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Japan
デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するためには「データ活用」が重要な鍵を握ると言われています。大量のデータを的確かつ高速に分析することにより、顧客の潜在的なニーズを素早く把握したり、市場の変化をいち早く察知したりすることが可能になり、さらには革新的な製品・サービスやビジネスモデルの実現につなげることもできるからです。しかしデータは単に大量にかき集めればいいというわけではありません。データから真の価値を引き出すためには、データを適切に管理・活用するための「データマネジメント」の取り組みが不可欠です。
デジタル時代における企業経営を考える上で、データ活用は決して外すことのできない重要な要素です。事業環境が激しく変化する現代において、DXによってイノベーション創出を目指し、競合他社に先駆けて適切な打ち手を打つためには、データを基にマーケットを正確かつ迅速に把握しなくてはなりません。
かつては、企業が過去の経験則を基に「これは価値がある」と判断した製品を開発し、その魅力を宣伝すればモノは順調に売れました。しかし世の中にモノが行き渡ってコモディティ化し、ニーズの多様化も進む現代においては、製品やサービスの価値判断は消費者の側に委ねられています。企業は「顧客は何を求めているのか」を知るためにさまざまなデータを集め、それらを分析した客観的な結果を基に適切な経営判断を下さなくてはなりません。このような経営手法を「データドリブン経営」と呼び、現在多くの企業から高い注目を集めています。
ビジネスにおけるデータ活用の重要性は以前から指摘されていました。会計や人事・給与といったバックオフィス業務の分野では、かつてはメインフレームでデータを集中管理して活用してきました。その後、UNIXやPCサーバを使ったオープンアーキテクチャが主流になって以降も、ERP(統合基幹業務システム)のデータベースに業務データを集約して経営判断に積極的に活用する仕組みが広く普及しました。
しかし現在ではバックオフィス業務だけに留まらず、営業やマーケティング、さらには経営における意思決定に至るまで、あらゆる業務においてデータ活用・分析ニーズが急増しており、そのための新たな仕組みの構築が日本の企業にとって喫緊の課題となっています。NECソリューションイノベータが2021年に実施した調査「データ活用・DX推進に関する調査レポート」によれば、BI(ビジネスインテリジェンス)やAI(人工知能)によるデータ活用の実施意向を持つ企業の数に比べて、実際に活用している企業の数は明らかに少ないことが分かりました。データ活用の理想と現実の間の大きなギャップは、今も多くの企業を悩ませています。
このようなギャップを解消し、データ活用を促進するための適切なデータ管理の環境や体制、プロセスを構築・運用する取り組み全般のことを「データマネジメント」と呼び、現在多くの企業が積極的に取り組み始めています。
企業がデータ活用を始めるにあたって、具体的にどのような課題に直面することが多いでしょうか。まず第一に、企業が扱うべきデータの量や種類が爆発的に増えていることが挙げられます。企業のデジタル化が進むに伴ってさまざまな業務システムが新たに導入され、それぞれでデータを扱うようになりました。手軽に業務システムを導入できるSaaS型アプリケーションの普及も、こうした傾向にさらに拍車を掛けています。
もう1つの大きな問題が、「データのサイロ化」の問題です。各業務で個別にシステムを導入していった結果、システムごとに独自フォーマットでデータが管理されるようになりました。その結果、いざ社内に存在するすべてのデータを束ねて分析しようと思っても、それぞれフォーマットが異なり、かつ重複する内容を含むデータを統合的に扱えないという問題が生じました。先に挙げたNECソリューションイノベータの調査でも、データ活用・DX推進する際の課題として「データが一元化されていない」「分析できる状態にデータが整備されていない」が最も多く挙げられています。
AIを活用する際にも、AIに学習させるデータの質が悪いとなかなか予測精度が上がらないため、学習データを適切に選別・加工する取り組みが重要になってきます。加えて、欧州におけるGDPR(General Data Protection Regulation)や米国カリフォルニア州のCCPA(California Consumer Privacy Act)、国内の改正個人情報保護法など、プライバシーデータの利用規制が各国で進んでおり、企業側もこれらに抵触しないようデータを適切に管理するための「データガバナンス」の仕組みが求められるようになっています。
では、前述のような課題をクリアし、データマネジメントに取り組むためのアプローチを考えていきましょう。まず、社内で利用されているさまざまなシステム・アプリケーションからデータを収集し、統合的に管理できるデータ基盤を構築する必要があります。具体的な方法としては、大量のデータを分析に適した形で保管できる「データウェアハウス」や「データレイク」の構築が有効です。またこうして集めたデータを分析するための「BIツール」も欠かせない技術要素の1つです。
一方、これらの「道具」をいくら揃えても、それらを使いこなすための体制やプロセスが整っていなければ「宝の持ち腐れ」です。全社レベルでデータを集約して活用するためには、組織の壁を超えてデータマネジメントを促進する全社横断型の専門組織「データマネジメントオフィス(DMO)」の設置が有効です。
またせっかく組織の入れ物を用意しても、そこにデータ分析を企画・実行できる“人”がいなくては意味がありませんから、人材育成の施策も極めて重要です。データ分析の高度な知見を持つデータサイエンティストはもちろん、経営の一員として全社のデータ活用を率いる「チーフデータオフィサー(CDO)」や、業務現場でデータの管理・活用を推進する「データスチュワード」など、さまざまな役割を持つ人材を育成して配置する必要があります。
なおデータマネジメントのガイドラインとしては、DAMA(Data Management Association International)が編纂した「DMBOK(Data Management Body of Knowledge)」がスタンダードだと言われています。国内では日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)がデータマネジメントに関してさまざまな情報発信を行っており、データマネジメントの全体像と具体策を押さえる上で有益な情報源です。
データマネジメントの構想や計画を立案する際には、まずは「データを使って何をしたいのか」「データ活用で将来どういう企業を目指すのか」という理想像(To Be)を描き、自社の現状(As Is)とのギャップを把握した上で、To Beからバックキャストする形で具体的な施策に落とし込んでいくことをお勧めします。その際には、将来状況が変わった際に計画を柔軟に軌道修正できるよう、社内に存在するデータをカタログ化して誰もが容易に把握できる仕組みを整えることや、特定ベンダーの製品・技術にロックインされないアーキテクチャを採用するといった備えも必要です。
データマネジメントに対する経営の強いコミットメントは不可欠です。DX時代においては、データマネジメントはもはやIT部門レベルの施策ではなく、重要な経営戦略の1つと認識すべきです。そのため、CDOなどの役職を設けて、データマネジメントをトップダウンで強力に推進する体制作りが求められます。
最後に、データマネジメントに必要な体制づくりへ向けては、豊富な知見とノウハウを持つ外部のパートナー企業の支援を検討することも有効でしょう。特に初期段階のうちに、データ活用の体制・プロセスの構築支援からシステムの実装・運用に至る広範な知見と経験を持つパートナーと組み、共同作業を通じてノウハウを吸収しながら自社の人材を育成していくことをお勧めします。
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