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東京理科大学 塚原研究室様


流体の数値シミュレーションに要する期間が10分の1に短縮。
気軽にトライ&エラーしやすい研究環境が実現
- 業種:
-
- 文教・科学
- 業務:
-
- その他業務
- 製品:
-
- HPCサーバ
事例の概要
課題背景
- 汎用CPUを搭載した数十台規模のPCクラスタはメモリ性能に限界があった。
さらにノード間通信の速度低下もネックとなり、数値シミュレーションの工程が長期間化していた - 他機関のコンピュータリソースは、大規模な数値計算など、研究活動に不可欠なものだが、従量制の課金体系であるため、学生がユニークなアイデアを試行する際には、利用をためらうことがあった
成果
計算処理速度の飛躍的な向上
PCクラスタによる並列計算との比較において、10倍程度の高速処理性能を獲得
学生の研究マインドに、大きな変化
各自の研究アイデアを気軽に試すようになり、新しい発見につながる可能性が広がった。
既存のPC群にも空きができたため、実用寄りの乱流計算がスムーズに進捗。研究室全体の生産性が向上
導入ソリューション




この2つの図は、二種類の流体について、同条件で横向きに置かれた円柱を過ぎる乱流のシミュレーション。赤・青は縦渦(主流方向に対して時計・反時計回転)、灰色は横向きの渦を可視化している。
上図は通常の水や空気などの流体をシミュレーションしたもの。一方、下図は「粘弾性流体」と呼ばれるものの現象解明と移動パターンの予測を行ったもの。粘弾性流体とは、粘度だけでなく、高分子ポリマーや界面活性剤などを添加することで、バネのような性質も兼ね備えた液体。乱流に特有の摩擦抵抗を、大幅に低減できる効果がある。流体を動かすためのエネルギーを、およそ80%削減できる。
汎用的なCPUを搭載したPCによる並列計算環境だと、この結果を導き出すまでに数か月を要する。今回、研究室内に設置したSX-Aurora TSUBASAを用いたことで、外部のコンピュータリソースに頼ることなく、しかも研究室内にあった汎用CPU搭載のサーバと比較して、計算処理に要する期間が約10分の1に短縮できた。
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事例の詳細
導入前の背景や課題

理工学部
機械工学科
塚原 隆裕
准教授
PCクラスタでの並列計算環境は、性能面で限界があり、処理工程が長期間化していた
流体力学は、気体・液体に働く力や運動状態での性質を研究する機械工学の一分野です。中でも東京理科大学 理工学部 塚原隆裕准教授の研究室は、おもに乱流と熱流体輸送の現象解明・予測・制御をテーマに、研究活動に取り組まれています。その成果は、航空機や自動車にかかる空気抵抗の抑制、発電プラントの熱伝達効率の向上策などに活用されています。
乱流や熱伝達の本質を解明するためには、DNS(※1)と呼ばれる数値シミュレーションが必要になります。以前は、研究室にある汎用CPUを搭載した数十台のPCと、他機関に設置されているNECのベクトル型スーパーコンピュータ「SX-ACE」を使い分けながら、数値計算を行っていました。「研究室ではPCクラスタで並列計算環境を構築し、自動車や航空機などに関する中規模かつ実用寄りの乱流計算を頻繁に実施します。しかしながらメモリ性能には限界があり、並列化によるノード間通信の速度低下もネックとなり、処理工程が長期間化していました」と、塚原准教授は話します。
一方、他機関のスーパーコンピュータは、大規模な数値計算などを行う際に頻繁に利用されており、塚原研究室様の学術研究活動には不可欠なリソースです。「数値シミュレーションの長所は、研究アイデアが浮かんだら直ちに検証できる点にあります。ただし他機関のスーパーコンピュータは、利用するたびに料金が加算されます。そのため、学生が奇抜な研究アイデアを試したい時に、計算実行を躊躇することがあったのです」と、塚原准教授は語ります。
- (※1)DNS(Direct Numerical Simulation)・・・直接数値シミュレーション。研究対象である流体の運動方程式などに基づき、些末な細部を簡略化した乱流モデルを一切用いることなく、乱流や層流を厳密に解析できる手法。流体挙動に含まれる全ての大きさの渦をシミュレーションすることで、乱流の発生プロセスなどを正確に解析できる。
選択のポイント
処理速度の飛躍的な向上が見込め、
気軽にトライ&エラーしやすい研究環境も整備できる
NEC「SX-Aurora TSUBASA」の製品コンセプトを初めて知った時のことを、塚原准教授は、次のように振り返ります。「手元にスーパーコンピュータを保有するというのは、夢のひとつでもありました。この夢が、現実になるかもしれないと思いましたね。大学の研究予算や、文部科学省の科学研究費助成事業の範囲で導入できるスーパーコンピュータとしては、これまでに出会ったことのない優れた計算機です」。
さらに選定理由については、次のように説明します。「他機関のスーパーコンピュータは、MPI(※2)による並列ノード数が多いほどコストパフォーマンスが高まります。一方、私たちが頻繁に行っている中小規模のノード数計算だと、高い性能を有効活用できず、割高になってしまうわけです。しかしSX-Aurora TSUBASAなら、他機関の計算機リソースを利用するよりも安価に実行できると確信しました。また、研究室内のPCクラスタによる並列計算を本機に代替することで、処理速度の飛躍的な向上も見込めます。学生が気軽にトライ&エラーしやすい環境を整備できるという面でも、たいへん適したマシンだと受けとめました。こうした点を評価し、導入を決定したのです」(塚原准教授)
- (※2)MPI(Message Passing Interface)・・・並列コンピューティングを利用するための標準規格。
導入後の成果
一カ月かかっていたシミュレーションが、わずか数日で完了。
そして研究室全体の生産性が向上
塚原研究室では2019年9月より、多様な流体現象の解明・予測にSX-Aurora TSUBASAを活用しています。まず、PCクラスタによる並列計算との比較においては、「10倍程度の高速処理性能を得られています。一カ月かかるシミュレーションがわずか数日で完了しており、これは非常に大きな効果です」と塚原准教授は述べます。
研究室内に占有のスーパーコンピュータが設置されたことで、学生のマインドにも変化が起きています。「従量課金制の外部リソースではなく、研究室が導入した計算機ですから、使えば使う分だけコストパフォーマンスが高まることはもちろん、学生が各自の研究アイデアを気軽に試すようになりました。近い将来、想定を超える新しい発見にもつながっていくはずです。また、以前から研究室で使用している汎用CPUのPC群に空きができたため、実用寄りの乱流計算もはかどるようになり、研究室全体の生産性が向上しました」(塚原准教授)
SX-Aurora TSUBASAは、省電力性能の高さについても評価されているモデルです。「消費電力1000WのPC2台で10日かかっていた数値計算が、900WのSX-Aurora TSUBASAなら1日で終了します。結果として、大幅な省エネにつながっています」と、塚原准教授も評価します。
塚原研究室が解明した流体分野のさまざまな成果は、空気抵抗を低減できる次世代航空機の開発や熱交換機の効率化、発電プラントの安全性向上などに大きな貢献を果たしています。「今後はさまざまな流体の条件を用意したうえで、SX-Aurora TSUBASAのリソースを活用し、DNSと機械学習を統合したシミュレーションを行う構想も持っています」と、塚原准教授は展望を語ってくれました。

