Japan
サイト内の現在位置を表示しています。
Vol.75 No.1 オープンネットワーク技術特集~オープンかつグリーンな社会を支えるネットワーク技術と先進ソリューション~
Vol.75 No.1(2023年6月)
記載されている技術は製品に採用されているとは限りません。
製品が掲載されている場合は、販売を終了している可能性がありますので別途ご確認ください。
わずか数年の間に、社会生活では急速な変化が起きており、それを支えている情報通信ネットワークは、単に高速化されるだけではなく、機器やソフトウェアをオープンな環境で組み合わせることで、多くのニーズに対応し、人・モノ・コトを結び付けることが期待されています。
その取り組みの1つがオープンアーキテクチャであり、情報通信ネットワークのサービス価値を高めると期待される、コアネットワーク・無線ネットワーク・光伝送システムのオープン化を、NECは進めています。
本特集では、NEC Open Networksというソリューション群をはじめ、ネットワークのオープン化への取り組みやBeyond 5G/6Gに向けた研究開発について紹介します。また、カーボンニュートラルの達成に貢献できるよう、ネットワーク運用におけるエネルギー消費の抑制についても紹介しています。
- ※所属部門名称など掲載情報は2023年6月時点の内容です。
オープンネットワーク技術特集~オープンかつグリーンな社会を支えるネットワーク技術と先進ソリューション~
オープンネットワーク技術特集によせて
Corporate EVP 兼 テレコムサービスビジネスユニット長
木内 道男
NECのオープンネットワークに向けた技術開発と提供ソリューション
テレコムサービスビジネスユニット
コーポレートエグゼクティブ
渡辺 望
Open RANとそれを支える仮想化技術
Open RANがもたらすイノベーション

5G時代が到来し、その“高速大容量”、“超高信頼低遅延”、“多数同時接続”などの特長を生かした多種多様なユースケースが想定されます。ユースケースごとに求められる通信要件が異なるために、通信事業者としてはいかに多種多様なネットワークを構築していくかが重要になります。5G時代の初期には多くのグローバル通信事業者が、1つのベンダーに依拠する形で統合されたシステムが主流を占めることにより、お客様のニーズに応じて、柔軟かつ機敏にネットワーク機能を拡張することができないという懸念があります。それに伴い、さまざまなベンダーが競争促進する観点からよりイノベーションを促進されることを意図し、各装置間のインタフェースをオープン化するOpen RAN(オープンな無線アクセスネットワーク)という新たな動きが出てきました。NECがこれまで培ってきた通信に関する経験やノウハウだけではなく、柔軟で機敏な構築を可能とするクラウド化の技術や、産業界のノウハウを生かすとともに、ともにオープン化促進を目指すパートナーと強固なエコシステムを構築することにより、5G時代に必要とされるOpen RANの普及に向けた取り組みを紹介します。
モバイルネットワークにおける消費エネルギー削減
FRIEL Declan・GLYNN Phillippe・ISIDORO Luis・LOBATO Joao

通信事業者は、消費エネルギーの増加とこれに伴う事業運営コストの増大に直面しています。これは、絶え間なく増え続けるモバイルネットワークのトラフィックに対応するため、通信容量の増加とネットワークの高密度化というニーズと結びついた、5GとMassive MIMO導入に由来するものです。これに加え多くの事業者は、エネルギー消費の管理を通じて部分的に達成できる、CO2排出量を削減するための地球規模での持続可能な開発目標を設定しています。28カ国で31のネットワークを運営する通信事業者7社からGSMAに提供されたデータによると、ネットワークで消費されるエネルギーの73%はコアネットワークに接続するRAN(無線アクセスネットワーク)が占めており、残りはデータセンターと運営に使われます。NECは、高度なアルゴリズムとトラフィック予測を通じて、セルとセルサイトのレベルでRANのエネルギー消費に対応する完全に自動化されたソフトウェアベースのソリューションを開発しました。このソリューションは、ユーザー数やデータトラフィックが少ない状態にある間、過剰なキャパシティを持つセルサイトを安全に停止できるようにすることで、消費エネルギーの削減を図ります。また、トラフィックのレベルが予期せず上がった場合でも、迅速な再起動のためにインテリジェントで切れ目ない顧客体験(CX)フィードバック機能を搭載しています。このソリューションは従来のRANベース及びOpen RANベースの展開の両方に適用可能です。
自己構成型スマートサーフェス
SCIANCALEPORE Vincenzo・ROSSANESE Marco・MURSIA Placido・DEVOTI Francesco・GARCIA-SAAVEDRA Andres・COSTA PEREZ Xavier

