神奈川県様

EV充電サービス有料化に向けた実証実験を展開
充電インフラ拡充への道筋を探る
 ※お客様情報等は取材当時のものです。

神奈川県様
神奈川県様
業種:
  • 地方公共団体・官庁
業務:
  • その他業務
製品:
  • 蓄電池、EV充電インフラ

電気自動車(EV)の充電サービスの多くは、当時、無料で提供されていました。
しかし、充電設備を確固たる社会インフラとしていくにはサービスの有料化が不可欠です。
2006年より県内のEVならびに充電インフラの普及に取り組んできた神奈川県様は、NECとともにEV充電有償化への道筋を模索。
箱根町様の協力をいただき、同町役場内の急速充電器を使った実証実験を行いました。

課題

  • 当時、EV充電サービスの多くは無料で提供されていました。また、無人で運用されている場所も少なくありませんでした。
  • 充電設備の維持や拡充を図り、充電サービスを社会インフラとしていくには、サービス有償化への移行が不可欠でした。
  • しかし、有償化のための仕組みの構築、既存充電設備への認証機器設置コストを含めた料金設定の指標となるデータは限られていました。

成果

  • 神奈川県様とNECが行った2カ月間の実証実験と調査により、認証機器設置のコスト、利用者動向、管理者側の状況などを把握することができました。
  • これらのデータが揃ったことで、課金システムづくりの方向性を検討することが可能になりました。
  • 神奈川県様は、この実験結果をもとに、有料化に向けての施策を具体的に立案する段階に入っていくことになります。

EVの普及には充電インフラ整備が不可欠

神奈川県 環境農政局 新エネルギー・温暖化対策部 蓄電推進課 電気自動車グループ グループリーダー 若本伸子氏
神奈川県
環境農政局 新エネルギー・
温暖化対策部 蓄電推進課
電気自動車グループ
グループリーダー
若本 伸子 氏

神奈川県様が「かながわ電気自動車普及推進協議会」を立ち上げ、電気自動車(以下、EV)普及の取り組みを本格的に始めたのは2006年のことです。さらに2008年3月には、「2014年度までに県内のEV普及台数を3,000台にする」との目標を掲げました。日本におけるEVの先駆けである三菱自動車の「i-MiEV」の一般販売が始まったのが2009年だったことを考えれば、神奈川県様の取り組みは、極めて先進的なものでした。

「県内に京浜工業地帯を抱えていることもあって、神奈川県では以前より、大気汚染を始めとする環境問題に積極的に取り組んできました。“究極のエコカー”と言われるEVの普及活動も、その流れの中にあります」
そう話すのは、神奈川県環境農政局で電気自動車グループのリーダーを務める若本伸子氏です。若本氏によれば、神奈川県がEV普及に注力しているのは、環境・資源問題対策だけではなく、県下の自動車メーカー、部品メーカーのビジネスを後押しするという目的もありました。EVという新しい分野の伸長は、県内の産業振興につながるというわけです。

しかし、EV利用を広めていくには、自動車だけではなく、充電インフラも同時に普及させていかなければなりません。若本氏は話します。
「EV利用には、現状ではガス欠ならぬ“電欠”の不安がつきまといます。EVを普及させるには、充電設備の数を増やし、安心してEVに乗れる環境をつくることが必要です」

そこで神奈川県様は、急速充電器を県内に100基設置することも目標に掲げ、インフラ整備も積極的に進めていきました。
補助金や各種の施策が奏功し、急速充電器の設置数は2011年10月時点で目標の100基を達成。EVの導入台数も、2012年6月末に3,000台に達しました。2013年3月現在で、県内のEVの台数は4,000台を超え、急速充電器はおよそ160基を数えます。

「神奈川県は現在、おそらく国内で最もEVが走っている県だと思います。世界的に見ても、一つの地域でこれだけ多くのEVが利用されているのは例がないのではないでしょうか」と若本氏は胸を張ります。

充電サービスをいかに有料化するか

神奈川県 環境農政局 新エネルギー・温暖化対策部 蓄電推進課 電気自動車グループ 主事 若松久人氏
神奈川県
環境農政局 新エネルギー・
温暖化対策部 蓄電推進課
電気自動車グループ
主事
若松 久人 氏

EVの初期需要の創出に成功した神奈川県様でしたが、課題もありました。充電サービスの有料化の問題です。
「県内の急速充電器の多くは現在、無料でご利用いただいています。しかし、この状態が続くと、充電器を設置した事業者が設備を維持していくことが難しくなりますし、新規設置のハードルにもなります。また、ガソリン車のユーザーが自己負担で燃料を購入していることを考えれば、受益者負担の公平性という点でも問題があります」

環境農政局の電気自動車グループ主事、若松久人氏はそう説明します。そこで神奈川県様は、利用者から適切な料金を徴収し、充電インフラの継続的な拡充を目指す事業モデルを確立するための実証実験に取り組むことを決めました。

箱根町役場 総務部 財務課 課長 川口 將明 氏
箱根町役場
総務部 財務課
課長
川口 將明 氏

その実験のプランに大きな関心を寄せたのが県西部の箱根町様でした。その背景について、箱根町役場の総務部財務課の課長、川口將明氏は次のように説明します。

「箱根町では2008年より“環境先進観光地・箱根”というスローガンを掲げ、環境問題対策と観光地としての魅力の創出に取り組んできました。翌年には、i-MiEVの発売に合わせて公用車にEVを導入すると同時に、役場の敷地内に急速充電器を設置して、無料で充電サービスをご提供してきました。首都圏から箱根にEVで来ていただき、観光地の玄関口に位置する当役場で一度充電をしたうえで、観光スポットに足を伸ばしていただく。想定していたのは、そんな利用方法です」

