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国士舘大学 関口研究室様
基礎理学系と電子情報学系の3研究室で、スーパーコンピュータを共同導入・共同利用。
学部学生の積極的な利用も見込む
- 業種:
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- 文教・科学
- 業務:
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- その他業務
- 製品:
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- HPCサーバ
事例の概要
課題背景
- 他機関のコンピュータリソースは、使用時間や予算の制約が多く、数値シミュレーションを駆使した研究活動が思うように進まない局面があった
- 他大学との共同研究や公募型の研究は、研究者・学生の自由な発想を活かしにくく、学部学生向けの教育とも乖離していた
成果
時間や予算の制約を気にせず、高性能コンピュータのリソースを存分に活用
3研究室による共同導入・共同利用で、SX-Aurora TSUBASAのリソースを無駄なく有効に活用。
公募型の共同研究などで他機関のコンピュータリソースを利用する際、計算時間が不足する局面においても、研究活動を停滞させず、自前のマシンで補足のシミュレーションを実施
学部学生の教育・研究にも活用
卒業研究などでもSX-Aurora TSUBASAを活用し、失敗を恐れず自由な発想を試せる環境が実現。
計算物理学などの授業において、活用を計画
導入ソリューション
有限温度における中間子質量の変化
素粒子の質量はカイラル対称性の自発的破れにより生成されると考えられている。この考えに基づくとカイラル対称性に関係する中間子(クォークと反クォークの結合状態)であるπ中間子とσ中間子、ρ中間子とa1中間子は約2兆Kを超える高温で、それぞれ質量が縮退すると考えられる。この過程を第1原理である量子色力学(QCD)に基づく大規模シミュレーションより明らかにすることを目的としている。4次元時空間を離散化しているが、さらにカイラル対称性を実現するために5次元目の次元を導入している。
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事例の詳細
導入前の背景や課題
他機関のコンピュータリソースは、使用時間や予算の制約が多く、学部学生向けの教育にも活用しにくい
国士舘大学 理工学部 関口宗男教授の研究室は、「質量の起源を明らかにすることで、宇宙創生のメカニズムを解明する」というテーマを掲げ、大規模な数値シミュレーションを駆使した研究に取り組んでいます。
関口研究室ではこれまで、大阪大学との共同研究や、JHPCN(※1)の公募型共同研究で、大阪大学に設置されているNECのベクトル型スーパーコンピュータ「SX-ACE」を用いて、中間子の伝搬関数(※2)などの計算を行っていました。「大規模シミュレーションが可能なスーパーコンピュータを自由に使える環境にある大学・研究機関は、とても限られています。つまり本学を含む多くの大学では、使用時間や予算の制約がある中で数値計算を行っているのです。しかも、共同研究での大規模シミュレーションは早期の研究成果が問われるため、自由な発想での研究はなかなか難しい面があります。また、先端科学領域の研究では、大規模シミュレーションやAIの発達によって、コード開発やデータ解析を担う技術者の育成が急務になっています。しかし阪大との共同研究や公募型の研究は“研究者向け”という性格が強く、学部学生向けの教育とは乖離していました。そこで、学部学生にスーパーコンピュータを使用する経験を積んでもらい、コード開発やデータ解析ができる環境を学内に実現したいという思いが強まっていたのです」。関口教授は2017~19年当時の課題をこのように語ります。
- (※1)JHPCN「学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点」。スーパーコンピュータを保有する国内8大学の情報基盤センター/計算機センターが連携して運営する、ネットワーク型の共同利用・共同研究拠点。
- (※2)伝搬関数量子力学において、さまざまな値を計算するための代表的な関数。位置と時間が特定されたある時空点で観測された自由粒子が、別の時空点で観測される時の確率振幅を表す。
選択のポイント
低価格と処理性能に加え、蓄積してきたプログラム資産を継承できる点を評価
関口教授はNEC「SX-Aurora TSUBASA」の発売を知った時のことを、次のように振り返ります。「大学の研究室レベルで購入できる低価格なのに、他機関に設置されているSX-ACEの1ノード使用時と同程度以上の計算性能が得られることに、強い関心を持ちました。とくにエッジモデルは100V電源で稼働し、サーバルームを新たに設ける必要がありません。管理に手間がかからず、研究室の環境で十分なパフォーマンスを発揮できるマシンだと評価しました。加えて、約20年余りにわたって開発してきたベクトル型計算機用のソースコード群を、ほぼそのまま使用できる点が、導入の決め手になりました」
