のワンストップ化の実現
    (転出届・転入予約のオンライン化、2022年度中に実現)
  • 全自治体での子育て・介護等の31手続の原則オンライン化
    (マイナポータル(ぴったりサービス)の活用、2022年度中に実現)
  • 行政機関から市民へのお知らせのデジタル化の仕組みの構築
  • 市民カード化
  • 図書館カード等の自治体施設の利用証や、生活の中でカード一枚をかざすことでサービスの利用を可能に

特に、市民カード化についての取組みやユースケースの拡大など、デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上の実現に向けては「デジタル田園都市国家構想交付金」で財政支援をするものとされ、2023年度予算概算要求で1200億円、2022年度第2次補正予算にて800億円を計上しています。

しかしながら、自治体がこの「デジタル田園都市国家構想交付金」を申請するには一部条件があります。それは、マイナンバーカードの普及状況です。

このように、マイナンバーカード普及状況が申請条件や交付審査に反映され、あわせて、事業内容におけるカード利用も交付審査に反映される、ということになります。自治体としてデジタル化に取り組むための交付金を使いたいのであれば、そのデジタル化の基盤であるマイナンバーカードの普及と利用が大前提となるということなのです。

併せて、自治体の主管省庁である総務省も、自治体向けのマイナンバーカード普及策を検討しています。それは、自治体の重要な財源である普通交付税(*2)について、そのデジタル化に係る財政需要の算定へマイナンバーカードの普及状況等を反映させるというものです。これにより、自治体は財源確保のためにもマイナンバーカード普及策を講じなければならないという喫緊の課題に直面することになります。

  • (*2)
    普通交付税:行政運営に必要な経費に対し、財源不足額に見合い算定され交付される地方交付税の一つ。ほとんどの自治体では自主財源だけでは運営できず、この制度を受けて財源を確保している。

5 マイナンバーカードはデジタル社会のパスポート

2022年10月末時点の全国のマイナンバーカード交付率は51.1%(*3)。マイナポイント等の施策も功を奏し、11月初旬時点で申請数は約7,277万枚(*4)となりました。総務省が目指す8,000万枚台、これは運転免許証の約8,190万枚(*5)に迫るということになります。もうすぐ国内で最もメジャーなICカードの1つとなることは間違いないでしょう。

しかしながら、普及が実現したその先のマイナンバーカードを使うことの住民のメリット、インセンティブとなるサービスや活用シーンはまだまだ発展途上です。
デジタル田園都市国家構想の推進の中で、行政手続だけではなく官民のサービスをつなぐような新たなユースケースや便利なサービスが生み出されることに期待が集まっています。
「デジタル社会のパスポート」であるマイナンバーカードを持つことでサイバー空間での本人確認・認証が行われ、官民や業種の枠を超えて提供される様々なサービスを自身の意思で利用できる世界の実現を目指すこと、これがデジタル社会の実現の姿であると言えるのではないでしょうか。