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ものづくりDXソリューションのご紹介

ものづくりDX最新事例セミナーレポート③【2024.04.17】

カテゴリ:DX・業務改革推進生産技術・製造スマートファクトリー(IoT基盤/AI)

【目次】

前章では宮辻の講演で、DXの加速に向けて「ものづくりデータ基盤」が必要とご説明いたしました。ここでは、そこに求められる役割について、「ファクトをつかむ」と「データ5S」の2点に絞ってご説明します。

NEC スマートインダストリー統括部 ディレクター 大石和人

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ものづくりデータ基盤の役割その1:ファクトをつかむ

ERP・MESとデータ基盤

NEC スマートインダストリー統括部 ディレクター 大石和人
NEC スマートインダストリー統括部 ディレクター 大石 和人

製造業を取り巻く外部環境の変化やリスクについては何度も触れてきましたが、マクロ、ミクロの視点で様々な変化が起こっています。その変化は今後より大きくなり、頻度も高まることが見込まれる状況です。そこで事業を継続、拡大させていくには、アジリティや変動対応力の強化が求められます。その際にいかに事実を的確に掴み対応していけるかが肝要で、そこにものづくりデータ基盤への期待が高まっていると言えます。

お客様にこのものづくりデータ基盤についてお話させていただくと、よく「ERPやMESを既に持っている。これを強化すればいいのではないか」と言われます。
あるいは、「新たに投資してデータ基盤を作るのは本当に必要なのか」とお悩みの企業も多いと感じます。

これに対して、我々は「別物なのでどちらも必要です」とお答えしています。両者は目的が異なるので、それを支える仕組みの特性も異なるからです。
具体的にご説明します。図の左側のERP・MESは、ISA‐95のオートメーションピラミッドの図を借用しています。ERPは一番上のレベル4、MESはその下のレベル3に位置付けられます。これらの役割は、業務オペレーションを支え、その証跡を記録していくこと。その実行は計画や指示に基づいて行われるので、そこで扱われるデータは計画や指示に適した粒度で持っていることが大きな特徴です。

一方、右側のものづくりデータ基盤であるNEC Industrial IoT Platform(NIP)。こちらは一連のものづくりプロセスの瞬間に起こっている事実や事象を捉えるもので、粒度は比較的小さくなるところが特徴です。また、左側の階層構造と違って、階層を超えていろいろな情報を複合的に結びつけて活用していくところも大きな特徴です。

ファクトの把握に関する4つの観点

4つの観点で整理をしました。
1つ目のデータ活用のねらいとしては、ERPやMESは、各現場業務のプロセスやオペレーションを円滑に回し、しっかり記録を残していくところにあります。ものづくりデータ基盤は、いかにデータを使って意思決定をしていくか、あるいは新たな価値を創出していくかに大きなねらいがあります。

2つ目、マネジメントの特性では、ERPやMES上では、計画や指示を起点に、PDCAサイクルにより動いていきます。一方、ものづくりデータ基盤は事実・事象を起点としたOODAループのマネジメントスタイルになります。

3つ目のシステム特性。ERPやMESはSoRの仕組みです。計画や指示は1件1件出され、それに対して実績を登録、あるいは更新をかけていくので、小さな処理が同時並行で多数実行されます。そういう処理を得意とすることがシステムに求められる特性です。
一方、ものづくりデータ基盤は、SoI、つまりデータから洞察をしていくための仕組みです。処理の特性としては、蓄積された大量のデータの中から、いろいろな関連性を持ちながら高速に抽出していくこと。これを得意とするシステムが求められます。

4つ目のデータ特性。扱われるデータの粒度は、一般的にはERPやMESの方が比較的粗く、ものづくりデータ基盤の方が細かいという違いがあります。

ファクトデータで見えるもの

これらの仕組みは、どちらが優れているというわけでなく、ますます変化のスピードや頻度が増す中で、両方が必要で、PDCAサイクルとOODAループをうまく繋いで円滑に回し、事業運営をしていく必要性が増してきていると考えます。

