Japan
サイト内の現在位置
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社様
異機種混合システムを構築して全体を最適化
約38倍の高速化を実現し、研究開発を加速
- 業種:
-
- 情報サービス業
- 業務:
-
- 設計・開発・製造
- マーケティング
- ICT管理・運用
- 製品:
-
- HPCサーバ
- ソリューション・サービス:
-
- AI・ビッグデータ
事例の概要
課題背景
- 2018年頃急速に普及したGPGPUは、得手不得手があり、高速化に限界を感じていた
- GPGPU以外のものでアプリケーションを高速化し、他社との差別化を図りたいと考えていた
- GPGPU に関連するOSSライブラリをアップデートするたびにインストール済みのソフトウェアが動作しなくなることがあり、アップデートに不安があった
成果
ヘテロジニアスなシステム環境下で約38倍の高速化を実現
SX-Aurora TSUBASAとGPGPUを組み合わせた異機種混在システムを構築し、全体を最適化
コンピュータの性能改善により、研究開発の効率化に貢献
計算時間の大幅短縮によりトライ&エラーの幅が拡大。研究開発メンバーのモチベーション維持、および研究開発の加速につなげた
ライブラリアップデート時の作業工数を低減
SX-Aurora TSUBASA のリポジトリ活用によりOSSライブラリのアップデート時のエラーが0件へ、アップデート時の不安を解消するとともに作業工数を低減
導入ソリューション
本事例に関するお問い合わせはこちらから
事例の詳細
導入前の背景や課題
GPGPUの性能に限界を感じ
高速化を模索する中で見出した光明
車づくりで培ったノウハウのもと、「計測制御事業」と「IP(知的財産)事業」を2本柱に、自動車メーカーのベストな開発環境の構築を支援しているトヨタテクニカルディベロップメント株式会社様(以下、TTDC様)
同社の研究開発チームでは、論文や特許などの情報を集めて、2次元マッピングする「ランドスケープマップ」の研究開発に取り組んでいます。室長の川口晃氏は「これは大量のテキストデータから課題を論理的に導く手法開発の一環で、信頼性のある文献から真因課題を見つけ、的を絞った対策を進めるために研究しています」と説明します。このランドスケープマップに、時系列の変遷などをもとに注目すべき領域を矢印で示すなど、第三者が見ても直感的に理解できるような機能を付加しようとしています。
TTDC様が、NECのベクトル型スーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」の導入を検討し始めたのは2018年。そのきっかけは、「急速に普及していたGPGPUの性能に限界を感じていた」ことだとプロフェッショナルエキスパートの山本俊介氏は当時を振り返ります。
「その頃はコンピュータを高速化するため、多くの企業がGPGPUを導入していたときで、GPGPUが”魔法のボード”であるかのような認識が広まっていました。当社も、機械学習をはじめ、さまざまな作業にGPGPUを活用していましたが、GPGPUにも不得意な領域があることに気づいており、その性能に限界を感じていました。また、他社がこぞって導入する状況だったからこそ、GPGPU以外のもので高速化できれば他社との差別化を図れるのではないか、とも考えていました」
さらに当時は、Linuxで使われていたOSS(オープンソースソフトウェア)のライブラリ(デバイスドライバ)は、バージョンをアップデートするとインストール済みのソフトウェアが動かなくなる問題が頻発しており、「特にGPGPUではその傾向が強かった」ことも、GPGPU以外の高速化方法を検討する要因になったと山本氏は説明します。
「そんな折、社内メンバーから『NECにはデスクトップ型のスーパーコンピュータがある』と教えられ、興味を持ったことが、SX-Aurora TSUBASAの導入を検討する契機になりました」(山本氏)
選択のポイント
自社の研究開発の効率化や
将来性に大きな期待
検討の結果、TTDC様はSX-Aurora TSUBASAの導入を決定しました。検討に際し、特に重視していたのは、「自社の業務を効率化できること」「(当時のセキュリティ要件を満たす)オンプレミス型であること」「保守が簡便なこと」「将来性があること」の4点で、その全てをクリアしていたことを評価したと山本氏は説明します。
特に「自社の業務を効率化できること」については、「研究開発においてコンピュータの計算時間が長くなると、失敗がストレスとなり、モチベーションが下がってしまう印象を受けていた」とし、「計算時間を削減でき、研究開発メンバーのストレスが軽減され、モチベーションを維持できる見込みが高かった」ことが決断のポイントになったといいます。
「NECの担当者と打ち合わせを続ける中で、SX-Aurora TSUBASAとGPGPU、さらに量子コンピュータをつなぐヘテロジニアスな環境を構築し、システムを最適化するイメージを語ってもらい、将来性の高さを感じられたことも、導入の決め手となりました」(山本氏)
川口氏も「スパコンでありながらオフィスに置ける小型サイズで、いろいろなことに活用できそうだと思いました」と、印象を語ります。
導入後の成果
ヘテロジニアスなシステム環境で
“約38倍”もの高速化を実現
