Japan
サイト内の現在位置
経営戦略としてのインクルージョン&ダイバーシティ~“多様性”と“Speak Up”で、もっと強い組織に!~
イベントレポート開催日時:2021年3月8日11:45-13:00
開催方式:オンライン開催
NECは2021年3月8日、国際女性デーに合わせ、「経営戦略としてのインクルージョン&ダイバーシティ(以下I&D)」をテーマに社内オンラインイベント(パネルディスカッション)を開催しました。開催後のアンケートでは、「I&Dに関する気づき・理解を得た」という回答が98%と、I&Dに関してより「自分ごと」として捉えていく機運が高まった本イベント。パネルディスカッションでは、どんなやりとりがあったのかーそのエッセンスをご紹介します。
今回の登壇者は、NECグローバルファイナンス本部長の青山 朝子さん、NEC IMC本部長の東海林 直子さん、NEC顧問の名執 雅子さん(出張先の京都から参加)、NEC CHROの松倉 肇さん、NECコーポレートコミュニケーション本部長の岡部 一志さん(モデレータ)※。
パネルディスカッションは、「企業経営において、なぜI&Dが重要なのか?」というテーマからスタートしました。
- ※登壇者の所属・役職はイベント開催時の情報です。
企業経営において、なぜI&Dが重要なのか?
青山:I&Dの重要性を考えるにあたり、大切な視点が2つあります。それは、お客さま目線と従業員目線です。私は昨年1月、消費財メーカーから転職してきました。消費財メーカーにとって、お客さま=最終消費者のことを考えるのは非常に重要で、当たり前のこと。
ではNECのようなB to Bの企業は、どうなのか?私たちのお客さまが重視するのは、彼らのお客さまである社会や最終消費者です。つまり、社会や最終消費者が持つ“多様な視点”を、どうお客さま向けの提案に盛り込んでいけるかが重要になってくるわけです。
名執:私は37年間、法務省で、主に犯罪者の更生や社会復帰を支える治安系の仕事についていました。受刑者も職員も男性が9割。あらゆる施策、決め事をする際に悪意なく男性中心に物事が決まり、「それ、女性はどうするの?」「高齢者や子供、障害のあるかたは?」と投げかけて初めて、その場の皆がハッとするーそんな場面を沢山見てきました。大多数の中の少数派は、自分の困りごとを中々言えません。「困ったら、相談してくれたらいいよ」という姿勢では、問題は表に出てこない。だから、I&Dの視点が必要なのです。
少数派のためにアクションを起こすことには利点もあります。全体を動かすよりも抵抗が少なく、思い切ったことがやりやすいですし、後々それが、多数派のアクションを変えるきっかけにもなり得るのです。少数派が落とす「一滴」は、小さな波紋を組織の中に起こし、組織の在り様を少しずつ変えていきます。組織の中の異質なものは、とかく排除されがちですが、異質を取り入れて多様性を良しとすることで、組織は厚みのあるものに変わっていくと考えています。
松倉:私は、I&Dは「経営戦略の基軸」だと思っています。国からの要請があるからとか、世の中の流行だからということではなく、NECグループがグローバルで勝っていくために必要なこと。
まず、勝ち抜くチームであるためには、イノベーティブ・クリエイティブであることが必須です。競合であるグローバルエクセレントカンパニーのマネジメントチームは、ジェンダー、国籍、経験、出身など、本当に多彩なメンバーで構成されています。そうした相手と戦っていくためには、われわれも多様な考えの人たちと、組織・チームで議論を重ねていかなければならない。
今回の役員人事のあと、若手の皆さんから「女性の執行役員がいなかったことが非常にショックだった」という声をいただきました。これは、次の中計でぜひ実現したいことであり、女性社員比率30%、女性の管理職比率20%にも、愚直かつアグレッシブに挑戦していきます。
岡部(モデレータ):東海林さんは、新卒で入社以来ずっとNECですが、I&Dの観点から、どのような変化を感じていますか?
