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Japan
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今日、多くの日本企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性を認識し、その具体的な取り組みを始めています。しかし実際にはさまざまな課題に阻まれて、思うように成果を上げるに至っていないケースが少なくありません。DXを推進する上で直面する壁として、必ずと言っていいほど挙げられるのが「人材」の問題です。実に多くの企業がDX停滞の原因として「DX/デジタル人材の不足」を挙げているのが実情です。企業がDXを実現するために、その推進あるいは実行を担うDX/デジタル人材をどう確保していけばよいのでしょうか、
総務省が2022年7月に公開した「令和4年版情報通信白書」によれば、DXを進める際の課題として「人材不足」を挙げる企業が全体の7割近くに達しており、海外と比べると突出して高い値となっています。ただし、人材不足の問題は、いま急に降って湧いたものではありません。IT投資の後れや、IT人材についても社内より社外のリソースに頼りがちだったという日本企業のこれまでの傾向もあって、喫緊の課題として以前からも指摘されていました。
ここへ来て、社会やビジネスのデジタル化が急速に進展し、企業が成長するためにはデジタライゼーションやDXへ向けて自らの変革が不可欠であると認識されるようになりました。そこで、人材不足の問題が一気に表面化することになったのです。
「DX/デジタル人材」の実像は、全社的なDXの取り組みを率いるリーダー人材だけではありません。部門ないしグループ単位でデジタル技術を積極的に活用して業務効率化を進めたり、新規ビジネス創出に挑んだりする現場リーダーや一般社員まで、さまざまな立場の人が該当します。「DX人材」と「デジタル人材」は多くの場合あまり厳密な区別はなく、ほぼ同じ意味で使われているようです。あえて相違点を挙げるとすれば、デジタル人材はデジタル技術に長けた人材のことを広く指すのに対して、DX人材はそれに加えて企業や組織内でDXの取り組みをリードしていくための専門知識やビジネススキル、コミュニケーションスキルなどが求められる人材と言えます。以下、DX人材に主眼を置いて話を進めていきます。
ひと口にDX人材といっても、企業や組織における職種や職位、立場によってさまざまな役割に分かれています。経済産業省とIPAが2022年12月に公開した「デジタルスキル標準 ver.1.0」では、DXを推進する主な人材を以下の5つの類型に分類しています。
DXを推進するのに、いかに多様なスキルが必要とされるか一目瞭然です。これら5つの各要素のスペシャリスト人材が、互いに密接に連携・協働していくことになります。企業がDX人材を採用・育成する際には、自社でどのタイプの人材がどれだけ必要であり、どれだけ不足しているのかをまずは把握し、そこから逆算する形でバランスよく採用・育成計画を立案する必要があります。
一方、どのタイプのDX人材にも一定以上の高いスキルや知見が求められるため、適合する人材を探すのはそう簡単ではありません。企業が取れる手段としては、キャリア採用で外部から人材を採用するか、もともと社内にいる人材を育成するかの2通りの方法があります。
キャリア採用では時間をかけずにDX人材を充足できます。しかし言うまでもなく、現在どの企業もDX人材を喉から手が出るほど欲しがっており、優れた人材は転職市場で引っ張りだこです。そんな状況下で優れた人材に自社を選んでもらうためには、自社でDX人材として働く魅力を積極的にアピールする必要があるでしょう。
一方、社内人材の育成には時間はかかりますが、中長期的な視野に立った体系的なトレーニングによって、人材の量や質をある程度担保することができます。そこで人材育成の施策に力を入れる企業が増えています。特に目立つのが、もともとIT部門にいる従業員を再教育するだけに留まらず、ITとは直接関係ない事業部門や間接部門にいる従業員に、新たに先進デジタル技術の教育を施すことでDX人材を育成しようという取り組みです。
非IT職の従業員をDX人材へと育成していく取り組みは、人材数の充足以上の意味を持ちます。DXは単に部門単位でデジタル技術を活用して業務効率を上げるだけでなく、全社的にデジタル活用を推進してビジネスモデルや企業文化を変革していこうという大きな挑戦です。従って、もともと自社のビジネスモデルを深く理解し、社内のさまざまな部門を横断してコミュニケーションを取れる事業部門の人材がDXの戦列に加わることで、DXをより加速することができます。
ただし、どのような立場であれDX人材が十分に能力を発揮できる環境が整備されていなければ、宝の持ち腐れにしかなりかねません。まず、DXは全社的な取り組みを伴いますから、例えば、各企業になじむ形で社内横断型のDX推進組織や、部門ごとの現場の連絡組織といった体制づくりおよび担当者のミッション設定が望まれます。
また推進体制の形を整えるだけでなく、DXをリードする人材の働きが正当に評価される仕組みの必要性も、さまざまな企業で検討されています。すでに現場のデジタル技術の活用やリスキリングに際して、人事制度や評価制度に手を加える例も珍しくありません。いくらリーダー役が奮闘したとしても、一般の従業員がデジタルのスキルを身につけ、DXの価値を理解する広義のDX人材にならなければ、企業のDXの取り組みはいつまでたっても実を結びません。DXは社内のカルチャーを変えて臨む取り組みであるからです。ここにおいて、経営トップの強力なリーダーシップと継続的なバックアップは極めて重要となります。
以上で見てきたように、DX人材にかかわる課題を解決するためには、さまざまな面において新たな施策を必要とします。特にその育成に関しては、自社のDX戦略と連動する形で中長期的な育成方針を立て、「どのようなタイプの人材を、いつまでに、どれだけの数揃える必要があるのか」「そのためには誰を対象に、どのような教育機会を提供すればいいのか」などを検討する必要があります。具体的な育成計画に落とし込んでいく際には、自社が保有する人材の数、タイプ、さらには自社の将来の事業戦略やDX戦略などさまざまな要素を加味した上で、最適な計画を立てる必要があります。
参考に値する情報として、先に紹介したような各種公的機関が公開しているガイドラインもあるとは言え、DXは遅れることも失敗もできないクリティカルな命題です。また単なるITシステム投資と違って、企業カルチャーを変え、相応しい人材の確保と育成を並行して進める難しい取り組みです。もし自社だけの判断で立ち向かうのはハードルが高いと考えるならば、外部のパートナー企業からの支援を検討することも有効です。
その際には、デジタル技術に強いだけでなく人材育成に実績があり、クライアント企業のビジネスを深く理解できる業務知識など幅広い知見を持つパートナー企業を選ぶことをお勧めします。
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