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「男性育休」とってみたらどうだった? ~取得者本人&上司インタビュー~
※インタビュー取材:2021年7月実施
(所属・役職は取材時点の情報です)
2021年6月、男性の育児休業の取得率向上を目的とした「育児・介護休業法」の改正が国会で成立しました。メディアでも大きく取り上げられたため、気になった方も多いのではないでしょうか。
日本の男性の育休取得率は2020年で12.65%(厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」より)。国際的にも低い水準となっており、制度の認知が低いことや、職場が育休取得できる雰囲気でないことなどが課題として挙げられています。
NECにおいても、近年、育休を取得する男性が増加傾向にあるものの、より一層の制度の認知向上や、育休を取得しやすい職場の風土醸成が求められています。
そんな「男性の育児休職」、とってみたら実際はどうだったのか?そして、上司はどう対応したのか?
育児休職を取得した男性社員とその上司に話を伺いました。
今回、インタビューに協力してくれたのは、NECスマートインダストリー本部の山崎さんとNEC OMCS事業部の田畑さん。
2人はそれぞれ、4か月(2020年3月~7月)/1か月(2020年11月)の育児休職を取得しました。上司へは、半年ほど前に相談し、チームメンバーと業務を調整しながら準備を進めていったといいます。
月曜日の朝に「また土曜日ね!」と子供から言われるーそんな中での育休取得
「上司に話をしたとき、一瞬戸惑ったようでしたが、すぐに、『いいね、面白いからやってみよう!』と、後押ししてくれました」―そう笑顔で話すのは、山崎さん。
山崎さんには、当時7歳と5歳のお子さんがおり、第3子で初めて育休を取得しました。
「家から会社まで距離があり、朝6時に出て、家に着くのはだいたい23時ごろ。2人目までは奥さんが完全にワンオペで育児を行っており、月曜の朝に子供から『また土曜日ね!』と言われて出社するような毎日でした」(山崎さん)
山崎さんは、もともと2か月間の育休を予定していましたが、育休中に緊急事態宣言が発出され、小学校や保育園が休校・休園に。その影響で、急遽、休暇を2か月延長したそうです。
「チームメンバーには、『プロジェクトで何かあればショートメールを入れて下さい』と伝えていました。1日以内には、返信できると思うから、と。育休中なのに?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、このようにさせてもらえて、個人的には非常にありがたかったです」
「4か月の間、私は主に、上の子2人の世話を引き受けました。ただ、下の子も3ヶ月目ぐらいになると目の前にいる人が誰なのかが分かるようになり、すごく懐いてくれるんです。
そのうち、“母親が見当たらずに泣き出す”というようなことを、自分に対してもしてくれるようになりました。これは3人目にして初めての経験で、4か月という長めの育休をとったからこそだと思いましたね」(山崎さん)
「ただ休むだけ」とならないように、意識して育児を分担
田畑さんは、今回、奥さまが里帰り出産から自宅に戻ってくるタイミングで1か月間の育休を取得しました。
「妻はとても喜んでくれて、出産や産後の生活に対する不安が、かなり軽くなったと言っていました」(田畑さん)
田畑さんは、第1子での育休取得。育児は初めての経験でしたが、「育休中は、『ただ休むだけ』とならないよう、意識して育児を分担しました」と話します。
「夜中の授乳は自分が担当しました。奥さんは夜に寝てもらい、自分は昼間に寝て、交代で新生児期を乗り切りました」(田畑さん)
新生児期から積極的に子育てにかかわったことで、お子さんは大の“パパっ子”に。インタビューにも数秒間、登場してくれました!
上司や周囲との密なコミュニケーションを心掛ける
育休を取得するにあたり、意識したことは?という問いに「上司や周囲との密なコミュニケーションです」と即答してくれた田畑さん。普段から、自分のおかれている状況を周囲に積極的に伝え、何事も“急な話”にならないように心がけているそうです。
「育休取得後、上司からは、『部の風向きが変わる第1歩になった』と声をかけていただきました。『こうした休暇の取り方もあると、他のメンバーに知ってもらうことができた』『後に続く人が取りやすくなるし、考えるきっかけになった』とも。そんな風に言っていただけて、とても嬉しかったですね」(田畑さん)
育休明けも「育児の時間」を確保
山崎さんは、育休が明けてからも、1日のスケジュールの中に育児時間を組み込む工夫をしているそう。
「小学生以下の子供がいると、夕方4時から夜の8時くらいまでが、すごく忙しいんです。育休から復帰後も、その時間帯は『仕事をしない時間』とスケジューラーに入れ、20時以降に仕事を再開するようにしています」(山崎さん)
チームメンバーも山崎さんの働き方を尊重し、その時間帯には極力会議を入れないなどの配慮をしてくれているそう。そして、担当しているお客さまも、“育児時間”を認知してくれているそうです。
「育休を取ることや、復帰後に育児時間を取ることは、上司が早い段階でお客さまに話をしてくれました。『あっ、この時間は駄目だったね』とお客さまから言っていただけるような状況を作っていただき、とてもありがたいと思っています」(山崎さん)
これから育休取得を考えている方へ
これから育休を取りたいと思っている男性社員に、ぜひアドバイスを!とお願いすると、「上司と普段、何でも話せる関係を構築した上で、相談してみることが第1歩では」と田畑さん。
山崎さんは、「そもそも男性は、奥さんの出産直前まで何も言わない人も多いのかもしれない」と話します。
「割と最近の話なのですが、『男性でも育休、ちゃんと取れるの?』という質問を知り合いから受けました。制度はあると知っていても、周囲に取得者がいないなどの理由で、どうしたらいいかわからない方も多いのかもしれません。例えば、上司の立場の人が、会議などで休暇取得を促す際に、育休についてもふれるとか・・・言い出しやすい雰囲気づくりや、取得に向けた意識づけも重要なのではないでしょうか」(山崎さん)
続いては、山崎さんの上司である羽部さんに、お話を伺いました!
