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Dive into Inclusion & Diversity Vol.7 車椅子インフルエンサー中嶋涼子さんに聞く ”心のバリアフリー” とは?
イベントレポート開催日時:2022年12月20日12:05-13:15
開催方式:オンライン開催
インクルージョン&ダイバーシティに関する知見のアップデートを目的に、数か月に1度のペースで開催している社内オンラインセミナー「Dive into Inclusion & Diversity」。12月は国際障がい者デー(12月3日)にちなみ「障がい」をテーマに、車椅子インフルエンサーとして活躍する「中嶋涼子さん」をゲストにお招きし、オンライントークセッションを開催しました。
中嶋さんの講演は、ご自身のライフヒストリーからスタート。小学校3年生のときに急に歩けなくなったこと、その後、学校以外ひきこもりのようになってしまったご経験、中嶋さんの人生を変えた映画「タイタニック」との出会い、米国で体感した「心のバリアフリー」などについて語っていただきました。
また、車いすチャレンジユニット「BEYOND GIRLS」としての活動、パラリンピックの閉会式へのご出演経験などを通じて感じるようになった「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をさらに進め、E&J(Enjoy & Join)― 誰もが楽しく参加できる社会づくりに取り組みたい」という考えについてもお話いただきました。
「Enjoy & Joinできる社会作りをしていくことが私達にとっての本当のインクルージョン。みなさんと一緒にE&Jを広めていけたら」という言葉が印象的でした。
Q&Aセッション
視聴者からは沢山の質問が寄せられ、中嶋さんは、ひとつひとつの質問に対して、ご自身の実経験に基づいて丁寧に回答くださいました。本記事ではその一部を抜粋してお届けします。
Q: 私も車椅子生活になって3年目の当事者です。病気が原因で一度退職し、再度NECに戻ってきました。新しく入社したメンバー向けの研修が職場で行われた際、会社からはリモート参加でいいですよ、と言われました。それは電車移動の困難さを配慮した、会社からの心遣いだったと思うのですが、新しい同期と直接会って話をしたり写真を撮ったりできなかったのは心残りでした。移動とそれにまつわる配慮について、中嶋さんはどうお考えになりますか。
中嶋さん:遠隔での参加にするか実際の現場に行くかの判断は、私たち車椅子ユーザにとって、とても重要で難しいですよね。COVID-19以降はzoomなどを使った遠隔のやりとりが増えたのはいいことですが、リアルで会う方が、相手の温度感などを体感できるメリットがあることも強く感じています。会社が配慮してリモート参加OKと言ってくれたことはとてもありがたいけれど、新しい同期メンバーに実際に会って、距離を縮めることもされたかったわけですよね。例えば、時差出勤のような形の配慮に変えてもらえれば、通勤もつらくなく、同期メンバーに会うこともできて、両方クリアになったかもしれません。そのような自分の希望を伝えるには大変なエネルギーが必要ですが、自ら一歩踏み出して提案してみる、伝える勇気を持つ、というのも大切かもしれないと感じました。
Q: 新しいことを始めようとしても「失敗したらどうしよう」とか「誰かに反対されるかもしれない」など、ネガティブな気持ちが湧き出てきて、一歩を踏み出せないことがあります。できるだけ人の目・人の評価を気にせずに、やりたいことを思いっきりやるために、中嶋さんからメッセージをいただけますでしょうか。
また、人と比べてしまって落ち込んでしまう時に、どういう風に気持ちを切り替えるのが良いか、中嶋さんのご経験を踏まえて1番効果があった方法を教えていただきたいです。
