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コラム
第3回 「EMC対策とは?」
回路設計におけるEMC対策とは?基本をわかりやすく解説
EMC(Electro Magnetic Compatibility)とは、電磁両立性と訳され、電気・電子機器が発する電磁波(電磁ノイズ)が周辺の機器に影響を与えず、自らも周辺からの電磁波(ノイズ)の影響を受けずに動作する耐性のことを言います。
図のように、電磁両立性(EMC)はエミッション(EMI)とイミュニティ(EMS)に分けられます。
エミッション(EMI)とは、発生源から電磁エネルギーが放出する現象を言います。
一方、機器からのエミッション(EMI)等により、性能低下や誤動作を起こさずに動作できる機器の耐性をイミュニティ(EMS)と言います。
また、こういった性質を確認するためにEMC試験を行います。電気・電子機器製品の出荷・販売にはEMC試験が必要となります。
EMI対策とは
EMIは「Electro Magnetic Interference」の略で「電磁妨害」を意味します。
周辺の他の機器に影響を及ぼさないよう、発生するノイズを抑制することをEMI対策と呼びます。
EMI対策は、エミッション対策という呼び方もします。
イミュニティ対策とは
イミュニティとはEMSのことを指し、「Electro Magnetic Susceptibility」の略で直訳すると「電磁感受性」となります。
他の機器がノイズを発生した場合でも、その影響を最小限に留めるための対策のことをイミュニティ対策と呼びます。
EMC設計とは
上記2つの『EMI対策』と『イミュニティ対策』を両立させた設計を『EMC設計』あるいは『EMC対策』と呼びます。
世界各国ではある一定の基準(EMC規格・EMI規格)を設け、製造する電子機器等が一定レベルのEMC設計を行う事を必須としています。
また、これらを業界内では『ノイズ対策』と呼ぶこともあります。
ノイズとは不要な電気エネルギー(不要電磁波)のことを指します。
電気、電子機器の進歩、普及に伴い、このようなノイズを発生する機器が多くなり電磁環境の悪化が問題視されています。
ノイズを発生する機器は隣接機器に電磁妨害をもたらす加害者であると同時に被害者にもなりやすいのでEMI、EMS双方の対策が重要です。
機器から発生したノイズの伝導には空間伝導と導体伝導の2種類があります。
輻射ノイズとなって周囲の機器に入り込んでいくか、電源ラインやインターフェースケーブルによって伝搬されます。
これら加害者、被害者、伝搬経路要素のうちの一つを無くすことができれば、ノイズ障害は軽減されます。
電子機器のノイズは周りの機器に甚大な影響を与える場合もあります。
そこで、電子機器を安心して使うことができるように、電子機器から発生するノイズを一定値以下に抑制することや、一定レベルのノイズが加わっても電子機器が正常に動作することがルール化されており、ノイズ規制として定められています。
国内・国外の EMC規格・ EMI規格
EMCに関わる規格は主に次のものがあります。
「国際規格」「各国規格」「団体規格」「社内規格」
具体的には下記の表のとおりです。
規格の種類 | 規格名称 |
---|---|
国際規格 | IEC(国際電気標準会議)、CISPR(国際無線障害特別委員会)等 |
各国規格 | JIS(日本)、FCC(米国)、CENELEC(EU)、ETSI(EU)、DIN(ドイツ)等 |
団体規格 | VCCI(日本)、VDE(ドイツ)等 |
社内規格 | 各メーカが独自に定める規格等 |
上記の規格はほんの一部であり、規格にも「製品規格」「製品群規格」「一般規格」「基本規格」などの種類があります。
製品設計では、常にこのような規格の最新内容に対応した設計が求められています。
また、規格の改正も度々行われる上これだけの種類があるとその内容を設計へ反映することは容易ではありません。
ノイズの発生原因
電気回路で情報を伝えるには電流が必要です。
電流は周囲に電磁界を作り、情報に応じて変化する電流は周囲に電波を放射します。
これがノイズの原因になります。
更に現在の電子機器は多くの情報量が必要となっています。情報量が増えるにつれて信号線に流れる電流の周波数は高くなり、また、より多くの信号線を使う必要が出てきます。
一般に、動作周波数が高いほど、強い電波を放射しやすくなります。
現在のように電子機器が高性能になると電子機器で使われる信号線はノイズ障害を発生しやすくなる傾向があります。
デジタル回路では、信号レベルをHighとLowに切り替えることにより情報を伝え、回路を動作させています。
この信号レベルが切り替わる瞬間に信号線に高周波電流が流れます。
また、このとき信号線だけではなく電源やグランドにも電流が流れます。
デジタル回路で使われるこれらの高周波電流がノイズの原因になります。
デジタル回路では信号を伝える電流自体がノイズの原因になるといえます。
そして、これらのノイズは伝達路とアンテナを伝わって放射されます。
デジタル回路を使った電子機器ではIC同士をつなぐ配線や基板、ケーブル、金属筺体などが、この伝達路やアンテナとなり、ノイズを放射します。
一般に周波数が高ければ高くなるほど、電波として放射されやすくなります。