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2020中期経営計画の概要

社長メッセージ

2020中期経営計画の骨子

2020中期経営計画では、当社が持続可能な企業であり続けるために達成すべき水準として、売上収益3兆円、営業利益1,500億円(営業利益率5%)、親会社の所有者に帰属する当期利益900億円、フリー・キャッシュ・フロー1,000億円、ROE10%という中期経営目標を設定しました。 

そして、これらの目標を実現するための中期経営方針として、「収益構造の改革」「成長の実現」「実行力の改革」の3つを掲げました。

1.収益構造の改革

「収益構造の改革」では、当社が成長軌道への回帰に必要な投資を実現するため、固定費の削減を含む抜本的な収益構造改革に取り組みます。SGA、事業構造、生産体制の3つの改革により、グローバルで勝てる収益体質を作りこんでいきます。

まず、SGAの削減については、次年度に国内の間接部門とハードウェア事業領域を対象に3,000人の構造改革を実施します。加えて、不動産費用やIT費用、マーケティング費用などの経費を効率化することによりSGA比率20%以下を目指し、当社がビジネスモデル変革を実行するために必要な投資を継続できるよう、体質改善を進めていきます。

事業構造については、テレコムキャリア事業*1とエネルギー事業の収益性改善のための改革を断行します。

エネルギー事業については既に、電極事業の売却および小型蓄電事業の自社開発・製造の終了を決定しており、これまでの全方位経営を改め、NEC Energy Solutions社を中心としてエネルギーSI事業に集中することで成長を目指していきます。

テレコムキャリア事業については、市場の変化が非常に激しいことから、これまでの事業のあり方を大きく変えていきます。
まず、ネットワークインフラ領域は、徹底的に収益性改善に努めます。国内では売上規模に見合ったリソースへと最適化を行い、海外では低収益事業の撤退・縮小も視野に入れて取り組みを進めていきます。一方、ソフトウェア・サービス領域は、成長領域として強化をはかっていきます。国内では、お客さまの成長領域・投資領域に合わせて社内のスキルシフトやパートナリングを加速し、通信事業者向けにサービス提供の拡大をはかるほか、多様化するネットワークニーズを捉え、通信事業者以外への展開も加速していきます。海外では、当社の強みであるTOMS*2事業を核として戦略・事業体制を見直し、注力領域と位置づけて事業拡大をはかっていきます。

生産体制については、国内外の全工場の生産プロセス・システムを共通化し、グローバルなバリューチェーンを再編することで、さらなる効率化と間接人員のスリム化をはかります。その一環として、次年度末までにNECプラットフォームズ(株)の一関事業所と茨城事業所の機能を、同社の他の事業所に移管することを決定しました。

  • *1
    2018年4月1日付の組織変更により、海外向け事業を「グローバル事業」に移管し、国内向け事業を「ネットワークサービス事業」と改称
  • *2
    TOMS: Telecom Operations and Management Solutions

2.成長の実現

「成長の実現」では、NECが強みを持つAI、生体認証、セキュリティ、ネットワークサービスなどの技術をベースとして、2つの領域に注力します。

まずひとつめは、「NEC Safer Cities」です。国内外でパブリックセーフティ、デジタルガバメント、スマートトランスポーテーションなど、人々が安全・安心に、豊かに生きるための基盤を拡大していきます。

そして2つめは、「NEC Value Chain Innovation」です。これは、持続可能なスマートサプライチェーンの形成をはじめとした取り組みです。スマートサプライチェーンの形成では、食料需給の最適化、キャッシュレス化、止まらない工場・プラントの実現に取り組み、AI、IoT、ネットワークなどの技術の提供を進めていきます。

当社はこれらの領域に注力することで、2020年度の売上収益3兆円の実現を目指しています。国内外に分けると、当年度からの売上収益増加分はほぼ海外で実現し、国内の売上収益は横ばいにとどまると想定しています。これは、国内では東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたインフラ整備や、デジタルガバメント関連などの成長機会に期待できるものの、既存事業が縮小することを想定しているためです。

