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ローカル5G向け小型一体型基地局「UNIVERGE RV1200」及びマネージドサービス
Vol.75 No.1 2023年6月 オープンネットワーク技術特集 ~オープンかつグリーンな社会を支えるネットワーク技術と先進ソリューション~デジタルトランスフォーメーション(DX)の広がりとともに、5Gを民間活用するローカル5Gに注目が集まっています。電波の利用はこれまでモバイルキャリアにのみ割り当てられてきましたが、電波リソースの有効活用には民間の投資を呼び込み、社会価値創造を実現することが必要と政府が判断、新たなプレイヤーを巻き込んでいます。しかし、技術の複雑さもありシステムコストが高止まることで、普及が難しい状況でした。その課題を解決すべく、NECでは新たに「UNIVERGE RV1200」という普及価格帯でのシステム構築が可能となるローカル5Gシステム及びマネージドサービスを開発しました。この新製品・サービスの特長や活用シーン例などについて紹介します。
1. はじめに
企業が自社の敷地や建物の中に独自の5Gネットワークを構築し、事業に活用するローカル5Gは、高速で安定性も高いネットワークを独占できるため、さまざまな期待が高まっています。ローカル5Gは2019年頃より実証実験がスタートしており、製造業や建設業、公共などの分野での活用が進んでいます。例えば、製造業では5Gネットワークを生かして、これまで有線ネットワークで構築してきた工場ネットワークを無線化し、ネットワークの柔軟性を高めたり、高精細な画像・映像を活用して生産工程で行う検査を自動化したりといった、さまざまなチャレンジが行われています。しかし、ローカル5Gが有効なのは、これらの分野だけではありません。安定性や通信速度に優れた5Gネットワークを自社だけで独占できるというメリットを生かすことで、幅広い分野における課題を解決する可能性を持っています。
2. 小型一体型基地局「UNIVERGE RV1200」の誕生
ローカル5Gの普及のためにクリアしなければならない課題が設備です。5Gを活用するには、基地局を設置する必要がありますが、これまではモバイルキャリアが活用するような設備しかなく、高性能・高機能である一方、複雑で高価なため、一般の企業が使いこなすのは簡単ではありませんでした。実際、「もっと簡単に利用できるのであればローカル5Gに挑戦するのに」といったお客様も少なくありませんでした。
そこでNECは、状況を打破するためのプロジェクトを立ち上げました。NECは、長年、通信事業者向けの基地局を開発してきた経験があり、豊富なノウハウを持っています。それを生かし、ローカル5Gの活用促進に貢献する新しい基地局を開発したいと考えました。プロジェクトには、通信事業者向けの機器を開発するエンジニアから、一般企業や官公庁を担当している営業担当者まで、幅広いメンバーが参加しました。どのような機器であれば多くのお客様に使っていただけるのか、多様な視点で客観的に評価し、議論と試行錯誤を重ね、最終的に完成、誕生したのがローカル5G小型一体型基地局の「UNIVERGE RV1200」です(図1)。

3. UNIVERGE RV1200の特長
UNIVERGE RV1200の特長は、ローカル5G基地局の無線部(RU)と制御部(CU/DU)を1つの筐体内に収めたオールインワンの小型基地局ということです。機器単体の価格を抑えたことに加え、システム全体の導入費用の低減、工事を含めた導入の期間・工数の削減、小型・軽量化による設置場所の自由度の向上などを実現しています。特に、ローカル5G向けのSub6帯周波数(4.6GHz~4.9GHz)すべてに対応、A4用紙以下のサイズで質量3kgの小さな筐体の中に基地局として完結した機能を実装しながらIP66という高い防塵・防水性能を持つことで、屋内外に設置することを可能としています。また、スモールスタートしたいユーザーの声にも対応し、基地局1台でローカル5Gの可能性を検証し、その後は単純に基地局のみを追加するだけで100台以上の大規模システムにシームレスにスケールアウトする拡張性も併せ持っています。これらにより、Wi-Fiのアクセスポイント同様の簡便さで設置可能でありながら、ローカル5Gが持つ高品質な通信特性を幅広い環境で利用することが可能となりました。
UNIVERGE RV1200は、「価格ミニマムのためには構成もミニマム化」をコンセプトに、ローカル5G向けに特化したアーキテクチャを採用しています。構成をミニマム化するために、単にCU、DU、RUを一体化するだけでなく、今までCU、DU、RUで4つのCPU/FPGAを使っていたものを、2つのCPUにダウンサイジングして動かしています。使用するCPUについても、低消費電力なものを厳選しています。更に、送信出力をアンテナ1本あたり250mWに抑え、アンテナを2本にすることでも消費電力を低減しています。結果、消費電力を少なくすることに加え、装置の外形/質量を小さくしています。消費電力低減によりPoE++を利用することが可能なことに加え、前述の防塵・防水性を確保したことにより、電源工事性・設置工事性を各段に向上することができました。
4. ローカル5Gマネージドサービス
UNIVERGE RV1200を活用したローカル5Gネットワークシステムは、シンプルなネットワーク構成により設置場所の自由度が向上することから、企業内のオフィスでの利用や実証実験など、さまざまな場面での導入が期待されます。一方、5G無線技術者の人材確保が難しいことや、機器が高価であるなどの要因から、ローカル5Gの導入に向けた課題はいまだ多くあります。このような課題の解決に向け、NECはローカル5Gの運用と機器提供を合わせ、マネージドサービスとして提供します。ローカル5Gの導入障壁を下げ、ローカル5Gを活用して業務改善を検討されている企業を支援します。
4.1 ローカル5Gマネージドサービスの概要
ローカル5Gマネージドサービスは、NECが5Gネットワークの運用、監視、保守を行い、5G機器を月額で提供することで、お客様の運用負荷及び初期費用の低減を実現するサービスです。本サービスは“5Gコアクラウドサービス”、“運用サービス”、“機器サブスクサービス”で構成されます。5Gコアクラウドサービスと運用サービスはセットでパッケージ化し、サービスレベルに応じて“スタンダードパック”、“エントリーパック”の2種類のサービスパックとして提供します(図2)。

