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外周フェンスセンサ

Vol.63 No.3 2010年9月 パブリックセーフティを支える要素技術・ソリューション特集

フェンスセンサは、交通関連施設(空港、港湾)や、発電所、石油化学やプラントなどの公共インフラ系設備、刑務所、自衛隊基地や米軍基地などの防衛施設などに設置されています。ここ数年では企業の工場などの生産施設でも大規模なエリア監視を行い、侵入検知のために各種のフェンスセンサを設置するようになりました。
本稿では、代表的な線警戒形外周監視方式の外周フェンスセンサについて紹介します。

1. はじめに

フィジカルセキュリティ市場において、NECネッツエスアイでは、入退管理システムを軸として、映像システム、外周監視システムの提供を行っています。

2000年以降急速にセキュリティ市場が拡大している中、弊社では2007年度に、正式にフィジカルセキュリティ部を発足させ市場に参入してきました。この間、個人情報保護法、コンプライアンス、第三者による脅威などに対応したさまざまな入退管理システムや監視システムの導入が進み、建物にはなくてはならないシステムとなっています。その中で、広大な敷地に設けられている工場・研究施設・重要施設では各建物のセキュリティシステムに加え、敷地内全体を監視する広域エリア監視システムの導入が進んでいます。

弊社では、新規ソリューションとして、侵入者を検知するフェンスセンサや映像ソリューションを組み合わせた、広域エリア監視システムの構築を行っています。

本稿では、代表的な線警戒外周監視方式であるトラップ式、同軸ケーブル式、光ファイバーの3種類の外周フェンスセンサについて紹介します(表1参照)。

表1 システム比較表

2. トラップ式(自動復帰型フェンスセンサ)

2.1 システム概要

本システムは、フェンスなどに一定間隔で設置したトラップセンサが、センサ間を結ぶ「警報線」上を不審者が乗り越える際にかかる線への加重や線の引っ張りを検知し、擬似的に断線状態を作り警報を発する装置です。断線状態は可動接点により自動復帰しますが、警報箇所はマーカーで表示されるため侵入箇所を現地で確認が可能です。

2.2 システムの特長及び構成

(1) 特長

本システムの特長について以下に説明します。

  • 1)
    自動復帰型で発報箇所をマーカー表示
  • 2)
    誤報故障の少ないシンプル構造の全天候型
  • 3)
    フェンスや警戒地域の形状に合わせたフレキシブルな設置が可能
  • 4)
    監視カメラシステムなどの連動が可能
  • 5)
    警戒区画を最大1,500mまで設定可能
  • 6)
    一括及び区画ごとの運用・休止操作が可能

(2) システム構成

図1は本システムの取付イメージ図となります。

図1 フェンスセンサ取付図

1) トラップセンサ

両端に6.5mの強靭な防犯線を付属した自動復帰式接点を有した検知器です。通常時は微弱電流が流れており、防犯線に圧力が加わり接点が切り離された場合や、センサが破壊されその微弱電流の通電状態が停止した時点で警報を発する仕組みとなっています(表2参照)。

表2 トラップセンサ

2) 警報線

ステンレスの撚り線19本で構成されており、φ0.9mmという細さでありながら下記の強度を持ちます。

  • 垂直強度 → 12.5kg
  • 引っ張り部分強度 → 80kg
φ0.9mmという太さは鳥の止まりを少なくし、それによる誤報を低減させます。また、テフロン被覆を施すことによって積雪が少なく、それによる誤動作も低減させます。

2.3 発報動作

トラップ式フェンスセンサは、微弱電流が流れる警報線に設定値以上の引っ張り外力が生じたときに接点が開放して電流オフの警報を発します。詳細を下記に示します。

(1) 警報線への負荷

防犯線に対し直角に2.0kg以上の圧力が加わったとき、または110mm以上の変動があったとき、可動接点が開き警報を発します(図2参照)。また、検知器の軸芯に対し、約11kg以上の張力が加わったとき、または、約6.5mm以上の伸張があったとき警報を発します(図3参照)。

図2 防犯線に対し直角方向に圧力が加わる場合
図3 軸心に沿って水平方向に圧力が加わる場合

(2) 警報線の断線、機器破壊

警報線の断線、機器破壊の場合を図4に示します。

図4 警報線の断線、機器破壊の場合

3. 同軸ケーブル式(マイクロポイント外周監視システム)

3.1 システム概要

本システムは、マイクロポイントケーブル(特殊な同軸ケーブル)を外周フェンスに取り付けることにより、侵入者によるケーブルの切断や乗り越え動作に起因する振動を検出し、正確に侵入位置を特定することができます。

(1) 侵入検出

マイクロポイントはマイクロポイントケーブルを侵入検出のセンサとして侵入時の振動を常時監視し、侵入時のフェンスの振動と、悪天候などによる振動とを区別することができる屋外外周フェンス警備システムです。侵入位置検出精度は3mで特定することができます。

(2) 通信機能

マイクロポイントは侵入を検出するためにプロセッサーモジュール(PM)で侵入箇所の特定の計算処理を行います。PMはシステムの規模に応じて複数個設置を行うことが可能で、PMごとにシステム全体の侵入監視を行います。マイクロポイントは侵入した情報や各機器の情報をユーザーへ伝えるためのインタフェースと各PM間の通信機能を有している。各PM間の通信にはマイクロポイントケーブルを介して行います。

