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No.3(9月)ICTでナビゲートする環境にやさしい社会特集
Vol.62 No.3 (2009年9月)
ICTでナビゲートする環境にやさしい社会特集
藤本 淳
ICTにより生じる社会変革へ“持続可能性”の概念を導入することで、低炭素社会の実現に資することを目指しています。その活動のメッセージが“エコナビ”(Environmentally Conscious Society Navigated by ICT)です。本稿では、これまでの研究とは異なり、社会科学の視点より“持続可能性”を脅かす要因を明らかにします。そして、これらの要因の解決に向けたICTの活用方法を考察します。
環境に配慮した製品
高木 均 ・新屋敷 孝 ・泓 宏優 ・田中 弘嗣
NECのグリーンITへの取り組み「REAL IT COOL PROJECT」は、(1)省電力プラットフォーム、(2)省電力制御ソフトウェア、(3)省電力ファシリティサービスの3つの領域からお客様のIT環境のグリーン化を支援するものです。最新の市場動向を踏まえながら、NECのグリーンITに対する考え方、推奨するソリューションとその効果についてご紹介します。
若菜 政宏 ・田中 秀夫 ・中山 貴司 ・福島 治 ・伊藤 義行 ・宇野 雅幸
本稿では、携帯電話向けのマルチコアLSI:Medity M2(FOMAN905iシリーズ以降機種)の開発における環境に配慮したハードウェア/ソフトウェアの省電力最新技術を紹介します。このLSIを使用した携帯電話は、ハードウェアとソフトウェアとのコンビネーションによる省電力技術を駆使し、高い機能を実現しながら、最長クラスの連続通話時間や待受時間を達成しています。更にバッテリーの小型化を可能にし、総CO2排出抑制、筺体の薄型化・軽量化を通じて環境負荷を軽減しています。
野村 幸二 ・今西 音和 ・山下 教司 ・廣瀬 雅史 ・石橋 健司
インバータで点灯される高周波点灯専用形蛍光ランプ「FHC」は、その普及率が年々高まり、すでに一般的となりました。更に、省エネ、省資源から環境配慮形というカテゴリーが加わり、新たに従来タイプから明るさを8%向上させた「LifeEスリム」をこのたび商品化しました。本稿では、この「LifeEスリム」の設計、特徴について紹介します。
前田 拓司 ・山本 浩之 ・木村 弘典 ・大野 聡 ・木原 幹夫
NECライティングでは、「省エネ」「省資源」を目的に高効率・高演色LEDを搭載したダウンライト・スポットライトを「LIFELED'S」(ライフレッズ)シリーズ、細型冷陰極管を搭載したスリムタイプ器具を「+CLine」(プラスシーライン)シリーズ、高効率アルミ反射板を搭載した器具を「AlLine」(アルライン)シリーズとして発売しました。いずれも弊社のオリジナルな省エネ製品として他社と一線を画す製品群となっています。
サービス・ソリューションで実現する環境配慮
有馬 啓伊子 ・森 直子
NECのICT活用テーマの1つに、家庭の温暖化ガス排出削減があります。この分野の取り組みとして、エネルギー事業者の次世代ビジネスに向けた家庭用エネルギーシステムのプロジェクトでHEMS試作を行いました。本稿では、試作の概要、エネルギー事業者からHEMSに求められることと、その要求にHEMS試作でどのように対応したかを紹介します。また、今後のHEMSビジネス化における課題を考察します。
姚 恩建 ・藤田 貴司 ・高橋 邦彦 ・佐藤 彰典
低炭素社会の実現には、日本の二酸化炭素総排出量の約2割に相当する運輸分野、更にその約9割を占めている自動車からの排出削減が重要です。人と自動車と道路をIT技術で結ぶITS分野では、これまでカーナビ、VICS、ETCなどのITS製品及びサービスが交通流の円滑化に効果を上げています。低炭素社会の実現に向けたITS分野の新しい取り組みとして、NECが開発を進めているプローブ情報を活用したエコルート探索システム、また路車・車車間通信による安全運転支援の実用化に向けた状況について紹介します。
