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DX推進で注目を集める「データ民主化」がもたらすものと、その進め方

これまで蓄積してきた膨大なデータを有効活用し、意思決定の迅速化や業務効率化、新たなビジネス創出につなげたいとデータ活用に本格的に取り組む企業が増えています。そのなかで、今、注目されているのが「データ民主化」です。データの利活⽤に加わる従業員を広く増やし、あらゆる事業においてデータに基づいた意思決定を⾏うために必要なことは何か、効率化や⽣産性向上を促進するデータドリブンな組織へと変⾰していくための「データの民主化」とは何か?について解説します。

データ民主化とは

企業におけるデータ利活用では、基幹システムや各種業務システムのデータベース、部署ごとに利用するSaaSのデータなど様々なデータが対象となります。しかし、データが散在し、関連づけて検索・抽出することができないなど課題も多く、「必要なデータはその都度、情報システム部門に依頼しなければ取得できない」とお悩みを抱える場合もあるのではないでしょうか。

こういったデータ準備⼯程の効率化は重要な課題として度々議論されてきており、これらの課題を解消するため、組織内のあらゆる人がデータにアクセスしやすい環境を構築し、活用できる状態を実現することが「データ民主化」です。

データ民主化を実現するために重要な要素

「データ民主化」では、従来データサイエンティストなど高度なスキルを持つ専門家しか扱えなかったデータを、組織内のあらゆる人が活用できるようにすることで、組織全体の意思決定の迅速化、業務効率の向上、イノベーションの創出などが実現することを目的としています。

データ民主化を実現するために重要な要素を3つ紹介します。

1.データへのアクセス:必要なデータにだれでもアクセスできる環境

データ利活用が進んでいる企業においては、多様なデータから価値ある洞察を得るために、分析に応じてデータを準備できる環境が整っていることが重要です。

具体的には、データカタログの整備によってデータの所在や内容をわかりやすく整理し、検索できるようにする、データ活用基盤の構築により、データを統合・蓄積し、一元的に管理できるようにすることが挙げられます。

データ活用基盤の全体像(※参照元:IPAnew window「データの民主化」従業員によるデータ利活用の拡大

2.データの理解:データの内容理解・活用ができるリテラシー

データにアクセスできるだけでなく、その意味や使い方を理解できるデータリテラシーを向上させることが重要です。具体的には、データの基礎的な知識やデータ分析手法を学んだり、ビジネス現場において、データ活用によってどのような成果を得られるか、といったことを知ることが挙げられます。

3.データの活用:データに基づいた意思決定や行動を起こす

データに基づいた意思決定や行動を起こすこと、そのための環境やスキルを向上させることが重要です。具体的にはデータ分析ができるツールの導入や、データ分析スキルを持った人材の育成、データに基づいて意思決定することの重要性を理解し、実践することが挙げられます。

これらの要素を満たすことで、組織全体でデータの価値を最大限に活用することが可能となります。

データ民主化がもたらすもの

意思決定の迅速化

データ民主化がもたらす大きな変化としては、「現場の担当者自身でデータにアクセスし、活用できるようになる」ことがあります。これにより、データに基づいて迅速かつ的確な意思決定が可能となります。

業務効率の向上や、イノベーションの創出

様々な角度からのデータ分析が可能となることから、深いビジネスの洞察を得られるようになります。例えば、「顧客や製品情報、売上・販売実績、キャンペーン結果などのデータを、複数の観点から分析する」「部門間でデータを共有して分析する」などにより、新たな気づきを得られる可能性も高まります。こういった試行錯誤から生産性の向上や業務効率化だけでなく、営業力の強化や新規ビジネスの創出につながる可能性が高まります。

データ活用の文化醸成から、データドリブンな組織への変革

データの民主化は、企業全体に影響を及ぼしていきます。データ利活用に関わる従業員を広く増やし、あらゆる事業においてデータに基づいた意思決定を行って、効率化や生産性向上を促進する、データドリブンな組織へと変革していくことができます。データ利活用や可視化が進む土壌ができるので、社内の文化醸成にも貢献します。

データ民主化を進めるために必要なことは?

データ利活用の技術や知見を持つ組織によるリーダーシップ、牽引力

「データの⺠主化」という組織変⾰的な状態を⽬指していくうえで、専⾨性の集約組織の構成は重要です。全社におけるデータとそのユースケースを把握し、各事業部における課題や要望を吸い上げ、どのように解決していくべきか組織横断的な⽅法を策定していくことができます。

事業部門の従業員でも利用できるデータ整備ツール、AI・機械学習ツールの導入

「データの⺠主化」は、従来中核を担ってきたデータサイエンティストやデータエンジニア以外でもデータ利活⽤に積極的に関与していくことができます。AI・機械学習ツールの導入によって、事業部門の従業員でもデータの整形や分析は各事業部がセルフサービスで実施できるようになります。

データサイエンスに基づいた洞察ができる⼈材を増やすこと

多くの従業員がデータサイエンスに基づいた洞察ができるようになると、データ利活⽤の効果を⾶躍させることができます。データ利活⽤でどのようなことができるのか、なぜ⾃分たちのビジネスにとってそれが重要であるのか理解と納得できる状態となれば、データドリブンな組織⾵⼟を全社的に醸成することが可能となるでしょう。

データ民主化の事例

レンゴー株式会社

消費者包装分野から重包装など、多様な包装ニーズに応え、パッケージングソリューションを提供するレンゴーでは、2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指しています。この挑戦のなかで、資源やエネルギーの無駄をなくす方法を模索するために、欠かせないのがデータでした。

しかし、例えば、段ボールシートを作るプロセス1つとっても、様々な工程があり、多様なスキル・経験を持つ専門性の高い社員が担っています。データから得られる知見を、実際の業務に落とし込むには、担当者自身が分析結果を理解し、どう業務に反映させるかを考えるしかありません。担当者の勘と経験に、データを融合すべく、現場主導のデータ活用「データの民主化」を目指すことにしました。

センサーのデータを集約するデータレイクの構築、データ活用人材の育成という2つを中心に取り組みを進めており、NECが提供するデータ分析ツール「dotData」とあわせて「DX人材育成サービス」を採用。

実際、研修に参加した製紙工場のメンバーは、製造時に消費する原材料と電力について分析を行った結果、様々な発見が得られました。「長年、生産量を記録してきたが、ただ蓄積しているだけだった。それをやっと有効活用することができた」という声もあり、データ民主化への大きな一歩を踏み出しています。

基盤構築から人材育成まで、データ民主化をトータルに支援

NECでは、データ分析基盤の整備・構築から、AI自動化ソリューション「dotData」、さらに「DX人材育成サービス」まで幅広いソリューションを揃え、企業のデータ民主化をトータルに支援します。
データ民主化の要となるデータ分析基盤は、用途や目的に応じてデータを整備する必要がありますが、分析自体も試行錯誤しながら進めるものであり、最初からすべて整えられるとは限りません。NECでは、データを整備しながら、短期間でビジネス成果を得られる環境の構築もサポートします。

データ民主化はあくまでも通過点にすぎず、データ活用によりビジネス成果を得ることが最終的なゴールと言えるはずです。データ民主化の先にある「データサイエンス民主化」もその手段の1つです。これまで社内に眠っていたデータを成果へとつなげるための第一歩として、今こそ、データ民主化を始めるべきと言えるのではないでしょうか。