2022年度C&C賞表彰式典開催

NEC Information

2022年11月24日、ANAインターコンチネンタルホテル東京(東京都港区)にて、2022年度 C&C賞表彰式典を執り行いました。式典会場には32名が出席、そして、50名がオンライン視聴しました(写真1)。

写真1 C&C賞表彰式典

PDF式典は午後3時30分から、新野理事長による開会の挨拶で始まりました。挨拶のなかで、財団の主要な活動が紹介され、C&C賞は1985年の表彰開始から今年で38回目を迎え、過去75グループ119名の受賞者を輩出していることが報告されました。次に、青山友紀審査委員長から、C&C賞選考経緯と受賞2グループの発表がありました。グループAの受賞者として、「省電力かつ汎用な超高性能スーパーコンピュータシステムの先導的研究開発への貢献」に対し、理化学研究所 計算科学研究センター センター長、東京工業大学 特任教授 new window松岡聡博士、また、グループBの受賞者として、「For Pioneering Research on Quantum Cryptography and Essential Contributions to the Establishment of Quantum Information Theory(量子暗号の先駆的研究および量子情報理論の確立への貢献)」に対し、IBMリサーチ IBMフェロー new windowチャールズ H. ベネット博士(Dr. Charles H. Bennett)と、モントリオール大学 コンピュータサイエンス教授、キューソフト 量子ソフトウェアチューリングチェア new windowジル ブラッサール教授(Prof. Gilles Brassard)が選ばれ、それぞれの業績が紹介されました。続いて、C&C賞贈呈に移り、新野理事長から受賞者に表彰状、賞牌と賞金が贈呈されました(写真2)。

写真2 グループA受賞者の松岡博士、新野隆理事長、グループB受賞者のベネット博士、ブラッサール教授(左から)

次に、ご来賓から祝辞を賜りました。経済産業省商務情報政策局長の野原諭様からは、受賞者の業績を称えるとともに、コンピュータ技術はDX、GXの実現を支える鍵であり、経済産業省としても技術開発を支援し、受賞者が生み出した成果が幅広い産業の発展や国民生活の向上につながるよう取り組むとのお言葉がありました。電子情報通信学会会長の川添雄彦様のご祝辞では、Society 5.0の実現に向けて、社会システムをシミュレーションする必要があるなか、松岡博士が築いた高効率かつ低消費電力なコンピューティングは重要であること、また、ベネット博士とブラッサール教授が提案した究極のセキュリティ技術である量子暗号は、あらゆる産業の発展に寄与すると話されました。

受賞記念講演会では、受賞者にご講演いただきました。松岡博士は、「30 Years of Scaling Supercomputers ― From Handful to Million」と題して、30年間に及ぶ研究キャリアの間に、スーパーコンピュータの性能向上に貢献した業績を、時系列的に紹介されました。そのなかで、CPUを増やすだけでは並列処理性能が頭打ちとなるなか、アルゴリズムやソフトウェア、消費電力、コストなどのさまざまな課題に取り組まれたこと、研究成果をただちにスーパーコンピュータに適用するサイクルを繰り返し、それがTSUBAMEシリーズにつながり、GPUの採用、日本初のペタフロップス(PFLOPS)マシンの実現、Green500 1位獲得、ビッグデータやAI処理に優れたマシンとなったことをお話しされました。また、富岳プロジェクトでは、800万CPUを並列に動かして世界トップクラスの性能を達成したことなどが紹介されました。現在、「富岳」NEXTプロジェクトが始まり、現役としてスーパーコンピュータへの取り組みを続けるとしてご講演を締めくくられました。ベネット博士は、「What quantum physics has taught us about the nature of information.」と題して、量子状態、重ね合わせの原理、量子もつれなど基本的な量子法則を説明し、量子情報を教養として身に付けるべきであるとご講演されました。ブラッサール教授は、「Quantum Cryptography from dream to reality (and beyond)」と題し、量子暗号誕生のいきさつから実用化の経緯、そして今後についてご講演されました。

晩餐会には、ご来賓の方々が参加されました。新野理事長の開会の挨拶に続き、情報処理学会会長 徳田英幸様から、スピーチと乾杯のご発声をいただきました。そのなかで、松岡博士が次世代スーパーコンピュータ「富岳」NEXTの研究、及び業界コミュニティーをリードすることへの期待と、ベネット博士とブラッサール教授がかつてNICTを訪問して研究者と議論した結果が、日本で最初に運用された東京QKDネットワークとして実現した話が語られました。徳田様の乾杯の発声で、ご歓談しながらのお食事が始まりました。宴の終わりに、受賞者招待者の紹介とご祝辞、受賞者の返礼がありました。午後7時30分、和やかな雰囲気のなか、晩餐会はお開きとなりました。


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公益財団法人NEC C&C財団について

NEC C&C財団は、C&C技術分野、すなわち情報処理技術、通信技術、電子デバイス技術及びこれらの融合する技術分野における開拓又は研究に対する奨励及び助成活動を通じて、世界のエレクトロニクス産業の一層の発展を図り、経済社会の進展と社会生活の向上に寄与することを目的としています。1985年3月に設立された財団法人であり、その基金はNECからの寄付金に依っています。

この目的を果たすための活動として、現在、顕彰事業及び研究助成事業を行っています。

顕彰事業としては、「C&C賞」に加え、本財団の国際会議論文発表者助成を受けて海外で発表された論文のなかから、毎年おおむね3件以内の優秀論文に対して「C&C 若手優秀論文賞」と賞金を授与しています。

研究助成事業としては、日本在住の大学院所属の学生で、海外で開催される国際会議で論文発表などをされる方々への会議参加費用の助成とともに、日本の大学院に滞在中の外国人研究員に対する研究費用助成を行っています。