RIS(Reconfigurable Intelligent Surface)としても知られるスマートサーフェスは、将来の6GネットワークのKPI(重要業績評価指標)を達成するために、決定的な役割を果たすとみられています。この新たに登場した技術がもたらす画期的な優位性は、通信チャネルを制御できないブラックボックスととらえる従来のパラダイムを変えて伝搬環境を制御する能力に掛かっています。本稿では、入射波の反射角度を効率良く変更できる、NECのRISの設計を紹介します。また、展開されているモバイルネットワークを変更せず簡単かつシームレスに設置可能な自己構成型スマートサーフェスを導入することで、高速で複雑なチャネル制御が必要とされる状況を打開できます。
Nuberu:共有プラットフォームによる高信頼性のRAN仮想化
GARCIA-SAAVEDRA Andres・COSTA PEREZ Xavier

RANの仮想化は、次世代モバイルネットワークの鍵になるテクノロジーになるとみられています。しかし、無線ダイナミクスに特有なコンピュータ処理の揺らぎや、共有コンピューティングインフラにおけるリソース競合などにより、専用プラットフォームから共有プラットフォームへの移行には膨大な費用がかかる可能性があります。本稿では、Nuberuという、NECが共有プラットフォーム向けに設計した、4G/5G DU(分散ユニット)のための最新のパイプラインアーキテクチャを紹介します。Nuberuが目標とするのは、信頼性を高めることです。つまり、コンピューティング能力が不足している場合でも、DUとユーザーとの同期を維持する最小限の信号セットを保証し、そしてこの条件下でネットワークスループットを最大化できるようにします。そのために、厳格なデッドライン制御、ジッター吸収バッファ、予測的HARQ、輻輳制御などの手法を用います。
vrAIn: vRANにおけるコンピューティングリソースと無線リソースのためのディープラーニングベースのオーケストレーション
AYALA-ROMERO Jose・GARCIA-SAAVEDRA Andres・COSTA PEREZ Xavier

本稿では、深層強化学習に基づくvRANのリソースオーケストレータであるvrAInを、次の順に紹介します。最初に、オートエンコーダーを使用して、高次元コンテキストデータを潜在表現を介して構築します。次に、アクタークリティックのニューラルネットワーク構造とクラシファイアに基づくDDPG(深層決定方策勾配)アルゴリズムを使用して、コンテキストをリソース制御決定にマッピングします。その結果として、(1)CPUに依存しない方法に比べて、コンピューティング容量を最大30%削減、(2)静的ポリシーに比べて、QoSターゲットを達成する確率を25%改善、(3)コンピューティング容量のプロビジョニングが少ない場合、最先端スキームに比べて25%のスループット向上、(4)最適なオフラインオラクルに匹敵する性能を発揮、の4つを紹介します。
5G/Beyond 5Gに向けた無線技術
グリーン社会の実現に向けたNECにおける5G/Beyond 5G基地局のエネルギー効率化技術開発
伊達 克紀・渡辺 吉則・馬場 翔平・池田 仁・角田 正人・芦田 順也・ウン チャンホク・桶谷 賢吾・川口 研次・濱辺 孝二郎・金子 友哉

NECは、ネットワークと無線通信の技術開発と製品供給において123年の実績を持ち、常に業界をリードしてきました。そして現在、O-RANベースのモバイルアクセスインフラ装置とネットワークのベンダーとして世界的な役目を担う企業の一社です。本稿では、データ量需要の爆発的な拡大に対応しつつも、利用者のQoSを維持しながらエネルギー消費とCO2排出を削減し、携帯電話事業者や社会にその利益を提供するO-RANシステムの省エネルギー技術開発の取り組みを紹介します。また、日本の大都市圏をカバーすることを想定した標準的なシステム構成に提案した技術を適用することで、期待できる年間エネルギー消費の低減や運営コストの削減、そして炭素ガス排出低減などの例を紹介します。
双方向トランシーバアーキテクチャを備えたミリ波ビームフォーミングICとアンテナモジュール技術
大島 直樹・堀 真一・PANG Jian・白根 篤史・岡田 健一・國弘 和明