東海林:先ほど松倉さんから、女性管理職比率20%を目指すという話がありました。私が入社したころは、マネージャー職の女性はゼロ。その頃に比べると、進化したとは感じています。ただ、NECの女性は非常に“真面目で謙虚”です。例えば、同等の能力・成果を出した男女がいたとすると、男性は「すごく出来た」と言うけれど、女性は「出来ていない」と言うことが多いように感じています。これについては女性の皆さんと意識的に1 on 1の機会を設け「あなたは決して劣っていない」と伝えるようにしています。
パネリスト4名が語る、ダイバーシティマネジメント事例
岡部:ここからは、登壇者の皆さんのダイバーシティマネジメント事例を伺いたいと思います。名執さん、いかがでしょうか?
名執:何か決め事をする時、同じような立場の人たちで集まり、少人数で決めてしまうほうが楽、時間のない時は「自分の決めた通りにやってもらうほうが早い」と思ってしまうことも、正直、無くはないと思っています。ただ、そうすると「その話は聞いてない」とか「自分たちの立場では、それは無理だ」とか「上が言うから仕方ない」という事態を招いてしまい、思うような成果を上げられません。ですから私は、多くの立場の人と話をし、判断材料を共有し、意見を聞いて「みんなで決めたのだ」という納得感を持ってもらう仕事のしかたが重要だと思っています。
特に管理職の皆さんには、様々な立場の人を巻き込み、新しい発想を活かしていく“懐の広さ”が求められます。そうしたことが続けば、組織に多様な人がいるのはとても良いことだと皆が感じるようになりますし、組織の中にも一体感が生まれます。これがI&Dを意識したマネジメントのしかただと思っています。
東海林:私たちIMC本部は、今後、デジタルマーケティングでグローバルに打って出る必要があります。そのため、シンガポールから新たなメンバーに加わってもらったのですが、彼が入ったことで、コミュニケーションのしかたが大きく変わりました。互いに何をしたいのかを一生懸命伝えあおうとするので、コミュニケーションも自然と深まります。やはり、“予定調和になり得ない”ところが多様性の重要なポイント。多様性のあるチームで生み出されたものは、非常にエモーショナルでクオリティが高く、お客さまの心にしっかり響くものになっているように感じています。
青山:私からは、上司にしていただいて、ありがたかったことをお話します。当時、私はマネージャーでしたが、部下はいませんでした。ずっと、チームを持ちたいと思っていたところ、外国人の上司から、あるプロジェクトで成功できたら君をプロモーションするよ!と約束いただいたのです。そのプロジェクトは無事成功。ただ、当時私は2人目の子供を妊娠しており、数か月後には産休に入る予定でした。きっと昇進の話は無くなるだろうな、と思っていたら、その上司は「君は約束を果たした。だから、俺も約束を守る」とおっしゃって、産休に入る3か月前に新しいチームを持たせてくれたんです。この出来事が無かったら、私は産休後、元のオフィスには戻っていなかったかもしれません。
これ以降、部下の育成で迷うことがあれば「自分はこの人に、ちゃんと仕事を任せられているかな?」とか「ちゃんと育てるための投資をできているかな?」と考えるようになりました。部下を持つ上司の皆さんには、ぜひ勇気をもって「部下に任せてみること」をお願いしたいと思っています。
松倉:NECは2020年度、約400名のキャリア採用の方に入社いただきました。人事部門にもキャリア採用の方が増えてきて、議論する機会も多いのですが、人の構成が少し変わるだけで雰囲気がすごく変わるということを日々実感しています。キャリア採用の方々が触媒となり「新しく、こんなことをやってみよう!」と声があがったことで、難航中の案件がうまく進んだケースもありました。社内のあちこちで、こうした変化が多数生み出されることを期待しています。
QAセッション
ここからは、社員とのQAセッション。当日および事前によせられた質問に、パネリストの皆さんが回答しました。
Q:男女といった属性に限らず、「平等」や「配慮」ということに対し、大事なことは何だと思いますか?
