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NECスペーステクノロジー
PC-98で独自開発された人工衛星機器の試験装置を
既存プログラムに触れずにWindows環境へ安全に移行
- 業種:
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- 製造・プロセス
- その他業種
- 業務:
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- 設備保全
- 設計・開発・製造
- 保守・サービス
- 製品:
-
- ソフトウェア/その他
- 周辺機器
- パソコン・タブレット
- ソリューション・サービス:
-
- 基盤技術/サーバ仮想化/デスクトップ仮想化
- IoT
- サービス/その他
事例の概要
課題背景
- 人工衛星に搭載する機器に組み込まれたマイコンの試験装置(ICE)がPC-98を用いて開発されていた
- 当該衛星は今後5年以上の運用が予見でき、衛星搭載機器のお問い合わせに対応する必要がある
- ICEは独自ノウハウによるハードウェアとソフトウェアの固まりであり、当該衛星の稼働中はその環境を維持する必要があった
PC-98のハード/ソフトをそのまま移行
PC-98を利用したICEは独自ノウハウの固まり。そのソフトウェアとハードウェアを新たなPC環境に移行後も動かすことができるため、一から同様の環境をつくる莫大なコストや手間をかけずに済み、使い続けることができるようになった
稼働中の人工衛星を継続的にフォロー
PC-98によるICEを用いて開発した機器が搭載されている人工衛星は、今後も長期間稼働することが予見される。当該衛星の機器について詳細な技術的問い合わせがあった場合、そのICEによって対応が可能となる
今後の海外展開を支える信頼性のベースに
第1号の海外輸出であるベトナム向け地球観測衛星「LOTUSat-1」。
その搭載機器開発も当該ICEが用いられており、打ち上げ後のフォロー体制を構築することがその後の海外展開に繋がる
成果
導入ソリューション
PC/FC-9800シリーズ対策ソリューションではPC-98のOS/ハードウェア/ソフトウェアをそのままWindows搭載の最新PC端末に移行。USB-Cバスアダプタを用いれば、現在稼働しているCバス拡張ボードも使い続けることができる。
大きなポイントは、既存の生産設備コントローラなどのプログラムに一切触れず、PC-98の中味をそっくりそのままWindows環境に移植できること。これによって、プログラムをWindows用に書き直すような場合に比べ、不具合の発生や評価工数を最小限に抑えられることから、リプレースにかかる期間やコストを大幅に削減することができる。
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事例の詳細
人工衛星搭載機器の開発・試験装置にPC-98を利用
人工衛星やロケットに搭載する機器の開発および製造を手掛けている、NECスペーステクノロジー。H-IIA/H-IIB、H3、イプシロンといった国内の主要なロケットや、日本初の「おおすみ」以降、「あかつき」「はやぶさ」「ASNARO」などの人工衛星、そして宇宙ステーションの「きぼう」に、送信機やアンテナ、データ収集装置など様々な搭載機器を提供しています。国内だけでなく海外にも提供し、人工衛星搭載の通信機器においては輸出実績も豊富です。
同社では1980年代から、こうした機器に組み込まれるマイコン(CPU/MPUおよび周辺回路)の試験装置「ICE:In Circuit Emulator」を、外部のメーカーとともにNECのPC-98を利用して開発、活用してきました。
「学生時代から親しんでいたPC-98によるICEを与えてもらい、これを面白く活用しながら開発や検査業務に当たってきました」と松島氏は言います。
導入前の背景や課題
「独自仕様のICEを開発するPC端末として、品質の信頼性だけでなく、仕様がわかることや日本語でのサポートが受けられるといった重要な選定要素を備えるものとしては、当時PC-98しかなかったと思います」と檜原氏が振り返ります。
宇宙空間に打ち上げられるロケットや人工衛星は、±100℃以上の温度差や戦闘機の7倍以上と言われる振動レベルにさらされます。また、宇宙空間には大量の放射線が存在しており、搭載機器のソフトウェアプログラムも影響を受けています。
搭載機器は、そういった過酷な環境の中でも安定的に運用されなければならず、その開発には独特かつ高度なノウハウが必要です。開発を支えるICEにも、こうしたノウハウが注ぎ込まれてきました。
人工衛星は、打ち上げられてから5年程度は稼働する前提でつくられていますが、近年では技術レベルの向上により10年以上稼働することが普通になっています。したがってお客様からの問い合わせが長期にわたることもあります。こうした場合、利用状況を再現すべく開発に用いたICE上で状況を再現し、対応策を検討する必要があります。したがって、PC-98によるICEは、当該衛星が稼働している限り使える状態にしておかなければなりません。
しかし、パソコンのハードディスクなどには老朽化とともに故障のリスクがつきものです。別に新たなICEも開発し、新しい衛星開発には移行させていますが、現行衛星に関するお問い合わせがあった時に備え、PC-98のICEも維持できるよう、リスクヘッジが必要な状況にありました。