先端科学領域の研究トレンドを踏まえた教育環境の整備という重要課題へのアプローチについては、「低価格のエッジモデルを本学で保有すれば、失敗を気にせず自由なアイデアで研究に取り組めます。それは研究者にとって理想的な環境であると同時に、学部学生向けの教育においてさまざまな可能性を広げる手段にもなると考えたのです」と、関口教授は話します。
導入後の成果
費用対効果を踏まえ、3研究室で共同導入。学部生の授業や自由な発想での研究にも活用
SX-Aurora TSUBASAの調達にあたって、国士舘大学では2020年9月、3つの研究室での共同利用を前提に、共同での導入を実施しています。電子情報学系の研究室を率いる小田井圭教授は、「学内のリソースなので、とにかく気軽に使えますね。CPU数の調整やメンテナンススケジュールの調整についても、先生同士で気軽に相談できます」と、共同利用のメリットを語ります。基礎理学系の研究室を率いる和田浩明准教授も、「もし、ひとつの研究室専用のマシンなら、利用していない時間帯がかなり生じていたはずです。3研究室での共同導入によって、無駄が少なく有効に利用できていると感じています。ジョブも混雑せず、ちょうどよい利用環境ですね」と話します。
現在、公募型の共同研究においては、「計算時間が不足する局面においても、自前のマシンを用いた補足のシミュレーションを、予算を気にせず実施できています。つまりSX-Aurora TSUBASAのおかげで研究活動が停滞せず、とても助かっています」と、関口教授は強調します。演算処理性能については、「すでにノード単位での性能は、SX-ACEと同等か、やや上回っている状態です。今後、SX-Aurora TSUBASAに最適化したアプリケーションのチューニングを施すことで、より高速な演算性能が得られると確信しています」と語ります。
学内の研究室にスーパーコンピュータが導入されたことを、「学生はとてもポジティブに受け止めている」と関口教授は言います。「今後は学生が卒業研究などでもSX-Aurora TSUBASAを活用し、失敗を恐れず自由な発想を試せるはずです。学生には良い刺激になると思いますね」(関口教授)。そして今回の導入には、文系の教員も強い関心を示しています。「社会科学の分野でもビッグデータを扱う研究が増え、スーパーコンピュータへのニーズが高まっていたからです。スパコンを気軽に使える環境整備のきっかけになったと思います」(関口教授)。
新学期からは機械学習・深層学習を用いた新しい研究や、計算物理学などの授業でもSX-Aurora TSUBASAを活用し、物理的なシミュレーションのためのプログラムを学生に作成してもらう計画です。「今後は2年に1台のペースでエッジモデルを増設し、最終的には4~5台程度のエッジモデルを複数の実験室・研究室に設置し、それぞれ別の役割で稼働させる体制を考えています。効率的な設備投資によって、理想的な研究環境が実現できるはずです」と、関口教授は構想を語ります。
販売パートナーの声
NEC販売特約店として、お客様の課題を踏まえた高性能コンピュータの導入を支援することで、広く社会に貢献していく
当社はNEC販売特約店として、お客様の業務課題・研究課題を踏まえたIT導入の計画・立案、最適なハードウエア/ソフトウエア製品の選定、システム構築、保守サービスなどの業務を一括して行っています。国士舘大学様の案件では、NEC独自のテクノロジーを搭載した「SX-Aurora TSUBASA」を弊社で取り扱い、ベクトル型計算機用のプログラムコードを多数開発されてきた関口教授の研究室へ、新たな価値を提供できたと自負しています。このコンピュータが、国士舘大学様の研究活動および教育現場で幅広く活用されることで、広く社会に貢献できることを熱望しています。
(デンセイシリウスURL:https://www.denseisirius.com/)
NEC担当スタッフの声
ベクトル型コンピュータを扱える技術者・研究者の育成が、より大切なテーマとなっている
近年、ベクトル型コンピュータの適用領域は、従来の解析・シミュレーション用途だけでなく、AI・ビッグデータなどの領域にも拡大しています。こうした局面では、ベクトル型コンピュータを扱える技術者・研究者の育成が、より大切なテーマとなります。デスクサイドサイズまで小型化を図り、低価格を実現した「SX-Aurora TSUBASA A100シリーズ」は、ベクトルユーザの増加と活用スキルの向上に資するプロダクツになるはずです。
また、今回の国士舘大学様における、複数研究室による共同導入・共同利用は、SX-Aurora TSUBASAの効果を引き出す新たな活用形態となりました。販売パートナーとも力を合わせ、共同利用のメリットを活かした提案を、全国の大学に向けて行っていく考えです。
お客様プロフィール
国士舘大学 関口研究室
所在地 | 東京都世田谷区世田谷4-28-1 |
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開設 | 1998年4月 |
研究内容 | おもに素粒子物理学、ハドロン物理学、高エネルギー物理学などに関する研究活動を展開。 |
URL | https://www.kokushikan.ac.jp/faculty/SE/about/ |
この事例の製品・ソリューション
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(2021年3月15日)