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食品メーカーの商品需要予測へのビッグデータ技術活用

Vol.68 No.1 2015年9月 安全・安心で快適な生活を支えるエンタープライズ・ソリューション特集

食品メーカーの商品の需要は、気候や広告宣伝などの変動要因の影響を受けやすく、予測が非常に困難です。需要予測の不透明さは需給調整へのしわ寄せとなり、物流や生産コストの増加、欠品や過剰在庫、廃棄ロスを招きます。NECは、ビッグデータ技術の1つである異種混合学習技術を商品需要予測に適用し、需要予測の自動化、システム化によるサプライチェーンマネジメントの最適化を実現します。また、販売施策のシミュレーションに機械学習を適用することによって、その効果を最大化し、売上増大に寄与します。

1. はじめに

国内市場の成熟化、消費者の嗜好の多様化への対応から、食品業界はいわゆる定番商品のほかに新商品や期間限定商品など、多くの商品アイテムを抱えてのビジネスを行っています。これらの商品出荷の先行きをどう予測するかは、生産計画や資材調達、物流に大きな影響を与え、場合によってはコスト増や食品廃棄ロスを引き起こします。

しかし、天候やイベント、販促活動や他社動向に大きく左右され、商品の需要予測は長くシステム化の難しい領域として、熟練の需給調整担当者の経験・勘・度胸に頼ってきていました。

ここにきて、機械学習などのビッグデータ技術を用いて、商品の需要予測に取り組む例が増えてきています。本稿では、NECの機械学習技術である異種混合学習を適用した商品需要予測ソリューションを紹介します。

2. 商品需要予測

2.1 食品の商品需要予測における課題

食品業界のバリューチェーンは、おおまかには①原材料・資材メーカーから食品メーカー生産拠点への調達、②食品メーカーでの生産、③食品メーカーから卸を経由しての小売向け販売・出荷、④小売の店舗から消費者への販売、となります。

小売・卸は④店舗での販売動向と在庫を勘案して発注を行います。これが③食品メーカーとしての受注となり、商品によりますが日次で締めて確定します。

これに対して、①原材料・資材の調達、②工場側での生産計画は、コスト低減のために中長期のサイクル(半年~数カ月)で行われるため、需要予測と予測ギャップを埋めるための需給調整が必要となります。ギャップが埋めきれない場合、欠品や過剰在庫、返品による廃棄ロスや資材の不良在庫を招き、事業に大きくインパクトを与えます(図1)。

図1 食品業界のバリューチェーンと需要予測

ここで食品業界の需要変動の特性として、変動の要因が多岐にわたり、その波動が大きいことが挙げられます。変動の要因として、天候、気温などの気象条件、曜日や日にち、時間帯などのカレンダー条件や季節性、立地や商圏、人口構成などの店舗特性、棚割、POP、特売やキャンペーン、コマーシャルの投下や地域のイベントなどがあります。

更に多段階の商流を経ることによって、流通在庫が見えにくくなっています。食品メーカーは自社からの出荷データに加え、卸からの出荷である蔵出データ、店舗での売上実績であるPOSデータの入手に努めてきました。そして、移動平均法や指数平滑法による需要予測を行ってきましたが、需要の高波動に対応できるものではなく、ECR(Efficient Consumer Response)やQR(Quick Response)など需給調整側に寄った解決を目指してきました。TOC(Theory Of Constraints)をベースとしたSCM(Supply Chain Management)の導入も試みられましたが、設定やマスタの維持管理が難しく、需要予測部分は使われなくなるケースが散見されました。近年の商品アイテムの増加と商品サイクルの短期化が、需要予測の難しさに拍車を掛ける傾向にあります。

2.2 異種混合学習技術の登場

食品業界長年のテーマであった需要予測に対して、ビッグデータ関連技術である機械学習を用いてのアプローチが始まっています。そのなかでもNECの異種混合学習技術は以下の特長から、食品業界の商品需要予測に対して非常に有効と考えています(図2)。

図2 異種混合学習技術の特長

(1) 特長1:規則性を自動的に抽出

先に述べた多岐にわたる需要変動の要因を異種混合データ(多様なデータの集まり)として機械学習を行い、自動的に規則性を抽出して、パターン数に応じた予測モデルを作成します。予測に当たっては、適切な予測モデルを自動的に選択し、最適な予測値を算出します。
多数にわたる商品アイテムに対して、つど人間が判断しながら最適な予測モデルのパターンを作成していくには限界があります。異種混合学習技術が自動的に行うことによって、予測モデルを現実的なコスト、期間で作成することが可能となります。
また、時間の経過とともに予測モデルは劣化するため、精度を維持していくうえでも、定期的な予測モデルの見直しが必要となります。見直しのために必要な工数を、自動化によって大幅に軽減できます。

(2) 特長2:高い解釈性

予測モデルは、変動要因と異種混合学習によって自動的に求められる定数の積によって表現されます。
定数の大小によってその変動要因(天気、気温など)が、どれぐらい効いているのかが分かります。ここから、「晴れた平日の場合、この予測モデルが適用される」「商品Bは気温26度以上になると売上が伸びる」といったことを、読み取ることができるようになります。
また予測モデルのチューニングに際しても、どの変動要因のデータがおかしいのか、など問題点の発見に役立ちます。