一方、グローバルでは犯罪捜査や出入国管理などに加え、行政基盤や住民サービスなどへの事業領域拡大をはかり、セーフティ事業を中心に売上収益を伸ばす計画です。ここでは、グローバル事業の成長加速のため、2018年1月に英国Northgate Public Services社を買収しましたが、このようなM&Aについても引き続き積極的に取り組んでいきます。

なお、当社はスピード感のある成長を実現するため、2018年4月から新たにグローバル事業を専任体制化し、責任者にはグローバルでの事業経験と実績が豊富な外部人材を登用しました。当社は、外部人材を加えることで自分たちのやり方が本当に正しかったのか自問し、これまで乗り越えられなかった壁を乗り越えるためにどうするべきか、より広い視野を持って変革に取り組んでいきます。

3.実行力の改革

最後に、2020中期経営計画で私が最も重要と考えているのが、「実行力の改革」です。そのために、「事業開発力強化」と「やり抜く組織」の実現に取り組みます。

事業開発力強化では、自前主義からの脱却を進め、お客さまやパートナーとの共創型ソリューションの開発を推進して、既存の枠組みを超えた新たな社会価値の創造に取り組みます。これは、従来からのNECの課題であった、お客さまのニーズの先取りと競争力のある技術のマネタイズ加速を目的とするものです。

自前主義からの脱却については既に、オープンな研究・ソリューション開発、多様なスキームでのインキュベーション、ソフトウェアやサービスのデリバリーなどで実績が出ています。2018年4月には、人手では膨大な時間がかかるビッグデータ活用におけるデータ分析プロセスを、AIによって自動化するソフトウェアを開発・販売する新会社dotData社の北米設立を発表しました。

共創型ソリューション開発については、日本やシンガポールに開設した共創・実証実験の拠点を他の地域にも拡大し、取り組みを活性化させていきます。また、2018年6月には、北米にコア技術の事業化を加速するインキュベーションを担う新会社NEC X社の設立を発表しました。同社はNECの人材と研究所の最先端技術を核としてエコシステムを構築し、オープンイノベーションによって新事業開発を加速することを狙いとしています。

このほか、新たな社会価値の創造に向けては、政府や国際機関、標準化団体への渉外機能を強化することで、社会やお客さまのニーズの先取りに努めていきます。

やり抜く組織の実現に向けては、スピード感を持って最後までやり抜く仕組みを導入して社員の力を最大限に引き出し、NECの実行力を向上させていきます。

具体的には、経営陣の責任と権限の明確化による結果へのコミットメントの強化や、実行した人が報われ賞賛される評価・報酬制度の導入、社内外の多様なタレントの幹部・従業員への積極採用・登用を進めていきます。これらの施策により実行力を高めると共に、イノベーティブな行動や挑戦を促す文化を根づかせていきます。

これらの実現に向け、2018年4月には人事改革・文化改革を断行するカルチャー変革本部を立ち上げ、責任者として外部のプロフェッショナル人材を採用しました。

このような企業文化の変革にあたっては、最終的にNECグループ社員が行動に移せる環境を整備していくことが重要です。私は社員一人ひとりが納得して変革に取り組めるようにコミュニケーションを重視し、変革に向けた思いを積極的に共有していきます。そのために、私自身がNECグループ社員と思いを共有する場として対話セッションを設けており、今後も継続的に開催していきます。

2020中期経営計画達成に向けて変革に邁進する

2020中期経営計画で掲げた営業利益率5%は、NECにとってのゴールではありません。この5%を達成してはじめて、私たちは社会価値創造型企業として世界で競争していくためのスタートラインに立てると考えています。そのためにも、次年度はまず収益構造の改革を確実にやり遂げ、成長軌道に回帰するための第一歩としなければなりません。

私たちがサステナブルな企業として社会に受け入れられるため、NECは今こそ本当に大きく変わる必要があります。これまでの常識にとらわれずに本当に必要なものを見極め、強いNECを取り戻すため、私たちは変革に邁進していきます。