5G(第5世代移動通信システム)では、ミリ波を用いた高速通信サービスが期待されています。ミリ波の大きな距離減衰や強い直進性を克服して、効果的に利用するには、フェーズドアレイアンテナによるビームフォーミングが不可欠です。本稿では、5Gにおけるミリ波の普及に向けてキーとなるBFIC(ビームフォーミングIC)とアンテナを小型・低コストに集積するフェーズドアレイモジュール技術を紹介します。65nm CMOSを用いて開発したBFICは、TX(送信)とRX(受信)の信号経路を共有する双方向トランシーバ回路を採用することで、チップ面積を縮小しています。また、28GHz BFICを用いたフェーズドアレイモジュールの開発例を紹介します。これらの技術は、5GやBeyond 5G向けミリ波無線装置の競争力向上に貢献するものです。
5G/6G屋内ワイヤレス通信向け1ビットアウトフェージング変調による光ファイバ無線システム
堀 真一・加瀬 裕真・大島 直樹・國弘 和明

本稿では、1ビットアウトフェージング変調を利用した光ファイバ無線(RoF)システムを提案します。提案するRoFシステムは、分散アンテナユニット内に消費電力の大きいデジタルアナログコンバータを必要とせず、また、光送受信器に要求される動作速度を緩和することでデバイスコストを削減します。このシステムにおける信号帯域幅1GHzの広帯域伝送実験では、ACLR(隣接チャネル漏えい電力比)に関する3GPP規格に適合することが実証されています。今回提案するRoFシステムは、他のシステムと比べ、高い帯域効率を備えていることも示されています。したがって、このRoFシステムは5G/6Gのモバイルネットワークシステムに向けて、費用対効果の高い屋内ワイヤレスソリューションを提供します。
空間分割多重を用いた28GHz帯マルチユーザー分散Massive MIMO
田和 憲明・桑原 俊秀・丸田 靖・金子 友哉

本稿では、トランシーバ回路の追加なしで実施可能な校正を用いた28GHz帯マルチユーザー分散Massive MIMO(大規模マルチプルインプット、マルチプルアウトプット)の実証実験について紹介します。ミリ波を用いる従来の集中Massive MIMOは見通し外環境下で堅牢性が低く、伝搬パスの独立性が不足しているため同時接続ユーザー数が制限されます。今回新たに開発した分散MIMOシステムは、デジタル信号とアナログ信号の混合信号処理ユニットに接続された8個の分散アクティブアンテナで構成されます。分散MIMO用に開発した校正方法は、プリコーディング精度を改善し、同時接続ユーザー数とセルスループットを向上させます。NECでは、2台、4台、6台のユーザー端末で、アップリンクからダウンリンクへのチャネルレシプロシティを用いたゼロフォーシング空間多重化の検証を、実際のOTA(Over The Air:無線経由)事務所環境下で行いました。この分散MIMOは見通し外環境下において、高い堅牢性と、合計6ユーザーの同時利用時における帯域幅100MHzあたり2.1Gbpsのシステムスループットを実現しました。
28GHz帯マルチユーザー分散MIMOシステムを用いたOTFS変調信号のOTA測定
田和 憲明・桑原 俊秀・丸田 靖・金子 友哉

