社長メッセージ

社会価値創造型企業として

NECは、1899年の創業時から「ベタープロダクツ・ベターサービス」をモットーに、お客さまに価値のある商品やサービスを提供してきました。119年間にわたってNECが社会に受け入れられてきたのは、強い技術力を活かしてお客さまや社会により良い価値を提供するという姿勢を創業当初から貫いてきた結果であると考えています。この考え方は、NECグループの企業理念やビジョンなど経営活動の仕組みを体系化した「NEC Way」として現在も受け継がれており、私たち自身の規範となっています。

一方で、お客さまや社会が私たちに期待する価値は常に変わり続けています。これまでは、私たちの技術や製品そのものがお客さまや社会にとっての価値として評価されてきましたが、現在はその価値を生み出すものが多様化しています。私たちがこれからも社会から必要とされる存在であり続けるためには、「何が価値となるのか」を常に考え、新たな価値を創り出していかなければなりません。

この決意を社内外に示すため、2014年にブランドメッセージ「Orchestrating a brighter world」を策定しました。
このブランドメッセージには、ネットワーク技術とコンピューティング技術を併せ持つインテグレーターとしてリーダーシップを発揮し、これらの技術とさまざまな知見・アイデアを融合することで世界の国々や地域の人々と協奏しながら、明るく希望に満ちた暮らしと社会を実現して未来につなげていくというNECの意志を込めています。社会価値創造型企業として私たちの強みを活かして社会課題の解決に取り組み、「人が生きる、豊かに生きる」ために必要不可欠な「安全」「安心」「効率」「公平」といった価値を提供し続けることが、私たちにとってのサステナブル経営であり、目指す姿です。

当社は2005年に、社会と企業のサステナブルな成長を目指す世界的な取り組み(イニシアティブ)である「国連グローバル・コンパクト」に署名し、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野における10原則を遵守した企業活動を推進しています。また、「Orchestrating a brighter world」の実現に向けて取り組むことで、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも貢献できると確信しています。

加えて今般、当社は2020中期経営計画の策定を機に、ESG視点の経営優先テーマ「マテリアリティ」の特定を行いました。これは、創業当初から私たちが実践してきた社会価値創造の考え方を整理し、事業戦略とESGの取り組みとを結びつけ、NECと社会、双方の成長を実現していくことを、さまざまなステークホルダーに対して改めて宣言したものです。

2018中期経営計画の振り返り

2016年度から2018年度までの3ヵ年計画として掲げた2018中期経営計画において、当社は社会価値創造型企業への変革を目指し、「収益構造の立て直し」と「成長軌道への回帰」に取り組んできました。「収益構造の立て直し」については当年度まで概ね順調に進捗しましたが、「成長軌道への回帰」において、足元を支えるはずの既存事業が想定以上に落ち込んだことによって、目標として掲げた営業利益1,500億円の実現は困難な状況となりました。この状況をふまえ、中計期間の途中ではありましたが、当社は目標を見直し、2018年1月に新たな中期経営計画を策定しました。

NECの課題

私が常々、課題であると感じているのは、NECには社会や市場の変化に対応するスピードが足りていない、ということです。これは、過去に成長領域として掲げた事業を伸ばせてこなかったこととも関係しています。技術そのものが価値になっていた時代のやり方・文化からNECが抜け出せておらず、社内にいまだに古い仕組みや制度が残っていることが、新たな取り組みにブレーキをかける要因になっていると感じています。これに加えて、一度言ったこと・決めたことを最後までやり抜く実行力が不足していることも課題であると捉えています。これは、NECにコミットメントの文化、信賞必罰の文化がないことに起因しています。私はNECが抱えるこれらの根本的な課題を従来から認識していながら、なかなか改めることができていない現状を痛感しており、経営者として深く反省しています。

課題克服にはカルチャー変革が必須

それでは、どうすればこれらの課題を克服し、自らが立てた目標に対しスピード感を持って最後までやり抜く会社になれるのか。そのためには、組織、制度、人材、働き方など、さまざまな課題を一度ゼロから見直し、NECの文化を変えていく必要があると考えています。創業当初から受け継がれてきた「ベタープロダクツ・ベターサービス」の精神で、お客さまや社会により良い価値を提供しようとする姿勢、これはNECが持つ良さです。この良さを残しながら、世の中の変化にスピード感を持って対処し、私たちが持っている力を最大限に活かせるやり方、仕組み、文化を築き上げていく必要があります。

「NECは変わる必要がある」ということは、以前から指摘されていました。しかし、その必要性が分かっていても、いざやり始めると壁にぶつかり、頓挫してしまう。それは、自分たちの力だけで変革しようとしていたからだと思います。今回は外部の力も借りながら、徹底的にやりきりたいと考えています。

CEOとして私がなすべきこと

NECは、今こそ本当に大改革をしなければならない時期に来ています。いま変わらなければ、NECは生き残っていけない。このような危機感を持ち、私はCEOとして、「NECを変えること」に全精力を注いでいきます。これから100年にわたりNECが社会と共に持続的に発展・成長していくため、これまでの常識にとらわれず本当に必要なものを見極め、強いNECを取り戻すための変革に邁進していきます。