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佐賀県医療センター好生館様
管理職クラスの医師や看護師の業務をRPAで自動化
診療録の量的監査や看護のケア・算定の情報収集を自動化し、診療の質と地域連携を強化
- 業種:
-
- 医療・ヘルスケア
- 業務:
-
- その他業務
- 製品:
-
- ソフトウェア/RPA
- ソリューション・サービス:
-
- 働き方改革
事例の概要
課題背景
- 病院機能評価における診療録の監査件数が少ないとの指摘を改善したい
- 患者や家族への説明内容を抜け漏れなく診療録に記載することで、診療の質と診療連携を強化したい
- 単純で長時間を要する誰もがやりたくない業務を人からRPAにタスクシフトさせたい
成果
診療録の量的監査を自動化し、管理職クラスの医師の負担を大幅に軽減
管理職クラスの医師が行わなければならない監査業務にRPAを適用。月約1,000件の診療録の全件監査を自動化することで導入し、医師の負担を増やすことなく監査業務を改善した
不備のない診療録の共有により、地域医療との連携を強化
ダイナミックテンプレートを活用し、抜け漏れしにくい診療録を実現。不備のない記録を確実に共有することで、看護師やスタッフのみならず地域医療機関への情報共有の質を向上させた
DX推進を担当する職員を配し、成果につながる働き方改革を推進
医師のみならず看護部、薬剤部、リハビリ、医療秘書などの部門でも現場主導のRPA化を推進。医療情報部内のDX推進室が支援することで、働き方改革を最短で成果につなげる環境を整備した
導入ソリューション
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事例の詳細
導入前の背景や課題
病院機能評価で指摘された診療録の監査件数の課題が管理職クラスの医師の負担に
佐賀県医療センター好生館様(以下、好生館様)は1834(天保5)年、佐賀藩主 鍋島直正公が創設した医学館・医学寮を起源とする歴史ある病院です。現在も佐賀県の中核病院として高度な医療を提供し続けています。こうした高度な医療の継続に向け、今大きな懸念となっているのが人手不足です。
「2019年に医療従事者を対象とした働き方改革が施行され、さらに2024年からは医師にも労働時間の管理が厳格化されました。こうした課題に対応するために、当館ではICTを活用した業務の効率化を積極的に進めています」と同院で館長を務める田中 聡也氏は語ります。
その具体策の1つが診療録監査業務の効率化です。診療録は患者の診療結果や治療方針といった医療行為において重要な情報を記録しています。好生館様はこの診療録を地域の診療所に公開している全国でも先進的な医療機関です。診療録の公開は、患者のスムーズな情報共有を実現し、地域一体となった医療の連携を可能にします。これは佐賀県の高度先端医療を支える好生館様にとって重要なミッションです。ただし、前提として「適切な診療録を担保していること」が不可欠となり、その監査業務は管理職クラスの医師に大きな負担を課していました。
「多忙な医師が診療と同時に抜け漏れなく対応するのは難しく、また、必要な記録が診療録のどこに記載されているのかがわかりにくいことがありました。そこで当館では管理委員会の管理職クラスの医師4人で記録内容の監査を行っていますが、現実的に全件監査は難しく、4人で月十数件分の抜粋監査を行うのが限界でした。この業務をICTで効率化し、監査数を増やすことが大きなテーマとなっていました」(田中氏)。
選択のポイント
電子カルテベンダーが提供して活用できるRPAが採用の決め手
そこで田中氏が着目したのがRPAでした。独自に調査を重ねるとともに同院の電子カルテ導入ベンダーであるNECに相談。かねてより広く効率化を推進し成果を出したいと考えていた館長と理事長の意向もあり、NECが電子カルテと連携する医療向けRPAの説明とデモを多数の職員を対象に実施。簡単で業務の効率化に役立つと多くの職員に好評であったため、「NEC Software Robot Solution」のテスト導入がスタートしました。
「RPAの選択では、電子カルテで利用できることが必須要件でした。NECは電子カルテのベンダーでもあるため業務理解や連携のノウハウに富み、支援やセキュリティ面も含めて安心して導入できると判断しました。また、NEC Software Robot Solutionはプログラミング未経験者でも簡単に自動化を実現できる点も広く活用する条件にも一致していました」と田中氏は語ります。
実際、同院の看護師長の藤原 友紀氏も、「対象範囲や操作内容を指定するだけで簡単に業務が自動化できることに驚きました。VDI(仮想デスクトップ)化された院内システムでもNEC Software Robot Solutionが稼働することが確認できたので、これなら幅広い業務を自動化できるのではないかと感じました」と振り返ります。
同院 DX推進室 副室長の大熊 義明氏は「運用コストを最適化できるフローティングライセンス(端末にひも付くライセンスではなく、同時利用数で管理され、複数の端末間で共有して使えるライセンス)も導入の決め手になりました。管理画面では、どの端末がどの業務を行っているのかを把握できるので、ライセンスを有効活用するための計画やITガバナンスもやりやすくなると考えました」と語ります。