そこで、ERPの情報に対してファクトのデータが加わるとどんなものが見えてくるのか、簡単に見てみます。

図はものづくりの一連のプロセスで、左から右に時間軸で流れています。例えば、生産管理システム上では、着手実績から完了実績の間はものづくりをしていた時間として記録されています。
ここに事実の情報を重ね合わせてみると、正味の付加価値時間の間に、圧倒的に多くの隙間があることが見えてきます。それが非付加価値時間です。事実を重ねることによって、従来では見えていなかった潜在的な情報が浮かび上がってきます。

例えば、システムへの入力作業をしてから実作業に移るまでの間にタイムラグがあったり、ものづくりをしていると記録されているもののその間に電話対応をして現場を離れたという隙間があったりします。また、後工程の手前で2、3日滞留していた、などということが起こっていたりする。こういった事象をしっかり捉えて手を打っていくことが必要になるのです。

これにより、さまざまな効果が期待できます。コスト削減はもちろん、生産能力の向上に繋がります。単純計算で3分の1を削れば生産能力は1.5倍に、半分に削れば2倍に、現状の設備と人で実現できることになります。市場競争力が強化されるだけでなく、労働環境の改善にも繋がります。
経営目線では、圧縮できた分だけ回転率が上がり、キャッシュフローが改善し、ROICも向上するということになります。

さらに、非付加価値時間にもエネルギーを使っています。高騰するエネルギーコストの削減効果も大きいですし、これからのESG投資の時代において、市場からの資金調達の側面での優位性にも繋がります。

ものづくりデータ基盤の役割その2:データの5S

5Mデータモデル

次に、ものづくりデータ基盤の役割の2点目、データの5Sについて。
お客様からよくいただく声として、「データを集めているがどう活用していいのかわからない」「なかなか現場で使ってもらえない」というものがあります。これに対して大事なのが、生産現場と同様に、データにも「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が非常に重要であるということです。
そこで、そうしたポイントをNEC Industrial IoT Platform にも工夫して織り込みました。その特徴として、大きく3つのポイントがあります。

1つ目、5Mのデータモデル。製造業において、一般的に分析や管理が必要な情報が5Mとしてモデル化されています。これによって、標準化やスピードアップが実現できます。

共通言語、共通の物差しで標準化し、共通のルールに基づいてデータを整理整頓して格納できます。これによって利活用のスピードが速まります。組織を横断すると方言が違って使えない、使いづらいといった従来の課題に対して、共通言語で登録されていることで、短期間で横断的にデータ活用が進み、データの民主化が加速できることが期待されます。

2つ目のポイント、データパイプラインです。単純に集めてきただけでは、データは構造や粒度が異なります。下処理として、一次加工をする仕掛けを通して、一貫性を持たせた形で、5Mのデータモデルにデータを格納することができます。NEC Industrial IoT Platformには、この一連の処理をデータパイプラインという形で標準実装しています。これによって標準化、高品質が実現できることがポイントです。

品質面としては、ルール化された仕組みでデータが格納されるので、一定水準のデータの質が維持できる。データの質がよいということは、実際にデータの分析や利活用のシーンでも、生産性が上がり、品質も向上していく好循環に繋がります。

“5合目"からの内製化

3つ目のポイントは、内製化です。内製化は、自分たちで考え、そこに思いを込め、しっかり磨き続け、そして継承していくという点で非常に大事だと考えています。
一方で、1から10まで全部内製するのも大変です。そこで、NECでは自らがいろいろと失敗した教訓や工夫してきたものを織り込んだ基盤をご提供しています。それを最大活用いただいて、その上に限られた優秀な人的リソースを集中投下し、内製として独自に価値を作り込んでいただきたいと願っております。

それを強力に後押しするものが「ものづくりDX改善ガイド」です。製造業における「あるある」のデータ活用シナリオをレシピ化してご提供するものです。改善シナリオは二十数種類をご用意しています。実際にそのまま使っていただける画面テンプレートと各種ガイド類をセットでご提供します。

これによってスピードと継続性を実現していこうというものです。スピードの面では、まずこの出来上がっているツールを使ってスタートできるということ。もちろん、山登りをするのに麓から登るのも醍醐味でしょうが、このハイスピードで変化する時代において、5号目まではこれを使ってショートカットし、登頂していただきたいと考えています。