Beyond 5G以降の通信のセルスループットを向上させるためには、MIMO(マルチプルインプット、マルチプルアウトプット)技術、ミリ波帯・サブテラヘルツ波帯の利用、そして新たな変調方式の開発が重要です。OFDM(直交周波数分割多重)変調方式は、4G・5Gで使われ、優れたスペクトル効率とマルチパスフェージングチャネルに対しての高い堅牢性があります。一方で、移動端末の時間で変動するチャネルに対する堅牢性は低くなります。ミリ波帯・サブテラヘルツ波帯では波長が短く、ドップラー効果の影響も大きいことから、Sub6GHz帯よりも、この堅牢性は重要です。本稿では、28GHz帯マルチユーザー分散MIMOの試作機を使用し、OTA(Over The Air)環境かつ移動体環境で実施したOTFS(直交時間周波数空間)変調方式の検証実験について紹介します。今回は、ゼロフォーシングプリコーディングを用いて、最大4ユーザーで同時接続したときのアップリンク信号の測定を、OTFSとOFDMとで行いました。OTFSは、OFDMと比べ、時間で変動するチャネルに対してより高い堅牢性を示しました。OTFSの変調精度と100MHz信号帯域幅でのシステムスループットは、それぞれ−22dBと1.9Gbpsでした。本研究により、OTFSは、ミリ波帯やサブテラヘルツ波帯における移動端末のセルスループット向上を可能にすることが分かりました。
Sub6GHz帯アクティブアンテナシステムにおける空間多重性能の改善
望月 拓志

NECは、限られた周波数資源であるSub6GHz帯で高い周波数利用効率を達成するため、フルデジタルBeamforming(BF)構成による超多素子アクティブアンテナシステム(Active Antenna System:AAS)を5G向けとして開発することにより、Massive MIMO(大規模MIMO)、すなわち空間多重による大容量通信を実現してきました。本稿では、各ユーザー端末(UT:User Terminal)へのDown Link(DL)SINR(信号 対 干渉・雑音電力比)が、送信機(TX)の電力増幅器(PA:Power Amplifier)で発生する非線形歪放射により劣化するため、各TXにDigital Predistortion(DPD)を実装することで本劣化を改善し、空間多重時の複数端末間の直交性確保に関しては、各UTへの放射パターン上に生成する他端末方向へのNull放射角度や深さを維持すべく、複数TX間の特性を一致させるキャリブレーション(CAL)を実施することにより、広い送信レベルにわたり優れた空間多重性能が実現できることを示します。
トランジスタ非線形モデルを使用しないブラックボックスドハティ増幅器の設計手法
大上 和哉・田和 憲明・de FALCO Paolo Enrico・BARTON Taylor・金子 友哉

本稿では、ブラックボックス出力合成器を備えた新開発のドハティPA(電力増幅器)の設計手法を紹介します。この手法は、従来のアプローチで採用されているトランジスタ非線形モデルを必要とせず、大信号のロードプル測定及びSパラメータの測定結果を用いてブラックボックス手法により設計した理想的な出力回路パラメータに基づき、出力合成回路を最適化します。この最適化は主増幅器のバックオフ点及びピーク電力レベルに伴った負荷変調動作を考慮しています。GaN-HEMTトランジスタを用いた3.5GHz 350WのドハティPAを試作して、測定することでこの手法を検証しました。今回のPAのドレイン効率は、7dBバックオフ点において50%を超え、6dBバックオフ点で57%を超える結果を得ることができました。
最大8マルチユーザー多重化を実現する39GHz帯256素子ハイブリッドビームフォーミングMassive MIMO
桑原 俊秀・田和 憲明・丸田 靖・堀 真一・金子 友哉

Massive MIMO(大規模マルチプルインプット、マルチプルアウトプット)システムによる基地局は、5G(第5世代移動通信システム)のSub6GHz帯モバイルアクセスネットワークで既に商用利用されていますが、より高いトラフィック容量に対応するミリ波帯基地局でも同様のシステムの利用が見込まれています。本稿では、16基の個別デジタルトランシーバを備えた39GHz帯256素子ハイブリッドアクティブフェーズドアレーアンテナシステムの設計と実装、及び無線MU-MIMO(マルチユーザーMIMO)の検証について紹介します。今回の試作機は、東京工業大学と共同で開発した65nm CMOSプロセスによる39GHz帯アンテナアレー用ビームフォーミングICを使用することで実現が可能となりました。更に、小型化と高密度実装に向けた研究を進め、ミリ波帯の性能を引き出す導波管アンテナを採用することで、新256素子アレーアンテナモジュールを開発しました。この試作機を使用して、NECは、アクセスリンクを前提としたチャネル相互運用性に基づくゼロフォース直交マルチビームを用いてMU-MIMO伝送試験を行いました。その結果、100MHz帯OFDM(直交周波数分割多重方式)8MU-MIMOの運用で、2.42Gbpsの推定トータルスループット(3GPP TS38.214に準拠)を達成しました。
オープンAPN(オープン光・オール光)の実現への取り組み
APN実現に向けたNECの取り組み ~Openな光ネットワーク実現に向けて~
小澤 公夫・大串 貞一郎・水野 圭・泉 智文
APN実現に向けたNECの取り組み ~APN製品(WXシリーズ)の特長~
山内 俊郎・朝日 光司・大串 貞一郎・木下 憲昭

