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慶應義塾大学
日吉物理学教室様
「トライアル環境」と「技術支援」により導入懸念を払拭
最大6倍のプログラム高速化を実現
- 業種:
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- 文教・科学
- 業務:
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- その他業務
- 製品:
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- HPCサーバ
事例の概要
課題背景
- PCクラスタによる並列計算で計算速度を高速化していたが、プログラムの書き換えが負担になっていた
- 他機関のスーパーコンピュータは多くの研究者が共用していたため、長時間の利用が難しかった
- 「SX-Aurora TSUBASA」に関心を持っていたが、購入価格に見合う性能向上が得られるか心配だった
成果
トライアル環境で、移植性の高さを体感
トライアル環境を利用し、研究で利用していたコード3本を簡単に移植できることを体感
専門家による「利用技術支援」で、コードを改良し処理速度を高速化
コード高速化のNEC専門家による技術アドバイスを受けて、最大6倍の高速化を達成
導入後も技術支援を提供、研究活動の効率化に貢献
SX-Aurora TSUBASA導入後も技術交流を継続し、安心して研究に打ち込める環境を整備
導入ソリューション
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事例の詳細
導入前の背景や課題
研究活動を妨げる「2重苦」に直面
計算速度の高速化を切望
気体や液体など流動性のある物質の変形や流れについて研究する流体力学。その中でも、乱れた流れ「乱流」について研究しているのが、慶應義塾大学法学部・日吉物理学教室 小林宏充教授(工学博士)の研究室です。
乱流中には、大小さまざまなサイズの渦が存在しますが、その全てを再現すると膨大な計算量となります。そこで小林教授の研究室では、大きな渦だけを直接計算し、小さな渦をモデル化して計算時間を短縮する「ラージエディ・シミュレーション」のモデル開発を主な研究対象としています。こうした研究が進展すれば、ビル群回りの流れなど複雑物体周りの流れが短時間で計算可能となり、高精度な設計や気流予測にも役立ちます。
また、水銀など電気伝導性のある流体(液体)の変形や流れを扱う電磁流体力学、そのような流れを風力発電に応用する技術の研究、超新星爆発のメカニズムを解き明かす共同研究にも注力しています。
こうした流体力学の研究では、膨大な計算が必要となる流体計算(数値シミュレーション)で分析するため、スーパーコンピュータを活用するケースが多々あります。「しかし近年は、そうしたスーパーコンピュータを利用できる場や機会が減っている」と、小林教授は抱えていた課題を説明します。
「私もかつて流体計算を行う際には、専用に開発されたCPUを搭載するスーパーコンピュータと呼ばれる計算機を活用していたのですが、時代の流れとともに、そういう計算機の普及台数が減りました。そこで今は、通常のパソコンで用いられているCPUを多数並べ、並列計算を行うことで高速化する手法が主流となっています。しかし、並列化に合わせて、現在使っているプログラムを改変する必要があり、そのためのまとまった時間が取れずに研究活動が滞っていました」
一方、他機関にあるスーパーコンピュータを利用する際も、たくさんの研究者が共用しているため、1日間など短期間の利用が推奨され、「長期間の占有が難しかった」と、小林教授は当時の苦しい状況を振り返ります。
そうした中で、同分野の複数の研究室が、NECのベクトル型コンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を導入し、計算の高速化を実現していると知ったことが、「興味を抱くきっかけになった」と小林教授は言います。
「流体計算とベクトル計算機の相性が良いことは、かつての経験から知ってはいましたが、実際にどれくらい高速化されるかは半信半疑でした。そこでNECのホームページを見ると、手軽に数倍から10倍ほど高速化が可能とあり、さらに関心が高まりました」
選択のポイント
トライアル環境と技術支援をセットで享受
導入前不安の払拭が最大の決め手に
2021年、小林教授は、NECの販売パートナーであるビジュアルテクノロジー社に依頼し、SX-Aurora TSUBASAの導入検討を始めます。
導入検討にあたり、小林教授がまず重視したのは、「研究利用において着実に性能が出せること」「研究室単位で購入できる価格であること」でした。
「導入した同分野の研究室で、計算速度が高速化したという成果が出ていましたので、着実に成果が出せるだろうという期待感はありました。また価格についても、販売店から一研究室でも購入できる金額を提示してもらえ、購入を前向きに検討できるようになりました」(小林教授)
しかしその一方で、「決して安くはない購入費用に見合うだけの性能が見込めるのかという懸念が、大きな導入障壁になっていた」と言います。
ビジュアルテクノロジー社では、そうした状況に対して導入支援の必要性を認識しNECへ連絡。NECでは、「トライアル環境」を用意し、クラウド経由で提供。小林教授が普段使っているコード(プログラム)が、SX-Aurora TSUBASA上で高速化するかどうか、試してもらいました。
「これが非常に有意義でした。これまで使っていたコードを簡単に移植できることや、高速化できることをSX-Aurora TSUBASA上で確認できました。特にありがたかったのが、専門家の利用技術支援を受けられたことです。実は当初、私の移植方法ではコードは高速化しませんでした。しかしNECの専門家に、チューニングのコツやポイントを教えてもらい、実際に作業をお手伝いいただいたことで、すぐに高速化が実現しました。このトライアルで、利用技術支援を受けながら性能向上を確認できたことが、導入の大きな決め手になりました」
