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顧客視点の“体験”を向上させる「CX」変革とは
~デジタル技術をフル活用、顧客を熱心なファンに~
マーケティングの世界でしばしば耳にする言葉「CX」。“Customer Experience”の略語で、日本語に訳すと「顧客体験」となります。その名の通り、顧客が自社の商品・サービスに初めて興味を持つことから始まる一連の“体験”と、それに基づく顧客にとっての価値に焦点を当てる考え方です。顧客がさまざまな接点を通じて自社の商品・サービスに出会い、情報収集・比較検討の上で実際に購入し、さらに購入後にアフターサポートを受けるまで、顧客のあらゆる体験をカバーします。
CXを向上させるにはデジタル技術の活用が有効であり、企業のDXと相まった取り組みがCX向上によるマーケティング変革につながると言われています。
デジタル時代、多様化する顧客接点
CXが注目されるようになった背景には、消費者の購買行動の変化があります。少し前の時代までは、製品の機能や性能、価格の違いなどモノ自体の価値が消費者の選定を左右していました。しかし消費社会が成熟し、巷にモノが溢れ返るようになった今日では製品ごとの機能や性能、価格に大きな差が見られなくなり、企業もこれらの要素だけで差別化を図るのが難しくなってきました。
そこでモノやサービスだけではなく、それらの購入の検討から購入、利用に至る一連の体験を通じて「顧客の感情にどのような変化を生じさせるか」という点に着目したCXの考え方が注目を集めるようになりました。
このようなマーケティング手法が重視されるようになったもう1つの背景として、企業と顧客を結ぶ接点がデジタル化され、多様化したことが挙げられます。以前は顧客が企業の製品・サービスと触れる場は、リアルな実店舗にほぼ限られていました。ところがECやSNSといったデジタルの顧客接点が急速に台頭した結果、多くの消費者はさまざまなデジタルのチャネルを通じて製品・サービスの情報を収集し、製品・サービスを購入することが当たり前になっています。
こうして実店舗に加えてデジタルの顧客接点が多数生まれたことにより、企業はリアルとデジタルにまたがる多様な顧客体験をどのように組み合わせるべきかという課題に直面することになりました。そして、すべての接点にわたって効果的かつ一貫した顧客体験を提供するため、“個”に寄り添ったCX変革の実現が求められているのです。
さらには近年におけるサブスクリプション型のビジネスモデルの台頭も、CXに注目が集まる要因の1つになっています。サブスクリプション型ビジネスは製品・サービスを長く利用し続けてもらうことを目的としたビジネスモデルであるため、優れた顧客体験を継続的に提供するための取り組みが重要です。近年、顧客に製品・サービスをより効果的に利用してもらうための支援を提供する「カスタマーサクセス」の考え方も、CXの取り組みの一環だと言えるでしょう。
CXに取り組むための具体的な施策とは?
