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No.1(2月)スマートエネルギー特集
Vol.65 No.1(2012年2月)
スマートエネルギー特集
~特別寄稿~
東京大学大学院 工学系研究科技術経営戦略学専攻 特任教授
阿部 力也
風力発電・太陽光発電などに代表される再生可能エネルギーを大量導入するためには、従来の基幹電力系統には課題があり、新しい電力供給システムの開発が急務となっています。本稿では、電力と情報を融合した、次世代の送電網の可能性を持つ「デジタルグリッド」構想を紹介します。デジタルグリッドは、分散した非同期電力系統であるセルグリッドをデジタルグリッドルータによって相互接続し、デジタルグリッドコントローラによってセル間の電力融通を可能とします。これにより、大量の再生可能エネルギーを導入することが可能となります。
EV充電インフラ
千原 晋平 ・石井 健一
電気自動車(Electric Vehicle:EV)は排ガスゼロのクリーンな乗り物として今後の普及が期待されていますが、そのためには充電インフラの整備が必要不可欠です。NECでは遠隔運用保守・エネルギー制御機能、認証課金機能などを備え、事業者が効率的かつ安心して充電ステーションを設置、運用できるEV充電インフラシステムを開発しています。また、充電ステーションをシステムベンダや事業者に依存せず、誰もが使えるようにするための通信規格の共通化に向けた活動も進めています。本稿では、充電インフラ整備を支える弊社の取り組みについて紹介します。
石井 裕子 ・静野 隆之 ・小暮 純司 ・板橋 宣幸 ・渡辺 秀人 ・丹生 隆之
NECは、電気自動車(Electric Vehicle:EV)に適した新しい社会インフラ構築を目指し、蓄電・充電統合システムを開発しました。本システムは複数の急速充電器と大容量蓄電池を適切に制御することによって、EV複数台同時充電時における電力ピークカットや充電時間短縮を実現します。そして、横浜スマートシティプロジェクトの実証実験において、地域エネルギーマネジメントシステムと連携することにより、地域の電力需給調整機能も担えることを検証します。本稿では、本システムと実証実験の概要について紹介します。
須川 雅志
EV開発試験装置は、ハイブリッド車や電気自動車(EV)などの、電気パワートレイン各要素部品の挙動を模擬し、モータやインバータなどの性能試験に使用する試験装置です。EVパワーエミュレータと車両系制御シミュレータを組み合わせることで自動車全体をシミュレーションするHILSシステムにも対応しています。今回、EV開発試験装置における技術開発の概要と電池充放電試験装置を紹介します。
常盤 昌宏
電気自動車の普及のためには充電インフラの整備が非常に重要です。電気自動車用充電器には用途に合わせた種類があります。本稿ではすべての車両が最適に充電できるCHAdeMOプロトコルの必要性と、短い時間で充電可能な大容量急速充電器「TQVC500M3」の機能仕様と技術内容について紹介します。
森園 潤 ・竹田 住寿 ・栗村 習永 ・藤原 進二
環境意識の高まりに伴い、EVやPHVの普及が始まろうとしていますが、これらの充電には大きな電力を必要とするため、例えば既設マンションの駐車場に新たに充電設備を設置することは、容易ではありません。そこで、EVやPHVでもガソリン車と同様、自宅以外で充電できる充電サービスを想定し、ユーザーに安心・安全・便利な充電サービスの提供を実現するためのキーデバイスとして充電コントローラを開発しました。充電コントローラは、1台で複数の充電器の制御が可能な装置であり、充電操作の支援及び、EV充電クラウドサービスとの連携による認証課金や充電器の効率的な運用を可能とします。
蓄電システム
野口 雅行 ・飯田 顕 ・大町 聡 ・濱田 清隆 ・叶内 収
NECは、家庭内の電力を自動制御できるリチウムイオン電池搭載の家庭用蓄電システムを商品化しました。弊社が持つ蓄電、制御、筐体技術を活用した、系統電力や太陽光発電との効率的な連携ができる戸建て向けの蓄電システムです。本稿では、蓄電システムの概要とそれぞれの技術について解説します。
斎藤 和正 ・辻 憲一郎 ・向山 晃治 ・金丸 裕二 ・若尾 逸平
NECは、産業用、系統用の蓄電システムの開発を進めています。国内では、経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証地域」に選定された「横浜スマートシティプロジェクト」(通称YSCP)のエネルギーマネジメントシステムに取り組んでおり、国外では米国電力中央研究所(EPRI)とともにリチウムイオン電池技術を用いた大規模蓄電システムの共同実証実験を行いました。更にイタリアの電力事業者であるEnelに対する事業者向け蓄電システム、インドネシアの島嶼(とうしょ)部における自立型電源システムの検討を開始しました。
斎藤 英彰 ・小嶋 育央 ・太田 智行
NECエナジーデバイスでは、電気自動車(EV)や大型蓄電デバイスに向けた大容量リチウムイオン二次電池(LIB)の開発・生産を行っています。弊社のLIBはマンガン系正極材料、積層ラミネート型構造という特長を持ち、高い安全性と長寿命を実現しています。そして、それらの量産技術も確立しており、既に年間200万kWh超の電極生産能力を有しています。弊社では量産に対応した独自技術を生かして、EVだけでなく、駆動用電源・蓄電用電源向け電極・電池を安価に提供していきます。
川崎 大輔 ・石川 仁志 ・須藤 信也 ・宇津木 功二
