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社会価値の創出に貢献するNECの生体認証への取り組み
NECは約半世紀にわたり、生体認証事業に取り組んできたパイオニア企業です。まず特徴的なのは、グローバルでの実績です。これまでに世界70カ国以上に700システム以上を納めています。また、精度世界第1位であることもNECの生体認証の大きな特徴です。米国国立標準技術研究所(NIST)のベンチマークテストにおいて、指紋認証・顔認証・虹彩認証の3つの生体認証技術で精度世界第1位の評価を獲得しています。NECの生体認証は前述した3つ以外にも、指静脈認証・声認証・耳音響認証を有しており、それらを組み合わせたマルチモーダル認証を提供することができます。NECは、これからも生体認証技術のトップベンダーとして社会の安全・安心・効率・公平に取り組んでまいります。
1. NECの生体認証技術の特徴
NECの生体認証技術の特徴として最初に挙げられるのは、「研究開発の歴史」です。NECは、世界に先駆けて生体認証技術の研究開発を進めてきたパイオニア企業です。1971年には指紋認証、1989年には顔認証技術の研究開発を開始、世界の生体認証技術を牽引してきました(図1)。世界トップレベルの精度・速度を誇るこれらの技術は、世界中の警察や空港などを中心に各国の社会インフラを支える多くのシステムに採用され、安全・安心・効率・公平の社会価値を実現しています。

NECは、この生体認証技術の開発を一層強化・加速化するために、2018年に「バイオメトリクス研究所」を中央研究所に新設いたしました。研究所内でバイオメトリクスに従事していたメンバーを結集、生体認証の活用が進んでいくこれからの社会に対応できる研究開発体制を整備しています。
NECの生体認証技術の2つ目の特徴は、「精度の高さ」です。米国国立標準技術研究所(NIST)が主催するベンチマークテストにおいて、NECは指紋認証・顔認証・虹彩認証で世界第1位の精度を実証しています(図2)。

昨今、生体認証技術の精度はAIの活用などにより、欧米の従来の競合企業に加え、中国や新興国の企業でも、その精度は飛躍的に高まっています。NECはその状況下においても、世界第1位の精度を今後も維持できるよう努めてまいります。
3つ目の特徴は、用途の多様さです。出入国管理・犯罪捜査といった国家インフラ、ログオン認証・入退場管理といった企業セキュリティからおもてなし・マーケティングのようなサービス分野、更に機器への組み込みなど、非常に多様な形でNECの生体認証は活用されています。
最後の特徴は、「技術の豊富さ」です。前述した指紋認証・顔認証・虹彩認証以外にも、声認証・耳音響認証といったさまざまな生体認証技術を保有しています。生体認証技術にはそれぞれ強み・弱みがありますが、それらを複数組み合わせることで強みをより強化し、弱みを補完しあうことができます。NECでは、そのようなマルチモーダルでの生体認証技術の提供を一層推進していくために、「Bio-IDiom(バイオイディオム)」というブランドを立ち上げています。
2. NECの生体認証技術
生体認証技術は個人認証方式の1つで、その人だけしか持ちえない身体的・行動的特徴を利用して個人を識別する技術です。
「Bio-IDiom」のブランドのもと、NECが特に注力している生体認証技術は、
- 顔認証
- 指紋認証・掌紋認証
- 虹彩認証
- 指静脈認証
- 声認証
- 耳音響認証
です(図3)。各技術はすべて世界トップレベルの精度を誇る技術であり、NECが生体認証のグローバルリーダーとして世界を牽引しています。ここでは、各認証技術を簡単に紹介します。

