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高い安全性と環境に対応した 大容量リチウムイオン二次電池

Vol.62 No.3 2009年9月 ICTでナビゲートする環境にやさしい社会特集

リチウムイオン二次電池は、カドミウム・鉛・水銀などの環境規制物質を使用しない、地球環境にやさしい電池です。また、近年の地球温暖化をはじめとする環境問題への関心の高まりに伴い、今後急速な普及が見込まれている電気自動車やハイブリッド自動車用途のほか、風力や太陽光発電システムの電力貯蔵用(ストレージ)として注目され、開発が進められています。本稿では、弊社がラインアップする大容量タイプ及び高出力タイプのラミネート電池セルと、これら電池セルを用いた標準電池パック、標準電池モジュールを紹介します。大容量タイプは、主に電力型のUPS(無停電電源装置)、大型機器のバックアップ電源、自然エネルギー(風力、太陽光他)ストレージなど、蓄電系アプリケーションを用途としています。また、高出力タイプは、瞬停回避型のUPS、電動バイク、電動カート、ロボットなどの瞬時の大電流を求められるモータ駆動系アプリケーションなどを主な用途としています。

1. はじめに

リチウムイオン二次電池は、単位重量や単位体積当たりの容量がニカド電池やニッケル水素電池に比べて大きく、小型・大容量化に適しています。また、カドミウム・鉛・水銀などの環境規制物質を使用しない、地球環境にやさしい電池です。

NECトーキンの大容量リチウムイオン二次電池は、正極材料にマンガン系材料を採用することで、熱的安定性が高まり、過充電や過電流に強く、高い安全性を実現しています。更に、電極の積層構造、ラミネート外装などの構造設計を工夫することで、高い放熱性と高レート放電を実現しています。これらの技術により、従来ニカド電池や鉛蓄電池が主に使われていた電動アシスト自転車、電動車いす、ネットワーク装置(UPS)など大電流を必要とする大型機器への搭載を可能にしました。

近年、地球温暖化をはじめとする環境問題への関心の高まりに伴い、地球環境にやさしいリチウムイオン二次電池は、今後急速な普及が見込まれている電気自動車やハイブリッド自動車用途のほか、風力や太陽光発電システムの電力貯蔵用(ストレージ)として注目され、開発が進められています。

エネルギーの有効利用、低炭素社会に向けて、弊社の大容量リチウムイオン二次電池は、小型機器から大型機器まで、幅広い分野での適用が可能です。

2. 大容量リチウムイオン二次電池の用途

大容量リチウムイオン二次電池の主な用途は、以下の2種類に種別されます。

  • 1)
    大容量タイプアプリケーション
  • 2)
    高出力タイプアプリケーション

前者は、主に電力型のUPS(無停電電源装置)、大型機器のバックアップ電源、自然エネルギー(風力、太陽光他)ストレージなど、蓄電系アプリケーションを主用途としています。また、後者は、瞬停回避型のUPSや電動バイク、電動カート、ロボットなどの瞬時の大電流を求められるモータ駆動系アプリケーションなどを主な用途としています。

3. 大容量リチウムイオン二次電池の7つのキーワード

大容量リチウムイオン電池の市場は多岐にわたっています。このような状況に対し、弊社の大容量ラミネート電池は、以下に示す7つのキーワードで対応を行っています。

1) 高安全性

弊社では世界で初めて安定したスピネル構造のマンガン酸リチウム合成技術の実用化に成功しました。スピネル構造のマンガン酸リチウムを用いた電池セルは携帯電話、ゲーム機用途などで採用(セル換算で1億台以上が出荷)されており、その安全性の高さは市場で実証されています。

2) 低環境負荷

欧州RoHS指令に適合し、各社のグリーン製品要求を満足しています。更に、正極材の主材料は埋蔵量の豊富なマンガンであり、他の電池に比べて環境負荷の少ない電池です。

3) 急速充電・急速放電(高充放電効率)

余剰電力・回生エネルギーを蓄電することあるいは、メイン電源へのピークアシストを行うことにより、メイン電源の電力平準化を図るなど、エネルギーの有効利用(効率化)を実現させることができます。

4) 大電流放電

電極の積層構造化により低インピーダンス化を実現し、放電時の発熱を抑制することができます。更に、ラミネート外装などの構造設計を工夫することで、高い放熱性を実現しています。

5) 高容量

正極材料にマンガン系材料を採用することにより高い安全性を実現しました。更に電極の積層構造、ラミネート外装などの最適構造設計による放熱性を実現。これらの技術により、高容量化を可能としています。

