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株式会社東京建設コンサルタント様
土木・建設分野における数値解析のトレンドに
合致したベクトルアーキテクチャが、
深刻化する降雨災害や津波の影響予測に貢献
- 業種:
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- 建設・不動産
- 業務:
-
- その他業務
- 製品:
-
- HPCサーバ
事例の概要
課題背景
- 土木・建設分野の事業計画では、高い解像度で洪水などを予測・検証する解析モデルが主流になってきている。コンピュータにかかる計算負荷が大きく、解析工程が長期化。CPUクラスタや既存のHPCでは顧客対応が難しくなっていた。
- すでに導入していたHPC製品には移行性に問題があり、社内で使用している全てのソースコードが搭載できなかった。
成果
計算処理速度の飛躍的な向上
既存のHPCとの比較において、3倍程度の高速処理性能を獲得
蓄積してきた社内コードの資産を継承
ベクトル化した全ての社内ソースコードが、SX-Aurora TSUBASAのプラットフォーム上でスムーズに動作している
導入ソリューション
ダム貯水池の水質・水温解析、ダム放流時の水流予測などを水理解析した結果のサンプル。結果を得るまでに一週間程度の日数を要していたが、現在は2日程度で完了する。
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事例の詳細
導入前の背景や課題
洪水・浸水・津波の解析工程が長期化。CPUクラスタや既存のHPCでは、対応が難しくなっていた
建設コンサルタント会社とは、国や地方公共団体が社会資本整備に関する事業を計画する際、その妥当性や環境への影響を調査し、設計・維持管理計画を含む成果物を提供する事業者です。中でも東京建設コンサルタント様は、河川の整備計画に不可欠な洪水予測や浸水想定、津波の影響などをリアルタイムで水理解析(*1)する高いノウハウを持つ企業です。
「気候変動などの要因によって、毎年のように“過去最大”の降雨災害が発生しています。国土交通省をはじめとする発注者様は、確度の高い洪水・浸水予測に基づいた河川整備計画の改定に着手されています。当社としては、より高解像度の解析によってニーズに応えていく必要があります」。同社 環境防災研究所 主任技師の小島崇氏は、最近の業界動向をこのように語ります。業界では現在、5~20mメッシュの高解像度で堤防越水・破堤・高潮などを縦断的に検証できる二次元~三次元モデルが主流となっています。とくに河床変動解析(*2)と呼ばれる、コンピュータに大きな負荷のかかる計算ではメモリ使用量が増大し、解析工程が長期化します。さらには、全国で200種類にも上る浸水想定の計算を同時に実行する局面もあります。「既存のマシンでは当然、メモリ帯域が不足します。一方、各社のCPUはコア単位での性能向上が頭打ちになっています。つまり、メニーコア化に象徴されるCPUの開発動向と、私たちが日々の業務で実行する水理解析プログラムに必要な性能特性には、大きな乖離があったのです」(小島氏)
従来、同社では低価格のワークステーションを複数台用いてCPUクラスタを構築し、シングルスレッドのプログラムを大量かつ安価に実行できる環境を構築していました。「ただし、社内のソースコードの多くは並列数の上限が数十程度であり、ノード数とコア数を増やしてもスケールアップしないのです。そこで2015年に、ハイエンドプロセッサを搭載しメモリ帯域幅も確保できる他社のHPC製品を導入しています。性能向上の面では一定の効果はありましたが、コンパイラに問題があり、全ての社内コードは搭載できなかったのです」と、小島氏は明かします。既存のコンピュータリソースのままでは近い将来、顧客の要件への対応が難しくなる――。当時の社内には、こんな危機感があったのです。
- (*1)水理解析・・・河川ごとの形状や特徴を踏まえたうえで、上流端での流量または水位、下流端においては水位を設定し、その河道内で生じる水位・流量・流速などの空間的な分布および時間変化を計算によって導き出すこと。
- (*2)河床変動解析・・・川底に堆積した土砂の移動に関わる水理現象を解析すること。
選択のポイント
ベンチマークテストによって、社内コードの動作と
高速な演算処理性能を実証し、導入を決定
2017年秋、「カード型のベクトルエンジンを搭載したスーパーコンピュータがNECから発売されるというリリースを、当社の役員が目に留め、注目していました」と、小島氏は話します。翌2018年の春にはNECとの商談を開始し、性能評価を実施しています。「ベンチマークテストでは、SX-Aurora TSUBASAのプラットフォーム上で、改変・ベクトル化した当社のソースコードが全て問題なく動作することが実証できました。とくに3次元モデルの計算については、性能面でもたいへん良好な結果が得られたのです。SX-Aurora TSUBASA は、CPU開発の主流になっているメニーコア化ではなく、極めて広いメモリバンド幅を備えることでシングルスレッドの性能向上が図られており、当社のソースコードに向いていると判断しました」と、小島氏は選定の理由を説明します。