システム移行のポイント
ノウハウの固まりであるハード/ソフトをそのまま利用できること
2022年に「PC/FC-9800シリーズ エミュレータ」の存在をNECグループの情報環境で知った檜原氏は、資料をダウンロードの上で、NECの同ソリューション担当に要件を確認しました。
「このICEそのものは我々の独自ノウハウの固まりなので、リプレース後もソフトウェアだけでなくPC-98のハードウェアもそっくりそのまま動かせることが外せないポイントであり、そのことを確認しました。」(檜原氏)
これに対し、ソリューション提供を担当したNECの原田祐介は次のように言います。
「このソリューションは、PC-98のハードウェアとソフトウェアをWindows上で動作(エミュレート)させるソフトウェアで、稼働中の生産設備コントローラなどのプログラムはノータッチ、つまり一切の変更なしでWindows搭載の最新PC端末で動作させることができることが大きな特長です。このことをご説明し、導入を決めていただきました。」
本ソリューションによる移行作業そのものは、あらかじめ環境を構築したPCに入れ替えるだけなので10分程度で済みますが、移行後に正常に作動するかのテストは時間をかけて念入りに行います。
「稼働させるCPUが変わると信号の周波数や通信速度が変わるので、それをアジャストさせることが重要になるからです。今回もうまく調整・移行させることができました。」(原田)
「現場のノウハウが詰まった専用製造・試験設備を継続して使用/保守できるよう、PC-98が進化したと言えます」と松島氏は評価します。
導入後の成果と今後の取り組み
稼働中の衛星機器の確実なフォローによる信頼性の獲得
「PC/FC-9800シリーズ エミュレータ」によって最新のNEC-PC環境上に移行されたICEは、移行から時間が経っていないこともあり、まだ稼働に到ってはいません。
「しかしながら、以前からのICEが引き続き使える状態を維持できるので、お客様からいつ搭載機器の問い合わせを受けてもしっかり対応できる安心感が得られています」と檜原氏は話します。こうした対応力は、NECスペーステクノロジーのお客様に対する信頼性に直結する要素と言えるでしょう。
地球環境問題への環境が高まる中、日本ではJAXAが地球環境変動観測ミッション「GCOM:Global Change Observation Mission」プロジェクトをスタートさせ、2012年に水循環変動観測衛星「しずく」を打ち上げました。台風による災害などが続出する中、自然現象のメカニズムを探る上で、その観測データは大きな力となるはずです。この「しずく」にもNECスペーステクノロジーが開発・製造した機器が搭載されており、その運用をPC-98のICEが支えています。
さらに同社が開発・製造を手掛けた機器が搭載されたNEC製人工衛星の初の海外輸出が決まりました。ベトナム向け地球観測衛星「LOTUSat-1(ロータスサット・ワン)」です。JAXAのイプシロンロケットによって打ち上げられる予定で、本機に搭載される様々な機器も、以前からのPC-98によるICEを用いて開発・検査されています。
「LOTUSat-1にいつお問い合わせがあっても以前からのICEで確実に対処することが可能となり、当社の信頼性を高め、衛星ビジネスの海外展開の下支えに繋がると捉えています。」(松島氏)
最近になって、日本を含め諸国の宇宙開発に関わる技術が進展し、宇宙がぐっと身近な存在となりました。関連市場もグローバルに今後ますます発展していくことは間違いありません。
NECスペーステクノロジーがその先陣を切ることに「PC/FC-9800シリーズ エミュレータ」も貢献していると言えるでしょう。
NEC担当スタッフの声
独自のノウハウを搭載した製造装置の老朽化を回避
NECスペーステクノロジーから問い合わせを受けた時、人工衛星へ搭載する機器の開発にPC-98が使われていると聞いて、最初は正直驚きました。しかし、歴史的経緯を知れば、使われ始めた当時、PC-98が最も信頼性があり、使い勝手が良かったPC端末であったことの証左であると納得できました。
同様に、全国の製造業の現場において、独自のノウハウを搭載した設備コントローラとして、数多くのPC/FC-98がまだまだ現役として稼働していることと思います。残念ながら、ハードディスクなどの故障リスクは付きものであり、そうなった場合の代替機がないといった現場も少なくないのではないでしょうか。そういったお客様は、ぜひ「PC/FC-9800シリーズ 対策ソリューション」で最新端末環境への移行をご検討ください。
企業プロフィール
NECスペーステクノロジー
所在地 | 〒183-8551 東京都府中市日新町一丁目10番地 |
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設立 | 2001年4月2日 |
資本金 | 70億円(資本準備金含む) |
売上高 | 156億円(2023年3月期) |
従業員数 | 432名(2023年3月末現在) |
事業内容 | 衛星やロケットに搭載する機器の開発、製造、試験、販売およびこれらに関連するサービスの提供 |
URL | https://www.necspace.co.jp/ |
記載されている会社名、商品名は各社の商標または登録商標です。
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(2024年3月27日)