販売パートナーの声

執行役員
HPC/エンタープライズ事業本部
営業統括部
部長
山口 大介氏
「お手元にスーパーコンピュータを――」というキャッチフレーズを用いて、製品認知度の向上に努めています
当社は最新の高度なコンピュータ・IT技術を使用したHPCを、「Enterprise領域の特別なもの」ではなく、「Personalでの誰でも扱える道具」として、幅広い分野に拡大普及していくことをビジョンとして掲げています。NECから「SX-Aurora TSUBASA」をご紹介いただいた際は、メモリバンド幅の性能が圧倒的であり、従来の計算機にないスペックに大きな魅力を感じました。したがって、お客様にご満足いただける性能が、ほぼ間違いなく発揮されるだろうと確信しました。また、研究室に設置できる手ごろな大きさは、お客様にお薦めしやすいポイントのひとつです。費用に関しても、教育機関の研究予算、企業の設備投資予算の範囲で賄える水準です。NEC側の支援体制も手厚く、販売店としては心強いと感じています。教育機関や研究所へのご紹介を開始したところ、引き合いが強く、導入件数を順調に増やしています。私はSX-Aurora TSUBASAを扱い始めてから、電子メールのフッターに「お手元にスーパーコンピュータを――」というキャッチフレーズを記載し、製品認知度の向上に努めています。
(ビジュアルテクノロジーURL:https://www.v-t.co.jp/)
NEC担当スタッフの声

AIプラットフォーム事業部
マネージャー
友野 雅弘
スーパーコンピュータの常識を覆す低価格と処理性能を実現。
販売店様独自のアプリケーションなどを製品に付加し、
お客様への新たな価値提供も可能です
「SX-Aurora TSUBASA」は、スーパーコンピュータの常識を覆す低価格と演算処理性能を実現した製品です。省スペースや低消費電力などの特長も併せ持つことから、科学技術計算領域だけでなく、AIやビッグデータ解析、金融、次世代流通、医療、画像処理など、より幅広い業界でご活用いただけると自負しています。
SXシリーズは従来、NEC直販中心に提供してきた製品群です。一方、SX-Aurora TSUBASAについては前述のような特長を踏まえて、ITシステムの販売店様にも取り扱っていただくことで、全国の研究開発現場が抱えるさまざまな課題解決に貢献できると考えています。
また、本製品に販売店様独自のアプリケーションやサービスを付加し、お客様へ新しい価値を提供できる点にも言及しておきます。塚原研究室様向けの案件を例に挙げますと、ビジュアルテクノロジー様はお客様の研究活動がはかどる環境づくりを念頭に、設置環境に適したラックの提案など、研究者様のご事情・ご要望を踏まえた手厚い構築支援サービスを提供されています。全国の販売店様にとって、自社のビジネスを拡大していくためにも、積極的に取り扱っていただきたいと考えています。
お客様プロフィール
東京理科大学 塚原研究室
所在地 | 千葉県野田市山崎2641 |
---|---|
開設 | 2013年 |
研究内容 | おもに乱流と熱流体輸送の現象解明・予測・制御をテーマに、基礎から応用(JAXA・企業・病院等とも共同)まで幅広く研究活動を展開。 |
URL | ![]() |

この事例の製品・ソリューション
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(2020年3月3日)
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