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No.1(1月) 企業における情報セキュリティ特集/ナノテクノロジー特集
Vol.60 No.1(2007年1月)
企業における情報セキュリティ特集
執行役員常務 丸山 好一
執行役員 岡田 高行
Web2.0に代表される新潮流のなかで、今日では、大規模・複雑な業務システムの高信頼性、高セキュリティが従来以上に求められています。その一方、セキュリティの脅威も日進月歩であり、予期せぬ脅威が発生したときに、これまでよりはるかに早く対応を取り、脅威の拡散をすぐ抑えるような対策が必要になります。
本特集は、この難問に応えるためのNECのセキュリティ技術や製品、ソリューションをご紹介することを目的としています。本稿では、特集に含まれる各論文の概要紹介と位置づけを行なっています。基盤技術のカテゴリでは、NECの考えるアーキテクチャ「協調型セキュリティ」とInfoCageの新シリーズを中心に先進技術や製品を紹介します。一方、ソリューションや事例のカテゴリでは、お客様の先進事例やNEC自身の情報漏えい対策の戦略や実際についてご紹介します。
基盤技術
則房 雅也・後藤 淳・森野 淳一・矢野尾 一男・榊 啓・寺崎 浩
ブロードバンドネットワーク、持ち運び容易な高性能PC、便利なアプリケーションなど、企業のIT環境が飛躍的に充実するのに合わせて、セキュリティ管理対象と複雑さが飛躍的に増えました。求められる対応の速さは「ゼロ」という言葉が使われるほどに短くなっています。情報とその器が移動するため、静的かつ単一なセキュリティ対策製品ではカバーできない課題が多く出てきています。そこで、今回「協調型セキュリティ」という考え方を導入します。これにより対象領域の異なるセキュリティ製品が連携して機能し、移動する情報と器に対して二重三重のセキュリティ管理を実現し、企業内に高いセキュリティレベルを維持します。これを具現化するのが、新しいInfoCage製品群です。また「協調型セキュリティ」はパートナー製品にも広げ、紙文書や入退管理システムなど、異業種製品とのセキュリティ連携を深めていきます。
安留 良夫・安達 智雄・吉田 享之
内部統制を図る上での1つの課題であるセキュリティポリシの遵守を実現する手段の1つとして、検疫ネットワークの重要性が高まっています。検疫ネットワークを実現するには複数の検疫方式が現存しているため、システムの導入に当たっては検疫方式の選定が重要です。本稿では、検疫機能の動向、各検疫方式の特徴とシステム導入の際の検討ポイントを述べ、NECの取り組みについて紹介します。
田中 伸佳・桑田 雅彦
企業は情報システムごとに利用者情報の管理を実装してきた結果、直面している問題を解決するために、また、社会的にも法規制としても求められている内部統制強化のために、情報システムや企業秘密情報への厳密なアクセス管理の基になるID情報の管理を統合し厳密化する必要があります。NECは、社内外での豊富な統合ID管理システムの導入経験で苦労したことを生かしたコンサルティングと、自社製品のSECUREMASTERを提供し、統合ID管理システムの整備を効率的に進めることに寄与します。また将来的には、企業がそれぞれの価値を組み合わせて新しい価値を生み出したり、多様な組合せの統合サービスを実現したりできるような統合ID管理基盤をめざします。
島津 秀雄
企業では、膨大な量の電子ドキュメントが作成され、個人のPCやファイルサーバに格納され、流通されており、そこには機密性の高い情報が多数含まれています。それらは、必ずしも十分には管理されておらず、情報漏えいのリスクを増大させています。
本稿では、電子ドキュメントが「自分で自分の身を守る」コンテンツセキュリティのアーキテクチャを紹介します。コンテンツセキュリティの導入により、電子ドキュメントの情報漏えいに対する防衛能力が大幅に向上します。
早野 慎 一郎・谷川 忠・北風 二郎
本稿では、高まる情報漏えいのリスクに対応して、エリア管理の考え方を取り入れた新しい方向を示します。従来、個別に導入されていた、人、物、 PC、ネットワーク、情報コンテンツの管理について統合ID管理を中心として連携させることにより、いつ誰がどこで情報に対して何をするのかを管理できることを述べます。具体例として、 PCと入退場の連携などにより、情報アクセス場所を限定し、それを記録できること、映像処理により入退場セキュリティをさらに高め、管理を効率的に行えることを紹介します。
ソリューション
伊藤 愼
情報セキュリティ対策は、いったいどこまでやればよいのか?-営業支援部門に身を置くものとして、多くの企業・団体のお客様からお聞きするテーマです。情報セキュリティに関わる脅威(リスク)の種類は多く、また、日々新たな脅威が出現してきます。本稿では、安心できる情報セキュリティ対策とは何か、また、そこに至るためには何が必要かについて、お客様に対応するなかで得た考えを述べます。
導入事例
酒井 雅啓・三上 明子・伊藤 篤史・宮本 真悠子
昨今、企業では個人情報保護法への対応をはじめとしてセキュリティを高めるために様々な施策を行う必要があります。市場動向や技術動向により実施すべき対策内容も変化するため「一度導入したら終わり」とはならず、継続的な対策が必要です。また、現在では情報システムのすべてでセキュリティが求められており個別対策の積み重ねのみでは限界があります。
また、内部統制、知財戦略などから電子文書のセキュリティへの意識が高まってきています。企業を取り巻くステークホルダーに対して、企業内で作成された文書の信憑性、証拠力を示す必要が出てきています。
本稿では、段階的かつ継続的なセキュリティ強化を実現するための「社員証ICカード」、電子文書の証拠力を高めるための「電子文書の長期保存署名」について、 NEC社内事例をもとに紹介します。