6) 長寿命、高温耐久性

弊社では、充放電回数4,000回を実現できる電池セルをラインアップに追加しました。更に60℃高温環境下での劣化を抑えたセル開発を進めています。これらのセルを使用した電池パックにより、メンテナンスの回数低減、システム全体の小型化など、鉛蓄電池からの積極的な置き換えが可能となります。

7) 高い適用性

大容量リチウムイオン二次電池、大型機器のバックアップ電源、自然エネルギー(風力、太陽光他)ストレージなど、蓄電系アプリケーションから、瞬停回避型のUPSや電動バイク、電動カート、ロボットなどの瞬時の大電流を求められるモータ駆動系アプリケーションなど、小型機器から大型機器への幅広い分野での適用が可能です。

4. マンガン系ラミネート電池セル

用途別に大容量タイプ電池セル(IML05/82/150A)、高出力タイプ電池セル(IML05/82/150B)および長寿命タイプ電池セルをラインアップしています。大容量リチウムイオン二次電池セルの特性を表1に示します。セルの重量エネルギー密度は130~150Wh/kg、体積エネルギー密度は230~250Wh/Lです。写真1に示すように外装にアルミをベースとしたラミネートフィルムを使用したことにより、薄型化と軽量化を実現しました。

表1 ラミネート型リチウムイオン二次電池の仕様

写真1 IML05/82/150Aの外観

5. 標準パックと標準モジュール

弊社では24V系を主なターゲットとし、エネルギー容量100Wh級、200Wh級の2品種の標準パックと、エネルギー容量100Wh級の標準モジュールを商品化してきました。例えば、モータ駆動であれば、50W級のモータを2hまたは4h動作することも想定しています。更に多くのエネルギーが必要な場合は、この標準パックを並列接続あるいは標準モジュールを直列・並列接続することを想定しており、様々なシーンに対応可能なソリューションを提案できるよう考慮しています。

5.1 標準パック

本電池パックの具体的な用途としては、各種機器のバックアップ電源やモータ駆動機器、照明機器類などへ組み込むことを想定しており、そのままの状態でアプリケーションへ導入いただけるよう安全性に対する保護回路はもちろんのこと、使いやすさも考え残量表示も設定しています。

24V電源システム向けの電池パックでは、平均25.9Vの供給電圧を電池セル7個を直列に接続することで実現し、この7直ユニットを1並列構成、2並列構成としたものを商品化しています。これら標準パックの外観を写真2及び写真3に、特性概要を表2及び表3に示します。

写真2 7直列1並列タイプ標準電池パックの外観
写真3 7直列2並列タイプ標準電池パックの外観

表2 標準電池パックの特性(7直列1並列タイプ)

表3 標準電池パックの特性(7直列2並列タイプ)

5.2 標準モジュール

本電池モジュールは機器のバックアップ電源、自然エネルギー(風力、太陽光他)ストレージなど、蓄電系アプリケーションシステムへの対応を想定しています。この蓄電系アプリケーションシステムは、お客様仕様によって電池電圧、電流、容量が異なるカスタム設計に対応しています。電池モジュールの直列・並列接続組み合わせ、更にはその電池モジュールを制御することによりお客様の要求仕様に最適な電池システムを提供することができます。

開発中の標準電池モジュール外観をに、特性概要を表4に示します。

図 7直列1並列タイプ標準電池モジュールの外観(開発中)

表4 標準電池モジュールの特性(開発中)

6. むすび

弊社の大容量ラミネートリチウムイオン二次電池は、正極材料にマンガン系材料を採用することで、高い安全性を実現しました。更に電極の積層構造、ラミネート外装などの構造設計を工夫することで、高い放熱性と高レート放電を実現させ、これらの技術により、大型機器への搭載を可能にしました。今後、弊社の大容量リチウムイオン二次電池は、暮らしに身近な製品によりいっそう組み込まれ、便利かつ環境にやさしい社会の実現へと貢献していきます。NECトーキンは明るい未来のために、安全で地球にやさしい電池をこれからも供給してまいります。

執筆者プロフィール

濱田 清隆
NECトーキン
販売推進本部
ラミネート電池グループ
主任
粂内 友一
NECトーキン
ラミネート電池事業部
蓄電駆動電池部
主任
塩谷 太志
NECトーキン
ラミネート電池事業部
蓄電駆動電池部
主任
田村 裕明
NECトーキン
ラミネート電池事業部
蓄電駆動電池部