松倉:究極は、多彩な才能を持った人たちが集い、安心安全な場で能力を150パーセント発揮していただけるカルチャー・チームを作ることだと思っています。
例えばここに、AI 領域ですごく高い能力をお持ちの、障がいのある方がいらっしゃるとします。この方にNEC で活躍していただくためには何らかのサポートが必要ですが、これは、「平等(Equality:すべての人に同一のものを用意すること)」ということではない。その人の状況・能力・適性にあわせ、ハンディキャップを無くすサポートをするということですから、これは「公平(Equity)」だと思っています。
その上で、成果を「公正」に評価することが重要で「公平で、公正であること」がとても大切だなぁと思っていたら、今朝の会議で「私は、健全で公平な“えこひいき”をしたい」と話をしている方がいて「それだ!」と共感しました。「健全で公平なえこひいき」ができるようになれば、社員一人ひとりが持つ多様な能力をさらに発揮できるようになり、NECグループは、もっと変われるのではないか思っています。
Q:名執さんは、男性が9割、夜勤や交代制勤務が必須の職場で女性比率の増加、職域の拡大、職務環境改善などに取り組まれたそうですが、具体策を教えていただけますか
名執:15年ほど前の話になりますが、まずは実情把握と要望の吸い上げから取り組みました。女性職員からアンケートをとり、全国の現場に行って座談会をしたり、面談を繰り返したり。最初に出てくる要望は、例えば「仮眠室の洗面台からお湯が出るようにして欲しい」など、とても小さなものでした。ところが、そうしたことを一つひとつ叶えていくうちに「上の人たちは、私たちに目を向けてくれている!」と意識が変わり、要望の内容が、働き方や職場の雰囲気、女性登用や職域拡大に関するものに変わっていったのです。
職域拡大という点では、女性のいない課や係をなくす、女性を配属させやすい“固定ポスト”を無くして政策の中心を担う部門に女性を意識的に配属する、などを行ってきました。それが、力のある“将来の女性幹部”を育成する一番の方法だったからです。よく「女性の人材がいない」と言われますが、決していないわけではない。そういう育成をされてこなかった結果に過ぎないと思っています。
Q:男性の育休利用者が圧倒的に少ないことについて、どう考えていますか?
青山:実は、以前の会社も男性の育休取得率はあまり高くありませんでした。そこで、男性社員のご家庭にお子さんが生まれたら、部課長から「いつ育休を取るの?」とメールを出してもらうよう徹底しました。それからは、随分取得率が上がりましたね。1 on 1の時などに部下の方と家庭のことを話す機会があれば「育休はとるの?」ではなく、「育休はいつとるの?」と、ぜひ話をしてみて頂ければと思います。
Q:多様な考え方を持つ人たちを一つにまとめることは非常に難しいと思います。どのように解決されていますか?
東海林:「まとめる」というのは、いろんな人の意見を聞いて、混ぜて“中庸”にすることではないと思っています。ですから、「共通の目的」がある前提で、まずはさまざまな意見を出してもらい、どうしてそう思ったのかを、よく聞くようにしています。一見、違う意見のようでも、理由を聞くと、そこに共感や繋がりが見えることがあるからです。
理想は、それぞれの意見が持つ“色”を混ぜてしまわず、綺麗な色のまま意思決定できること。発言の際に「なぜそう思うのか」をクリアにしていただくと、議論はもっと活性化するはずです。オーナーシップを発揮し、自身の意見を恐れず発信していくことは社員としての義務であり、それが会社への貢献につながると考えています。
“Speak Up”しながら、多様性の実現にチャレンジを!
