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1年間の学びがもたらすAI人材としての成長 ― 入学コース修了生インタビュー
NECアカデミー for AIでは、研修と実践を通してAI人材としての独り立ちを目指す「入学コース」を提供している。1年間にわたる個別育成カリキュラムを通じて、AI人材としてどのような成長を得られるのか。2020年度の入学コース修了生である溝口雅哉氏に、その経験を語ってもらった。
溝口 雅哉 氏
CEC新潟情報サービス株式会社 システム部
CEC新潟情報サービス株式会社
1974年の創業以来、本社所在地である新潟県を中心に、システム開発、ソリューション提供、データセンターサービスなどのICT関連事業を展開。近年は、データ分析やAIを活用した新しい価値提供の実現に向け、AI人材の育成に取り組む。
URL:https://www.cec-nis.co.jp/index.html
AI活用で自社サービスの付加価値向上を
―― NECアカデミー for AI 入学コースの修了おめでとうございます。溝口さんは2020年4月から2021年3月までの1年間、NECの一員として研修と実務経験を積み、データ分析やAI活用について学ばれました。まずは、入学コースへの参加を決めた経緯について教えてください。
私が所属するCEC新潟情報サービス株式会社では、この数年、自社サービスの付加価値を向上させるべく、「AI検討会」を社内に設けてデータ分析やAI活用の検討を進めています。私はその検討会のメンバーとして、AI技術の情報収集やトライアルに取り組んでいました。
NECにおけるAIの取り組みについては、AI技術「RAPID機械学習」やAIチャットボット「NEC自動応答」のトライアルを通じて知るようになりました。
そうした活動のなかで、NECアカデミー for AIの学長である孝忠大輔さんから、データサイエンスやAI人材の育成について説明を受ける機会があり、あらためてデータ分析やAI活用がもたらす可能性を感じたのです。社内で「ぜひメンバーを入学コースに参加させよう」という話になり、「ならば自分が」と考え、手を挙げました。
―― 入学コースは、NEC本社(東京都 港区)に通う「通学制」という形態が特長の1つです。しかしながら、今回はCOVID-19の影響で、研修も実務も原則リモートで実施されました。当初の想定とは異なる事態だったと思いますが、実際にNECの一員として身を置いてみていかがでしたか?
東京への長期滞在に加えて、いきなりのリモート対応でしたから、慣れない環境やツール利用に戸惑いや不安があったのも事実です。ただ、それも最初のうちだけで、慣れてしまえば、研修受講やAIプロジェクトの実務を進めるにあたって、不便を感じたことはありませんでした。
メンターやプロジェクトメンバーなど、NEC社内の関係者とのやりとりはWeb会議やチャットが中心でした。特にチャットならメッセージを送るのも気軽ですし、お互いの時間を尊重してやりとりできるので、何か質問したいときも遠慮なく聞くことができ、円滑にコミュニケーションできたと思います。もしこれがオフィスだったら、相手に話しかけるのに緊張して、もっと遠慮してしまっていたと思います。
それに、リモートワークが主体だからこそ、数少ない出社の機会がいっそう刺激になりましたね。
さまざまなアプローチでデータ分析スキルを磨く
―― 1年間のカリキュラムの前半は、研修やケーススタディを通じたスキル習得が中心です。統計検定やG検定などの受験に向けた自己学習も並行して進めていたそうですね。データ分析のスキル習得の取り組みについて、詳しく教えてください。
最初に受講したのは、20日間の短期集中でデータサイエンスの基礎を習得する「データサイエンティスト養成ブートキャンプ」です。データを分析、考察して、その結果をプレゼンする一連のサイクルを短い期間で繰り返すのですが、入学して早々に学ぶ内容としては、なかなかハードに感じました。ブートキャンプでは、かぎられた時間のなかで、どう最善を尽くし、ベストエフォートを出すか、ということを意識して課題に取り組みました。それは、実際のAIプロジェクトにおいても、同じように求められることだろうと考えてのことです。このブートキャンプをはじめとして、AIプロジェクトの進め方に関する研修やディープラーニングなど技術的な研修も受講し、スキル習得に励みました。
研修以外には、2020年8月~9月にかけてNECグループで開催された「NEC Analytics Challenge Cup 2020」にも予測精度コンテスト(繁華街部門)で参加しました。研修の場合は、教材として用意されたシナリオがあって、それにそって分析を進めていけばよいのですが、コンテストではすべて自分で考えなければいけません。予測の精度を高めるにはどんな工夫が必要か、自分で考えて試行錯誤を繰り返すことは、研修とはまた違ったアプローチでスキルを磨く機会になったと思います。
データ分析の勉強には、NECのAI活用プラットフォーム「NEC Advanced Analytics Platform(AAPF)」のNEC社内版を利用しました。煩雑な環境設定は不要で、アカウント登録をするだけでデータ分析環境がすぐに使えるのが便利でしたね。社内向けに公開されている自己学習コンテンツや、自分で購入した参考書とあわせてAAPFを利用して、業務の合間に自己学習を進めました。また、NEC社内版のAAPFに限定してのことではありますが、NECの研究所が開発している最新のAI技術に触れられたことも得がたい経験となりました。
AIプロジェクトの現場で成長を実感
―― カリキュラムの後半では、実際にNECが取り組むAIプロジェクトに参画し、実務経験を積みます。溝口さんは複数のプロジェクトに参画されましたが、いかがでしたか?
