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2020年度C&C賞表彰式典開催
2020年11月30日、ANAインターコンチネンタルホテル東京(東京都港区)にて2020年度C&C賞表彰式典を執り行いました。2020年は、新型コロナウイルス感染症対策で、表彰式典会場での参加者数を制限する代わりに式典の模様をオンラインライブ配信し、会場で25名、オンライン視聴で66名にご出席をいただきました(写真1)。
式次第に従い、遠藤信博理事長による開会の挨拶があり、コロナ禍のなか、多くの皆様のご協力・ご支援でC&C賞の選考と表彰式典開催ができたことへの謝意と、C&C賞は1985年の表彰開始以来、2020年が36回目を迎え、過去71グループ115名にのぼる方々が受賞されたことなど、財団の主要な活動が紹介されました。次に、青山友紀審査委員長による選考経緯と受賞2グループの発表があり、グループAの受賞者として、「日本におけるインターネット構築ならびに発展への先導的かつ社会的な貢献」に対し、慶應義塾大学 村井純教授、また、グループBの受賞者として、「For Pioneering Contributions to Relational Database Systems (リレーショナルデータベースシステムに関わる先駆的・先導的貢献)」に対し、Michael Stonebraker (マイケル ストーンブレーカー)博士の業績が、それぞれ説明されました。遠藤理事長より村井教授に、表彰状、C&C賞賞牌と賞金が贈呈されました(写真2)。ストーンブレーカー博士は、新型コロナウイルス感染症による渡航制限により来日できなかったため、ご夫妻で賞牌を持つ写真を投影し、受賞を祝福しました(写真3)。
続いて、ご来賓の経済産業省商務情報政策局長の平井裕秀様よりご祝辞を賜り、日本も本格的なデジタルトランスフォーメーション(DX)の時代に入り、その基礎はインターネットを駆使したネットワークと先進的なデータベース技術であり、DXの進化は情報が縦横無尽にデータ連携することにより得られること、インターネットの父である村井教授と、データベースの先駆者であるストーンブレーカー博士が受賞者となられたことはDXの時代を象徴する出来事であること、デジタル技術は一般の方々の暮らしと仕事に広く実装していかなければならず、まさにDXによりコンピュータ&コミュニケーションが社会の隅々にまで広がる時代がやってくること、二人が築いた土台の上で更にイノベーティブな取り組みが生まれるよう日本政府としても全力を尽くしていくとのお言葉がありました。
次に、電子情報通信学会会長の笹瀬巌様からは、村井教授は1984年に東京大学と慶應義塾大学、東京工業大学を電話回線を使って1,200bpsでつないで電子メールやニュースをやり取りできるJUNETを立ち上げ、そのきっかけは、東京工業大学と日吉の間を磁気テープを持って移動するよりデータで送る方が早いと気付いたことにあること、それにより、特定の人しか使えなかったコンピュータを広く使えるようにし、人と社会をつなげる役立つものにする画期的な転換となったと、JUNETの始まりとその意義を説明しました。ストーンブレーカー博士はデータベースマネジメントシステムのコンセプトを作り、技術実証して実用化、データをうまく蓄えて使えるようにしたこと、そして計算する道具のコンピュータ、データを流す通信とそろったことで、大量のさまざまなデータを保管できるようになり、今では当たり前のようにさまざまなことができるようになったことは画期的であると語られました。今のコロナ感染下で、動画で授業や会議や会話できるのは村井教授のおかげであること、データ主導社会が来るのは間違いなく、コロナにより必要に迫られてスピードアップし、ニューノーマルに向けて私たちは新しい時代、インターネットの先を作る必要があると締めくくりました。
次に、情報処理学会会長の江村克己様からは、コロナ禍でICTの重要性が認識され、情報処理学会はデータ駆動社会を支える情報処理基盤をセキュリティとプライバシー保護を担保しながらトータルシステムとして実現することに取り組むことが重要であり、インターネットに関しては、情報・エネルギー・モビリティを統合したインターネットを推進し健全な発展に寄与すること、データベースに関してはコンテンツ指向のデータ管理の研究を進め、社会の発展に寄与すると述べられました。受賞者には、技術の発展のみならず、人材の育成、技術の社会への展開への指導をお願いしたいと語られました。
受賞記念講演では、村井純教授からは、「インターネット」と題して、インターネット技術の流れを俯瞰しながら、インターネットに関わる友人との関係を交え、UNIX OS、ARPANET、インターネットの原理と物理モデル、インターネットのトポロジー、プロトコルアーキテクチャ、標準化、政策について、その時々のエピソードを交えて話をされました。インターネット上で標準化が進んだことで、アイデアを持っている人が自分の知恵と創造力を持って新しいものを作れる環境ができたこと、文明という形でインターネットを考えると、インターネットを作ることは文明そのものを作ることであり、今の人はプロトコル(技術)を意識しないでインターネットを使い、アプリケーション・データ・サービスを意識した社会が生まれてきたと述べられました。今やインターネット利用者は人類の60%を超え、残りの40%はアジアの人たちで、その人たちが未来をどう作っていくか、新しいテクノロジーが切り開いていく未来に関わりたいと述べて講演を終えました。ストーンブレーカー博士は、来日がかなわなかったため、講演のビデオを上映しました。そのなかで、リレーショナルデータベースが成功したわけと博士の貢献について、取り組んだデータベースプロジェクトを取り上げて話されました。最後に受賞者に盛大な拍手を送り、閉会となりました。
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公益財団法人NEC C&C財団について
NEC C&C財団は、C&C技術分野、すなわち情報処理技術、通信技術、電子デバイス技術及びこれらの融合する技術分野における開拓又は研究に対する奨励及び助成活動を通じて、世界のエレクトロニクス産業の一層の発展を図り、経済社会の進展と社会生活の向上に寄与することを目的としています。1985年3月に設立された財団法人であり、その基金はNECからの寄付金に依っています。
この目的を果たすための活動として、現在、顕彰事業及び研究助成事業を行っています。
顕彰事業としては、「C&C賞」に加え、本財団の国際会議論文発表者助成を受けて海外で発表された論文のなかから、毎年おおむね3件以内の優秀論文に対して「C&C 若手優秀論文賞」と賞金を授与しています。
研究助成事業としては、日本在住の大学院所属の学生で、海外で開催される国際会議で論文発表などをされる方々への会議参加費用の助成とともに、日本の大学院に滞在中の外国人研究員に対する研究費用助成を行っています。