矢木 義規 ・堀内 正美 ・平林 こずえ ・春田 仁
自家用乗用車や貨物自動車からのCO2排出量削減は、地球温暖化対策の中で大きな課題となっています。このような中、個々のドライバーが環境に配慮した運転を行う、エコドライブが注目されています。このエコドライブの実践を、ICTを利用した情報提供でサポートするASPサービスがDriveManagerです。本稿では、DriveManagerの実運用を通して収集された運転データを集計して運転方法と燃費の関係を明らかにし、エコドライブを実践することの燃費向上・CO2排出量削減への有効性を検討します。
園部 一彦 ・早川 敬介 ・加藤 隆史 ・鈴木 康暢
製造・物流現場では、「かんばん」が広く活用されていますが、年々規模が大きくなり、紙によるかんばんでは環境影響への負荷が懸念されてきました。本稿では、これらを払拭する再生利用可能な電子かんばんシステムを実現するリライタブルプリンター「MultiCoder 950」シリーズを紹介します。
木梨 治彦
企業活動において、排出するCO2などの温室効果ガスの削減は必須となっており、環境への対応力は企業の競争力の1つとなっています。業務効率の向上を実現するUNIVERGEソリューションは、人の移動の削減、紙の削減、スペースの効率化を実現するので、Green by ICTで企業の環境負荷を削減できます。更にUnified Communicationsで業務とコミュニケーションを融合することで、いっそうの環境負荷削減に貢献します。
環境に配慮した生産
須田 修 ・高橋 広志
複雑化するサプライチェーンの生産現場の中で増大する情報を、RFIDの活用によりモノと情報を一元化して大幅な効率化を実現しました。例えば、従前は1日10万回にも及んでいたバーコードの読み取り作業を排除することによる生産性向上や、RFID付き電子かんばんの導入による在庫1/4への削減や物流便1/3への削減などです。このような改善成果を環境負荷軽減の視点で評価すると、年間5,000トンのCO2削減に繋がっています。
那須 経正 ・石井 昭裕 ・埜本 康之 ・中居 伸一 ・宮下 英一 ・若林 秀行
UNIVERGEシリーズのIP電話機(DT700)の工場での生産、お客様サイトでの工事・施工・現調までを、“SCM”の観点からNECインフロンティアとNECネッツエスアイが共同で、ムダの抽出とその原因を究明し、対策を講じて“グリーンSCM”を確立しました。まず、生産面では、“BTO生産方式”の導入、“通い箱”の採用、“物流システム”の効率化を、また、工事・施工面では“総合SIセンター”を設立し、“電話機キッティング作業”と“現場の技術作業の集約・標準化”を行いました。その結果、産業廃棄物のCO2排出量を90%削減し、作業効率アップにより年間使用電力量は75MWh削減を達成しました。この“グリーンSCM”と称する、IP電話機のグリーン工法(エコ・ナビ工法)を紹介します。
社会で活かされる環境技術
位地 正年 ・井上 和彦 ・芹澤 慎 ・木内 幸浩 ・中村 彰信
電子機器の環境調和性を向上できる植物原料のバイオプラスチックとして、高機能なポリ乳酸複合材を開発しました。高い環境調和性(高植物成分率、安全性)を保持しながらの高機能化を目指し、ケナフ繊維や金属水酸化物などの植物・天然物系の添加剤の利用によって、ポリ乳酸の耐熱性、強度、難燃性等を向上させ、製品の一部に実用化しました。また、これまでのプラスチックにない新機能による付加価値の向上を目指して、小型・薄型機器に重要な高熱伝導性を実現し、将来のウェアラブル機器のための形状記憶性も実現しました。