この2 つの特長により、日常的な業務である食品メーカーの需要予測において、異種混合学習技術によるシステム化が可能となってきました。

2.3 商品需要予測ソリューション

異種混合学習を用いた商品需要予測ソリューションについて、需要予測の流れに沿って説明します。

大きくは、学習と予測の2段階に分かれます。学習の段階(図3)では、過去データを異種混合学習エンジンに投入し機械学習を行い、予測モデルを作成します。予測の段階(図4)では、予測モデルに直近と未来のデータ(カレンダーなど)を投入して予測結果を算出します。以下、それぞれを細かくみていきます。

図3 需要予測の流れ(学習)
図4 需要予測の流れ(予測)

(1) 学習データの準備

機械学習を行うためのデータを用意します。定期的かつ精度の高い予測を実現するうえでは、適切なタイミングで定常的に入手可能なある程度の精度を持ったデータが必要となります。以下のようなデータが例として挙げられます。

  • 基本的なデータ:出荷データ、カレンダー情報
  • 外部データ:蔵出データ、POSデータ、気象データ
  • 追加データ:宣伝広告情報、特売情報、イベント情報

外部データや追加データの定常的な入手に当たっては、取引先との契約条件や社内システムの整備などのハードルを越える必要があります。
異種混合学習エンジンに投入する前に、データのクレンジング作業が必要となります。小売チェーンごとにフォーマットの異なるPOSデータをどう揃えるか、不正データや異常値の取り扱いをどうするか、得意先や商品名の名寄せなどを行います。

(2) 学習と予測モデルの作成

準備した学習データを異種混合学習エンジンに投入し、予測モデルを作成します。「商品Aの売上」の予測モデルを作成する場合、関連すると思われる変動要因のクレンジング済みの過去データを投入します。すると適切な条件(平日日中、土日で雨以外、土日で雨、など)でパターン分けされた予測モデルが、パターンの数だけ自動的に作成されます。
ここで作成された予測モデルに対し、検証用のデータを投入し予測値と実績値の乖離度を確認します。乖離度が大きい場合、予測モデルと照らし合わせながら、(1)学習データの準備へ戻ってデータの見直しを行い、満足のいく予測結果が得られるまで(1)、(2)を繰り返し回して、最終的に予測モデルを決定します。
学習システムについては、NECよりクラウド環境にて提供します。

(3) 予測データの準備

(1)、(2)で準備した学習データに、将来のデータを加えて予測データを作成します。カレンダー情報が主となりますが、有効な外部データや追加データの利用も可能です。

(4) 需要予測の実行とレポート

予測システム上に(2)で作成した予測モデルを準備し、(3)で準備した予測データを投入して、予測結果を算出します。予測結果は利用しやすい形態でレポーティングを行います。関連部門での需給調整会議用のレポートとしてアウトプットする、需給調整システムへインプッ
トする初期値としてファイル出力する、などです。このため、レポーティングの仕組みはお客様のニーズに合わせて用意します。

(5) 予測結果のフィードバックと予測モデル見直し

最初に(1)~(2)で作成した予測モデルを用いて、しばらくの間(3)~(4)の需要予測を回しますが、ある時点で作成した予測モデルは市場環境の変化から次第に劣化し、予測の精度が落ちていくため、定期的な予測モデルの見直しが必要です。多くの場合3カ月から半年での見直しが必要であり、予測結果と実績値の乖離度の評価と、適切なタイミングでの予測モデルの
見直しをルーチン化します。

2.4 期待される効果

多くのアイテム数を抱える食品メーカーにおいて、機械学習を用いた需要予測を、運用可能なレベルで自動化、システム化します。ある食品メーカーでの評価においては、対象とした商品の7割で比較的高い精度の予測結果となりました。

需要予測-需給調整の業務自体の効率化に加え、需要予測を日次などのタイミングで見直し、適正化が図れるようになること、その結果、欠品対応や特車手配などが減少し生産や物流のコスト低減が図れること、在庫が適正化されることからの廃棄ロスの削減などの効果が期待されます。

また、これまで熟練担当者による経験と勘に頼っていた需要予測の考え方が、予測モデルの形で表されるようになるため、予測業務の継承、非熟練担当者への移管が可能となります。

3. シミュレーションへの活用

異種混合学習技術を用いて時間軸で予測を掛けたのが、商品需要予測となります。ここで他の変動要因(例えば宣伝広告、特売など)にシミュレーション用の値を入れることにより、「販促費をこれだけ投入した場合の売上はどうなるか」といったシミュレーションが可能となります。

食品メーカーは、小売からPOSデータを預かって売場の提案を求められるケースがあります。また自動販売機など、自社でチャネルと消費者の購入実績を有している場合もあります。こうした場面で異種混合学習技術を活用することにより、販促や特売などの施策による効果のシミュレーションや、棚割やコラム編成のシミュレーションが可能となります。これにより、ビッグデータ活用による売上増大を実現していきます。

4. おわりに

異種混合学習技術の適用により、食品業界において長らく課題であった需要予測のシステム化が可能となってきています。需要予測のシステム化、精度向上により、物流コストの低減や廃棄ロスの削減が実現できます。

またシミュレーションとしての活用により、売上高増大の施策を打っていくことも可能となります。

NECとしましても、食品業界におけるビッグデータを活用したソリューションの整備を継続して進め、サステナブルで効率的な社会への貢献を目指してまいります。

執筆者プロフィール

二田 総一郎
プロセス業ソリューション事業部
主任

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