どのプロジェクトもよい経験でしたが、なかでも印象に残っているものが2つあります。
1つめは、研修を終えてすぐに参加し、約半年にわたり携わったプロジェクトです。継続プロジェクトで、お客様のデータを分析し、その結果から得られる知見を定期報告するものでした。プロジェクト参加当初は、データやその分析結果を見ても、そこから知見を導き出すことが難しかったです。それが、ほかのプロジェクトメンバーの考察を聞いたり、質問したりを繰り返すなかで、だんだんと自分なりの見解を説明できるようになりました。最後の方は、自分の見解を適切に説明できるようになり、「データを読む力、説明する力」がついたことを実感しました。
2つめは、入学コースの最後に参加したプロジェクトです。先に挙げた1つめのプロジェクトとは業種が異なり、扱うデータも、求められる成果も違う、新規のプロジェクトでした。最大の違いは私に期待された役割で、このプロジェクトではキックオフからデータ分析、最終成果報告までを、主体的に経験することになりました。プロジェクトメンバーの支えもありましたが、期待に応えようと大変でしたし、苦労もしました。でも、その分だけ自分が鍛えられたと感じています。
AI人材としての自分の成長を実感できたプロジェクトとして、どちらも印象深いものです。
地域に根ざしたAI活用の先駆を目指す
―― データ分析のスキル習得から実際のAIプロジェクト参画まで、溝口さんにとっては、めまぐるしい1年間だったと思います。振り返ってみての感想をお願いします。
とにかく貴重な経験の連続でした。データ分析やAI活用についての学び以外にも、たくさんの得がたい経験がありました。たとえば、NECの企業文化に触れられたことも、その1つです。人材の年齢や立場にとらわれることなく、プロジェクトメンバーとして責任ある役割を任せ、お客様と接する機会をどんどん与えていく、そのカルチャーは私にとって刺激的でした。
入学コースの目的はAI人材としての成長ですが、プロジェクトの進め方、それに付随する資料作成やプレゼンテーションなど、社会人としてのキャリアに役立つスキルについても鍛えられました。プロジェクト遂行については、自分の経験不足を感じて苦労することもありましたが、私のような若手社員がこの入学コースで得るものは多いと思います。
ただ、ここで学んだ内容を、すぐに自社の事業に応用する、新事業の創出につなげる、という観点から考えると、プロジェクトマネージャーとしてプロジェクト遂行経験を積んでいる人である方が、さらに大きな成果を得られると考えます。
1年間のカリキュラムを振り返ると、前半は研修が多くて比較的、時間に余裕がありました。なので、これから入学コースに参加される方は、この期間をうまく使って最新のAI技術やツール、トレンドなど、手を広げてたくさん勉強するとよいと思います。実は、私はここに心残りがありまして(苦笑)。後半になるにつれてAIプロジェクトがどんどん忙しくなり、勉強と実務との時間配分に悩まされることになりました。「時間があるうちに、もっと手広く勉強していれば…」と感じたので、時間の使い方の参考になればと思います。また、プログラミング言語のPythonはデータ分析において、もはや必須ですので、使用経験が浅い場合は、入学前にしっかり勉強しておくと安心できます。
―― 溝口さんは2021年3月に入学コースを修了し、4月からは活動の場を変えて習得したスキルを発揮されていきます。最後に、これからの目標について教えてください。
今はまだAI活用というと首都圏の企業の印象が強いですが、今後は、地域に根ざしたAI活用の取り組みも進んでいくと思います。今回の経験で得たスキルを活かすとともに、引き続きデータ分析について学び、自社の事業にAI技術を活用して付加価値を創造していきたいです。そして、新潟を起点とするAI活用企業の先駆になれたならと思います。