NECは、ネットワークから端末に至るすべての通信を光ベースの技術で構築する、オールフォトニクスネットワークの実現に向けた取り組みを加速しています。本稿では、オールフォトニクスネットワークの重要な課題である光ネットワークのディスアグリゲーション(機能分離)、オープン化を解説し、NECとして初となるオープン仕様に準拠したオープン光トランスポート装置“SpectralWave WXシリーズ”を紹介します。
APN実現に向けたNECの取り組み ~フィールドトライアル~
山内 俊郎・朝日 光司・縣島 英生・木下 憲昭
オールフォトニクスネットワークを支えるシリコンフォトニクス光源による波長変換技術
丸山 遼・小林 直樹・倉橋 諒・高橋 森生

自動運転や遠隔医療などをはじめとする情報通信サービスの高度化を実現・加速するためには革新的な光ネットワークが必要であり、NECでは光技術を最大限に利用した、低遅延・省電力・大容量伝送が可能なオールフォトニクスネットワーク(APN)の実現に取り組んでいます。APNでは、小型サイズと経済性を兼ね備えた柔軟な波長変換技術が必要です。そこで、集積性と量産性に優れたシリコンフォトニクス(SiP)技術を活用して、APNで求められる波長変換のキーデバイスである超小型のデュアル波長可変光源を研究開発しています。本稿では、波長変換技術の概要とデュアル波長可変光源を実現するSiP技術及び波長可変光源技術について紹介します。
NEC Open Networksを支える光デバイス技術 ~800G超の光伝送技術~
小野 貴寛・坪内 隆史・木田 拓海・窪木 伸吾

近年急激に増加している通信トラフィックは、今後も指数関数的に増加の一途をたどると考えられています。基幹網の大容量化が求められる一方で、特定ベンダーにとらわれず柔軟に機器を選択してネットワークを構築するオープン化や、環境問題への懸念から消費電力の低減を図るグリーン化の流れも同時に高まっています。本稿では、NECにおいて、オープン化・グリーン化を支える光デバイス技術と製品群について紹介します。
コア&バリューネットワークへの取り組み
カーボンニュートラルな社会の実現に向けたデータプレーン制御を支える技術
黒澤 祐介・石倉 諭・中澤 達也・馬場 翔平・大森 一輝・ 宮垣 貴之
5G時代の人々の暮らしを支えるNECのネットワークスライシング技術
田山 陽司・青柳 雅人・作田 定之・石倉 諭・長友 賢悟

5G(5th generation:第5世代移動通信システム)では、ネットワーク層を仮想的に分離するネットワークスライシング技術が定義されています。ネットワークスライシングを実現することで、「高速・大容量(eMBB)」「多接続(mMTC)」「高信頼、低遅延(URLLC)」という5Gに求められる利用ケースを、単一のネットワークインフラにて提供することが可能になります。5Gではさまざまな社会課題の解決が期待されており、本稿では、モバイル通信事業者が迅速なサービス提供を可能とするNECのネットワークスライシング技術を紹介します。
Beyond 5G、IoT、AIを活用したDX推進を支えるアプリケーションアウェアICT制御技術
高橋 英士・岩井 孝法・二瓶 浩一・森本 昌治

昨今、Beyond 5G、IoT、AIを活用してDXを推進し生産性を高くすることで、豊かな社会を実現することへの期待が高まっています。このような背景のもと、従来の平均的な通信品質を向上するポリシーに加え、アプリケーションを安定して高い性能(作業速度や生産性など)で利用可能とするために、ICT性能要件を通信セッション単位かつリアルタイムで緻密に守るポリシーを強化していく必要性が高まっています。本稿では、アプリケーションを安定して高い性能で利用可能とする、アプリケーションアウェアICT制御技術について説明します。
通信事業者向け5Gコアネットワークにおけるパブリッククラウド活用
神成 直輝・栗原 康仁朗・西村 猛・鈴木 俊介・難波 弘樹・阿部 仁紀

