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バイオメトリクスを用いた社会価値創造特集によせて

田熊 範孝
TAGUMA Noritaka
急速に進むデジタルトランスフォーメーションにより、これからの社会は更なる変化を遂げようとしています。実世界のヒト・モノ・コトがデジタルでつながり、利便性が飛躍的に向上する一方、なりすましや悪意のある攻撃のリスクをいかに回避するかということが課題となります。そこで有効性の高いソリューションとして注目を集めるのが、バイオメトリクスと呼ばれる生体の個体認証・識別です。
バイオメトリクスは、実世界とデジタルの世界を「安全」という扉でつなぐ重要な技術です。特にデジタルトランスフォーメーションが進展するであろう近い将来においては、更に重要になるでしょう。
NECは1971年に指紋認証技術の研究を開始して以来、40年以上にわたり研究開発を行ってきました。生体認証技術は、一般的には顔認証や指紋認証が有名ですが、NECは現在、顔、虹彩、指紋・掌紋、指静脈、声、耳音響の6つの生体認証技術を有しており、いずれも世界トップクラスもしくはNEC独自の技術です。NECでは、これらの生体認証を「Bio-IDiom(バイオイディオム)」と称し、さまざまなニーズやシーンに応じて使い分け、ときには組み合わせることで、なりすましや悪意のある攻撃のリスクを排除し、「誰もが安心してデジタルの利便性を最大活用できる社会」を実現していきます。
バイオメトリクスは、今や世の中で幅広く用いられています。例えば、指紋や顔での本人確認は、施設などの入退場管理を始め、個人が保有するPCやスマートフォンでも広く利用されています。これら本人確認に用いられる技術は、本人が認証される意志を持つことを前提としています。この場合、センサーと認証対象との距離やセンサーが見込む向きなどを最適に設定しやすい技術的な利点があり、かつ利便性向上やセキュリティ強化のメリットも大きいため、社会に受容され広く普及している状況にあります。
一方、例えば同じ顔認証ではあっても、監視カメラなど不特定多数の人が映る映像から、特定の人を認識する方式もあります。こちらは本人が認証される意志を持たないことから、技術的難易度は前者と比較してかなり高い状況にあり、NECは顔認証技術の更なる強化とともに、人物照合技術なども組み合わせて精度の向上を図っています。また改正個人情報保護法といった法規制の遵守に加え、プライバシーや人権への配慮などの観点から、導入に対しては慎重な対応が必要となります。技術面のみならず、こうした運用面の課題に対してもNECは専門組織を設け、AIや生体情報など各種データを扱う事業で生じる新たな課題への対応力を強化しています。
バイオメトリクスは指紋認証のセーフティ分野での活用から始まり、主に安全・安心の価値を提供して発展してまいりました。今後、バイオメトリクスの活用は更に加速し、リテール、交通、金融、行政など各分野での顔認証による利便性・セキュリティの向上が現実のものとなり、人々の日常生活において、一層不可欠な手段となるでしょう。更に、マルチモーダルという複数の認証技術の組み合わせによるバイオメトリクスが日常生活の多様なシーンで活用され、安全・安心な価値の提供にとどまらず、効率・公平な社会の実現にも貢献すると期待されています。
NECは安全・安心・効率・公平という社会価値の創造に貢献できるバイオメトリクスのメリットを最大限に生かすべく、必要な精度・利便性などを実現する技術や、ソリューションの研究開発に努めてまいります。
本特集では、NECが推進するバイオメトリクスに関する取り組み、お客様に提供するサービスやソリューション、それを支えるNECの先端的な技術について紹介します。
本特集をぜひご一読賜りますとともに、引き続き、皆様のご指導、ご鞭撻をよろしくお願いいたします。