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基調講演

C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017

Orchestrating a brighter world
~デジタルトランスフォーメーションで共に創る未来~

2017年11月9日・10日、「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017」が、東京国際フォーラムで開催されました。本稿では、「Orchestrating a brighter world 〜デジタルトランスフォーメーションで共に創る未来〜」をテーマに行われたNEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 新野 隆による基調講演をご紹介します。

NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 新野 隆

はじめに

実世界の出来事をデジタル化してサイバー世界に取り込み、人・モノ・コトを深いレベルでつなげることによって新しい価値を生み出すことにより、私たちの生活やビジネスをよりよく変えていくこと。それがNECの考えるデジタルトランスフォーメーションです。

NECは7つの社会価値創造テーマを定め、多くのお客様と共創しながら、「安全・安心・効率・公平」といった普遍的な価値提供に向けて、お客様のデジタルトランスフォーメーションに取り組んでまいりました。

「7つの社会価値創造テーマ」(図1)は、国連が定める「持続可能な開発目標(SDGs)」(図2)とも親和性が高いものです。世界規模で進む社会課題の解決に向けた動きも踏まえながら、NECはお客様とともに、デジタルトランスフォーメーションによってより良い未来を創りあげていきます。

図1 NECが取り組む「7つの社会価値創造テーマ」
図2 国連が定める「持続可能な開発目標(SDGs)」

それでは、デジタルを活用することで社会や企業にどのような変革が起こるのか、事例を通じてご紹介します。

NEC自身のデジタルトランスフォーメーションへの取り組み

NECはお客様との共創のために、NEC自身が先ずデジタルトランスフォーメーションに取り組みます。そして、NECがデジタルトランスフォーメーションに取り組む際にはNECの強みであるAIを最大限活用します。ここではNEC自身の4つの変革事例「(1)営業・マーケティング改革」「(2)設計・開発の変革」「(3)サプライチェーンの変革」「(4)働き方改革」をご紹介します(図3)。

図3 デジタルトランスフォーメーションを活用した自己変革

1つ目の「営業・マーケティング改革」では、デジタルマーケティングの活用により、見込み顧客の発掘4倍という成果を果たしました。Webサイトなどさまざまな顧客接点から得られる情報をAIにより分析し、お客様のニーズに合致したご提案を行い、エンゲージメントを向上させました。

2つ目の「設計・開発の変革」は、ソフトウェア開発マネジメントの事例です。発生したバグやレビューのデータをAIに学習させ、プロジェクトの成否を進捗25%時点で80%判定することを可能にし、生産性向上と顧客満足度向上につなげることができました。

3つ目の「サプライチェーンの変革」では、一部の汎用サーバの需給予測にAIを活用し、必要部品のシミュレーションで、従来の人手に比べて月々の月末部品在庫を金額ベースで45%削減できることが分かりました。

最後は、「働き方改革」の事例です。これまで人手で行っていた伝票の確認をRPA(ソフトウェアロボット)で自動化し、全体で70%の処理削減を可能にし、従業員一人ひとりがやりがいを持って取り組めるような業務にリソースをシフトすることができるようになっており、全体としての生産性が上がっています。

NECは、自社の取り組みで蓄積したノウハウの活用とAI技術とソリューション提供の両面を強化しながら、お客様のデジタルトランスフォーメーション実現をサポートさせていただきます。

2030年の日本やその他の先進国の社会課題に向けて

人口減、高齢化が進む日本では、2030年には65歳以上の高齢者が3人にひとりとなり、労働力減少に拍車がかかるといわれています。このような状況のなかでは、さまざまな業種で現在提供されているサービスのみならず、社会システムそのものの維持が困難と予想されます。AIを活用することで、人がやるべきことに人的資源を集中することが求められるでしょう。「金融」の分野での事例をご紹介します。

金融〜証券分野にAIを導入し売買審査の工数大幅削減

インターネット経由の取引額が拡大するにつれ、不正取引の数も膨大になります。人手での対応が難しくなり、早急な対応が求められています。NECは東京証券取引所様とAI活用の売買審査業務に関する実証実験を行い大きな成果を得ました。その成果を受けて、2017年9月からはSBI証券様、楽天証券様とも実証実験を開始しました。

