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AWS活用事例NECの大規模基幹システムをAWSに移行
基幹システムをSAP S/4 HANAに刷新し、AWS上へ移行
いち早く実践してノウハウを獲得し、お客様のDXを加速
- 業種:
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- 情報サービス業
- 業務:
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- 設計・開発・製造
- 経営企画
- ICT管理・運用
- 共通業務
- その他業務
- 製品:
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- シンクライアント
- ソフトウェア/コラボレーション
- ネットワーク/LAN/WAN
- ソリューション・サービス:
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- クラウド
- ネットワーク/ネットワークサービス
- 基盤技術/サーバ仮想化/デスクトップ仮想化
事例のポイント
課題背景
- SAP ECC 6.0のサポート切れが迫っており移行しなければならない
- 将来を見据えて、基幹システムの拡張性を高めておきたい
- 自社のプロジェクトを通じてノウハウを蓄積し、お客様の移行支援に役立てたい
成果
サポート切れのSAP ECC 6.0をSAP S/4 HANAへ移行
サポート期限の延長などもあるが、いち早くSAP S/4 HANAに移行することを決定。アドオンの踏襲、停止時間を最小にした切り替え計画など、現場への影響を最小にしながらスムーズに移行を行っている
システム基盤にAWSを採用しコストを削減
新基幹システムのシステム基盤にAWSを採用。拡張性を高めた上、余剰リソースへの投資を避けることでコストも削減できる
お客様のSAP移行支援に向けて実践的なノウハウを蓄積している
プロジェクトメンバーには、普段、お客様向けにサービスを提供しているエンジニアやコンサルタントも参加。基幹システムに求められる高い可用性や拡張性を実現するためのインフラ設計や運用設計業務を実戦の中で経験し、「SAP on AWS」に関する豊富なノウハウを蓄積できている
開発システム
AWS上に移行したNECの新基幹システム
NECのデータセンターとAWSを閉域網で接続したセキュアな環境にSAPを移行した。
SAP移行プロジェクトの大まかなスケジュール
ユーザー企業として慎重に基幹システムの移行を進める一方、SIerとして高度なノウハウを蓄積することを目指した。
事例の詳細
導入前の背景や課題
エンジニアの確保などを考慮していち早くSAPの移行に着手
2010年からNECはNEC_G1(NEC Global One)というプロジェクトを進めています。プロジェクトの目的は、グローバル市場での競争力を高めること。そのためにグループ企業間でバラバラだった経理、購買、販売といった基幹領域の業務プロセス、コード、およびそれらを支えるITシステムの標準化を進めています。
「例えば、新しいビジネスモデルへの対応や、国や地域をまたいだサプライチェーンのダイナミックな再編成など、環境変化に迅速に対応していくため。そして、経営基盤の効率化、ムダの削減が標準化の狙いです」とNECの松島 宏明は言います。
この標準化を基幹システムとして支えているのがERPパッケージのSAP ECC 6.0です。しかし、広く知られている通りSAP ECC 6.0には大きな課題があります。サポート期間の終了です。
「当初2025年とされてきたサポート期限は2027年に延期され、少し猶予が生まれましたが、NECはいち早くSAP S/4 HANAに移行することを決めました。理由の1つはエンジニアを確保するため。2027年間近になるほどエンジニアを確保しづらくなると考えたからです。また、基幹システムを先に移行しておけば、周辺システムの標準化も効率的に進められると判断しました」と斉藤 浩介は話します。
システム構築のポイント
クラウド移行の効果を試算して十分な手応えを得る
早期にSAP S/4 HANAへの移行を進めることに加えて、NECはもう1つ大きな決断をしました。それは、SAP S/4 HANAをクラウド上で稼働させることです。