導入後の成果
診療録監査の全件自動化で医師の負担軽減と質的監査の強化を実現
2023年9月、本格導入を開始した好生館様とNECは、診療録の全件監査の自動化に成功するにとどまらず、診療録をテンプレート化することで記録する際の手間の削減や、監査結果をもとに医師に記録を促すフローを回すことで診療録の記録率の向上も同時に実現しました(「図 RPAによる診療録監査の効率化」参照)。NECの電子カルテMegaOakHRの特長機能である「全文検索」と「ダイナミックテンプレート」を利用したNECならではのソリューションを活用しています。
「診療録監査には、内容を読み込んで精査する質的監査と、必要項目が記載されているかをチェックする量的監査の2つがあります。量的監査は単純ですが件数が多く、全件監査は実質不可能でした。RPAにより量的監査が自動化され、4人の医師の労力は増やさずに監査の質を上げることが可能となりました。」と田中氏。
診療録の記録率向上やテンプレート化は、看護師やコメディカルスタッフとの情報共有を迅速化し、その先にある地域医療の質的向上にも大きく貢献しています。診療録が不備なく記録され、かつその情報が探しやすくなることで、患者の意向や同意の有無、治療の方針などが確実にわかるからです。
もちろんRPAの効果は診療録監査だけにとどまりません。「看護部では、入退院支援加算(患者が入院する際に感染や褥瘡(じょくそう)などのリスクがあるか、といったリスク評価を行う)という業務で、これまでは医事課と看護部が複数のシステムで情報をやりとりする上、手作業も加わり非常に労力がかかっていました。この業務をRPAで自動化したところ、算定時間が劇的に削減でき、入力漏れやミスもなくなりとても助かっています」と藤原氏は話します。同院では、誰も積極的にやりたがらない単純作業を、RPAにタスクシフトすることで人手不足の解消につなげているのです。
最後に大熊氏は「薬剤部やリハビリ、医療秘書(医師事務作業補助者)などの部門で、現在29のRPAシナリオが活躍していますが、ライセンスが足りない日も出てきています。現場へのRPAのさらなる浸透にあわせてライセンス数を増やし、業務改革と働き方改革を加速させていきます」と語りました。
NEC担当スタッフの声
現場目線で医療現場をサポートし、働き方改革を支援したい
常に多忙を極める医療従事者の働き方改革は人手不足に悩む医療業界にとって喫緊の課題です。NECは2018年から医療分野でNEC Software Robot Solutionの活用活動を開始し、夜間・休日を含め24時間365日稼働するRPAの特性を利用しながら、さまざまな医療業務の効率化と負担軽減に取り組んできました。
今回、館長の田中様からお声掛けいただいたのは、従来多かったコメディカルスタッフ向けではなく、管理職クラスの医師が行っていた監査業務を代替する新しい取り組みでした。医師本来の高付加価値業務にかける時間の創出は、同じ医師である私にとっても実現したい課題でした。
今回成功につながった最大のポイントは、病院のトップ層自らが「ITツールで病院を改革していくんだ」という強い意志のもと、プロジェクト体制を構築できたことにあると思います。幸いにもNECの九州支社の支援とともに看護師長 藤原様、DX推進室の大熊様とRPA活用に向けた現場力も豊富でしたので、RPAで実現したいこと、業務改革や働き方改革のビジョンなどを共有しながらスピーディかつさまざまな業務に導入を進めていくことができました。
NEC Software Robot Solutionは、医療事業を展開するNECグループのRPAツールですので、電子カルテや病院内システムとの連携は、現場目線と豊富な医療知識を持つSEや社員でもある医師のサポートも含め大きな強みがあります。もちろん電子カルテや病院内システムとの連携は、NEC以外のソリューションでも可能です。
またフローティングライセンスなど、現場のニーズやコストの最適化を支援する価格体系も充実しています。働き方改革を支援するため、今後はAIなどの新技術も採用しながら医療向けRPAソリューションのさらなる強化を図っていきます。
お客様プロフィール
地方独立行政法人 佐賀県医療センター好生館
所在地 | 佐賀市嘉瀬町中原400番地 |
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病床数 | 450床 |
診療科目 | 総合内科、呼吸器内科、消化器内科など計34科 |
概要 | 佐賀県の医療拠点として長年にわたり高度な医療を提供。医療機関同士で役割を分担しながら患者を診ていく地域医療連携の強化、地域包括ケアシステムの構築にも力を注いでいる。 |
URL | https://www.koseikan.jp |
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(2024年10月24日)
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