課題先進国であるわが国での取り組みを、労働力減少に直面する他国の課題解決につなげていきたいと考えています。

2030年の世界の社会課題に向けて

一方、世界では人口増加による問題が噴出します。2030年の世界人口は85億人と推計され、特に、都市人口は50億人へと増加します。その結果、都市間で人とモノの移動が増加することにより、さまざまな問題が起こります。

そのなかで「空港」のシーンにフォーカスすると、利用者の増加への対応とともに、グローバル化するテロ対応が必須です。海外からのテロリスト流入だけでなく、自国内のテロリスト流出にも対策が急務です。しかも、安全・安心を維持しながら、空港利用者の利便性も両立しなくてはなりません。

NECの顔認証技術を活用した出国管理システム

空港が直面する課題に対し、米国ワシントンのダレス国際空港を含む複数の空港で、NECは顔認証を活用した出国管理システムの実証実験を行っています(図4)。将来的には、顔認証でのチケットレスな搭乗も視野に入れて取り組んでいます。

図4 顔認証を活用した出国管理システムの実証実験

未来の社会に向けてNECが価値提供できることとは

先ほど見てきたような未来の社会に向けて、NECが価値提供できる点をご紹介します。

NECはセンシング技術や画像認識技術を使い、実世界のデータを「見える化」し、「分析」「対処」することで新たな価値を生み出します。そのコアとなるのが最先端AI技術群「NEC the WISE」です。「見える化/分析/対処」のプロセスそれぞれに、No.1/Only1の技術を保有しており、課題やニーズに合わせて、それら技術を組み合わせ、価値提供します(図5)。

図5 未来の社会に向けてNECが価値提供できること

そのなかでもNECは、「見える化」に強みを持っています。その代表格が「顔認証技術」であり、米国政府機関が発表するベンチマークテストで4回連続1位を獲得しました。

そして今、NECの「見える化」技術は、技術の応用により更なる価値創出に取り組んでいます。

人の気持ちの「見える化」遠隔視線推定技術の研究開発

NECは顔認証技術を応用した遠隔視線推定技術により、視線から「人の気持ちの見える化」に取り組んでいます。この技術を活用することで、例えば、マーケティングやおもてなしなど、安全・安心だけではないさまざまな価値創出が可能になります。

一方、デジタルの活用によって社会は圧倒的に便利になりますが、「なりすまし」などのリスクも高まります。NECは、顔認証だけではなく、個人に特有のさまざまな生体情報から、「誰もが安心してデジタルを活用できる世界」に貢献していきます。このNECの生体認証を「Bio-IDiom(バイオイディオム)」と名づけ、皆様に広くご利用いただけるように取り組みます(図6)。

図6 Bio-IDiom(バイオイディオム)

NECがご提供するのは、AIだけにとどまりません。デジタル時代の「つながる」を実現するコンピューティングとネットワーキングの技術を保有しています。2017年10月25日に発表したスーパーコンピュータや、今後実用化される5Gのネットワーク技術など、デジタル時代に必要な膨大なデータを扱うために必要な技術を強化しています。

最後は「安全」を守るセキュリティです。デジタル時代にはIoTでさまざまな人とモノがつながります。その結果、未知のウィルスによる脅威が大きくなります。NECが2017年10月24日に発売した「ActSecureセキュリティ異常検知サービス」は、それまで対応が難しかった未知のウィルスへの対応を可能にします。

「ActSecureセキュリティ異常検知サービス」は、NEC the WISEの一つである「自己学習型システム異常検知技術」を活用することで、通常状態を学習し、リアルタイムでその状態と現在の状態を比較することで、通常状態と異なるシステムの挙動を“異常”として早期検知(警告)します。NEC社内で検証した結果、“異常”の検知からサイバー攻撃の全体像特定に要した時間において、5日間かかっていたものが1.5時間にまで短縮できました。

更にその先の未来を見据えて

NECは更にその先の2050年を見据えて、有識者による「NEC未来創造会議」でセッションを重ね、40年先、50年先の未来像を探っています。
このようにNECは未来社会を見据えながら、デジタルを活用しながら社会課題の解決に貢献し、皆様と共創してより良い社会の実現に取り組んでまいります。

※ 本稿は2017年11月9日「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017」基調講演を要約したものです。