継続性の観点では、それぞれの現場の方々が「これなら使える」といった状態になって初めて定着化します。それによって本当に意思決定に資するだけのデータの質がキープできる。そこで、こうした好循環を生み出すためにも、しっかりこうした「あるある」のノウハウを詰め込んだツールを使っていただき、育て、拡張し、磨き続けていくことで、継続的かつ自律的なデータドリブンの活動が進んでいくものと考えています。

NEC Industrial IoT Platform の全体概観は図のとおりです。中央のNEC Industrial IoT Platformは、配置の柔軟性も加味して3層構造で構えています。一番下に一連のものづくりのプロセスがあります。設備だけではなく、人やモノ、ロボットなどのファクトを5Mのデータモデルにしっかりと格納します。
そして左側の基幹システムの情報とも突き合わせながら、右側の利活用しやすい状態のものをうまく使って、継続的なデータドリブンでの改善活動やそこからの価値創出に繋げていただく。そして、皆様のものづくりDXを強力にサポートできるものと考えています。

最新技術の活用事例と今後の展望

ここまで、NEC Industrial IoT Platformの特徴やデータ基盤に求められるポイントをご紹介してきましたが、少し未来に目を向けていきたいと思います。

NECが考える“ものづくりのデジタル化”の方向性について、いろいろとお話ししてきました。キーワードは、やはり「繋ぐ」「繋がる」ということです。
従来、製造業は高度に専門化、分業化が進んだ個別組織の集合体という状態になっていると考えています。2030年の状態では、自社内はもちろん、サプライチェーンを形成する企業間だけでなく新たなバリューチェーンが生まれてくる。その中に消費者個人や新たなプレイヤーを巻き込んで、サイバー空間で繋がる。そんな関係の中で物事が進んでいく世界観をイメージしています。

最新技術の活用事例

そんな中で、AIを初めとしたテクノロジーの劇的な進化も相まって、高度なものづくりがどんどん進んでいくと考えています。既に始まっている最新技術の活用事例についてご紹介したいと思います。

1つ目は「dotData」。膨大なデータや多数のデータセットの中から特徴量を見つけるという非常に大変な作業や、機械学習にかけるまでの一連のプロセスを完全自動化していくAIプラットフォームです。横浜ゴム様は、それを生産プロセスの改善に適用して効果を生み出しています。

量子アニーリングを使った事例として、NECグループのハードウェア保守事業を中心に担っているNECフィールディングが保守部品の配送効率を最大化させるべく、非常に膨大なパラメータの組み合わせから配送効率を上げている事例です。

さらに、注目を集めている生成AI、Large Language Models(LLM)を使ったものとして、動画から説明文書を自動生成するという世界初の技術です。ドライブレコーダーの交通事故の映像から特徴を拾って、どういう経緯でどういうことが起こったのかを説明する短縮動画と文書が作成できるところまできています。

そうした生成AI(LLM)ですが、NECも独自に「cotomi」というソリューションを開発しました。2024年の春からサービス提供を開始し、注目度も高くて引き合いを多数いただいている状況です。特徴は、軽量であること。大規模言語モデルはそれなりの規模となりますが、小さくすることができ、それぞれ個別の環境が作りやすくなったところがポイントです。

皆さんも秘匿性の高い情報、個社ごとのノウハウをお持ちだと思います。そういうものがなかなか使えなかったところに対して、個別に作れる世界が近づいたということです。今後の進化にぜひご期待いただければと思っています。

最後に、NECが考える将来の世界観についてです。リアルとバーチャルが融合した形で、デジタルを大前提とした形で社会・経済活動が行われる時代にシフトすると考えています。
NECは、長年にわたって生産革新を進めてきたものづくりのDNAを土台として、その上にものづくりデータ基盤を中核とした最新のテクノロジーを掛け合わせて、こうした世界をしっかり作っていくことに貢献していきたいと考えています。
また、データの価値がますます高まっている中で、サイバーセキュリティやデータの信頼性を確保し、安心安全にデータを活用いただける世界を作っていきたいと考えています。

この先も継続的に皆様のパートナーとして、今日ご紹介した内容をもって皆様の事業拡大や事業変革に貢献をしていきたいと考えています。そして、やはり我々製造業がこれからの明るく楽しい、本当にわくわくするような未来づくりにぜひ一緒に取り組んでいきたいと思っております。

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