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企業の最優先課題に躍り出た「サステナビリティ経営」

~中長期的な企業価値の向上へ、DXと共に取り組む~

環境・社会・経済のサステナビリティ、すなわち持続可能性に配慮することで事業の価値を向上させる企業経営の在り方、いわゆる「サステナビリティ経営」が注目を集めています。その一方で、企業がこれからの時代を生き抜いていくためには、デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業カルチャーを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の取り組みが欠かせないとも言われています。今後の企業経営に欠かすことができないサステナビリティとDX、一見関係性が薄いようにも思えますが、実は互いに切っても切れない縁で結ばれているのです。

国も重要視する、企業経営に欠かせない考え方

2015年にいわゆる「SDGs」が国連総会で採択されて以降、多くの人がサステナビリティの考え方について知ることになり、企業も地球環境保護や人権などに配慮したサステナビリティ経営を積極的に打ち出すようになりました。特に欧州においてはこの動きが顕著で、EU当局が企業に対してサステナビリティ活動に関する情報の開示を義務付ける制度を設けるなど、早くからサステナビリティは企業経営の欠かせない要素だと認識されています。

日本でもサステナビリティへの取り組みをアピールする企業が増えています。ここ数年間で、SDGsバッジを身に付けるビジネスパーソンの姿もしばしば見かけるようなりました。しかし、何といっても私たちがサステナビリティ経営に意識を向けることになったのは、2020年以降に発生した幾つかの世界的な大変化ではないでしょうか。

2020年に発生し、今だに世界中の国々の社会・経済に大きな爪痕を残すCOVID-19の感染拡大。そして2022年に起こったウクライナ戦争。これらの出来事は企業を取り巻く経営環境を瞬く間に一変させ、あらためて企業経営における持続可能性の重みを思い知るものでした。

こうした状況下で、国も経済産業省を中心に日本企業のサステナビリティ経営への取り組みをバックアップするようになりました。経済産業省内に「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)」を設置し、2022年8月にはその報告書という形で「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」と「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス2.0(価値協創ガイダンス2.0)」が公表されました。これらは、日本企業が今後取り組むべき重要課題として、サステナビリティ経営の実現に向けた「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」の重要性を謳っています。

企業も具体的な経営課題の1つとしてサステナビリティを扱い始めています。KPMGジャパンが国内の上場企業461社のCFO(最高財務責任者)を対象に実施した「CFOサーベイ2021」では、数ある経営課題の中でも「SXは最優先課題であり事業戦略の前提として位置付けている」と回答した企業が32%にも上っています。

DX戦略にはサステナビリティの観点が不可欠

一方、これからの企業経営を考える上では、デジタル技術を積極的に活用してビジネスモデルや企業風土の変革を目指すDXの考え方も欠かせません。このDXとサステナビリティ経営は互いに極めて密接な関係にあります。

DXは単に目の前の業務をデジタル化して業務効率を向上させるだけでなく、中長期的な視野に立って大胆なイノベーションの実現を目指す取り組みです。従って、同じく中長期的な観点から企業価値の向上を図るサステナビリティ経営の戦略とは方向性が一致し、整合性が取られている必要があります。

いかに画期的なビジネスモデルを考案したとしても、それがサステナビリティの考え方に沿っていなければ企業全体の長期的な戦略とは相容れないでしょう。従ってDX戦略を策定する際には、必ずサステナビリティの観点からの点検が欠かせません。

サステナビリティ経営の戦略を策定する際には、まずはこれからの社会・経済の先行きを予想し、10年後、20年後に自社があるべき将来像、つまり「To Be」を明確に定義することが重要だとされています。先ほど紹介した価値協創ガイダンス2.0においても、SX遂行のためのステップとしてまずはTo Beを定義し、その上で現状「As Is」とのギャップを埋めるために必要な戦略を策定・実行するというプロセスを提示しています。

DXの中長期戦略を策定する際も、このような観点は極めて重要です。As Isを漸次改善していくやり方は、確かに段階的で連続的な改善が実現できるかもしれませんが、イノベーションによる非連続的な変革を成し遂げることはできません。そうではなく、サステナビリティ経営と歩を合わせながら、To Beからバックキャストする形で自社の理想像にたどり着くためのデジタル戦略を策定し、実行していくことが求められます。

サステナビリティ経営の遂行にもDXが欠かせない

DXは、サステナビリティ経営を実現するための手段としても重要な位置を占めています。サステナビリティ経営を遂行していくためには、あらかじめ策定した戦略と計画を着実に実行に移しつつ、その進捗状況をリアルタイムに把握しながら適宜取り組みを改善していく必要があります。そのためには、適切なKPI(評価指標)の設定と、その値を正確かつ迅速に測定・可視化できる仕組みが求められます。言うまでもなく、これを実現するにはデジタルの力が必要です。

例えば、カーボンニュートラルや脱炭素を追求するためには二酸化炭素の排出量を測定する必要があり、あらゆる企業活動を正確にモニタリングしなければなりません。また、モニタリングしたデータを可視化し、さらなる改善につなげるためにPDCAサイクルを迅速に回していかなければなりません。一連のプロセスにはデジタル技術の活用が不可欠です。

また、データを社内で共有するだけでなく、社外のステークホルダーに対しても積極的に開示し、自社が社会的責任をきちんと果たしていることを示すことで、企業価値を向上させてさらなる活動のための投資を呼び込む必要があります。このいわゆる「ESG投資」を呼び込むためにも、やはりデジタル技術を活用した情報の可視化・共有の仕組みが求められます。経済産業省が公表した「伊藤レポート3.0」「価値協創ガイダンス2.0」でも、企業がSXを実現するには投資家をはじめとする「ステークホルダーとの対話」が極めて重要であると提唱しています。

近年、「VUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)」という言葉が多くのメディアで取り上げられている通り、企業経営を取り巻く環境は今後ますます不確実性を増し、将来の予測が困難なものになるでしょう。こうした時代において、急激な環境変化に耐えながら事業を持続していこうとするとき、あらゆる企業にとってサステナビリティ経営は必須の要件になるはずです。

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