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OSS貢献活動[講演] OSSの状況を把握するための方法論 (Open Source Summit Japan 2021)
2022年4月20日公開
2021年12月14日(火)~15日(水)にオンラインで開催された「Open Source Summit Japan 2021」において、NEC 岩見 紫乃が「Methodologies to Grasp Overviews of OSS as Open Source Program Offices」(OSSの状況を把握するための方法論) と題した講演を実施し、58名の方にご参加いただきました。本記事ではこの発表の概要についてご紹介します。
Open Source Summit Japanは、Linux Foundationが日本で開催する大規模なカンファレンスで、オープンソース エコシステムが一堂に会します。技術者やオープンソース リーダー企業が、コラボレーションと情報共有のために、そして最新のオープンソース技術を学ぶために、あるいは革新的なオープン ソリューションを使った競争力の付け方を見つけるために集結します。Open Source Summit Japan 2021には、同時開催のAutomotive Linux Summitを含め、約430名、約30カ国から参加者がありました。
タイトル:「Methodologies to Grasp Overviews of OSS as Open Source Program Offices」
講演動画:YouTube - https://youtu.be/mgRVae00kiY
発表では、オープンソース プログラム オフィス の活動のうち、OSSの状況を把握するための計量分析を紹介しました。最初に、本取り組みにおけるスコープを俯瞰した考え方を説明しました。次に、社会や技術のトレンド、および、競合トレンドの観点から個別の分析方法について紹介しました。
本取り組みにおけるスコープ
3C分析の応用として、(A)OSSの外である社会や技術のトレンド、(B)OSSのトレンド、(C)自組織のトレンド、(D)競合組織のトレンドを把握すべきと述べました。3C分析は、顧客(Customer)、自組織(Company)、競合(Competitor)の3者の状況を分析する枠組みではありますが、OSSにおいては、OSSコミュニティは3C分析の3者の全ての立場を包含するため、分析すべきは4者の状況であるとして、下図のように分析の枠組みを提案しました。
OSSの外である社会や技術のトレンド
「(A)OSSの外である社会や技術のトレンド」の分析の一つとして、フラッグシップ・イベントのキーノートより、自然言語処理を用いて、最近の技術トレンドを抽出する手法を紹介しました。結果として、AIやクラウド等の一般的なトピックの他、ドローンやスポーツといった最新のトピックを提示しました。また、トピックにはCOVID-19の影響が見られ、加えて、自動車産業から電気自動車関連のトピックを提示しました。
競合組織のトレンド その1
「(D)競合組織のトレンド」の分析の一つとして、Microsoft Academic Knowledge APIから、27トピックに関する論文の共著ネットワークを形成することで、組織間の協力関係を抽出する手法を紹介しました。トピックと論文の紐づけは、Microsoft Academic Knowledgeで準備されている設定を使用しました。結果として、authenticationやdata scienceというトピックでは、数少ない組織が研究のシェアを占める寡占状態を図示しました。また、Blockchainは、寡占状態の手前ではありますが、産業界からIBMやAlibaba Groupが注力している状況を提示しました。
競合組織のトレンド その2
「(D)競合組織のトレンド」の別の分析として、Clarivate Analytics社が提供するWeb of Scienceから、Securityに関する論文の引用ネットワークを形成することで、セキュリティに関する分野の特定し、および、各国の強みと弱みを把握する手法を紹介しました。OSSと限定しなかった(限定できなかった)ことで、セキュリティに関する「(A)OSSの外である社会や技術のトレンド」の分析の紹介ともなりました。結果の一例として、日本はEnergy Securityに強みがあるため、これら技術の海外輸出に強みがあるとの考察を紹介しました。
今回の発表では、社会と技術のトレンドに関する1つの分析と、競合他社に関する2つの分析をご紹介しましたが、今後も新たな分析を提示していきます。
講演者
岩見 紫乃 (Shino Iwami)
日本電気 (NEC Corporation)
工学博士、CISSP。OSSへの関わりを、データ・ドリブンで判断するための調査・分析と、そのシステム化を行っています。それら調査・分析の結果を題材に、NECのOSSにおける知名度を向上すべく、Open Source Summit JapanやIEEE IEEM等の産学の国際イベントで講演者を務めています。また、国際イベントの座長や査読委員を担当することもあります。(2022年9月時点の情報)