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AI分析とは?メリットや注意点、活用方法を徹底解説
近年は製造業、小売業をはじめとしたあらゆる業界でAIの活用が進みつつあります。AI活用を開始した企業に関する報道を目にする機会も増え、関心を寄せているかたは多いでしょう。AIの用途は多岐にわたりますが、中でも分析を目的として使われるケースが増えています。
今回は、AIによる分析がどのようなものなのかをはじめ、AI分析でできること、メリット、注意点について解説します。AI分析について基本的な部分から知りたいかたはもちろん、今後実際にAI分析に関わっていくかたもぜひお読みください。
AI分析とは?
まず、AI分析とは何か、という基本的な部分を解説します。また、機械学習やディープラーニングといったAIに関わる技術についても見ていきましょう。
AI分析とは何か
AI分析とは、文字どおりAI技術を活用した分析のことです。AIは「Artificial Intelligence」の略称で、人工知能を意味します。AIは人間の脳と同様に、学習を重ねることでより精度の高い分析結果を出せるようになります。
AIを用いた分析では高速な計算と膨大なデータの処理ができるため、通常「AI分析」という場合は、大量のデータを高速で処理し、精度の高い分析結果を出す技術ということになります。
AI分析においては、Pythonというプログラム言語が主に用いられます。AI分析を行うためにはプログラムを組んで分析モデルを作る必要がありますが、近年はAI分析を行うためのツールも販売されており、以前よりは導入のハードルが下がっているといえるでしょう。
機械学習とディープラーニング
ここでは、AIを構成する技術である機械学習とディープラーニングについて解説します。
機械学習
機械学習とは、AIが膨大なデータから特定のルールや法則性を学習し、出力結果の精度を上げていく技術のことです。機械学習はさらに細分化でき、「教師あり学習」、「教師なし学習」、「強化学習」の3つに分類されます。ここでの「教師」とは教師データを表します。教師データとは、正解となる出力結果のことです。
教師あり学習をイメージするために、たとえば機械学習を使って大量の画像データから人の顔を検出することを考えてみましょう。どの画像が人の顔に該当するのか、正解を学習させてから分析を開始する場合は、教師あり学習に該当します。
一方、教師なし学習では正解となる教師データがないため、AI自身でデータ間の類似度を計算し、分析するための法則性を見いだそうとします。
教師あり学習、教師なし学習とも異なったアプローチをとるのが強化学習です。強化学習ではインプットとなるデータが存在せず、AI自身が試行錯誤を繰り返して分析結果の精度を高めます。また、強化学習においては、AIが何らかの選択をした際、結果に応じたフィードバックを行って、よい評価につながるような行動を学習させます。
ディープラーニング
ディープラーニングは、広義には機械学習に含まれます。データが十分にそろっている状態であれば、人の手を借りずAIが自動的に特徴や法則性を学習する技術のことです。
ディープラーニングで代表的なものが「ニューラルネットワーク」です。これは、人間の脳神経回路(ニューロン)を数理モデルで再現したものです。ニューラルネットワークでは、入力層でデータの識別、隠れ層で分析を行い、結果を出力層で出力します。この流れは、生物が映像や音を脳や神経で認識するのに似ています。
現代の主流はタスク特化型AI
現在、ビジネスで広く活用されているのは「タスク特化型」に分類されるAIです。タスク特化型AIとはその名のとおり、画像認識、翻訳などの特定の業務に特化して活用されるAIのことです。企業が独自にAIを開発し運用していくことは難しいのですが、タスク特化型のAIであれば各社から多種多様な製品が提供されているため、導入のハードルは比較的低いといえるでしょう。
AI分析に必要なデータ
AI分析を行うためには、目的に沿ったデータを事前に準備する必要があります。たとえば、教師あり学習の場合は入力するデータのみならず、正解となる出力結果についても準備する必要があります。また、学習させるデータ量が少ない場合、それだけ分析結果の精度が落ちるため、準備するデータの量も重要といえるでしょう。
代表的なAI分析のビジネス活用例
ここでは、AI分析がビジネスでどのように使われているのかについて解説します。
商品の需要予測
近年は大手の小売業を中心に、AI分析を用いた商品の需要予測が盛んになっています。また、需要予測結果に基づき発注まで自動で行うしくみも導入されつつあります。
