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将来のリテールサービスを支える生体認証技術による新しい店舗ソリューション
バイオメトリクスを用いたサービス・ソリューション新たな顧客体験を提供する店舗づくりへの挑戦が始まっています。消費者がストレスなく買い物ができ、かつ人手不足を補うITを駆使した店舗づくりが、将来のリテールサービスを変えていくと考えています。NECでは、生体認証技術を用いることで、顧客体験の向上及び労働者不足の解消を同時に満たす仕組みづくりを行っています。具体的には、入店や決済に生体認証を用いることで、レジでの待ち時間を極小、もしくはなくす仕組みの提供を行えると考えます。本稿では、NECが目指す店舗の姿及びそのシステムのコンセプトについて紹介します。
1. はじめに
昨今、小売りサービスの高度化に関する取り組みが増えてきています。米国や中国でも先進的な店舗に対する取り組み事例が増えてきており、日本でもITを駆使した店舗の開発競争が始まっています。
少子高齢化が進み、働き手が少なくなってきている状況において、店舗業務の効率化はとても重要な課題です。また、店員が少なくなっても、サービスレベルを向上させ消費者が快適に買い物できる仕組みの提供についても、重要な課題となっています。
本稿では、新たな店舗のあり方についての考察と、そのあり方を実現するために必要な生体認証技術を用いた新たなソリューションについて紹介します。
2. 店舗の抱える課題
ECサービスの充実に伴い、実店舗での購入からインターネットでの購入に移行する消費者が増えてきています。特にスマートフォンの浸透に伴い、モバイルコマースの市場成長率は非常に高くなっています(2014年から2017年にかけて1.5倍)1)。また、単に安いものを買うのではなく、利便性が高く、プレミアム感のある商品・サービスをより好む傾向が高くなっています。このため、顧客体験をより向上させる店舗づくりが重要となります2)。
一方、少子高齢化に伴い、日本の若年層の人口は1996年と比較して、2016年では0.84倍と著しく減少しています3)。また、サービス向上に伴う業務の多様化が進み、アルバイトであっても簡単にできる仕事ではなくなってきています。このため、労働力不足に対応した仕組みの提供が期待されています。
NECでは、これらの課題は、ITにより解決できるものと考えています。

3. 将来店舗システムの全体像
ECの世界では、「消費者自身が欲するもの」を見つけ、利用している消費者個人を特定することで、その人に合った商品やサービスを提供することが可能になっています。決済についても消費者自らが手続きを行い、オンラインで簡単に終了します。
一方、一般店舗では、消費者は匿名で自ら必要なものを店員に問い合わせ、自らの足で探し当てる必要があります。また、決済時にはレジに並び、店員に購入品の情報を読み込んでもらい、決済しなければなりません。
将来の店舗では、消費者個人を特定し過去の購買情報や立ち寄り位置などを参考に、その消費者が欲するものを推定します。また、物品の位置や在庫情報を提供し、更にその物品の購入決済までをITによりアシストすることが重要となります。
このためには、何らかの手段で消費者を特定し、その消費者が何に興味を持ち、何を探しているかを理解し、提供する仕組みが必要です。また、レジ待ちをせずに簡単に決済を可能とする仕組みの提供が要求されます。
NECでは、新たな店舗づくりを実現するためにさまざまな技術を使い、店舗の高度化を推進しています。NECが考える新たな店舗システムの全体像を図2に示します。(1)入店管理、(2)棚前認識、(3)顧客行動情報取得、(4)棚前プロモーション、(5)決済(退店)管理する仕組みを含みます。

