Japan
サイト内の現在位置
住友ゴム工業株式会社様
部門や世代をまたいで多様なデータを共有
膨大なデータを関連付けるための工夫とは
- 業種:
-
- 製造・プロセス
- 業務:
-
- 設計・開発・製造
- 共通業務
- 製品:
-
- ソフトウェア/情報管理
- ソフトウェア/コラボレーション
- ソリューション・サービス:
-
- クラウド
- AI・ビッグデータ
事例の詳細
多くの技術者たちが、長年、取り組んできたせっかくの研究や開発の情報が十分に活用されていない。この課題を解決するために住友ゴム工業様は「タイヤ開発AIプラットフォーム」、そして、その仕組みの一部を担う統合データ基盤を構築しました。共に取り組んだのはNECです。課題と目指す姿を深く理解して提供する伴走型支援を通じて、部門ごとのデータの仕様や書式の不統一という課題をクリアする仕組みを実現しています。
循環型ビジネス構想の実現を阻むデータ品質の課題
独自のゴム技術を活かした「タイヤ」「スポーツ」「産業品」という3つの事業を展開している住友ゴム工業様。現在、同社は主力であるタイヤ事業において「TOWANOWA」と名付けた循環型ビジネス(サーキュラーエコノミー)構想を描いています。
「当社は『未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。』というパーパスを起点とした企業理念体系を描き、社会への貢献と、イノベーティブな発想・技術による先進性を重視しています。TOWANOWAは、この理念を具現化するための構想です。これまで私たち製造業は、快適な暮らしを支えるための製品をたくさんつくってきました。それが現在の社会の利便性につながっているわけですが、一方、行き過ぎた大量生産、大量廃棄による環境問題も招いてしまった。それに対して、未来をひらくイノベーションを掲げる当社が何をできるのか──。そう自問して生まれたのがTOWANOWAです。限りある資源を循環させて有効利用するとともに、多様なデータを介して取引先やお客様とつながり、新たな価値を実現することで、持続可能な未来とモビリティ社会の継続的な発展に貢献したいと考えています」と同社の村岡 清繁氏は言います。
多様なデータとは、企画設計、材料開発・調達、生産・物流、販売・使用、回収・リサイクルという、タイヤ事業のバリューチェーンの各プロセスで発生する多くのデータを指します。それらを連携させ、活用するために、同社はさまざまな取り組みを進めています。
その1つが「タイヤ開発AIプラットフォーム」の構築です。「設計、配合、材料分析、生産などのデータをAIで分析してタイヤ開発の効率化を図る。暗黙知として個人に蓄積しているベテランの経験や勘をデータ化して、継承していく。タイヤ開発AIプラットフォームは、これらを支えるシステムです」と同社の岸本 浩通氏は言います。
しかし、タイヤ開発AIプラットフォームの構築に向かう課程で同社は大きな課題に気付きました。データの品質の問題です。
例えば、同社には、技術者たちがこれまでに行ったさまざまな研究や実験の報告書が残っていますが、十分に活用されていませんでした。「記録されている情報が十分でないことが一因です。例えば、計測結果だけが書かれていても、その数値だけでは、どのような経緯や条件だったのかなどがわかりません。それを把握するための関連データは、当時の担当者の頭やPCの中。若手は、それを求めて人探しを行い、それでも見つからないときは、もう一度、同じ研究を行ったりしていました」と岸本氏は話します。また、村岡氏も「先輩がその知識を得るために5年を費やしたのなら後輩はもっと短い期間で同じことを学び、さらに先のテーマを見つけてほしい。そのためには適切にデータを蓄積し、知見を共有、継承していく必要性を強く感じていました」と続けます。
高い技術力とともに取り組む伴走型支援に期待
データの適切な蓄積と管理をどのように実現するか。同社が相談したのがNECです。
「NECとは『タイヤ開発における匠(たくみ/熟練設計者)のノウハウのAI化』にも共に取り組み、その技術力を高く評価していました。実際、AI関連学会などで採択されている論文数は日本トップクラス。迷わずNECに相談しました」と岸本氏は話します。
また、NECのサポート体制も評価しました。
同社が求める仕組みを実現するには、同社ならではの事情や課題を深く理解した上で、どのようなデータがあるのか、どのように活用していきたいのか、どのように管理するべきかなどを考えていかなければなりません。「ほとんどの部門が独自のシステムで業務を行っているため、既に仕様が固まっているソリューションでは、おそらくフィットしない。一般的なコンサルティングで解決できるとも考えづらい。それに対してNECは、共に考える約束をしてくれました。それも選定の理由です」と村岡氏は言います。
部門や世代をまたいで多様なデータを全社で共有
