サイト内の現在位置を表示しています。

サステナビリティをいかに成長機会につなげるか

※本ダイアログは2023年5月に実施しました。

2021年度に新設した「NECサステナビリティ・アドバイザリ・コミッティ」の第4回は、「サステナビリティをいかに成長機会につなげる」をテーマに、CFOの藤川をはじめ、2025中期経営計画における成長事業のアジェンダリーダー4名が参加しました。NECの取り組みに対して社外有識者の皆さまからフィードバックをいただくとともに、サステナビリティを成長機会につなげるために今後意識しなければならないポイントについて、さまざまな角度からの示唆をいただきました。

2025中期経営計画におけるサステナビリティの位置づけ

藤川 2025中期経営計画におけるサステナビリティの位置づけはこれまで、企業価値の算出式(下図)に照らすと、主に資本コストのリスク低減に寄与する取り組みだった。しかし、企業価値向上を目指すのであれば、サステナビリティを機会と捉え、事業成長を加速させるのだという意志もより明確にお伝えする必要があると考えた。そこで、2025中期経営計画の成長事業が解決を目指す社会・環境テーマを「成長マテリアリティ」と位置づけた。これまでのマテリアリティを「基盤マテリアリティ」とし、双方の取り組み状況を追跡して結果を示していくことで企業価値の向上、事業の成長にもつなげたい

NEC 代表取締役
Corporate EVP 兼 CFO 藤川 修
図:マテリアリティ

第5の競争軸としてのサステナビリティ

議長:ピーダーセン氏 サステナビリティを、リスク中心、管理視点での課題として位置づけるだけでなく、事業戦略との融合を強化する方向性については評価できる。
しかし、世の中の変化のスピードは速い。通信インフラの整備など、生活を豊かにするための取り組みにとどまらず、将来想定しうる社会的・環境的な制約も含めて社会課題を捉える必要がある。また今後の企業戦略は企業価値と社会価値双方を最大化することが大前提となる。そうなると、イノベーションの意味も質的に変容する。すなわち、社会的な文脈を前提としたイノベーションでなければ持続的ではない。さらに強いブランドを作るには、QCD(性能的卓越性)のみならず、ソーシャルエクセレンス(社会的卓越性)を示すことが求められる。
従来の競争優位性の4軸、自己変革力、マーケットシェア、価格、品質に加え、第5の競争軸としてサステナビリティ・イノベーションが台頭している。NECが事業を通じてその競争軸をどのように強化できるかが最重要課題ではないか。

NPO法人NELIS 代表理事
ピーター D. ピーダーセン氏

荒井氏 多様なステークホルダーの関心事としてサステナビリティが重要になってきている。企業自体が社会の役に立っていないと、投資家もお客さまもついてこない。企業に対する社会の見方が変わり、拡大している。

NPO法人日本サステナブル
投資フォーラム (JSIF)
会長 荒井 勝氏

ESG投資の進化を受けた、非財務情報開示への要求の厳格化

荒井氏 環境・社会・ガバナンスの側面で、先進的に取り組む企業に投資することがサステナブル投資の始まりだったが、今は取り組みの結果をきちんと計測することが投資家に求められている。そこで投資家も企業に対して、財務情報並みに正確な非財務情報の開示を求めている。また、非財務情報は、企業が行動した結果としての財務情報が、どのように生み出されたかを示すものである。投資家は、非財務の取り組みが財務情報へどの程度還元できているか、そのつながりを確認できる開示内容か否かを見ている。NECのESG説明会を視聴して、NECはそこに真剣に取り組んでいると思った。今後はそのつながり、いかに、より明確に示すかが論点になる。

ピーダーセン氏 財務・非財務に分ける時代は終わったと考えている。戦略・イノベーション・マーケティングが融合していかないと価値は生まれない。

マルチステークホルダーを意識したアクションが求められる背景

永井氏 EUでは、環境だけでなく人権や社会も含むサステナビリティの報告をきちんとしなくてはならないことが決定し、情報開示のプレッシャーが高まっている。ヨーロッパでは、情報開示だけでなく、リスク低減の取り組みを義務化する法案ができた。会社はバリューチェーンの川上から川下まで、どのような環境・人権影響があるのかということを把握したうえで、リスクが大きいところを抑えていかないといけない。
これが出てきた背景には、EUのサステナビリティ関連法案はマルチステークホルダー型だということが挙げられる。シングルステークホルダー的な考え方は、投資家や株主を見ていればよいということだったが、資本主義の考え方が変遷してきている。

BSR
(Business for Social Responsibility)
マネージング・ディレクター
永井 朝子氏

サステナビリティを成長の機会とするには

永井氏 これだけ世の中が変化している中で、今までの延長線上でビジネス機会を作るのではなく、世の中に解決しなくてはいけない社会・環境課題がどれだけあるのか、どのようなものがあるのか、というところから立ち戻って、自分たちに何ができるのかを考えてほしい。
今やっていることをもう少し変えれば社会課題解決に近づけるだろうという考え方をしていると、機会を十分に捉えることができない。社会・環境課題について、どんな課題が具体的にあるのか、理解を深めることで、より大きく社会に貢献できる事業の方向性が見えてくるのではないか。

吉崎 NECの製品・サービス担当として、データセンターを100%再生可能エネルギーで活用して運営する等、カーボンニュートラル達成に向けた取り組みを進めている。こういった活動にESGという視点が加わる事でさらにオポチュニティが増えてビジネスの成長にもつながっていくと感じた。社内外にメッセージを発信していくと加速できるだろう。その際、ターゲットとする時間軸やNEC全体として目指す共通の指標を明確にしたい。

NEC Corporate EVP 兼 CDO
兼 デジタルプラットフォーム
ビジネスユニット長 吉崎 敏文

ピーダーセン氏 2030年から2050年のメガトレンドをバックキャストすると、イノベーションドライバ、法規制、価値観の変化があり、そこに新たな価値のフィールドがある。一方、NECがもつ既存のポートフォリオや強みが進化する方向性もある。サステナビリティは、このバックキャストとフォーキャストが重なり合ったところに存在する新しい価値のフィールドのスパイスである。NECとして、しっかりとした土台の上で、どのようにその価値を編集するか。サステナビリティを成長の機会とするにはそうした議論を深める必要がある。

藤川 過去より財務と非財務の取り組みが連動していないとご指摘を受けていることに対し、今回、2025中期経営計画における成長事業が創出を目指す社会価値を明確に示し、事業戦略とサステナビリティ戦略が離れているわけではないこと、事業計画の必達をとおして社会にも価値創出できると考えていることを改めてお伝えしたいと考えた。
しかし、取り組みは緒に就いたばかりだ。「基盤マテリアリティ」についても、例えば人的資本への投資が結果としてどう企業価値につながるか分析を始めているが、まだ財務指標との連動を十分に確認できていない。
繰り返しになるが、CFOとして、企業価値算出式の各要素に、サステナビリティの観点からも統合的に取り組み、企業価値向上を成し遂げていきたい。それが我々のPurposeで謳う「誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現」につながると考えている。

全体写真
(写真左から)DGDF担当久保および吉田、議長Pedersen氏、永井氏、荒井氏、CFO藤川、グローバル5G担当植松