導入後の成果
最大6倍もの高速化を実現
“導入後の技術支援”も高く評価
小林教授の研究室ではトライアル環境において、3本のコードを移植し、最大6倍もの計算速度の高速化を実現しています。
「この3本は、研究で実際に利用しているコードです。これらを高速化できたことで研究活動の効率が大幅に上がり、大変助かっています」
さらに小林教授は、「導入後も、NEC専門家の利用技術支援を受けられる点」を高く評価しています。
「計算コードはこれからもどんどん変わっていくでしょうし、私自身も変えていくと思います。コードの目的が変化することもあるでしょう。そうしたときに、NECの専門家に気軽に相談できる環境があることは安心感につながります。特に新しい研究に挑戦していくうえで、大きな支えになると考えています。計算の高速化だけでなく、高速化にかける時間を短縮できることで、研究活動のさらなる促進につながるものと期待しています」
今後、小林教授の研究室では、「今回高速化した3本以外のコードも随時高速化し、論文作成に役立てていく」とのこと。また、乱流計算では、平均統計量を得るために、長時間の計算が必要になりますが、「これまで他機関のスーパーコンピュータでは難しかった、そうした長時間計算にも挑戦していきたい」と、SX-Aurora TSUBASAの研究活用に強い意欲を示してくれました。
販売パートナーの声
トライアル環境の提供だけでなく
お客様をサポートすることも重要
本プロジェクトで当社は、SX-Aurora TSUBASAのテクニカルパートナー(販売代理店)として、小林教授が抱えるお困りごとを、NECとの間を”橋渡し”しながら解決する役割を担いました。
ユーザー様によって導入経緯はさまざまですが、ご利用いただくプログラムがSX-Aurora TSUBASAに向く・向かないといったこともありますので、やはりトライアルで試してもらうことが大切だと感じています。
ただし、単純に「トライアル環境を用意したので使ってください」だと、ユーザー様も忙しいので成果には結びつきにくい。小林教授の場合も、プログラムを高速化することが研究のメインではなく、計算で成果を出すことが目的でした。そういう意味でも、サポートが必要なお客様に関しては、NECと連携しきちんと支えていく必要があります。今回の小林教授とのプロジェクトでは、その点が良い結果をもたらしたのではないでしょうか。
当社はSX-Aurora TSUBASAを日本で一番販売しているパートナー企業と自負しています。今後もこれまでのノウハウを基に、さらにお客様にご満足いただける製品・サービスをご提案できるよう努めていきたいと思います。
(ビジュアルテクノロジーURL:https://www.v-t.co.jp/)
NEC担当スタッフの声
積極的にご質問いただいたことも
トライアル成功の鍵のひとつ
今回のプロジェクトでは、トライアルにおける技術支援を担当させていただきました。その際、最初に小林教授から「3つのコード(プログラム)が高速化しないのだけど…」とご相談いただきましたので、コードをこちらで分析し、チューニングする形で対応いたしました。同時に先生からは、いろいろとテクニカルな質問もいただきました。トライアルで成功するには、忌憚なくご質問いただくのが一番ですので、先生から積極的にご質問いただけたことが、今回の成功の鍵のひとつになったと考えています。
また小林教授が実際にトライアルをしていただいた際、性能が出ないからとあきらめるのではなく、もう一踏ん張りし、こちらに問い合わせをいただけたこと。さらに我々も、先生があきらめてしまわれる前にフィードバックできたことが、大きなポイントだったと思います。今回のような事例から、流体計算をされている研究者様など、一人でも多くの方に、SX-Aurora TSUBASAを活用することで計算が速くなることを知っていただきたいと考えています。
トライアルと技術支援を
“標準サービス”として提供したい
過去にトライアルをご利用いただきつつも、お客様ご自身での評価では目標に到達できず、導入に至らなかったケースがありました。それを踏まえ、お客様の導入検討においては、トライアル環境と技術支援はセットで提供する必要があると考えています。小林教授とのプロジェクトでは、教授から性能面での支援依頼を受けた際に、速やかに技術メンバーと連携をとりました。今回はこれが非常にうまく噛み合ったケースだったのではないでしょうか。現在は体制を強化し、より柔軟な技術支援をご提供しています。
また実際に導入いただいたお客様にも、「機材をお届けして終わり」ではなく、コミュニティ空間でつながりを持つなど、SX-Aurora TSUBASAをフル活用していただく環境作りを推進しています。
もう一点、SX-Aurora TSUBASAには、基本的にコードをそのまま移植できるという特長があります。特別なプログラミング言語の習得が不要なので、例えば、PCクラスタのような既存環境からの移行も容易です。現在PCクラスタをお使いの方々にも、ぜひ今回のような事例を広くお伝えしていければと思います。
お客様プロフィール
慶應義塾大学
所在地 | 〒223-8521 神奈川県横浜市港北区日吉4-1-1(日吉キャンパス) |
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設立 | 1920年(前身の蘭学塾の創立は1858年) |
代表者 | 慶應義塾長 伊藤 公平 |
概要 | 東京都と神奈川県に三田キャンパスをはじめとする6キャンパス、10学部を展開 |
URL | https://www.keio.ac.jp/ja/ |
この事例の製品・ソリューション
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(2022年9月22日)