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液浸リソグラフィの開発

Vol.62 No.1 2009年1月 電子デバイス特集

65nmロジックから55nmロジック以降への微細化に対応する技術として液浸リソグラフィの開発を行いました。ウェハ上に回路パターンを形成するために用いる露光装置において、従来は空気中であったレンズとウェハの間に水を満たすという液浸リソグラフィを導入することにより、解像力が向上し、より微細なパターン形成が可能となります。これまでに材料開発、露光装置開発、及びプロセスの最適化を行いました。本技術は現在NECセミコンダクターズ山形の300mmウェハ生産ラインにおいて量産適用が行われています。

1. はじめに

LSIの微細化はリソグラフィ技術の進展により確実に進められてきました。リソグラフィ技術における解像力を示す目安としては次に示すレイリーの式がよく用いられます。

レイリーの式:解像力=k1・λ/NA
k1=プロセス定数、λ=露光波長

NA(Numerical Aperture)=露光装置のレンズの開口数つまり、解像力を向上させるためには露光波長を短くすることやNAを大きくすることが必要です。そのためパターン形成のための露光に用いられる光源(波長)は、これまでg線水銀ランプ(波長=436nm)からi線水銀ランプ(同=365nm)、KrFエキシマレーザ(同=248nm)、ArFエキシマレーザ(同=193nm)へと短波長化が進んできました。NAもレンズ製造技術の向上により限界に近い0.9以上の露光装置が実用化されてきました。現在、量産されている90nmロジックLSIや65nmロジックLSIにおいては、光源にArFエキシマレーザを用いたArFリソグラフィが導入されています。今回、更に微細化を進めた55nmロジックLSIに対応するため、ArFリソグラフィの次世代技術である液浸リソグラフィを開発・導入しました。

2. 液浸リソグラフィ

液浸リソグラフィとは、図1右側に示すように露光装置のレンズとウェハの間に液体を満たして露光処理を行うものです。現在実用化されている液浸リソグラフィは、ArFエキシマレーザを光源とし、レンズとウェハの間の液浸用液体として水を用いたArF液浸リソグラフィです。露光光であるArFエキシマレーザ光の水に対する屈折率nは1.44であり、従来の空気(n=1)の場合よりもウェハへ入射する露光光の角度が緩和されます。これにより、1以上の高いNAを実現し、解像力を向上させることが可能となります。一方、従来と同じNAを用いた露光においても、ウェハへの入射角を小さくできることから焦点深度(パターンが形成できる焦点範囲)を1.4倍程度に拡大することが可能で、安定した歩留が確保できます。現在は水による液浸露光により1.35までの高NA化されたレンズを搭載した露光装置が実現されています。

図1 液浸リソグラフィの概念図

液浸リソグラフィでは、従来空気中で露光処理が行われていたところへの水の導入が必要となりますので、実用化に際してレジストプロセスや露光装置など多くの課題がありました。以下に実用化までの開発状況を述べます。

2.1 液浸対応レジストプロセスの開発

液浸リソグラフィにおけるパターン形成では多くの懸念点がありました。レジスト膜への液浸水の侵入によるパターン形状不良の発生、レジスト膜から液浸水への各種成分の浸みだしに起因したパターン形状不良、その浸みだした不純物や露光装置中の異物に由来したパターン欠陥などです。さらに液浸露光後のウェハ上に水滴が残留すると、これもパターン欠陥となるため、露光後には完全に水を除去する必要があります。そのため露光時のレジスト膜表面は疎水性にすることが要求されます。今回開発した55nmノード対応の液浸レジストプロセスには、65nmロジックLSI向けのArFレジストプロセスに、表面を保護するとともに疎水性を確保できる液浸用トップコート膜を併せて適用しました1,2)図2に液浸露光プロセスを示します。図2(a)のように従来のレジスト膜の上にトップコート膜を塗布形成します。その後、図2(b)のように、レンズとウェハ間に液浸水を満たした露光装置にて露光を行い、現像後に図2(c)のようなレジストパターンを形成します。なお、トップコートは現像時にアルカリ現像液により剥離され、消失します。

図2 液浸対応レジストプロセス

トップコートを導入するにあたり、65nmロジックLSIで適用しているレジストと各種トップコート膜との適合性を評価しました。現像処理後のレジストパターンの断面形状についてSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)による観察を行った一例を図3に示します1)。図3(a)~(d)は同一のレジストに対するそれぞれに異なるトップコートを組み合わせてパターン形成した場合の断面形状です。(a)は順テーパー形状で上部の丸まりが発生、(b)、(c)ではパターンの上部の出っ張りが発生、倒れ発生と断面形状の悪化が見られました。(d)のトップコートの場合に良好なパターン形状が得られましたので、これを液浸レジストプロセスに採用しました。トップコートの導入により、図2(b)に示すような液浸露光時にレジスト膜を保護し、水の侵入やレジスト膜から水への各種成分の浸みだしを防ぐことが可能となりました。同時に表面の疎水性を確保し、露光装置のレンズとウェハ間の露光エリア周辺にのみ液浸水を維持し、露光後のウェハ上への水滴残りを防止することに成功しました。