中嶋さん:周りの目が気になることや反対されたらどうしようと思うことは私にもありました。アメリカ留学すると言った時も、担任の先生には反対されました。でも両親は「大丈夫、行ってきなさい」と言って母はアメリカまでついてきてくれました。両親から「やりたいことはやるべき」というマインドを学んだように思います。実際に留学したら、周りのみんながだんだんサポートしてくれるようになりました。反対され、信用されていないと感じるときこそ、頑張りたくなる自分がいます。がんばって続けていけば、だんだん認められ、形になっていくことも実感しています。車椅子インフルエンサーという肩書も、勝手に名乗っていたら、みなさんにそう言ってもらえるようになりました(笑)。諦めないで、信じて続けることが大切だと感じています。
私は一見強そうに思われがちですが弱い部分もあり、SNSを見て、色んな人と自分を比べて落ち込んでしまうこともよくあります。そんなときはSNSを見ないようにして自分の好きなことに没頭する時間を作ります。映画が好きなので1人で映画を見にいったり、ひとりカラオケで7時間歌ったりします。他のことを考えずに自分の好きなことに没頭するとエネルギーが湧いてきて、元気を取り戻せます。「人と比べなくていい」と言いながら、比べてしまうこともあり、沢山泣いて落ち込むこともありますが、そういうときは「いったん落ち込んでから、また戻ってくればいい」と考えるようにしています。
Q: FOXネットワークスをご退職され、映像エディターから車椅子インフルエンサーに転身される際、不安もあったかと思いますが、その時に支えや勇気の源になったものがありましたらぜひ教えてください。
中嶋さん:アメリカ留学の際もそうでしたが、自分の目標や夢を周りに話しても信じてもらえないことで不安もたくさんありましたが、自分の中で必ず叶えてみせるという確信があれば何も怖いものはありませんでした。そして、SNSを通じて障がい当事者と出会ったことで、障がいゆえの悩みなどを共有できたことがとても心強かったです。
障がいがあっても人生を楽しんでいる知り合いが増えて、自分ももっと殻を破ってチャレンジしてみようと背中を押されたからです。
自分のやりたいことを応援してくれる人を大切にすると心強いと思います。
そして、自分が抱える悩みを境遇の似ている人に相談したり、不安をシェアすることも時には大事だと思います。
どんなことを言われても、自分の意思を貫き、信じていれば夢は叶うと思います。
あとは、車椅子インフルエンサーとして生きていくと決める一方で、社会人時代に地道に貯金して生活費を貯めて、それをもとに生きていける計画もしながら転職をしました。
参加者からの声
視聴した社員からは、「一生に一度の人生、“できないことを数えるよりできることを探そう”という言葉が印象に残った。どんな環境においてもポジティブな考えを持てるようになりたい」「壁をなくすには、少し相手に土足で踏み入る勇気も大切だと学んだ」「“環境は動かせなくても人の心は動かせる”という言葉が大変響いた」「“障害は社会が作っている”という言葉にハッとした。障害がある方やマイノリティの方と、もっと積極的に話したり関わったりしていきたい」などの声があがり、誰もがEnjoy & Joinできる社会づくりに向けて、自分自身に何ができるのか考える機会となりました。
登壇者プロフィール
中嶋 涼子 氏
1986年7月16日 東京都大田区生まれ。
9歳の時に突然歩けなくなり、原因不明のまま下半身不随になり車いすの生活へ。病名は「横断性脊髄炎」と診断される。突然の車椅子生活により希望を見出せず引きこもりになっていた時に、映画「タイタニック」に出会い、心を動かされる。依頼、映画を通して世界の文化や価値観に触れる中で、自分も映画を作って人々の心を動かせるようになりたいと夢を抱く。
2005年に高校卒業後、カリフォルニア州ロサンゼルスへ渡米。語学学校を経て、2011年、南カリフォルニア大学映画学部を卒業。
2012年日本帰国後、通訳・翻訳を経て、2016年からFOXネットワークスにて映像エディターとして働く。
2017年12月、FOXネットワークス退社後に、車椅子インフルエンサーに転身。
テレビ出演・YouTube制作・講演活動など様々な分野で活躍中。「障碍者の常識をぶち壊す」ことで、日本の社会や日本人の心をバリアフリーにしていけるよう発信し続けている。
(公式ホームページ)https://www.ryoko-nakajima.com/