箱根町様のEV公用車
箱根町様のEV公用車

設置当初の利用者数はそれほど多くはありませんでしたが、レンタカーや地元のタクシーにもEVが導入され、日産の「リーフ」発売後に一般のEVユーザーが顕著に増え始めてからは、充電利用も盛んになっていきました。それにともなって、2012年4月には、敷地内に2台目を設置。1日ののべ利用台数は、およそ20台まで増加しました。

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そうした中、箱根町様でも課題となったのは、やはり有料化の仕組みづくりでした。充電をいずれ有料サービスにするのは自然の流れである。では、その仕組みをどうつくっていけばいいか──。そう考えていた箱根町様にとっても、神奈川県の実証実験は絶好の機会だったのです。

箱根町役場での実証実験がスタートしたのは、2013年1月21日のことです。実験のパートナーとして神奈川県様が選んだのがNECでした。NECを選んだ理由を、若本氏はこう説明します。
「実験が、これまで充電器をお使いになっていた利用者に新たなご負担をかけることは好ましくありません。その点、NECさんのプランは、既存のカードを利用して充電ができるというものでした。これまでと同様に24時間使えることも利用者にとっては大きなメリットで、さらに、その間コールセンターでトラブルや問い合わせへの対応をしていただけます。いろいろな点で、たいへん魅力的なご提案であると感じました」

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従来から役場に設置されていた急速充電器に取り付けた認証装置にカードをかざすだけで、すぐに充電サービスが受けられる。利用できるのは、ジャパンチャージネットワークのEV充電会員カードと、石油元売り4社(出光興産、コスモ石油、JX日鉱日石エネルギー、昭和シェル石油)のカードで、カード未保有者は、充電器脇の電話からコールセンターに連絡することで充電ができる──。それが、実証実験における充電利用の仕組みでした。

さらに、今回の実験の大きな特徴として、認証装置がNECやジャパンチャージネットワークのクラウドサービスにつながっている点が挙げられます。クラウドを介して、既存のカードサービスと連携できるだけでなく、利用者属性や、いつ、どのくらい充電したかといったデータを収集することも可能です。今回の実証実験は、認証の部分だけの実証で、課金は行っていませんが、このシステムは、課金システムが実用化される際にも、そのまま利用できるものです。

管理側の手間が大幅に軽減

"箱根町役場 総務部 財務課 係長 鈴木 宗久 氏
箱根町役場
総務部 財務課
係長
鈴木 宗久 氏

3月29日までおよそ2カ月間にわたって行われた実証実験を振り返って、箱根町役場総務部財務課係長の鈴木宗久氏は次のように話します。
「使い勝手が多少変わったこともあって、当初は利用者からのお問い合わせもありましたが、すぐにこれまで同様、スムーズにお使いいただけるようになりました。利用台数も、実験以前の水準を保っています。また、役場サイドから見れば、管理の手間が大幅に省けるというメリットがありました」

それまでは管理上の理由から、未使用時の充電器は施錠されていました。利用者は、設置された電話から充電する旨を役場に告げて、昼間は職員、夜間および閉庁日は管理会社のスタッフが利用者に鍵を届けるという方式になっていました。カード認証を導入することによって、その作業がまるまる省けるようになったわけです。

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クラウドに蓄積されたデータの検証作業はこれからですが、この認証システムがユーザーに負担となるものではないこと、管理側の手間が軽減することなどはおおむね実証されたと言っていいのではないか。そう、鈴木係長は話しています。

EVユーザーの利便性をより高めるために

神奈川県様は今後、この実験の結果を詳細に検証し、課金の仕組みをどのように構築していくかを具体的に立案していくことになります。一方、箱根町様は、神奈川県様による実験が終了した現在も、同一の実験運用を引き続き行い、利用データの取得を継続していきます。
「観光地は、季節によってお客さまの動向が変化します。1年を通じてデータを収集することで、より正確なEV利用者の動向を把握したいと考えています」(川口氏)

EVの普及には、様々なプレーヤーの協働が必要です。若本氏は、今後も国や自治体と民間事業者が協力し合いながら、より安心してEVが利用できる環境を整備していくことが重要であるとの考えで、民間事業者の取り組みにも期待を寄せています。

「クラウドを介してより多くの方々が充電サービスを利用できる仕組み、あるいは充電器の満空情報や故障情報をウェブ上ですぐに確認できる仕組みなどをさらに整備していただき、EVユーザーの利便性をどんどん高めていってほしいと思います」

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  • 本事例の記載内容は、2013年3月実施の取材に基づいており、
    お客様の部署名および役職名等も取材当時のものです。

お客様プロフィール

神奈川県

所在地 神奈川県横浜市中区日本大通1
職員数
(一般行政部門)
7,245人(平成24年4月現在)
住民登録人口 9,069,042人(平成25年2月1日現在)
URL new windowhttps://www.pref.kanagawa.jp/

箱根町

所在地 神奈川県足柄下郡箱根町湯本256
職員数 389人(平成24年4月1日)現在
住民登録人口 13,305人(平成25年3月1日現在)
URL new windowhttps://www.town.hakone.kanagawa.jp/

(2013年4月18日)

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