従来、コンビニやスーパーなどでは、各店舗の店長や発注責任者が過去のデータを参考に日々の商品発注を行っていました。しかし、需要の予測精度は担当者の今までの経験によって左右されるため、予測が外れてしまうこともあります。また、数多くの商品の需要予測と発注手続きを毎日行うことの業務負荷も大きかったため、働き方改革の観点でも商品の需要予測と発注の自動化が求められていました。
小売店にはPOSレジを通じて集めた購買情報や、会員サイトなどから集めた顧客情報など、AI分析に必要なデータが豊富にそろっています。AI技術の発達により、ようやくこれらのデータが有効に活用される時代になったといえるでしょう。
コールセンターにおける業務改善
コールセンターも、早くからAI分析の導入が進められてきた分野です。コールセンターでは顧客との電話の中で、短い時間で相手の問いに答える必要があります。しかし、従来型のコールセンターでは紙のマニュアルから必要な情報を探す必要があり、限られた時間での応対に苦慮していました。
問い合わせ電話の集中や顧客からのクレーム、必要とされる知識の多さなどから、コールセンターは離職率の高い業種とされています。しかし近年は、AI分析の活用によってコールセンターの労働環境が改善されつつあります。過去の問い合わせ履歴をAIに学習させ、顧客からの問いに対して即座に正しい回答を返せるFAQのツールが整備されてきたのです。
また、顧客からの問い合わせに対して、電話の前にAIが応答するチャットボットに誘導するといった試みも広がっています。AIによって従業員の負荷が軽減されることで、今後コールセンターは働きやすい業種として認知されていくかもしれません。
水道管の劣化予測
日本では都心から地方に至るまで広く水道管が張り巡らされ、人々の生活を支えています。しかし、近年は老朽化した水道管の修理に多額の費用がかかること、水道管を検査・修理する人材の不足などが課題になっています。たとえば、近年の漏水事故は年間約2万件。また、耐用年数を超えた水道管の長さは、全国で約13万㎞にも及ぶといわれています。
地中に埋まっている水道管は、劣化の状態を目視で確認しづらいため、AIを使った劣化予測分析が役立っています。水道管が敷設されてからの年数、周囲の環境などのデータを元に、水道管の劣化速度を予測し、経験と勘に頼らない予防的な修繕が行えます。
水道管の効率的な修繕ができれば、少ない人員でも水道管の品質を維持でき、修繕費の高騰に伴う水道料金の上昇防止も期待できるでしょう。
顧客のチャーン予測
顧客のチャーン予測という分野にもAI分析が活用されています。チャーン予測とは、あるサービスに登録している顧客の中で、今後解約する顧客がどの程度の規模になるかを予測することです。
チャーン予測の分析においては、現在と過去の顧客データ、解約履歴をAIに入力し、今後どれだけ解約が発生するかを予想することで、解約を未然に防ぐ対策を立てることができるようになります。
従来、解約する顧客数を予想するためには、一部の人材が持つ属人的な知見に頼らざるを得ず、客観的な予測ができていませんでした。AI分析をチャーン予測に導入することで、事実に基づいた精度の高い判断が可能になったのです。
来場者予測
店舗やイベント会場における来客数予測にも、AI分析が活用されています。来店客数は天候、日付などのさまざまな要素に依存して決まりますが、人手によって膨大なデータを分析し正確な予測を行うのは至難の業です。
一方、大量データの分析はAIの得意分野であり、来場者予測に特化したAIツールも販売されています。AIに適した業務は思い切ってAIに任せ、人にしかできない業務に注力することが今後求められるでしょう。
AI分析を取り込むことによって得られるビジネス上のメリット
AI分析を行うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的なものをいくつか紹介します。
人手不足の解消
近年は小売業、飲食業、建設業などさまざまな業界が人手不足に悩まされています。先述の事例で紹介した小売業における需要予測と発注業務のように、大量のデータを人手で分析する業務、コールセンターのように大量の問い合わせに対して素早く回答するといった業務には、AIが適しています。AIは人間と違い、疲れることもなく、24時間365日稼働できる点が大きな強みです。
さらに、AI分析によって業務負荷が下がるだけではなく、労働環境の改善によって求人の応募が増える可能性もあります。人手不足の解消に向けたひとつの手段として、AI分析の導入を検討してみましょう。
