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静岡市児童相談所 様

デジタルの力で児童相談所職員の業務をサポート
静岡市とNECの共創活動

業種:
  • 地方公共団体・官庁
業務:
  • その他業務
製品:
  • ソフトウェア/サービス実行基盤
  • ソフトウェア/情報管理
  • その他
ソリューション・サービス:
  • AI・ビッグデータ
  • 働き方改革

事例のポイント

課題背景

  • 児童虐待の相談対応件数増加により、児童相談所職員の業務負荷が増大している
  • 児童相談所では重要な「初動対応」をはじめ、デリケートな業務ノウハウの新人職員への伝承が難しい
  • 膨大な書類作成等の事務作業が現場に大きな負担を与えている

実証実験 / 導入の成果

AIによる「初動対応」の質向上

実証実験においては、AIを活用したグループは対応の質が約54%向上

AIによる事務処理負担軽減

同じく実証実験においては、記録業務が約33%効率化

AIを活かして働き方改革へ

児童相談所の現場では、AIに合わせて業務改革の可能性を模索する動きがスタート

導入前の背景や課題

児童相談所職員の抱える大きな業務負荷
「ノウハウ定着の難しさ」「対応の難しさ」「事務作業の多さ」
解決に向けた静岡市とNECの共創活動スタート

近年、児童相談所における児童虐待の相談対応件数が、右肩上がりで増加している。対する児童相談所職員の業務負荷も増大し、中でもベテラン職員の持つ「ノウハウ定着の難しさ」と、児童虐待という複雑な社会課題に対する「対応の難しさ」、面談業務などで文字起こしが多発する「事務作業の多さ」などが大きな課題となっている。

この課題に対し、NECは静岡市と共創活動を開始。2022年12月から2023年3月まで、NECとNECソリューションイノベータ、静岡市の3者は、職員の業務支援に向けて「児童相談所の業務をサポートするAIシステム」を活用する実証実験を行った。その実証実験の成果をふまえ、2024年4月より静岡市児童相談所は同システムの導入を開始。

今回、静岡市児童相談所 支援係 川崎 真輔氏、同相談係 赤堀 梓氏に、AIシステム導入の経緯と現在の活用状況について聞いた。

導入の経緯

共創活動で対話を重ね
「DX推進のキーマン」を巻き込み
実証実験を開始

「児童相談所(以下、“児相”)は、こどもの安心、安全な生活を守ることを目標に仕事をしています。重責を担う中、漏れやミスの無いように確実に業務を行うことが必要ですが、人事異動を伴う職場のため、人から人へ対応のノウハウを伝授し、定着させることが重要です。また責任の重さから、職員が自ら対応する中で心理的負担を感じやすいという課題もあります。そのあたりをデジタルの力を借りて解決できないかと思っていました」(川崎氏)

しかしそのようなツールは、パッケージ製品として販売されてはいない。そんな折、NECと共創活動を開始した。最初はなかなかお互いの言葉を理解するのにも時間がかかったが、NECが足しげく通い対話を重ね、そこで生まれたタスクを両者が懸命にこなしたことが共創活動においてよかったのではと川崎氏は振り返った。同じ方向を向きながら、そんなプロセスを丁寧に続けたことが導入への機運を醸成したようだ。

デリケートな案件を取り扱う児相業務に、AIを導入することに抵抗を感じる意見もあったが、川崎氏は各部署の「DX推進のキーマン」を巻き込みながら、行政内部の理解者を増やし、少しずつ求めるシステムに近づけていったと振り返る。

「児相業務のデジタル化を所内で検討したときに、いくつかのアイデアが出ました。その中でも、こどもの命に直結しうるのが、虐待の通告を受け職員がどのように行動するかという初動対応。これを漏れなくスピーディーに行えるようアシストしてもらえると、我々の仕事に対する質も上がっていくでしょうし、それに対応する職員の心理的負荷も軽減されると考えました」(川崎氏)

重要な課題「初動対応」については、職員が通告内容や虐待内容などの情報を入力するとAIの分析結果が表示される。この内容が情報を入力するたびに自動更新されていく仕組みだ。自動更新される内容には、「過去の類似事例」や、不明のまま放置しておくとこどものリスクが高まる「重点調査項目」が含まれ、これらに目を通すことで、「まるでベテラン職員に隣でサポートしてもらっているような感覚」で業務を進められる。また、記録作成等の「事務作業負担軽減」については、音声認識AIにより面談記録や会議の文字起こしを自動で行えるようにした。

「AIが提示する情報を随時参照しながら、初動対応を進めていただくことで、若手職員の方の心理的負担の減少や『対応の質向上』につながるのではないか、と考えています」(NECソリューションイノベータ井上氏)