「NEC_G1プロジェクトによるグループの経営基盤の標準化はこれからも続きます。つまり稼働開始後もSAP S/4 HANAを利用するユーザー数やトランザクション数は増え続けるということです。それを考慮し、クラウドによってシステム基盤の拡張性を確保しておきたいと考えました」と斉藤は話します。
とはいえ、従業員7万人(国内)にものぼるNECグループを支えるほど大規模な基幹システムのクラウド化は、ほとんど例のないチャレンジです。
「それでも決断したのはNECがシステムインテグレーターだからです。これから多くのお客様がNECと同様にSAPの移行に取り組むことになります。その中には、クラウドへの移行を検討するお客様もいるでしょう。ならば、NECは先行して移行を経験し、将来、ノウハウとスキルを持ったSEがお客様の移行を強力にサポートできるようにしておくべきだと考えました」と松島は強調します。
クラウドサービスとしては、AWS(アマゾン ウェブ サービス)の採用を決めました。AWSがSAP S/4 HANAのシステム基盤として豊富な実績を持っていたこと、また、AWSとNECのデータセンターをAWS Direct Connectで閉域網接続したクラウド環境がちょうど完成していたことが大きな決め手となりました。
加えて、AWSに移行した場合の効果について、十分な手応えを得られたことも採用を後押ししました。「AWSには『クラウドエコノミクス』という簡易アセスメントサービスがあります。AWSへの移行による効果を定量的に試算し、どれくらいの効果が見込めるかを事前に把握することができるのです。その結果を参考にしながら、将来AWSに移行する可能性があるシステムのCPUの稼働率などを独自に調査し、クラウドに移行したときの利用料を試算。運用を集約する効果なども加味し、最終的にシステム基盤のコストを30%削減できるとの結果を得て、AWSの採用を決定しました」と松島は説明します。
導入後の成果
マネージドサービスを駆使してAWS標準ともいえる運用を設計
SAP S/4 HANAおよびAWSへの移行作業は、ビジネスへの影響を最小限にするため、システムの停止期間を極力短くする計画を立てています。「この規模のプロジェクトとしては、ここまで非常にスムーズに進んでいると評価しています」(松島)。
機能についても現場への影響を最小限にすることを意識し、一部を除いて既存のアドオンをできるだけ踏襲しています。
その一方、運用設計は大きく見直すことにしました。具体的には、オンプレミス環境では、独自開発した専用ツールで基幹システムの運用を行っていましたが、現在はAWSが提供する多様なマネージドサービスを駆使した運用管理の実現に取り組んでいます。「マネージドサービスを利用した運用を標準化することで、システム基盤のコストや業務負荷のさらなる削減につながることが期待できます」と斉藤は言います。
プロジェクトは、現行システムの運用管理に携わるメンバーが中心になりましたが、普段、お客様のシステム開発を担っているエンジニアやコンサルタントたちも多数参画しました。将来、お客様のSAP移行プロジェクトを支援することを見据えて、実戦の中でノウハウを蓄積するためです。
「もともと、NECはAWS認定資格を持つ技術者を約1500人擁しており、その数は国内トップクラスを誇っています。そのエンジニアたちが大規模基幹システムのAWSへの移行という貴重なプロジェクトを経験できた。システムインテグレーターのNECとしては、最も大きな成果といえます」と松島は話します。
実際、この経験はNEC社内の情報共有の仕組みを通じて広く共有され、既にさまざまなプロジェクトに貢献しています。また、グループ会社のアビームコンサルティングは、今回の経験を活かしてSAP S/4 HANAのAWS上での稼働テストを自動化するサービスを幅広く展開しています。
このように、NECは大規模基幹システムのAWSへの移行という、前例のない大きなチャレンジを順調にすすめています。今後は、オンプレミス環境に残っている周辺システムも段階的にAWSに移行していく計画ですが、同時に国や地域をまたいだサプライチェーンの再編成など、新基幹システムならではの新たなチャレンジも大きなテーマとなります。「SAP S/4 HANAは、データの活用を強く意識した設計になっています。その特長を活かして、積極的にデータを活用し、国際市場での競争力向上に貢献していきたいと考えています」と松島は強調します。もちろん、活用を進める中で蓄積していくSAP S/4 HANAやAWSに関するノウハウも積極的にお客様にも還元していく考えです。
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