近年の急激なトラフィックの増加に伴い、通信事業者の通信設備に対して更なる増強が求められています。また、設備増強のみならず、設備費用を抑え、ネットワークリソースを効率化させることも重要視されています。本稿では、通信事業者が抱える課題の解決策となり得る、5Gコアネットワークのパブリッククラウド活用における要素技術と取り組みについて紹介します。
高度なネットワークサービスを提供する自動化・セキュア化への取り組み
OSSにおける運用完全自動化へのNECの取り組み
渡邉 正弘・黒田 貴明・池田 仁・村松 英二・山下 達矢・藤本 淑美

通信事業者のネットワーク設備は、基地局をはじめ世界中に膨大な数が配備されていて、事業者1社当たり100万を超えることもあります。設備は日々、新規構築され、更新され、故障し、修理されており、日夜、インフラ保守にかかわる多くの人々に支えられています。そんなネットワーク設備の「運用」を担うのがOSS(Operation Support System)といわれるシステム群です。本稿では、人間による作業を極力減らし、ネットワークが自ら自律的に動作することでゼロタッチでの運用を目指すAutonomous Networksの考えのもと、NECが開発している次世代OSS/オーケストレーション製品を紹介します。
利用者の要件に基づくネットワークの自律運用技術とセキュリティ対応の取り組み
黒田 貴之・赤堀 悟・堀地 亮佑・里田 浩三

仮想化技術の進展とともにネットワークはますます複雑化しつつあり、その運用作業に掛かる負担の増加が問題になっています。しかし、監視方法や対処方法をテンプレートなどにより具体的に指示する従来の自動化方式は、ネットワーク要件自体の変化に弱く、調整に工数を要します。そこで利用者の要件(あるいは意図)の情報に基づいて、ネットワークの構築から運用に至る全体を自動化する自律運用技術が注目を集めています。NECでは、2017年から自律運用技術の研究開発に着手し、先駆的な取り組みを進めています。本稿では、NECの自律運用技術について、その概要とコア技術である自動設計技術を説明した後、セキュリティ対応の強化について紹介します。
情報通信ネットワークの安全性を向上するセキュリティトランスペアレンシー確保技術
岸本 衣緒・中島 一彰・植田 啓文

重要インフラを狙ったサイバー攻撃が増大しており、すべての重要インフラの基盤であり、かつサイバー攻撃の侵入口となり得る情報通信ネットワークの安全性を維持することが課題になっています。また、経済安全保障推進法の成立により、重要インフラの事業者はセキュリティ管理の説明責任を求められており、ネットワーク機器を含めてITシステムの透明性を確保して、内部の状態を把握しておくことが重要です。NECはこの課題を解決するために、セキュリティトランスペアレンシー確保技術の開発に取り組んでいます。本稿では、セキュリティの透明性確保の重要性と、本技術を活用したシステムの安全性確保について紹介します。
ネットワーク機器のサプライチェーン管理強化に向けた取り組み
曽根 泰斗・勝田 将史・野出 利緒・安達 智雄

近年、サイバー空間における脅威が深刻化し、安全保障領域や重要産業インフラのサプライチェーンを狙った攻撃などにより、経済的・社会的に多大な損失が生じる可能性が懸念されています。NECでは、安全・安心なネットワーク機器を提供するため、国内工場の検査による出荷・運送時のリスク対処と、機器のセキュリティ情報を網羅的に収集・分析する製品による運用時のリスク対処をサポートします。本稿では、工場で実施しているセキュア生産・検査とNECで開発した製品を用いたセキュア運用で実現するサプライチェーン管理強化の取り組みを紹介します。
ネットワーク活用ソリューションとそれを支える技術
通信事業者向け測位ソリューション
大山 博毅・津村 周典・大塩 啓一・牧野 加奈子・吉田 一貴

