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2021年度C&C賞表彰式典開催
NEC Information2021年11月29日、ANAインターコンチネンタルホテル東京(東京都港区)にて、2021年度C&C賞表彰式典を執り行いました。2020年に続き、2021年も、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、COVID-19)対策で、式典会場での参加者数を制限する代わりに、式典の模様をオンラインライブ配信し、会場で21名、オンライン視聴で49名にご出席をいただきました(写真1)。
式典は午後4時に始まり、遠藤信博理事長が急用のため、宮崎孝専務理事が開会の挨拶を代読しました。挨拶で、コロナ禍のなか、多くの皆様のご協力・ご支援でC&C賞選考と表彰式典開催ができたことへの謝意と、C&C賞は1985年の開始以来37回目を迎え、過去73グループ117名にのぼる方々が受賞されたこと、また、財団の主要な活動が紹介されました。次に、青山友紀審査委員長より、選考経緯と受賞2グループの発表がありました。グループAの受賞者として、「人工知能技術の発展への貢献となる、脳の視覚野の知見を工学に応用した階層型神経回路モデル『ネオコグニトロン』の先駆的研究」に対し、ファジィシステム研究所 特別研究員 福島邦彦博士、またグループBの受賞者として、「For Outstanding Leadership in Introducing Subsumption Architecture for Robot Control and Promoting the Practical Use of Autonomous Robots (ロボット工学におけるサブサンプション アーキテクチャの提唱と、自律型ロボットの実用化への主導的貢献)」に対し、マサチューセッツ工科大学 ロボット工学名誉教授、ロバストAI CTO ロドニー ブルックス(Rodney Brooks)教授が、それぞれ紹介されました。続いて、C&C賞贈呈に移り、青山審査委員長より福島博士に、表彰状、賞牌と賞金目録が贈呈されました(写真2)。ブルックス教授は、COVID-19の影響により来日できなかったため、賞牌とともに撮影した写真をスクリーンに映し、受賞を祝福しました(写真3)。
続いて、ご来賓の経済産業省商務情報政策局長の野原諭様よりご祝辞を賜りました。受賞者がAI分野で世界的な業績を上げた先駆者であることを取り上げ、コロナ禍でわが国の行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れが浮き彫りとなり、その原因はデジタル投資の不足にあり、わが国が抱える多くの課題はデジタル技術の利活用によって解決可能で、幅広いデジタル投資の活性化がPost COVID-19の成長の鍵であると考えられ、先駆的な視点でデジタル時代に即した産業政策に国を挙げて取り組むとのお言葉がありました。
次に、電子情報通信学会会長の石田亨様よりご祝辞を賜りました。福島博士は、1981年に電子情報通信学会業績賞を受賞したことが紹介されました。石田様は、学生時代に神経回路網のアイデアに興味を持ち、買い求めた自己組織化構成論の本の中で福島博士の研究に言及されていたこと、その40年後の京都賞シンポジウムで、講演者の求めで福島博士と会う機会を設けたこと、また、ブルックス教授のサブサンプションの論文には懐疑的だったが、その5年後に教授のIntelligence without Reasonという講演を聴いて衝撃を受けたことを語られました。そして、二人の受賞者は若い頃、遠い彼方を見て研究をし、その研究が今回の受賞となったことに感動したと締めくくりました。
情報処理学会会長の徳田英幸様は、祝辞の中で、ネオコグニトロンが今日のAIのコア技術である畳み込みニューラルネットワークのプロトタイプであり、AI技術の開発と実用化に大きく貢献しており、C&C賞を契機に福島博士らが次世代AIの研究と産業をリードすることを願っていること、また、ブルックス教授のサブサンプション アーキテクチャの進歩は、多くの分野で自律型ロボットの応用を広げ、Society5.0のようなより良い未来の社会を実現すると確信していると話されました。
受賞記念講演では、福島博士は、「神経回路モデルとネオコグニトロン」と題して、ネオコグニトロンの着想から回路構造、動作原理を解説し、最後に、これからについて次のように話しました。生物の脳に学ぶのがAIにとって重要な方法で、神経生理学・心理学をもとにした神経回路モデルが新しいAI、深層神経回路の設計原理として使える。逆に、現在のAIとテクニックは、脳を解析するための強力な武器になる。これを繰り返すことで、ますます能力の高い神経回路ができると、講演を締めくくりました。次に、ブルックス教授の講演をビデオ上映しました。ブルックス教授は、サブサンプション アーキテクチャと、世界に与えたインパクトを講演しました。1986年、論文「Subsumption, A Robust Layered Control System for a Mobile Robot」で移動ロボットをプログラミングする方法を発表、1988年に開発したGenghisで柔軟な制御ができると確信、今では、サブサンプションを適用した自律型移動ロボットは、火星探査、家庭用掃除機(Roomba)、爆弾処理、福島第一原発などで活躍していること、また、実演を見て学習し、人間と協働するヒューマノイド型のロボットを開発し、製造現場で採用されていること、最後にサブサンプションは開発されてから約35年経ち、あらゆる種類のロボット、さまざまな惑星、いろいろな環境で用いられていることを話しました。最後に受賞者に盛大な拍手を送り、午後5時30分に予定通り式典はお開きとなりました。
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公益財団法人NEC C&C財団について
NEC C&C財団は、C&C技術分野、すなわち情報処理技術、通信技術、電子デバイス技術及びこれらの融合する技術分野における開拓又は研究に対する奨励及び助成活動を通じて、世界のエレクトロニクス産業の一層の発展を図り、経済社会の進展と社会生活の向上に寄与することを目的としています。1985年3月に設立された財団法人であり、その基金はNECからの寄付金に依っています。
この目的を果たすための活動として、現在、顕彰事業及び研究助成事業を行っています。
顕彰事業としては、「C&C賞」に加え、本財団の国際会議論文発表者助成を受けて海外で発表された論文のなかから、毎年おおむね3件以内の優秀論文に対して「C&C 若手優秀論文賞」と賞金を授与しています。
研究助成事業としては、日本在住の大学院所属の学生で、海外で開催される国際会議で論文発表などをされる方々への会議参加費用の助成とともに、日本の大学院に滞在中の外国人研究員に対する研究費用助成を行っています。