2018年度C&C賞表彰式典開催

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2018年11月28日ANAインターコンチネンタルホテル東京にて2018年度C&C賞表彰式典を執り行いました。晩秋の午後、約140名もの多数の方々にご出席をいただきました(写真1)。

写真1 C&C賞表彰式典

式次第に従い、矢野理事長による開会の挨拶があり、C&C賞は今年が34回目で、過去67グループ110名にのぼる受賞者を輩出したことなどの活動が報告されました。次に青山友紀審査委員長による選考経緯と受賞2グループの発表があり、グループAの受賞者として、「量子アニーリングの提唱と、同概念に基づく計算機創出の基礎となったランダムスピン系の研究に関する功績」に対し、東京工業大学/東北大学 教授の西森秀稔教授、また、グループBの受賞者として、「有機エレクトロニクス産業の発展に寄与する薄膜有機ELデバイスの発見とその先駆的開発」に対し、ロチェスター大学/香港科技大教授のチン W. タン教授の業績が紹介されました。受賞者の方々には、矢野理事長より、表彰状、C&C賞牌と賞金とが贈られました(写真2)。

写真2 グループA受賞者の西森教授、矢野理事長、グループB受賞者のタン教授(左から)

続いてご来賓の経済産業省商務情報政策局長の西山圭太様からは、1977年の小林宏治会長によるC&Cの提唱が今まさに次のステージに移行しようとしていること、そして移行先の概念としてのSociety5.0とは何かのご紹介に始まり、C&Cは情報社会すなわちSociety4.0の中心であり、それが5.0に進化する象徴として量子コンピューティングやOLEDは位置付けられ、もって日本国政府や経済産業省としてもその成果を高く評価したいとのお言葉をいただきました。次に電子情報通信学会会長の安藤真様からは、今回のお二人の業績は格段の技術的性能を経済性と低電力性など、国連のSDGsがかかげる持続可能な形での社会還元そのものであるとのお考えをいただくとともに、このような挑戦的な課題解決に表彰という形で長年支援をしてきているNEC C&C財団の活動に学会としても賛意を表すとのお言葉をいただき、贈呈式は滞りなく終了しました。

受賞記念講演では、グループAの西森秀稔教授からは、スピングラスと量子アニーリングというまったく異なるテーマがどう関係するかというトピックで長年の研究のご紹介をいただきました。冒頭、統計力学の研究者である西森先生が、情報科学に役立つのではないかと世界で初めて提唱された量子アニーリングは、発表当初は学会などで非常に拒否反応が強かったとの逸話がご紹介され、そのような反応は実は画期的な発見や発明である可能性が高いというお話をされました。そしてそのテーマがD-Wave社による量子アニーリングマシンの実機発表を契機として最近急速に論文引用数を伸ばしており、この技術を本物にするのが私の役目であるとの決意とお考えを改めて示されました。また、グループBのチン W. タン教授からは、有機発光ダイオードの研究と実用化に係るタイムラインの説明に始まり、ご自身の発明による非常にシンプルな積層薄膜構造の技術的なご紹介がありました。そしてこれまでの研究歴を振り返り、学生時代、コダック時代のさまざまな研究者の方々との出会いとエピソード、そしてご苦労談などをご紹介いただきました。また、エピソードに登場した研究や生産のキーパーソンの方々の何名かは当日表彰式典にもご出席をいただきました。いずれの講演の内容も、コンピュータや表示装置という大きな技術トレンドのなかでは不連続な技術でありますが、それらが統計力学と計算科学、物理学と化学というそれぞれ異分野の融合によって実現されていることが改めて認識でき、まさにイノベーションを生むプロセスの実例をご紹介いただく機会ともなりました。

受賞講演の後、受賞者を囲んでのカクテルパーティの場が設けられました。歓談は50分程度ではありましたが、和やかな雰囲気のなかで、参加者が受賞者にお祝いの言葉を述べ、また参加者同士が懇親を深める交歓の場となりました。

ご来賓の方々との晩餐会では、矢野理事長の挨拶に続き、情報処理学会副会長の浅井光太郎様より乾杯のご挨拶をいただきました。晩餐会の最後には、グループAの受賞者のお客様を代表して、D-Waveインターナショナル社長のボー・イーワルド様からお祝いの言葉をいただき、受賞者より感謝のスピーチがありました。続いてグループBの受賞者のお客様を代表して、コニカミノルタ技術フェローの辻村隆俊様よりお祝いの言葉をいただき、続いて受賞者からの感謝のご挨拶ののち、晩餐会は盛大な拍手のうちに閉会となりました。


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公益財団法人NEC C&C財団について

NEC C&C財団は、C&C技術分野、すなわち情報処理技術、通信技術、電子デバイス技術及びこれらの融合する技術分野における開拓又は研究に対する奨励及び助成活動を通じて、世界のエレクトロニクス産業の一層の発展を図り、経済社会の進展と社会生活の向上に寄与することを目的としています。1985年3月に設立された財団法人であり、その基金はNECからの寄付金に依っています。

この目的を果たすための活動として、現在、顕彰事業及び研究助成事業を行っています。

顕彰事業としては、「C&C賞」に加え、本財団の国際会議論文発表者助成を受けて海外で発表された論文のなかから、毎年おおむね3件以内の優秀論文に対して「C&C 若手優秀論文賞」と賞金を授与しています。

研究助成事業としては、日本在住の大学院所属の学生で、海外で開催される国際会議で論文発表などをされる方々への会議参加費用の助成とともに、日本の大学院に滞在中の外国人研究員に対する研究費用助成を行っています。