田村 卓・神田 昌彦
現在、NECでは、新InfoCageシリーズを核に、ITにより情報漏えいを防御するための仕組み(ARGUS:NEC Information Audit-trail &Guard System)を開発しています。その目的は、これまでは規則やモラルに頼らざるを得なかったオフィスの外での作業や情報を第三者に預託するケースにおいてもITによる管理下に置き、情報漏えい事故を防止する、あるいは発生しても影響を最小化することを実現することにあります。 ARGUSは、2006年度下期より一部の部門で先行導入を開始しており、2007年度よりNECグループへの本格導入を開始する予定です。
宮原 博昭
情報セキュリティにおける昨今の潮流としては、個人情報保護法に加え、差し迫る日本版SOX法の施行を見据えた内部統制の観点からセキュリティ状況の可視化の必要性を挙げることができます。またユーザ企業様や官公庁様では、ITシステムの増加にともなうID/パスワード管理の限界や雇用環境の流動化により、セキュリティリスクへの認識が非常に高まってきています。本稿ではある先進的なお客様企業の事例をベースに、認証情報など様々なユーザ情報を一元管理し、かつICカードを社員証として共通利用することで利便性や運用性での様々な課題を解決して運用にいたるまでの進め方についてご紹介します。
ナノテクノロジー特集
馬場 寿夫
NEC では快適なIT 社会の実現に向けて、高度なIT・ネットワークシステム構成の革新技術としてナノテクノロジー(ナノテク)の開発に80 年代後半から取り組んでいます。本特集では、ナノ構造特有の物理現象を革新的なナノデバイスに結びつけるNECの開発戦略、外部連携によるオープンイノベーションの活用、世界最先端のナノ材料,ナノ加工,ナノ評価,ナノシミュレーション技術などの保有基盤技術、代表的なナノデバイス技術を紹介します。
ナノテクノロジー基盤技術
飯島 澄男・湯田坂 雅子・二瓶 史行
ナノ材料の代表であるカーボンナノチューブ(CNT)は、1991年にNECにおいて発見されました。その特異な形状と強靱性、高電気伝導性、高熱伝導性などの特徴を持つことから、その一形態であるカーボンナノホーン(CNH)とともに、トランジスタ、燃料電池などのエレクトロニクス領域や環境・バイオなど幅広い応用が期待されています。ここでは、CNT、CNHの特徴と魅力を紹介し、その応用分野について紹介します。
石田 真彦・藤田 淳一・成広 充・市橋 鋭也・二瓶 史行・落合 幸徳
ナノの世界には、それ以下には誰も作れないサイズ、誰も見ることができないサイズ、といった限界/フロンティアが多く存在します。ナノメートルサイズの加工技術や評価技術は、これらを打破し大きなアドバンテージを得るための重要な技術です。
NECは、10nmレベルの微細加工を実現する電子線露光用の超高解像度レジスト、カリックスアレーンを開発、製品化し、ナノデバイスの開発に適用してきました。さらに、その解像度よりも微小な1nmレベルの金属微粒子を作製する技術(LANS)を開発し、カーボンナノチューブ(CNT)の特性制御に応用しています。また、三次元の立体ナノ構造物作成技術と、ナノ評価技術として優れた透過電子顕微鏡(TEM)技術を組み合わせることで、 CNTの成長過程の観察にも成功しました。
宮本 良之・高原 浩志
ナノテクノロジーは「おおよそ1から100ナノメートルの次元の物質を理解しかつコントロールすること」といえ、この現象を正しく理解することにより、ナノテクノロジーへの実用化のために役立つ予測が可能になります。 NECではハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)を利用したナノシミュレーション技術を開発してきました。
本稿では、ナノシミュレーションの基礎と、NECで近年開発しましたシミュレーション技術を紹介し、燃料電池に必要な触媒や、カーボンナノチューブに対する応用事例を紹介します。
エレクトロニクス・フォトニクス
西 研一・賣野 豊・大橋 啓之
LSI を作製する最先端の技術を用いて、ナノレベルの微小構造によって光を制御する“Si ナノフォトニクス”は、従来の光素子と比べて桁違いの小型・低消費電力化を可能とし、また、これまで光による信号伝送は困難と考えられてきた、LSI内部への適用によって、LSI の高性能化までも可能とすることができます。このSiナノフォトニクス技術によって、NEC は次世代のネットワークや、LSIの革新に向けた新しいデバイスを実現しつつあります。
阪本 利司・帰山 隼一・水野 正之・寺部 一弥・長谷川 剛・青野 正和
NECは、再構成LSI回路を高性能・低コスト化するためのスイッチとしてナノブリッジを開発しています。ナノブリッジは、2種類の金属で挟まれた固体電解質から構成されます。その特長は、スイッチのサイズが小さく(<30nm)、かつ、オン状態における抵抗が低い(<100Ω)ことです。一方で、ナノブリッジにはスイッチング時の電流が大きいという課題があります。本稿では、スイッチング電流の低減が可能な3端子ナノブリッジについて述べます。3端子ナノブリッジでは、電流経路と制御電極を分離することでスイッチング電流を低減できます。
機能素子
中田 正文・川上 祥広・岩波 瑞樹・大橋 啓之
酸化物は多様な構造に起因する優れた機能を持ち化学的に安定なため、ユビキタス社会に必要とされる多岐にわたるデバイスの機能材料として期待されています。エアロゾルデポジション(AD)法は、超微粒子材料の衝突付着現象を利用したナノ結晶膜形成方法であり、酸化物膜を、基板材料を選ばずに形成することが可能です。 AD法の応用として圧電デバイスと光デバイスの開発を進めています。