導入後の成果
ダムの流体解析では、計算速度が約3倍にアップ。
技術者の生産性向上によって、残業時間の削減を見込む
東京建設コンサルタント様では2020年現在、コンピュータにかかる負荷が大きい水理解析業務を中心に、SX-Aurora TSUBASAを活用しています。その一例は、ダムの流体解析です。「ダム貯水池の水質・水温解析、ダム放流時の水流予測などの計算を、他社のHPC製品で実行していた頃は、平均で一週間程度の日数がかかっていました。現在は2日程度で完了できる性能が得られています。計算速度が約3倍に向上したことによって、いくつかのパラメータを変えて解析を試みた結果なども、手軽に得られるようになりました。解析結果をお客様と共有しながら、より迅速に対策立案を進言できる点は、大きな導入効果と言えます」(小島氏)
働き方改革関連法への対応という面でも、SX-Aurora TSUBASAは同社の業務に貢献しています。「以前から社内の技術者は、『計算はなるべく速く完了させて、次の業務に取りかかりたい』という思いを持っていました。そして今回の計算環境整備によって、仕事の生産性が明らかに向上しています。今後はベクトル化を念頭に入れた新しい解析プログラムを開発し、SX-Aurora TSUBASA を活用できる部門を拡大することで、全社的な残業時間の削減効果にもつながっていくと考えています」と、小島氏は将来を展望します。
販売パートナーの声
HPCシステムの導入コンサルテーションを
手がけてきた当社にとって、期待どおりの製品
HPCはメモリバンド幅の性能が最も重要になりますので、2017年にNECから「SX-Aurora TSUBASA」をご紹介いただいた際は、我々が期待していたとおりの製品だと、思わず膝を打ちました。一方、OSは標準的なLinuxベースであり、またハードウェアについては、HPC業界でよく使用されているものをベースにしたVH(ベクトルホスト)にVE(ベクトルエンジン)を組み合わせる構成は当社にとって、とても取り扱いやすい製品だと直感しました。
じつは東京建設コンサルタント様が取り組まれた今回の計算環境整備案件は、当社がSX-Aurora TSUBASAを取り扱った第一号の案件でもあります。HPCシステムの導入コンサルテーションで長年培ってきた経験・ノウハウを活かしながら、手厚い構築支援サービスを提供させていただきました。
(ビジュアルテクノロジーURL:https://www.v-t.co.jp/)
NEC担当スタッフの声
HPCのジャンルで、新しい選択肢を
打ち出すことができたと自負しています
「SX-Aurora TSUBASA」は、高性能でありながらコンパクトであり、企業にとって身近にご活用いただける価格帯になっています。これはHPCのジャンルで、新しい選択肢を打ち出すことができたと自負しています。
また、建設コンサルタント業界における土木・流体の数値解析用途は、得意としている分野のひとつでもありますが、科学技術計算領域だけでなく、AIやビッグデータ解析などの幅広い用途でもご活用いただけると考えています。
ビジュアルテクノロジー様のように、高い技術力でお客様のご要望に応える構築支援を提供されるパートナー様に取り扱っていただいて、お客様へ新しい価値を広く提供していきたいと考えています。これからもベクトル計算技術を磨いて、お客様の課題解決に貢献する製品開発に反映していきます。
お客様プロフィール
株式会社東京建設コンサルタント
所在地 | 東京都豊島区北大塚1-15-6 |
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設立 | 1960年(昭和35年)10月 |
資本金 | 3億3,500万円 |
売上高 | 90億9,100万円(令和元年9月期) |
従業員数 | 534名 |
事業内容 | 河川計画、河川構造物、河川環境、水質保全、上下水道、道路、橋梁、交通、海岸、ダム、砂防、港湾、環境アセスメント、観測技術、模型実験、都市・地域計画、事業執行マネジメント、防災、LCM、機械電気設備技術、情報通信技術、測量・地質調査、施工管理、建築設計 |
URL | https://www.tokencon.co.jp/index.html |
この事例の製品・ソリューション
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(2020年11月9日)