顔認証
画像や映像から顔を検出し、顔の特徴を分析して人物を識別する技術です。顔は、人が相手を判別する手段として普段から利用している身近な認証方式であり、利用者へ心理的負担を与えない自然な認証で、ユーザーに特別な操作を強いることがない利便性を有しています。また一般的なWebカメラも利用できるため、特別なハードウェアの準備が必要ありません。
指紋認証・掌紋認証
生まれた時から「終生不変」、更に「万人不同」の特徴を持つ指紋・掌紋は、厳格な個人識別技術として世界中で幅広く利用されています。NECでも最も長い研究開発の歴史を有しており、独自の照合技術により高精度・高速な認証を実現しています。一方で、専用のスキャナを必要とします。
虹彩認証
黒目の中央にある瞳孔の周りに広がるドーナツ状の部分が、虹彩です。虹彩認証は、筋肉パターンである虹彩の特徴を分析して人物を識別する技術で、近赤外の照明(LED)とカメラを用いて認証を行います。非常に高精度・高速な認証技術であり、目さえ露出していればよいため、幅広い活用が可能です。暗い場所での認証に強い一方、強い外光に弱い一面を持ちます。
指静脈認証
指の内部を流れる指静脈を検出し、その特徴を分析して人物を識別する技術です。外部から見えない指の静脈情報を活用するため偽造されるリスクが低く、また非接触の認証が可能なため生体情報が装置表面に残らないメリットがあります。一方で専用のスキャナが必要となります。
声認証
マイクを用いて声を拾い、その特徴を分析して人物を識別する技術です。音声を媒介として遠隔から認証することができるため、スマートスピーカーやコールセンターでの活用が期待されています。声を出すだけという手軽で簡単な照合操作であり、専用装置が不要です。また言語に依存しないため、グローバルに活用できます。
耳音響認証
一人ひとり異なる耳穴の形状から認証を行う、長岡技術科学大学との共同研究によって生まれたNEC独自の生体認証技術です。ヒアラブルデバイスを使って、音の反響から認証します。高精度・高速な認証技術であることはもちろん、耳穴は外から見えないため偽造はほとんど不可能です。また万が一ヒアラブルデバイスが盗難にあった場合でも、認証をクリアした人物しか通信を聞くことができないため、通信内容の秘匿性を保持することができます。
3. NECの生体認証技術の利活用
~安全・安心から効率・公平へ~
生体認証技術は国家インフラ分野から生活分野まで幅広く活用されていますが、NECの生体認証技術は、まず犯罪捜査分野での実績からスタートしました。自動指紋認証システム(Automated Fingerprint Identification System:AFIS)を開発。その精度の高さが評価され、米国の警察を始めとしたグローバルの警察機関に採用されています。
また1990年代以降、新興国を中心に国家の基幹システムで生体認証を活用するケースが増えてきました。日本は戸籍・運転免許証・保険証を始めとして、個々人を証明する仕組みがしっかり整備されていますが、世界ではそのような体制が整備されていない国も多数あります。このような国々が基幹システムを整備し、国民に適切な公共サービスを提供するには、一人ひとりを正しく登録し、また精度が高くレスポンスの早い照合を実現することが求められます。
NECの生体認証は、その照合精度・速度や海外警察における実績が評価され、この分野においても多くのシステムを導入しています。国民ID管理、出入国管理、選挙民IDなど幅広い用途で活用されています。
生体認証利活用の大きな転機となったのが、アメリカ同時多発テロ事件(以下、9.11)です。これまでも生体認証は、犯罪捜査に利用されることで安全・安心に貢献していましたが、それは容疑者を特定するといったように、「犯罪の事後」に使われるものでした。これに対し9.11以降は、犯罪を「事前に防ぐ」目的での生体認証の利活用が重要視されるようになりました。この潮流に合わせ、導入が進展したのが顔認証技術です。NECでも2002~2003年にかけて、顔認証エンジン「NeoFace」の出荷を開始しました。特に2009年、米国国立標準技術研究所(NIST)のベンチマークテストで初めてNECの顔認証技術が精度評価首位を獲得してから、多くの引き合いを受けるようになりました。
このように、NECの生体認証は、安全・安心な社会の実現に貢献してきましたが、昨今ではそれだけでなく、効率・公平の点においても活用が進んでいます。
前述しました国家の基幹システムにおける生体認証の利活用は、安全・安心に貢献する一方で、国民に平等な社会サービスを提供するとともに、業務効率性を高めるといった側面があり、効率・公平な社会の実現に役立っています。
また、顔認証技術はSNSやスマートフォンに使われることにより、その認知度が一気に増し、利活用の裾野が非常に広がりました。本特集で紹介する口座開設、決済、おもてなし、入退管理、ロボットやものづくりのための機器への組込みなどへの利活用は、カスタマーエクスペリエンスの向上を実現し、顧客価値の高い新たなサービスの創出へとつながります。NECの生体認証はこのような社会の動向に合わせ、安全・安心・効率・公平という社会価値を提供できるように努めてまいります。
4. むすび
NECでは、これらの生体認証を組み合わせる「マルチモーダル」認証を提供することが可能ですが、それに加えNECが保有している他の技術との連携により、他社にはない価値を創造することができます。まずは、映像分析技術との組み合わせです。群衆行動解析・遠隔視線推定・性別/年齢推定といった技術との組み合わせで、街中監視やスタジアムなどの入退場管理で導入されています。
更にNECは、「コンピューティング」「ネットワーク」「AI」といった領域でも先進技術を有する世界でも数少ないICTベンダーです。このような総合力、及びこれまでの実績を強みとして未来を見据えた新しい社会の実現に貢献していきます。