主観的な意思決定からの脱却
従来、重要な決定には、勘、経験、度胸といういわゆる「KKD」が重視される傾向にありました。人の主観的な判断によって意思決定がなされてきたのです。
豊富な経験や長年の勘は組織の重要な資産といえますが、属人化されたノウハウはベテランの退職や異動によって失われるリスクがあります。しかし、客観的なデータに基づいたAI分析を活用すれば、主観的な意思決定から脱却できます。
まだ勘や経験に頼らなければ判断できない領域もありますが、データによる分析が可能な領域については、AI分析を導入すると良いでしょう。AIと人間の役割分担を明確にすることで、本当に人の知見が求められる分野に人的リソースを割り当てることができるようになります。
人的ミスの防止
人手を介した作業において、人的ミスをゼロにすることは不可能といえます。特に大量のデータを扱う業務や繰り返しが発生する業務では、疲れや不注意などからミスが発生する可能性が高くなりがちです。AIを含めたコンピュータは、人間のようなコンディションによるケアレスミスを起こしません。当然ながら、AIによる分析であっても誤差がなくなることはありません。しかし、正しい方法で分析を行えば、人よりも高い精度を出すことに期待できるでしょう。
AI分析を行う際の注意点
ここでは、AI分析を行う際に注意すべきポイントについて解説します。
大量のデータ管理
AI分析を行う場合、対象となるデータが膨大な量になります。AI分析においては過去の顧客データや取引履歴をインプットとするケースがあり、精度の高い分析を行うためには大量のデータが必要です。しかも、これらのデータは日々増加していきます。AI分析用のデータを外付けハードディスクなどで保管する場合、すぐに容量オーバーを迎えてしまうでしょう。
近年はAI分析を行うことを前提としたDWH(データウェアハウス)というサービスが一般的になっています。DWHは、AI分析が可能な形にデータを最適化して保管できるしくみです。AI分析用のデータ保管に困った場合は、DWHの導入を検討してみましょう。
情報漏洩
小売店をはじめ、AI分析で扱うデータには顧客の個人情報が含まれているケースがあります。AI分析による人手不足の解消や業務効率化といったメリットが期待できる一方で、情報漏洩のリスクにも注意を払う必要があります。万が一、情報漏洩が発生した場合、損害賠償や企業としての信用失墜など社会的制裁を受けることになり、ブランドイメージが大きく毀損する恐れもあります。
情報漏洩を未然に防ぐには、自社で管理するデータは暗号化する、堅牢性が確保されたクラウドサービスでのみAI分析を行うなどの対策が必要です。
データクレンジングの必要性
AI分析では音声や画像など非構造化データを用いるケースがあります。この場合、データが元の形のままではAI分析ができないため、適切な形にクレンジングする必要があります。この作業をデータクレンジングと呼びます。
たとえば、連携先システムから異なるフォーマットのデータを収集する場合、データの構造が異なるため、同じ形式にそろえなければなりません。このデータクレンジングは人手による作業となるため、データクレンジングの担当者を置いて取り組む必要があります。
教師データの蓄積
教師あり機械学習でAI分析を行う場合、インプットになる教師データが必要です。たとえば、AIによる需要予測、チャーン分析などを行うケースでは、過去の取引や売上、顧客のデータが必要になります。短期間のデータでは精度の高い分析を行えないことが多いため、十分な教師データの蓄積が必要になってきます。
専門家のサポート
自社で独自AI分析のしくみを作る場合は、AI分析の専門家によって分析モデルを構築する必要があります。一部の大企業を除き、自前でAI人材を育成できる企業は多くありません。必要に応じてデータサイエンティストをはじめとしたAIの専門家に参画してもらう必要があります。
しかし、近年はデータサイエンティストが不足しているうえ、支払うべき報酬も上がる傾向にあります。どうしても専門家の確保が難しい場合は、dotDataなどのAI分析ツールを活用すると良いでしょう。
まとめ
AI分析は、機械学習やディープラーニングといった技術を用いて、大量のデータから今後につながる法則性やルールを見いだしビジネスに活用する試みです。
AI分析は小売業における需要予測やコールセンターにおける業務効率化など広い分野で活用されており、人手不足や人的ミスの防止に役立ちます。一方で、データのセキュリティ管理やデータクレンジングが必要であることに注意が必要です。
今後も技術の発達に伴い、AI分析が活躍する領域は広がっていくでしょう。