図3 液浸対応トップコート評価結果

一方で、液浸対応のトップコートはウェハとの密着性が悪く、特にウェハエッジ部分でウェハ上に直接塗布形成した場合に、液浸露光処理を行うと剥がれてしまうことが分かりました。剥がれたトップコートは露光中の液浸水中等で露光光を遮り、パターン欠陥を引き起こします。トップコート膜の密着性について評価した結果、トップコート膜はレジスト膜状や反射防止膜との密着性は良好であることが分かりました3)。そこで、トップコート膜は図4に示すように反射防止膜上にのみ形成することとしました。この構造を採用することにより、ウェハエッジにおけるトップコート膜の剥がれを回避しました。

図4 ウェハエッジ部の膜構造

2.2 液浸対応露光装置の開発

レンズとウェハの間を水で満たす方式としては、レンズとウェハ間の露光エリア周辺のみの部分的に液浸水を導入するパーシャルフィル方式が採用され、露光が完了したときにウェハ上に液浸水が残留しないように工夫が施されています。液浸露光装置においては、水がウェハに接触することによる温度変動に起因したウェハの伸縮・変形により、重ね合わせ精度の劣化や露光時のフォーカス(焦点)ずれなどが懸念されます。そのため、液浸露光装置では液浸水の温度制御を非常に高精度で行い、さらにウェハの温度が変化しないようにウェハを保持するステージに温度調節機能を持たせるなどの対策が施されています。図5に示すように、2005年の開発当初に導入した液浸露光装置においては、それら温度制御、最適化が不十分で、露光装置起因だけで重ね合わせ精度は20nmを超えるレベルであり、要求される12nmに対し十分な精度が得られませんでした4)。図上段に示してありますウェハマップに位置誤差のベクトルにあるように、特にウェハ外側における精度に問題がありました。しかし、各種の対策や最適化を施すことにより、2007年には10nmを下回るところまで改善されてきました。

図5 液浸露光装置の重ね合わせ精度の改善

2.3 55nmロジックLSIへの液浸リソグラフィの適用

上述してきました液浸レジストプロセスおよび液浸露光装置を55nmロジックLSIの各工程へ適用し、パターン形成した結果を図6に示します3,4)。形状の良好なパターンが形成できています。また、55nmロジックLSIにおける重ね合わせ精度は25nmレベルが要求されていますが、液浸リソグラフィを実際のLSIプロセスウェハに適用した結果、十分達成できていることを確認しています4)

図6 液浸リソグラフィによる55nmロジックLSIパターン

液浸リソグラフィにおいて、懸念されていたパターン欠陥について、実際の55nmロジックLSIの各工程のパターンで評価したところ、従来のリソグラフィと同等以上のレベルを達成できていることを確認しています。図7に300mmウェハ全面に液浸リソグラフィにより形成されたパターンの欠陥検査結果の一例を示します。いずれの工程においても10個を下回るレベルとなっています。

図7 液浸リソグラフィにおけるパターン欠陥

以上、述べてきました液浸リソグラフィ技術はNECセミコンダクターズ山形の300mmウェハ製造ラインにおいて、55nmロジックLSIの生産に適用されています。

2.4 液浸リソグラフィ技術の今後

55nmロジックLSI向けに開発し、量産導入された液浸リソグラフィは、現在40nmロジックLSIや32nmロジックLSI開発用にも適用されており、将来は生産にも適用していく見込みです。現在もコスト削減のため、トップコートの機能を有するレジストを開発中で、実現すればトップコートの削減が可能となります。32nmロジックLSIにおいては、現状の水を用いた液浸リソグラフィでの最高NAである1.35クラスの装置が用いられる見通しです。さらにそれ以降の次世代LSI対応のリソグラフィ技術として、液浸露光を繰り返し重ねて露光及びパターン形成を行うダブルパターニング技術や非常に短波長な光を用いるEUV(Extreme Ultraviolet:超紫外光、波長13.5nm)リソグラフィの開発が行われています。いずれも非常に難しい技術であり、実現のためには多くの課題があるのが現状です。液浸リソグラフィの延命技術である露光によるダブルパターニング技術においては、2~3nmの重ね合わせ精度などの非常に難しい課題があり、各要素技術を開発中です。

3. まとめ

液浸リソグラフィはArFリソグラフィの次世代微細化対応技術として、トップコートプロセス及び液浸露光装置の開発、最適化を実施することにより実現されました。現在55nmロジックLSI、将来には40nmロジックLSIに対応した露光技術として、NECセミコンダクターズ山形における300mmウェハの生産に適用されています。

参考文献

  • 1)
    T. Nakata, et.al., “Evaluation of immersion lithography process for 55-nm node logic device” SPIE6519-73(2007).
  • 2)
    T. Kodama, et.al., “Development of immersion lithography processes for 55-nm node device mass production”, 3rd International Symposium on Immersion Lithography, PO-10.
  • 3)
    T. Uchiyama, “Current status and prospects of lithography for logic device mass production”, 2007 Lithography Workshop (http://www.lithoworkshop.org/)
  • 4)
    T. Uchiyama, et.al., “Benefit of ArF immersion lithography in 55 nm logic device manufacturing”, SPIE6520-09(2007).

執筆者プロフィール

内山 貴之
NECエレクトロニクス
生産本部
プロセス技術部
チームマネージャー

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