江川 尚志 ・本永 和広 ・高木 一 ・中山 憲幸 ・中原 良文 ・原崎 秀信
標準化には、政策や制度が示した目標や基準を、作業項目や数値として具体化する機能があります。環境問題では汚染した人間と被害を受ける人間が一致しないことが多く、これをどのようにして一致させるかを政策や制度を通じて規定しなければならないため、標準化もそれに伴い早い段階で、国際協調しつつ行う必要があります。そこでNECは政策や制度への提言、目標を示し市場を規定する標準化に総合的に取り組んでいます。本稿では活動の具体例としてデータセンターの評価指標、ICTが他分野での温室効果ガス削減に貢献する効果の測定方法、消費者の意識変革を通じて企業の行動を変えるカーボンフットプリントについて述べます。
市川 憲二 ・中島 淳 ・勝山 良彦 ・石田 十郎
全世界規模での大気・水蒸気を始めとした地球の変動、変化を、性能が統一されたセンサで短期間に観測することが、比較評価の観点で重要と認識されています。その目的を達成するため、人工衛星からの地球環境監視の需要がますます増大する傾向にあります。NEC並びに、NEC東芝スペースシステムは、衛星搭載用の観測衛星システムのパイオニアとして、多くの地球観測衛星の開発と、搭載するセンサの開発を行っています。本稿では、NECの搭載センサ開発と、その成果、今後の動向について説明します。
濱田 清隆 ・粂内 友一 ・塩谷 太志 ・田村 裕明
リチウムイオン二次電池は、カドミウム・鉛・水銀などの環境規制物質を使用しない、地球環境にやさしい電池です。また、近年の地球温暖化をはじめとする環境問題への関心の高まりに伴い、今後急速な普及が見込まれている電気自動車やハイブリッド自動車用途のほか、風力や太陽光発電システムの電力貯蔵用(ストレージ)として注目され、開発が進められています。本稿では、弊社がラインアップする大容量タイプ及び高出力タイプのラミネート電池セルと、これら電池セルを用いた標準電池パック、標準電池モジュールを紹介します。大容量タイプは、主に電力型のUPS(無停電電源装置)、大型機器のバックアップ電源、自然エネルギー(風力、太陽光他)ストレージなど、蓄電系アプリケーションを用途としています。また、高出力タイプは、瞬停回避型のUPS、電動バイク、電動カート、ロボットなどの瞬時の大電流を求められるモータ駆動系アプリケーションなどを主な用途としています。
太田 二朗 ・濱田 枝里
赤外線サーモグラフィは、物体から放射される熱エネルギーを受光し温度分布として映像化する装置です。主な用途では、電気設備診断・機械設備診断・温度異常監視などで利用されていますが、インフルエンザ拡大防止の観点から発熱した人間を検知するために空港検疫所様を始め、様々な企業から注目を集めるようになりました。本稿では、発熱者を精度良く検知するための製品動向と利用技術の向上を目指した取り組みを紹介します。
先端環境技術
岩田 真琴 ・石田 和生 ・宮崎 徹 ・岩佐 淳史 ・山村 幸太郎 ・甲斐 正義
温室効果ガスのさらなる削減には、工場などの大規模環境での省電力化に加え、家庭やオフィスなどの小規模な居住環境における省電力化が必要です。小規模環境では、小さな「もったいない」電力の削減が重要です。そこで、電力制御システム「グリーンタップ」は、小型省電力無線環境センサとCPU内蔵電源タップの組み合わせにより、無駄な電力消費を検出し、電源タップに接続した個々の電化製品をこまめに省エネ制御します。本稿では、簡単・安価に設置・運用でき、柔軟に電力を節約する仕組みを、利用シーンを交えて説明します。
新 淳 ・京 昭倫 ・野本 祥平 ・岡崎 信一郎 ・西 直樹