育休取得者の上司に聞く!
「山崎さんの育休を機に、メンバー全員が大きく成長」
―― 山崎さんから「育休を取りたい」と相談を受けたときの事を教えてください。
たしか、山崎さんが休みに入る半年くらい前だったと思います。彼は、長らくチームのエースとして活躍してくれており、打診されたときは、4つのプロジェクトのキーパーソンでした。
ですから相談された時は一瞬「まじか!?」と思ったのは事実ですが、すぐに「いいんじゃない?」と思いなおしました。彼の家庭の事情は事前にわかっていたので、ある程度の期間をしっかりと休んで奥さんをサポートしてあげるのはとても良いことだと思ったからです。 3人目のお子さんで、彼がそういう決断をしたのは、素直に嬉しかったですね。
ただしそのようにポジティブに考えることができたのは「時期的にラッキーだった」というチームの事情もありました。われわれのチームはDX・IoT関連の新規事業創出を軸足として活動を行っており、常に複数のプロジェクトを同時並行で回していますが、山崎さんに相談された時はちょうどいくつかの事業が立ち上がって、チームとしては事業の足元を固めている時期でした。その半年から1年前だと、かなり大変だったかもしれません。
―― 山崎さんが育休に入るにあたり、どのように準備を進められましたか?
日ごろから、複数のプロジェクトを、複数人でまわすようにしていました。山崎さんから相談を受けた後は、リーダーである彼がいつ抜けても大丈夫なように、早めに布石を打っていきました。山崎さんから業務を引き継いだ後任のメンバーが、納得して業務に取り組めるように、メンバーのモチベーション維持に重点をおいて対話をしていきました。
現在NECでは1on1を強力に推進していますが、われわれのチームでは以前から各メンバーのキャリアプランや家庭の事情については、日頃から積極的に会話するように心がけていました。「業務で何か困っていることはありませんか?」というような表面的な会話ではなく、各メンバーのキャリアプランについて、自分が目指す専門領域や理想とするスペシャリスト像、将来会社でどのような領域や役割で活躍したいか?などについて、人材タイプを軸にした対話を行っています。
引継ぎは後任メンバーが納得する形で。スキルアップに繋がる体制と役割を考慮
ですから、「山崎さんが育休に入るから、誰か代わりを...」というような単なる後任者探しではなく、各チームメンバーのキャリアプランを踏まえて、それぞれのスキルアップのチャンスとなるような体制と役割を考えて、アサインしました。その上で、「〇〇さんが目指すキャリアプランにおいて、こういったスキルを伸ばすためのチャンスとして、一緒に取り組んでみませんか?」と、本人に説明し、納得してもらった上で業務を引き継いでもらいました。
その結果、ある人は難しいプロジェクトをリーダーとして完遂して、プロジェクトマネジメント能力が格段に向上しました。またある人はお客さまとの厚い信頼関係を築くことに成功し、顧客対応力を飛躍的に向上させることができました。リーダーだった山崎さんのポジションと役割を、各メンバーに様々な形で納得して引き継いでもらうことによって、メンバー全員の成長につながったと確信しています。
各メンバーが日々、“きちんと納得して動けているか”を確認。日頃からコミュニケーションをしっかりとることが大切
今回、たまたま山崎さんは育休でしたが、今後は自身の病気や家族の介護で休暇をとらなければならないケースも出てくると思います。そうした時にも臨機応変に対応できるように、以前からチームの在り方や、コミュニケーションのとりかたには気を配ってきました。チームメンバーとは、その人のキャリアプランや専門性を軸に、能力、スキル、役割、チャレンジについて、日ごろからしっかり話をするように心がけています。そして、各メンバーが日々、“きちんと納得して動けているか”を確認するようにしています。とにかく、「日頃からコミュニケーションをしっかりとることが大切」、これに尽きると思っていますので、これからもしっかりと対話を続けていきたいと思います。
山崎さんの育休を機に、メンバー全員が大きく成長したと語る羽部さん。
出産・育児だけでなく、自身の病気や家族の介護など、様々なライフイベントにより、一定期間仕事を休むという状況は誰にでも起こり得ますが、チームとして臨機応変に対応していくには、日ごろから質の高いコミュニケーションを心がけ、各チームメンバーが目指すキャリアプランについて対話を重ね、信頼関係を築いておくことが大切ですね。