現在、TTDC様では、SX-Aurora TSUBASAとGPGPUを組み合わせたヘテロジニアスなシステム環境を構築し、ランドスケープマップの高速計算などに活用しています。同システムでは、論文や特許などの文章を分類する機能はSX-Aurora TSUBASAに、論文や特許などの情報を2次元マップ化する機能はGPGPUにといったように、それぞれの得意領域に振り分けることで、システム全体を最適化。「その中でも、SX-Aurora TSUBASAを活用した部分では、従来の約38倍もの高速化を実現した」と、山本氏は導入成果を説明します。
「約38倍というのは、NECが提供している、Spark/Pythonから利用可能なAI/ML向け開発プラットフォーム『Frovedis』上で、文章分類の高速化アルゴリズムを使ったときの数値ですが、はじめて実行した時には、あまりの速さに、バグ(コーディングミス)ではないかと疑ったほど驚きました。こうした性能改善とともに、時間的な余裕ができたことでトライ&エラーの幅も広がり、研究開発の加速につながりました。この点も非常に大きな成果だと考えています」
さらに山本氏は、ヘテロジニアスなシステムを組み、コンピュータごとに電源を分けたことで「電力不足を解消できた」ほかNECのサポート体制により、「 SX-Aurora TSUBASAの活用するOSSライブラリのアップデートが苦にならなくなった」点も強調します。
「GPGPUでは、OSSライブラリをアップデートするとインストール済みのソフトウェアが動かなくなる傾向が強く、ライブラリのバージョンを固定するのがあたりまえになっていました。しかしNECのライブラリは、アップデートしても問題なく動作し、気づかぬうちに最適化されていることも。こうしたサポート面が充実している点にもメリットを感じています」
今後TTDC様では、ランドスケープマップをはじめとする「大量のテキストデータから課題を論理的に導く手法」の確立を目指し、ツールとして快適に実行できるヘテロジニアスな環境(クラウド含む)を構築していく考えです。「将来的には、量子コンピュータを含めたシステムに進化させ、幅広い業務に活用していきたい」と、川口氏はさらなる性能改善と実活用への意欲を語ってくれました。
販売パートナーの声
“スパコン”のイメージを覆す
コンパクトさに驚愕
我々新光商事は、NECからご紹介いただいた案件について、実際の製品をNECから仕入れ、お客様に販売する“橋渡し”の役割を担っています。今回のプロジェクトでは、お客様がスーパーコンピュータをどう活用されるのかイメージできませんでした。コンピュータがサーバールームに大量に並ぶイメージを持っていたからです。しかし実際の製品を見た際、あまりの小ささに驚き、このサイズであればお客様もビジネスに活用しやすいと確信しました。本プロジェクトにおけるTTDC様の事業拡大に今後も寄与したいと思います。
(新光商事URL:https://www.shinko-sj.co.jp/)
NEC担当スタッフの声
一歩先行く問い合わせに毎回感服
ぜひ実運用での活用を
サポート担当としてこれまでいろんなお客様とお付き合いしてきましたが、その中でもTTDCの山本様には、「高いレベルで使いこなしていただいている方」という印象を抱いています。SX-Aurora TSUBASAに限らず一般的な問い合わせでは、「どう使ったらいいのかわからない」とご相談いただくことが多いです。しかし、山本様の場合は、「使ってみたけど、どのようにして性能を出せばいいのか」と、他社に比べ一歩先を行くような質問をいただいており、感銘を受けておりました。
今回のプロジェクトは試験的なものだったと聞いていますが、非常に高いレベルで使いこなしていただいていると感じており、ぜひ実運用でも活用いただければと思います。またIPランドスケープにおけるSX-Aurora TSUBASAの活用は、特許分野だけではなく、医療などさまざまな分野で転用可能だと思います。ご興味があるご担当様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
熱意あふれる姿勢に感銘
4年越しの“事例化”に感慨
TTDC様とは、2018年に調達部門のご担当者を通じて山本様をご紹介いただいたのがきっかけで、懇意にさせてもらっています。私も山本様は「ご自身で深く調べた上でご相談される方」という印象を持っています。セミナーにも多数参加され、知識を身に付けられた上でご質問をいただくケースがほとんどで、その熱意にいつも感服しております。
導入時、「いつか導入事例のような形で紹介できたらいいですね」と山本様と冗談のように話していたのが4年前。今回それが叶い、とても感慨深く思っております。試験導入から先、実際の現場での活用へと拡大する取り組みにもぜひご一緒できればと思います。
お客様プロフィール
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
本社 | 〒470-0334 愛知県豊田市花本町井前1番地9 |
---|---|
設立 | 2006年4月1日 |
資本金 | 5.5億円 |
代表者 | 代表取締役社長執行役員 香川 佳之 |
従業員数 | 998名(2022年7月1日現在) |
事業内容 | IP(知的財産)事業、計測制御事業 |
URL | https://www.toyota-td.jp |
- ※本事例に記載されている会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
- ※本事例の内容は改良のため予告なしに仕様・デザインを変更することがありますのでご了承ください。
この事例の製品・ソリューション
本事例に関するお問い合わせはこちらから
(2022年8月29日)