スマートフォンの普及とともに、地図アプリケーションなどの位置情報を使用したサービスが日常的に利用されるようになりました。近年は、自動運転、建設機械、ドローンなど、さまざまな用途でも位置情報が活用され始めています。位置情報の活用シーンの多様化とともに、位置を特定する測位技術への要求も高まっています。NECは、測位精度の向上や測位時間の短縮、測位可能なエリアの拡大を実現する測位ソリューションを通信事業者向けに提供しています。本稿では、NECの測位技術への取り組みと、通信事業者向けの測位システムを紹介します。
5Gのポテンシャルを最大限に引き出すトラフィック制御ソリューション(TMS)
山中 浩充・住吉 泰明・荒井 祐一

モバイル通信事業者は、環境問題に対する意識の高まりと、5Gサービスの開始を背景に、「パケ詰まり」への対策、通信設備のTCO(Total Cost of Ownership)削減、カーボンニュートラル達成という3つの課題を抱えています。トラフィック制御ソリューション(TMS)は、通信状況に応じて送信可能なデータ量をリアルタイムに予測することで、5Gの潜在能力の高さによって引き起こされるパケ詰まり現象を解決します。通常時は5Gのポテンシャルを最大限に引き出すことで高速通信を実現しつつ、特定時間や場所でのアクセス集中や瞬間的な混雑によるスループット低下を改善します。また、無駄なデータ送信が減ることにより、通信設備のTCO削減やカーボンニュートラル達成にも貢献します。
ローカル5G向け小型一体型基地局「UNIVERGE RV1200」及びマネージドサービス
山 哲夫・岡田 真明・宮崎 誠・藤田 崚平

デジタルトランスフォーメーション(DX)の広がりとともに、5Gを民間活用するローカル5Gに注目が集まっています。電波の利用はこれまでモバイルキャリアにのみ割り当てられてきましたが、電波リソースの有効活用には民間の投資を呼び込み、社会価値創造を実現することが必要と政府が判断、新たなプレイヤーを巻き込んでいます。しかし、技術の複雑さもありシステムコストが高止まることで、普及が難しい状況でした。その課題を解決すべく、NECでは新たに「UNIVERGE RV1200」という普及価格帯でのシステム構築が可能となるローカル5Gシステム及びマネージドサービスを開発しました。この新製品・サービスの特長や活用シーン例などについて紹介します。
産業DXを支えるローカル5G活用によるバーティカルサービス
吉本 明代・酒井 佑・岩折 崇志
ローカル5G、LAN/RAN融合ソリューション
小島 英一郎・藤井 康平・内藤 勇将・沈 忱

総務省や厚生労働省のガイドラインが更新され、ガイドラインに関連する自治体や病院の既存ネットワークにローカル5Gを導入する機運が高まっています。一方でセキュリティ確保のためのネットワークの分離は依然として求められており、ローカル5Gを含むネットワーク全体でのネットワーク分離の実現は必要不可欠です。本稿では、NECがこれまで市場に提案し多くのお客様で導入されてきたSDNソリューションの中核技術である仮想ネットワーク技術を拡張し、ローカル5G技術を組み込む実現方式を紹介します。
グローバル5G xHaulトランスポートソリューション
トランスポートネットワークの高度化を実現するxHaulソリューション・スイート
萱原 雅之・飯田 智之・越智 崇太郎

5Gの普及とともに、ネットワークの重要性はより高まっています。End-to-Endで5Gの能力を最大限に引き出すためには、無線部だけでなくトランスポートネットワークも5G時代に合わせて進化することが必要です。これまでのトランスポートネットワークはスピードと容量が最重要の指標でしたが、これに多様性や迅速性、拡張性を加え、更に、より重要性が増すセキュリティを強化した新たなトランスポートネットワークへのトランスフォーメーションが、通信事業者に求められています。本稿では、それら課題を解決するNECのxHaulソリューション・スイートについて紹介します。
xHaulトランスフォーメーションサービス
今中 賢一・ハサノフ ジュラベック