4.2 ローカル5Gマネージドサービスの提供価値
2種類のサービスパックは、いずれも5Gコアクラウドサービスの機能として、5G通信を実現するためのコア機能をクラウドから提供し、運用・メンテナンスを代行します。スタンダードパックでは、運用サービスの機能として、お客様の問い合わせ窓口であるサービスデスクの設置、稼働監視による能動的な障害検知、リモート切り分け及び保守手配・復旧対処を実施し、安定した5G通信の運用を支援します。エントリーパックは障害対応について、お客様の申告をトリガーとすることでサービスを簡易化し、手軽に利用いただける構成としています。機器サブスクサービスでは、UNIVERGE RV1200を含むローカル5G基地局とネットワーク機器を、機器保守を含め月額で提供します。これにより初期コストの抑制、コストの平準化が可能になるとともに、固定資産に掛かる税金・保険料などが軽減されます(図3)。

本マネージドサービスを活用いただくことで、お客様のリソースの最適化を図り、機器コストを平準化し、ローカル5Gの安定運用という価値を提供します。
4.3 ローカル5Gを手軽にお試しいただく新たな取り組み
小型でシンプルな構成のUNIVERGE RV1200を活用し、お客様にローカル5Gの価値を実感いただくための取り組みとして、“可搬型トライアルパック”を提供します。ローカル5Gの利用に必要となる免許取得、機器、回線、構築、運用、保守を1つのパッケージとすることで、お客様の負担を軽減し、かつ短期間で提供します。お客様は定められた利用エリアの中で基地局を自由に移動することで、さまざまな検証が可能です(図4)。

5. UNIVERGE RV1200の活用シーン例
活用シーンとして3つの例を紹介します。1つ目は、オフィスです(図5)。会議室予約に関して、予約時には空きがなく利用をあきらめたのに、いざ当日になると使われていないというケースがよくあります。オフィスの利用効率、会議の調整に掛かる担当者の手間などを考えると、無視できないムダを生んでいる可能性があります。そこで、ローカル5Gを使って各会議室に設置したセンサーの入退室情報、Web会議サービスから得られる利用情報など、さまざまなデータを収集して会議室の利用状況を総合的に判断します。これにより「予約時間から5分過ぎても会議が始まる気配がない場合は自動的に会議室予約をキャンセル扱いにする」といった運用を実現できます。また、同時接続しても安定するローカル5Gは、多くの働くロボットを同時に制御することにも向いています。これまでは、ロボット同士の接触事故などに配慮し同時に稼働させる台数や各ロボットの活動エリアを制限するのが一般的でしたが、ローカル5Gなら、そうした配慮は不要となります。清掃や紙文書のオフィス内配達など、さまざまな業務をロボットに任せることが可能となり、少子高齢化による人手不足に備えることができます。

2つ目は、リテールの分野です(図6)。リテールは、いち早くDXが進んだ分野の1つですが、ローカル5Gによって、DXを更に加速させることができます。例えば、最近は無人レジが増えていますが、商品バーコードの読み取りについては、まだマニュアル操作に頼っています。ローカル5Gを駆使すれば、カートに取り付けたデバイスを通じて商品を自動認識したり、より多くの決済プロセスを自動化したりすることが可能になります。カートも店内を回遊するお客様を自動追尾するようにして、手ぶらで買い物を楽しめるようにすることもできると考えます。ファッションリテールならVR/AR(仮想現実/拡張現実)によるバーチャル試着を実現し、お客様に新しい体験を提供することもできます。

3つ目の注目分野は、教育です(図7)。GIGAスクール構想によって教育現場はデジタル活用が大きく前進しましたが、ローカル5Gなら「教科書やノートがタブレットに置き換わった」という以上の価値を提供できると考えます。例えば、何かを触ったときの触覚を再現する技術と組み合わせることで、教室にいながら月の表面を歩いてみたり、クジラの皮膚に触れてみたり、これまでは想像もできなかった体験が可能になると考えます。業務面でも、生徒用のネットワークはWi-Fi、教師用はローカル5Gにして、ネットワークを分離することでセキュリティの強化につながります。デジタル活用によってさまざまな効率化が進めば、教師の長時間労働の是正なども期待できます。

6. むすび
本稿では、NECのローカル5G小型一体型基地局「UNIVERGE RV1200」及びマネージドサービスの特長や活用シーン例などについて紹介しました。少子高齢化に伴う労働力不足、技能継承問題などの社会問題に加え、エネルギー問題やカーボンニュートラルも含め、産業構造が大きく変化し、DXが必要不可欠になっています。NECは、ローカル5Gを通して、あらゆる人に「快適」「効率」「セキュア」なワークライフ空間を提供し、DXに貢献し、新たな社会価値の創出に取り組んでいきます。
- *Wi-Fiは、Wi-Fi Allianceの登録商標です。
- *その他記述された社名、製品名などは、該当する各社の商標または登録商標です。
執筆者プロフィール
デジタルネットワーク統括部
上席モバイルネットワークアーキテクト
デジタルネットワーク統括部
ディレクター
ネットワークSIサービス統括部
エグゼクティブマネージャー
ネットワークSIサービス統括部
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