(3) 電力供給

通信機能と同じく各機器の電力供給はマイクロポイントケーブルを通して行われます。電力供給をマイクロポイントケーブルへ1本化できることにより、通信線や電力線の新たな設置コストを削減することができ、マイクロポイントケーブル切断時にはその位置の特定を行うことができます。

3.2 システムの特長及び構成

(1) 特長

本システムの特長について以下に説明します。

  • 1)
    複数同時発生の侵入地点を検出可能
  • 2)
    侵入地点を3m以内に特定可能
  • 3)
    侵入監視エリアを柔軟に設定可能
  • 4)
    侵入時の検出感度レベルの自動補正が可能
  • 5)
    外部接点入出力による赤外線センサ、監視カメラ、サーチライトなどの他設備との連動が可能

(2) システム構成

図5にシステム構成図を示します。

図5 システム構成図

3.3 動作原理

(1) ケーブル構造

マイクロポイントケーブルはRG58U同軸ケーブルに類似しており、軸心の円周部の近くに2本のセンサワイヤーを収容し、このワイヤーはセンサワイヤー用溝と呼ばれるポリエチレンの中に作られた空間の中に無固定の状態で通されています(図6参照)。マイクロポイントケーブルに震動が加えられるとセンサワイヤーの位置が動き、振動を検出するためのセンサとしての役割を果たします。また、PMなどの装置への電力供給、警報用データ通信をするための電源/通信線としての役割も担っています。

図6 マイクロポイントケーブル断面図

(2) 検出動作

マイクロポイントによる侵入検出はTime Domai nReflectometry(TDR)方式を採用しており、TDR方式ではパルスを発信するPULSLOGIC部(図7参照)から発信されたパルスとその反射波との位相差を観測することで侵入を検出します。マイクロポイントの基本的動作は、まず1つのパルスをマイクロポイントケーブルの中心導体とシールドの間に発信し、これによりマイクロポイントケーブル内に電磁界が発生し伝搬します。この伝搬過程において生じたエネルギーは隣接する2本のセンサケーブルへ誘導されます。マイクロポイントケーブルへ振動が加わるとマイクロポイントケーブル内のセンサワイヤーの物理的位置が変化し、受信機に向かって反射波が返されます。パルス伝送した時間から反射を受信するまでの時間差から振動した位置を計算し割り出します。

図7 侵入地点検出概念図

4. 光ファイバー式(侵入監視システム)

4.1 システム概要

光ファイバーケーブルを外周フェンスに張り巡らし、不正侵入時の物理的振動による光ケーブル内のレーザ光のリング干渉で異常を検出し、監視PCへ警報を表示するシステムです。

4.2 システムの特長及び構成

(1) 特長

  • 1)
    不審者の侵入行為をリアルタイムで検知し位置を特定
  • 2)
    最長5kmにわたる区間の監視が、10km離れた監視施設から監視可能
  • 3)
    検出センサは光ケーブルのため、雷サージの影響を受けない
  • 4)
    センサケーブルの施工が簡単で、システム構成が簡略化できる
  • 5)
    外部出力接点により、監視カメラ、サーチライトなどの他設備との連動が可能

(2) システム構成

図8にシステム構成図を示します。

図8 システム構成図
1) 振動検知器

センサケーブルの振動を検知する機器(表3参照)

表3 振動検知器

2) センサケーブル

振動を検知する光ケーブル:SM6芯

4.3 基本原理

光源から出力した光は、分岐結合器(カプラ)で光路1と光路2に分けられそれぞれ光ファイバリングを一周し、再び分岐結合器で干渉光として合波されて、受光素子で検出します。静的な状態では、干渉光強度は一定ですが、光ファイバリング内で振動が発生すると、光ファイバーの屈折率が変動し干渉光強度が変化します(図9参照)。

図9 基本原理

5. 今後の展望

ここでご紹介したシステムは、ユーザーの特性から高い次元での安全性や機密性が求められており、参入各社も、機器の性能向上だけではなく、他システムとの連携で何ができるかなどの提案が活発化しており、トータルセキュリティへの動きが顕在化しています。

最近では、同軸ケーブル式や光ケーブル式の検出精度の向上により、広域エリアで施工コスト高となるトラップ式に比べ、同軸ケーブル式や光ケーブル式を採用する傾向にあります。

今後、弊社では、競合他社と差別化するために、外周フェンスセンサ、入退ゲートシステム、映像監視システム、勤怠管理システムを連携させたトータルセキュリティを提案し市場の開発と拡大を行ってまいります。

参考文献

  • 1)
    「マイクロポイント侵入地点検出システムの紹介」日本通信エレクトロニック株式会社
  • 2)
    「光ファイバ侵入監視システムファイバセキュリティ」株式会社フジクラ
  • 3)
    「セキュリティ関連市場の将来展望」株式会社富士経済

執筆者プロフィール

松田 充功
NECネッツエスアイ
SI&サービス事業本部
ファシリティ&サービス事業部
フィジカルセキュリティ部
システム課長
倉澤 誠治
NECネッツエスアイ
SI&サービス事業本部
ファシリティ&サービス事業部
フィジカルセキュリティ部
主任
高橋 悟
NECネッツエスアイ
SI&サービス事業本部
ファシリティ&サービス事業部
フィジカルセキュリティ部