人と地球にやさしい情報社会の実現には、高性能と低消費電力とを兼ね備えた組込みプロセッサによるICTのナビゲーションが不可欠です。本稿では、画像認識によって安全運転支援を実現するための、IMAPCAR2プロセッサを紹介します。大量の動画像をリアルタイムに処理し、障害物など画像中のオブジェクトの検出を行い、交通事故の減少を通じ効率のよい運輸システムの構築に貢献します。
中村 暢達 ・喜田 弘司 ・竹村 俊徳 ・藤山 健一郎
仮想マシン(VM)型のシンクライアントシステムでは、仮想化されたPCを任意の物理サーバ上で実行できるため、VMを適切にサーバ間で移動させて、余剰サーバ(VMを動作させなくてよくなったサーバ)の電源をオフにすることで省エネが可能となります。これに向けて、数万台のVMから負荷情報をきめ細かく収集、サーバの利用状況を把握し、VMをどの物理サーバで実行させれば良いのかを予測・制御する「大規模VM負荷予測・配置制御技術」を開発しました。本稿では、技術開発への取り組みと、6万台規模のVM運用で消費電力を約35%削減できることをシミュレーションにより検証した事例を紹介します。
大場 浩司 ・河合 一慶 ・松下 留美 ・石原 国泰 ・江藤 公治
オールフラッシュマイコンは、お客様のシステム競争力向上のため、すべての製品をフラッシュマイコンでそろえた製品群です。近年の省エネに対する意識の高まりと、それに伴うお客様のマイコンに対する低消費電力の要求に応えるため、業界最高レベルの低消費電力性能を目指した、16ビットオールフラッシュマイコン78K0R/Kx3-Lの開発を行いました。本製品は特に電池駆動の機器に最適な、1MHz動作、スタンバイ時の消費電力を大幅に削減することを目指し、製品仕様や回路に工夫を行っています。本製品を使うことにより、お客様の製品の電池寿命改善に大きく寄与することができます。更に、ソフトウェアの書き換えが可能であるため、急な需要変動や仕様変更にも柔軟に対応することができ、効率よく量産を行うことができます。
喜田 弘司 ・中村 暢達 ・今井 照之 ・藤山 健一郎
深刻化する交通渋滞や環境問題の解決に、ITを活用した高度道路交通システム(ITS)が期待されています。ITSの実現のためには、自動車(移動体)からセンターサーバにアップロードされるデータを大量に収集し、リアルタイムに分析する情報通信技術が重要です。本稿では、このような大規模データ収集・分析を実現するデータストリーム技術について紹介します。更に、本技術を渋滞情報提供システムに適用することにより、大量の車両からの位置・速度データを高速に処理し、鮮度の高い渋滞情報の提供が可能であることを検証しましたので、その結果を報告します。
江連 裕一郎 ・阿部 憲一 ・伊藤 睦 ・山本 透 ・上野 裕暁
地球温暖化が社会的に重要な問題となっています。我々は、地球温暖化対策として家庭内の電力使用量を可視化することで電力使用量を削減する行動を促し、結果として家庭からのCO2排出量を削減する技術を開発しています。開発したシステムでは、システム自体の消費電力を抑える無線通信プロトコルなどの機能により、更なるCO2排出量の削減を目指しています。更に、試作したシステムで実証実験を実施し、電力使用量を約5.2%削減でき、システムが有用であることを確認しました。
飯島 明夫 ・岩田 淳 ・雨堤 俊之 ・尹 秀薫
インターネットの利用拡大が進む今日、ICT利用の新たな形態としてクラウドコンピューティングが注目を集めています。今後、こうした新たなICT利用の拡大に伴いネットワークのトラヒックは増加を続け、ネットワークシステムの省電力対策はますます重要になります。NECは既にネットワーク機器の省電力化に取り組んでおり、更に今後のクラウドコンピューティング時代に向けて、次世代インターネット技術OpenFlowによりネットワークとITが連携して、ICTシステム全体の省電力化を図る研究開発に取り組んでいます。