同社はNECと共に、多様な業務システム、計測器のような専門機器など、社内のあらゆるデータを一元管理するための統合データ基盤を構築しました。「NECは、DMO(データ・マネジメント・オフィス)のあり方から、統合データ基盤の企画設計、構築まで、幅広いアドバイスや提案を行ってくれました。文字通り伴走型の支援です」と村岡氏は言います。
統合データ基盤を構成しているのは、データレイクにアマゾン ウェブ サービス(AWS)のAmazon S3(Amazon Simple Storage Service)、ドキュメント管理にBox、BIにTableau、そして、Salesforce Platform上に構築したプロジェクト管理システムという4つのクラウドサービスです。まず投入するデータは材料開発部門と材料分析部門のデータを対象にしていますが、将来はより広範なデータを同様に管理して、つなげていくことになります。そのため、データレイクは既に社内で利用しているAWSが最適と判断。またAWSとの親和性を考慮してBox、Tableauを組み合わせることにしました。
Salesforce Platform上に構築したプロジェクト管理システムは、今回のデータ品質の課題を解決するカギとなるサービスです。
統合データ基盤には、正確性を担保しながら、あらゆるデータを投入したいと考えています。「研究当時は、それほど重要と思えなくても、別の観点では、それが非常に価値の高い情報だったりすることがあります。それらを余すことなく残していきたいと考えています」(岸本氏)。ただし、前述したとおり、各部門は独自のシステムで業務を行っており、そのシステム間の差が、データの仕様や書式の不統を招き、データの統合や連携、データ間の関連付けを難しくしていました。
「そこで、今回の仕組みではSalesforce Platformのプロジェクト管理機能を各業務システムの上位に位置付け、その差を吸収。具体的にはSalesforce Platformを通じて『プロジェクト名』『期間』『責任者』などのメタデータがAmazon S3に登録され、膨大なデータを投入しても、将来、必要なデータをすぐに見つけて、活用できる環境を実現しています」と岸本氏は説明します。
今後、同社は統合データ基盤に集約するデータを拡大しながら、積極的に活用に取り組んでいく考えです。部門をまたいでデータを共有できるため、より幅広いデータを開発に活かしたり、生産担当者が生産上の課題を解決するために材料開発のデータを確認したりすることが可能。また、ベテランの知識を引き継いだ匠AIによって、若手が高度な知見をスムーズに引き継ぐこともできます。
「海外に行くと実感しますが、日本の製造業で働く人材のレベルは本当に高い。例えば、誰もが『改善』の意識を当たり前に持っています。そのレベルの高さとデータが合わされば、日本の製造業の現場力は、まだまだ強くなる。データに関する高度な知見を持つNECには、大いに期待しています」と村岡氏は強調します。
お客様の立場にたって考え、製品だけでなくノウハウも提供する
お客様の立場になって考える。単にAIをはじめとする技術や製品を提供するだけでなく、自身が持つノウハウも余すことなく提供しながら、課題解決やビジネスの成長につながる支援を行う。現在、NECは、これらの想いを根幹に据えて、お客様のDX支援に力を入れています。
住友ゴム工業様が抱えているデータの仕様や書式の不統一、その一因となっている多様な業務システムの課題をどのようにクリアするか。今回はSalesforce Platformのプロジェクト管理機能をカスタマイズして、AWSなどのクラウドと組み合わせ、解決する方法を提案しました。
具体的には、Salesforce Platformのプロジェクト管理をインタフェースとしてプロジェクトのデータを入力すると、それが自動的に業務システム、さらにはデータレイクであるAmazon S3に登録され、そのメタデータが多様なデータを関連付けてくれます。これにより、住友ゴム工業様が持つ膨大なデータを余すことなく活用したり、将来に引き継いだりできるようになります。
住友ゴム工業様、さらには日本の製造業の期待に応えるために、今後もNECはデータやAIなどの先進技術を駆使してお客様のビジネスを支援していきます。
お客様プロフィール
住友ゴム工業株式会社
本社所在地 | 兵庫県神戸市中央区脇浜町3-6-9 |
---|---|
設立 | 1909年 |
資本金 | 42,658百万円 |
概要 | 独自のゴム技術を活かした「タイヤ事業」「スポーツ事業」「産業品事業」を展開。世界中のお客様に「最高の安心とヨロコビ」を実感していただくことを大切にしている。 |
URL | https://www.srigroup.co.jp/index.html |
この事例の製品・ソリューション
本事例に関するお問い合わせはこちらから
(2024年6月7日)