通信事業者が運用するネットワークにおいて、ITコンピューティングと同様に、オープン化やマルチベンダー化が急速に進展しています。このような流れを受けて、トランスポートネットワークにおいてもIPルータや光伝送装置などの導入検討に際し、考慮すべき技術要件が複雑化しています。本稿では、このような技術動向を見据え、世界の通信事業者に対しネットワークシステムインテグレーターとして、コンサルティングとエコシステムを軸としたベストオブブリードなソリューションを提供するためのサービスメニュー、グローバル体制、事例について紹介します。
xHaulトランスポート自動化ソリューション
スチプト クリスチアン・園部 玄樹・飯田 智之

社会インフラとしてネットワークの重要性が高まるなか、通信事業者はサービス提供の迅速性と運用コスト抑制を両立する自動化ソリューションに注目しています。しかし、通信業界特有の運用面の複雑さもあり、自動化ソリューションの導入が思うように進まないといった課題があります。NECのxHaulトランスポート自動化ソリューションは、マルチベンダーによるエコシステムと自動化導入支援サービスによって構成され、通信事業者が自動化ソリューション導入時に直面するさまざまな課題を解決します。本稿では、NECのxHaulトランスポート自動化ソリューションの詳細について紹介します。
5G/Beyond 5Gにおける固定無線トランスポート技術
小川 貴稔・園部 悟史

5G/Beyond 5Gでは、トランスポートネットワークにおいても更なる大容量化が求められています。海外のトランスポートネットワーク市場では、設置容易性やTCO削減の観点でモバイルバックホールに固定無線システムが多く使用されてきましたが、クロスホール(xHaul)の標準仕様が策定されたことで、さまざまな5G/Beyond 5Gのシチュエーションの展開に合わせて、xHaulへの固定無線システムの適用拡大が期待されています。 本稿では5G/Beyond 5Gにおける固定無線トランスポートの概要と、それを支える技術及び製品について紹介します。
Beyond 5Gに向けたSDN/自動化
市丸 和史・河田 広次・松本 有造

5G/Beyond 5Gネットワークでは、無線トランスポートネットワークの効率的な利用に向けSDN/自動化の対応が求められており、ONF、IETF、ETSIなどの標準化団体では、NETCONFを用いた装置監視制御インタフェースやデータモデルの標準化が進められています。NECの無線トランスポート装置PASOLINKとネットワーク管理システムUNMS(NEC Unified Network Management System)は、これらの標準化に準拠しSDNオーケストレータと連携することで、無線トランスポートネットワーク運用の自動化ソリューションを提供します。
高効率・大容量無線伝送を実現するOAMモード多重伝送方式
佐々木 英作・平部 正司・宮元 裕章

マイクロ波・ミリ波通信システムは世界各地でモバイルバックホール用途に使われていますが、Beyond 5G/6G用途では、50Gbps以上という従来方式では対応が困難な大容量化が求められます。本稿では、高効率・大容量化が実現可能、かつ広帯域が利用可能な高周波帯に適した通信方式であるOAMモード多重伝送方式について、その原理・特徴・課題・実装方法を紹介します。本技術の実現性実証のため行ったサブテラヘルツ帯での実時間伝送実験では、偏波多重との組み合わせにより、256QAM/16多重(14.7Gbps)の100m伝送に成功しました。商用化に向けた開発では、100Gbps伝送の実現を目指します。
Beyond 5G/6Gに向けて
Beyond 5G時代に向けた取り組み
永井 研
NEC Information
2022年度C&C賞表彰式典開催
NEC技報 人気コンテンツ
近い将来、AIの普及によって社会のあり方にさまざまな影響が出ることが予想…

AI時代における社会ビジョン ~人々の働き方、生き方、倫理のあり方~
マイナンバーカードは、マイナンバー法に基づき地方公共団体が希望者に交付するICカードです。…

マイナンバーカードに関わる顔認証システムの活用
量子暗号は、将来にわたり解読されるリスクがなく超長期的に情報を保護できる暗号方式で、…

光が導く次世代の暗号技術「量子暗号」
サイバー攻撃は高度化・巧妙化が進み、既存のセキュリティ対策では検知も難しく、…

AI(人工知能)を活用した未知のサイバー攻撃対策
鉄道業では「AI・IoT」を活用した業務変革(鉄道DX)が加速しており、NECは「鉄道輸送」や「旅客サービス」で…

AI・IoTを活用した鉄道業務変革(鉄道DX)