CXの具体的な取り組みを検討する際に重要なキーとなるのが、「5つの経験領域」と呼ばれる考え方です。これは顧客体験の価値を「Sense(感覚的)」「Feel(情緒的)」「Think(認知的)」「Act(行動的)」「Relate(社会的)」という5つの領域に分類し、それぞれにおいて効果的な施策を検討・実施するというものです。
並行して、よく利用されるフレームワークに「カスタマージャーニー(Customer Journey)」があります。一度限りの顧客体験を提供するだけではなく、ある顧客体験を提供した顧客にどのような感情的な変化が生じ、それが次にどのような顧客体験へとつながっていくかという“時間軸の連なり”に着目した考え方です。
例えば、購入前の段階にいる顧客が偶然ネット広告を見て製品に興味を持ち、次に製品サイトを訪れて情報を収集し、その後購入に至った後に評価や口コミをSNSに投稿するといった流れはよく見られます。そこで、カスタマージャーニーでは顧客が複数段階の体験を時間軸に沿って旅する(ジャーニー)することで製品の購買だけでなく、製品や自社の熱心なファンにまでなってくれることまでを想定し、一連の顧客体験をデザインします。
そのためには現在の商品・サービスにどのような顧客接点があるかをまず洗い出し、それらをカスタマージャーニーに沿って時系列に整理した上で、それぞれに対応する顧客の思考・感情プロセスを細分化していきます。こうした施策のことを「カスタマージャーニー・マップ」と呼びます。多種多様な顧客接点を一元的に整理し、具体的な施策を検討する上で極めて有効な手法となります。
ただしこうした施策を推進していくためには、それぞれの顧客接点を担う部門同士が組織の垣根を越えて協力し合う必要があります。またCXは一度施策を実行すれば終わりというわけではなく、常に実施状況をモニタリングしながらPDCAサイクルを回し、打ち手を継続的に改善していく必要があります。したがって真に実効性のあるCXを実現するためには、その運用体制やプロセス作りも重要になってきます。
モバイルアプリ、AI活用などDXとも歩調

先に述べたように、CXが近年あらためて注目されるようになった背景には、デジタルの顧客接点が広く普及してきたことがあります。特にコロナ禍でいわゆる「ステイホーム」を余儀なくされた時期にデジタルの接点を通じた消費活動が一気に活発化したことも、こうした傾向に一層拍車を掛けました。
このようなデジタルの顧客接点における顧客体験をモニタリング・評価するためには、データ分析の技術が不可欠となります。同時に、CXを実現するには複数の顧客接点にまたがってデータを収集・分析し、カスタマージャーニーのシナリオを前提に施策を評価・改善していく必要があります。
こうした取り組みを実施するに当たっては、データ活用基盤やMA(Marketing Automation)といったデジタル技術の活用が有効となります。また近年ではAI(人工知能)カメラの画像認識技術やIoTデバイスなどを用いて、実店舗での顧客体験もデータとして収集・活用できる仕組みも整ってきています。CXの効果を最大限に発揮させるためには、これらの各種デジタル技術を最適な形で組み合わせることはもちろん、全社レベルでのIT投資計画やシステム戦略、さらにDX推進の観点に沿って進めていくことが望まれます。
すでに数多くの企業がDXの一環として、デジタル技術をフル活用したCXの施策を手掛けています。例えばスターバックスはモバイルアプリを通じた会員プログラムやモバイルオーダーのサービスなど、デジタルを通じた新たなCXの提供にいち早く取り組み、大きな成果につなげました。同様の施策は業界を問わずさまざまな形で進められています。特にモバイルアプリは顧客への情報発信やインセンティブの提供と同時に、多様な顧客データを収集して顧客体験の改善に生かせる仕組みとして、多くの企業がCX施策の中核に据えています。
また、ユニクロではオンラインストアで商品やコーディネートを提案したり、返品・交換の問い合わせに対応したりするAIチャットボットを導入し、デジタル接点において魅力的な顧客体験を提供する取り組みを行っています。今後ChatGPTのような生成AIの技術を取り入れることで、顧客体験がより充実し、消費者を一層引きつけていく形になることが期待されています。
デジタルはあくまでの手段の1つ
ただし、デジタル技術はあくまでもCXを実現するための手段の1つにすぎません。DXの文脈でCXを捉えるとき、どうしてもデジタルの導入が目的化してしまい、本来の目的であるCXのゴールが忘れられがちです。デジタルに偏重しすぎるあまり、CXとデジタルが本末転倒に陥らないよう注意しなければいけません。デジタル以外の手段ともうまく併用・連携することによって、あらゆる顧客接点をまたがるシームレスな顧客体験の提供を目指すべきでしょう。
そのためには、デジタルだけでなくリアルの顧客接点も含めた総合的なCXの取り組みを支援できるパートナーの存在が助けになります。NECでは、顧客戦略の策定から、戦術を支えるさまざまなソリューションの導入・活用支援・改善まで、CX変革を一気通貫で支援します。DXだけでなくCXも一緒に支援できるパートナーをお探しの際には、ぜひご検討いただければ幸いです。
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