青山:最後に、皆さんにお願いしたいことがあります。リーダーの皆さんには、多様な方たちの“声”を受け止める“ソフトスキル”をぜひ身に着けてほしいと思います。また、意見の中央をとらずに「きちんと議論し尽くす」ことを、そっと後押ししてほしいですね。
そして社員の皆さんには、とにかく手を挙げて、自らの意見を“Speak Up”することを心がけてほしいと思います。「前の人と同じ意見です」というのも、立派な意見のひとつです。皆さん一人ひとりがSpeak Upし、多様な考え方が重要な意思決定に反映されるようになれば、イノベーションの創出や、さらなる成長が図れるようになると信じています。
松倉:私からも、リーダー層の皆さんにお願いしたいことがあります。自分と同じ考えの人ばかりをチームに集めるのではなく、多様な人たちでチームを構成し、ぜひ“居心地の悪い”状態を我慢して、話を聞くようにしてほしいーそうすれば、きっと新しい何かが生まれるはずです。
私は、自分自身を割とフラットな人間だと思い込んでいましたが、先日、アンコンシャスバイアスの研修を受けたところ、実は“偏見の塊”だったことに気づかされました。「自分にはアンコンシャスバイアスがある。だからこそ、自分とはちょっと違う人たちにチームに入ってもらって、やってみよう」とリーダー全員が思い始めたら、この会社はきっと大きく変われるはずです。リーダーの皆さんには、まず第一歩を踏み出していただきたい。自身のチームで、ぜひ、多様性の実現に挑戦していただきたいと思います。
登壇者プロフィール
1985年にNEC入社。マーケティング企画本部長、事業開発本部長代理、経営企画本部長を経て、2014年に執行役員兼NECマネジメントパートナー代表取締役執行役員社長に就任。その後執行役員常務兼CSO(チーフストラテジーオフィサー)、取締役執行役員常務兼CSO兼CHROなどを経て、2019年4月より現職。
1983年に法務省に採用。矯正局、矯正施設等に勤務。2017年、人権擁護局長。差別・偏見の解消、少数派を支え多様性を受け入れるダイバーシティの推進・啓発に携わる。2018年、女性初の矯正局長。男性が9割を占める治安系組織の長として約24,000人のトップとなる。夜勤と交代制勤務が必須の職場で、女性比率の増加、職域の拡大、執務環境改善を行ってきた。2020年1月、法務省を退職し、10月からNEC顧問。刑事司法領域のデジタル化の検討等に携わっている。
NECのグローバルBUのCFOとして、5大陸にまたがるGBU海外子会社のファイナンス組織を統括。NEC入社前は、東京コカ・コーラボトリング(現 コカ・コーラ ボトラーズジャパン)の取締役CFOとしてファイナンス全般を統括し、初の女性取締役として活躍。2度の上場企業のM&Aと統合を通じ、会計・財務・戦略の専門家として、グローバル標準のファイナンス組織へと変革した。コカ・コーラ入社前は、監査法人トーマツにおいて監査業務、メリルリンチ日本証券にてM&Aアドバイザリー業務に従事。二児の母。
NEC入社後、通信ネットワーク系の代理店販売業務を担当しユーザーコミュニティを立ち上げ、その後、法人向けインターネットサービス(BIGLOBEビジネス)で新サービス企画 および 営業支援を担当。2004年からは市場リレーション推進部門にて メールマーケティングをベースとした 全社マーケティング活動を開始。現在は、IMC本部でオウンドメディア、外部メディア、 リアルイベント等の様々なタッチポイントと MA、SFA、インサイドセールスを連動させた マーケティング施策実行を統括。
1991年 横河・ヒューレット・パッカード(現 日本ヒューレット・パッカード)入社、広報室に配属。1999年 マイクロソフト日本法人(現 日本マイクロソフト)に入社、広報部長、業務執行役員 コーポレートコミュニケーション本部長として20年以上にわたり日本における広報/コミュニケーション業務を統括。2020年6月NECに入社、カルチャー変革本部長代理、2021年1月コーポレートコミュニケーション本部長兼カルチャー変革本部長代理に就任。