「AIというと“機械がこうしなさい”と指示をするイメージを持たれるかもしれませんが、そうではありません。児相業務をサポートするAIシステムは、あくまで職員が適切な判断をするために必要な情報を提供してアドバイスをするものです。」(NEC島崎氏)

静岡市児童相談所 支援係
川崎 真輔氏
zoom拡大する
AIによるアドバイス画面のイメージ

共創活動を経て実施した実証実験(2022年冬)では、とくに通告が多い「身体的虐待」「精神的虐待」「ネグレクト」について、それぞれ模擬のケースを用意し、AIシステムを使うグループと使わないグループで対応を比較検証。その結果、AIシステムを活用したグループは対応の質が約54%向上したほか、記録業務も約33%効率化できたという成果を得られ、本格導入に結びついた。

ただ、AI導入に慎重な意見もあったという。また未知のコストが発生するという懸念もあった。それらを乗り越えられたのは、児童相談所長(児相長)の理解が大きかったと川崎氏は振り返る。

「児相長の理解はもちろん、国もこういった取り組みを後押ししていました。国の補助金制度を利用し、こちらも自前の予算に圧迫感を持たせず導入できました。社会的な動きも巻き込めたというところが大きかったと思います」(川崎氏)

導入後の効果

現場では少しずつ変化
AIにあわせて業務変革や
新人のモチベーションアップも

2024年4月の本格導入からおよそ半年が経ち、いくつかの変化が現れていると赤堀氏は話す。

「使ってみると、やはりAIの助言はかなり有用で、ベテランが見ても“そうそう、まさにそういう対応だよね"と思える内容が提示されるようになっています」(赤堀氏)

しかしながら、緊急性が高い案件が多い児相業務においては、スピードが優先される中、AIシステムの活用はまだ試行錯誤の状態という。そんな中、業務変革への期待もある。

「急な通告を受けたら、いったんAIを叩き、出てきた結果を職員の協議の場で提示し、この方針でいいのだろうかと確認していくやり方に変えてみたらどうかという案も出ています。だんだんAIを業務の中に溶け込ませていけば、将来的には、考えていなかったような導入のメリットが出てくるかもという期待は持っています」(赤堀氏)

例えば新人のモチベーションアップと赤堀氏は続ける。

「新人が、ただ指示を受けて行動し“やらされている感”を持つよりは、AIに助言をもらい、それをもとに主体的に自分から意見を発信できるようになれば、仕事に対する積極性も出るかもしれません。例えば新人が通告を取った際にAIによる助言を職員の協議の場に持っていき、“この点はどうですか”と発言として持ち込むことができれば、モチベーション高く仕事をやっていく助けになるでしょう。そういった、今ではまだわかっていないようなメリットが見えてくるかもと想像します」(赤堀氏)。

児相職員には、人と向き合うことによる精神的負荷が重くのしかかる。そこにもAIというツールが何かの助けになるかもしれない。

「私たちの仕事にまとわりつく精神的な負荷は、(AIを活用しても)多分軽減されないでしょう。AIのサポートによって積極的に仕事に向かうことができれば、“辛いけどもうちょっと頑張ろう”というモチベーションの維持に貢献するかもしれないと思っています」(赤堀氏)

静岡市とNECの「児童相談所×AI」という共創活動はまだ道半ばで、乗り越えなくてはならない課題は多い。しかし、現場での職員が新しい可能性を感じ、道を開こうとしていることは間違いなさそうだ。

静岡市児童相談所 相談係 赤堀梓氏

NEC担当スタッフの声

児童相談所を取り巻く現状が社会課題として顕在化してきています。このような社会課題を解決すべく、我々の強みであるデジタル技術を活用し、職員様が抱えている課題を“一緒になって考え抜く”ことで、職員様がこどもやご家庭に向き合う時間を確保できるようにしていきたいと思っています。(NEC島崎)

静岡市様との実証を通して、児童相談所の職員様がこどもと真剣に向き合っている姿を拝見し、本当に感銘を受けました。一方で、精神的な負担は相当なものであると感じました。今後、AIの精度向上を含め、システムの機能強化を行っていく予定です。職員様の負担軽減、最終的にはこどもの虐待の減少に繋がっていくようなシステムを目指して、今後取り組んでいきたいと思います。(NECソリューションイノベータ井上)

お客様プロフィール

静岡市児童相談所

所在地: 〒 420-0947 静岡市葵区堤町914-417
URL: new windowhttps://www.city.shizuoka.lg.jp/s4986/s006371.html


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(2024年9月17日)

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