消費者の行動を精緻に分析することで、消費者に最適なサービスを提供できると考えています。そのために、前述のシステムにより消費者の入退場や棚前行動、視線情報などを収集し、それらの情報をベースに最適な棚配置や品揃え整備を行います。消費者にとっては、欲しいものが簡単に見つかり、手に入る仕組みを消費者が意識せず作り出すことが可能になります。
また、消費者の合意のもと、購入物と消費者情報を紐付け、自動で決済まで完了させることも将来的に可能になります。更に、既存のPOSシステムによる手ぶらでの生体認証決済の構築も検討を進めています。
4. 生体認証を用いたシステム詳細
4.1 入退場管理システム
事前に登録していた顔情報などを元に、消費者の入店や来店を管理します。店舗に入る前にあらかじめ顔情報を登録してもらい、入退時に誰がいつ入り、いつ退出したかをとらえます。これは、利用者が購買に至るまでの動線や興味のある情報(何を見たか、何を手に取ったか)を入手し、その人が興味のあるものや探しているものを認識するための基礎情報として利用します。
入退システムには、NECが開発したウォークスルー型入退システムの適用を考えています。従来の入退システムは、カメラに顔を向け、静止画による撮影をして、認証を行うものですが、NECのウォークスルー型入退システムでは、動画で撮影のうえ、常に認証を行っているため、店舗に近づく最中における認証を実現することで、消費者が認証のために待つことはありません。これにより、ストレスなく、一般店舗に入る気軽さでの入店が可能になります。
また、この時、誰が入店したかを記録し、利用者の店内行動の紐付けができ、第4章3節で述べるマーケティング情報との連携が可能になります。
4.2 生体認証決済システム
NECでは、キャッシュレス社会の実現に向け、決済システムの高度化を目指しています。以前より、電子マネーやクレジットカードなどのさまざまな決済手段に対応した決済プラットフォーム・マルチサービスゲートウェイ(MSGW)5)を提供しています。その高度化に向け、顔認証などの生体認証の適用を検討しています。消費者に個別IDを付与し、生体情報と紐付けを行います。あらかじめ登録していたクレジットカードなどの決済手段がこのIDと連動し、生体認証のみの手ぶらでの決済を可能にします。
登録は、登録用の端末(スマートフォンや専用端末など)で行います。顔認証をキー情報として使う場合、一般的なカメラを利用しますが、それ以外の生体認証の場合は、専用のデバイスを準備する必要があります。登録する際に、生体情報の入力とともに消費者に関連する情報も併せて入力します。クレジット決済をする場合にはクレジット情報、社員証などで決済をする場合にはその社員証ID情報などを登録します。
登録が終了すると、利用が可能になります。実際に購入する商品を選び決済時にカメラに顔をかざすと、顔認証サーバで消費者を特定し、そのIDを返します。そのID情報をベースに消費者を特定し、決済用のトランザクションが決済サーバに渡されます。このように認証が行われ、決済が完了します。
これらを短期間で容易に実現するために、NECでは生体認証決済パッケージの開発を行いました。本パッケージは、MSGWと組み合わせて提供することも、単体で提供することも可能です。顔認証に関しては、NECの提供するNeoFace Cloudを利用し、顔情報の管理をセキュアに行う仕組みを提供します。また、クレジットカード決済を行う決済代行会社とのインタフェース機能を保有し、顔認証でクレジット決済を実現します(図3)。

現在、顔認証をベースにシステムを構築していますが、将来的に指紋、静脈、虹彩など他の生体情報を利用したり、組み合わせて利用することで、一定の利便性を保ったまま、より認証精度の高い仕組みを作ることが可能となります。
4.3 マーケティングシステム
生体認証を使った2種類の仕組みを検討しています。1つ目は、リアルタイムにその消費者の年齢性別や過去の購買履歴に基づく嗜好情報を元に、デジタルサイネージ上のコンテンツ制御や消費者のスマートフォンへ情報提供を行います。その消費者が欲している情報を提供することで、購買を促すことを目的としています。
2つ目は、入店した消費者が何を買ったかを記録することができます。またその消費者特性をベースに類型化し、統計的な処理をすることで、その店舗にあった品揃えや棚割りなどの最適解を探すことが可能になります。
将来的には、視線検知により、消費者が何に興味を持ったかなどの情報をとらえることも可能になります。また、映像分析技術やセンサー技術を用いて消費者が手に取った商品などを特定することで、より精緻な嗜好情報を入手することが可能になります。NECでは視線推定エンジン、物体認識エンジン、行動検知エンジンなどの開発も行っており、前述したシステムを実現可能にしていきたいと考えています。また、入退情報や決済情報などを元に、何も買わずに帰ったとしても、その消費者が何に興味を持っていたかなどの情報を入手することもできます。それらの情報を分析することで、品揃え強化による、機会損失を減らすことも可能になります。
5. 実店舗での実証実験
将来構想に向けて、NECグループ社員向けに「セブン‐イレブン三田国際ビル20F店」(東京都港区)を2018年12月に実験店舗としてオープンしました。
本店舗では、「顔認証による決済」をはじめ、「ターゲット広告サイネージ」など、お客様の快適・便利を支えるシステムに加え、冷蔵庫などの設備情報を24時間自動収集し、安定稼働をサポートする「設備の稼働管理」や「AIを活用した発注提案」など、従業員を支えるシステムを活用することで店舗の省人化を図ってまいります(写真)。

本店舗は新たな将来店舗の取り組みの1つとして考えており、今後オフィスなどの省人店舗の展開に向け、提供していこうと考えております。
6. むすび
NECでは、更に消費者の顧客体験を向上させる仕組みに関して取り組んでいきます。また、従業員の負担を軽減し、かつ斬新な新たなサービスの創出する試みを継続し、新たな店舗サービスを支えていきたいと思います。
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参考文献
執筆者プロフィール
第二リテールソリューション事業部
バリュークリエーション部
シニアエキスパート
第一金融ソリューション事業部
マネージャー
第一リテールソリューション事業部
バリュークリエーション部
主任
第二リテールソリューション事業部
バリュークリエーション部
マネージャー