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OSS貢献活動欧州発のOSS FIWAREのご紹介
こんにちは、NEC 笹野 修平です。
2023年7月21日(金)に開催された 日本OSS推進フォーラム 第4回 定例テック&ビジネス勉強会において、「欧州発のOSS FIWAREのご紹介」と題した発表を行いました。本記事では、この発表内容を基に、FIWARE 概要と、その普及に向けたエコシステムについて紹介します。
私は、NEC のスマートシティ事業部門に所属しながら、FIWARE iHubs (イノベーションハブ) の iHub Base を運営しています。今回は両方の立場から紹介させていただきます。
FIWARE 概要
FIWARE は、EU (欧州連合) の官民連携プログラムによって開発・実証された次世代インターネット基盤ソフトウェアです。図に示したような8つのカテゴリセクターで FIWARE の実証を行いながら、スタートアップの育成や社会・公共分野のアプリケーションを開発し、EU 圏の産業の活性化を図る目的で開発された OSS です。FIWARE の特徴が都市 OS やデータ連携基盤と親和性が高いため、国内では FIWARE はスマートシティの文脈で語られることが多いですが、スマートシティ専用ではありません。
現在(2023年7月時点)は、30ヶ国/300都市で FIWARE が活用されています。FIWARE の普及を推進するドイツの非営利団体の FIWARE Foundation には、45ヶ国/600以上のメンバが参加しています。日本からは、NEC がプラチナメンバとして参画しており、他にも図に示したような企業・団体がメンバになっています。
世界各国では、交通、教育、観光などの分野で FIWARE と連携可能な1,000以上の様々なサービスが創出されています。このようなサービスについては、FIWARE Marketplace で公開されていますので、ご覧ください。
次に、FIWARE には、相互運用性、データ流通、拡張容易の3つ特徴があります。これらの特徴が、スマートシティにおけるデータ連携基盤の要件に合致し、国内ではスマートシティの文脈で FIWARE が語られることが多い背景となっています。
FIWARE 普及に向けたエコシステム
FIWARE は2011年から EU の官民連携プログラムで開発が始まりましたが、その出口戦略として、2016年に FIWARE Foundation が民間主導で設立されました。設立メンバは、Atos (フランス)、Engineering (イタリア)、Orange (フランス)、Telefonica (スペイン)です。また、FIWARE Foundation は FIWARE を世界に広げていくにあたり、いくつかのプログラムを実施しており、そのひとつに FIWARE iHubs があります。
FIWARE iHubs は、”Think Global, Act Local” というスローガンを掲げています。これは、世界中でどんなことが起こっているかを理解したうえで、各地域で各自の活動を行うという意味です。iHub メンバが中心となり、地域のステークホルダーの方々を巻き込んで、共創活動の拠点になることを目指しています。iHub は、FIWARE 利用者コミュティであり、FIWARE 技術への容易なアクセスを提供し、ビジネス開発をサポートします。
現在(2023年7月時点)は、世界中で39の FIWARE iHubs が活動しています。ヨーロッパ地域に多く設置され、特にスペインやドイツには1つの国の中に複数の iHub が設置されています。また、北米、南米、アフリカ等でも iHub が設置されており、国の枠を超えた iHub 同士の連携も進んでいます。iHub Base は、国内唯一の iHub です。
次に、代表的な iHub を2つ紹介します。ASTRID iHUB はドイツのヴォルフスブルクにある iHub です。ヴォルフスブルクは、フォルクスワーゲンの本社がある町で、この iHub は、自治体が出資する公共サービス事業者であるシュタットベルケ・ヴォルフスブルクのグループ企業が運営しており、日本で言うと自治体のスマートシティ推進室やデジタル戦略室のような役割を担い、町のデジタル化を進めています。
この iHub では、市民向けのスマホアプリを作っており、町にあるガソリンスタンドや学校の位置や関連情報が分かります。図の左から二枚目と真ん中の画面では、バスのロケーション情報も分かり、バスの運行状況がリアルタイムで表示されます。市民は自分が乗りたいバスの時刻表を調べたり、運行状況を確認できたりします。図の一番右側は、電気自動車の充電ステーションを表しています。ドイツは電気自動車の普及率が30%程度で、町のいたるところに充電ステーションがあるのですが、充電ソケットの形状が4,5種類あります。このアプリでは、充電ステーションの位置に加えて、充電ソケットの情報や使用状況についても確認できます。
次に、スペインのウエルバという港町にある iHub では、港湾業務のデジタル化を推進しています。iHub のオフィスは、魚の競りを行う魚市場の2階にあります。
この iHub では、港湾業務のデジタル化やサービス開発に取り組む企業やスタートアップに対して、無償でオフィスを貸し出したり、アイデアを1階の魚市場で試したりする環境を提供しています。これらの企業やスタートアップ等がアイデアを実現するにあたり、地元の有識者、企業、大学の先生、メンター等とマッチングさせて、ビジネスの立ち上げも支援しています。
最後に、FIWARE 関連の事例情報を紹介します。25ヵ国125都市135ソリューションの事例をまとめた小冊子「FIWARE4Cities」が FIWARE Foundation から公開されており、ダウンロードできます。また、Web サイトでは、FIWARE Impact Stories として、スマートシティに加えて、さまざまな分野での FIWARE の活用例が紹介されています。こちらの事例では、FIWARE の利点やシステム構成等も解説されています。是非、ご覧ください。
執筆者
笹野 修平 (Sasano Shuhei)
iHub Base General Community Manager
日本電気 (NEC Corporation) スマートシティ事業部門 スマートシティ共創統括部 主任
テクノロジー活用による地域課題解決と、持続可能なビジネス創出に自身の情熱を見いだし、様々な立場から地域課題解決に向け取り組む方々と対話を重ねた経験が現職を志すきっかけとなる。NEC にて、スマートシティの社会実装に向けたエコシステム形成や、国内で FIWARE 普及を目的としたコミュニティ活動に従事。2022年5月にアジア初の FIWARE イノベーションハブとして iHub Base を設立。(2023年7月時点の情報)