グリーンイノベーション研究所では、安全で資源量の豊富なマンガン系正極を用いたラミネート型リチウムイオン二次電池(以下、LIB)の長寿命化技術を開発しました。NEC独自電解液添加剤を用いることで、約2万サイクル(1,435日)後も85%の容量を維持しています。これを含む試験結果から、夜間電力の活用を想定したLIB駆動パターンにて寿命予測シミュレーションを行ったところ、容量が初期の半分になるまでの期間は、東京地区で32年と試算されました。それらの活動について紹介します。
難波 満成
低炭素社会を実現するためには、さまざまなエネルギーを効率よく活用させることがカギとなります。本稿では、蓄電池や太陽光発電などを最適に組み合わせるマルチソースパワーコンディショナーの機能仕様と、技術内容について紹介します。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)
菊地 恭介 ・末次 剛 ・佐藤 剛 ・濱田 宇一
エネルギー需給安定化や温室効果ガス削減を実現する技術要素として、HEMS(Home Energy Management System)に対する関心が高まっています。NECでは、これまで「見える化」による効果測定など、HEMSの試作、実証を進めてきました。これらの結果を元に、HEMSソリューションを開発し、2011年7月より販売を開始しました。本稿では、これまでの取り組みとソリューションの特長、今後の展開について紹介します。
尾崎 多佳代 ・田村 徹也
電力供給や法規制が厳しさを増すなか、エネルギーの見える化は、単なる見える化から業務改善のための見える化へと発展しつつあります。本稿では、そのための見せ方や分析方法について事例を交えて紹介します。
福田 雄児
東日本大震災以来、企業活動における消費電力の削減が急務となっています。特にこれまで対策が遅れていた、オフィスにおける省エネへの注目が高まってきました。オフィスのエネルギー消費を「見える化」するとともに、省エネの対策をナビゲーションすることで、取り組みの遅れていたオフィスのエネルギー削減をサポートするSaaS型サービス「エネパル Office」を紹介します。
原 明洋 ・北村 充弘
2011年3月11日の東日本大震災を機に、エネルギーへの考え方が変わってきました。従来は、改正省エネ法から要求される年間のエネルギー使用量把握で問題ありませんでしたが、これからは、建築物はもとより、エリア、セグメントごとに1時間単位の使用量を「見える化」する必要があります。2011年夏は設備投資などを控える「我慢の夏」でしたが、2011年冬から2012年夏以降は、見える化で無駄を発見し、最適な省エネ制御を行う必要があります。NECは、「見える化」から「省エネ制御」まで、更には創エネ・蓄エネの系統連携制御を開発し、エネルギー需要を最適に制御するBEMS「スマートビル」を提供していきます。
福島 慶 ・加藤 真也 ・寺澤 哲 ・西川 徳光
太陽光発電(Photovoltaic:PV)などの急速な普及、震災によるエネルギー政策の見直しなどにより、大きな変革点を迎えています。「電力会社から電気を“購入”するだけから、需要家側でも“創る”、“貯められる”時代」に変わることで、電力系統をバランス良くきめ細やかにコントロールすることが、ますます重要となってきていると言えるでしょう。NECでは、長年の社会インフラ設備監視制御システム構築で培った基盤技術を有効活用し、各種社会インフラ設備や需要家内に設置されるエネルギー機器を、広域かつ迅速に監視制御する技術を開発し、実証中です。本稿では、その開発と今後の製品展開について紹介します。
夏苅 玲子 ・平野 隆志
NECは2006年から電力会社の検針自動化に向けた実証プロジェクトに参画し、「スマートメータ」向けの通信方式の開発・実証を行ってきました。検針自動化は、電力会社の検針業務効率化を目的として開始されましたが、今日ではスマートグリッドへの注目の高まりとともに、将来用途の発展に大きな期待が寄せられています。本稿では、これまでの実証プロジェクトでの、弊社の対応領域、及び、今後のスマートメータ利活用に向けた取り組みについて紹介します。
エネルギーデバイス
斎藤 正博
焦電型赤外線センサは、低消費電力・周辺機器が不要・人と物の判別可能・配線や信号処理回路が簡素などの理由で、セキュリティ用途の人感センサに用いられてきました。近年では、人の在/不在を見分けて機器の動作切り替えを行い、省電力や快適さ、便利さ向上の用途に応用されています。しかし、電子機器に搭載するセンサには、大量生産に適した表面実装機やリフローはんだ付けに対応可能なこと、センサが低背であること、機器内の他のデバイスから発する振動や信号の影響を受けにくいことなど、従来にはない要求があります。本稿では、これらの要求を満たした焦電センサについて紹介します。
岩佐 繁之 ・安井 基陽 ・西 教徳 ・中野 嘉一郎
有機ラジカル電池は、安定ラジカルを有するプラスチックを用いた二次電池であり、ニトロキシルラジカルなどのラジカル種の酸化還元により充放電を行います。この電池は、高出力放電が可能であり、またフレキシブルな形状を持ちます。薄型有機ラジカル電池の高出力放電試験では、1万回の連続パルス放電(1秒パルス)でもセル抵抗の劣化は見られませんでした。特に薄型フレキシブルな有機ラジカル電池は、高機能ICカードといった将来の小型ユビキタスデバイスの電源に適していると考えられます。
杉林 直彦
NECはスピントロニクス素子を使った不揮発ロジック技術により、利便性と待機電力ゼロを両立した電子機器を目指しています。その技術をエネルギーマネジメントシステムなどで使われる無線センサ端末に適用することで電池交換間隔を大幅に伸ばし、実質的なメンテナンスのフリー化を目指しています。
普通論文
小倉 智雄 ・山下 祐司 ・松岡 洋平
省エネ性能に優れたLED光源を用い、家庭用LEDシーリングライトとして業界最高水準の効率を追求し、更に蛍光灯シーリングライトのように器具中心まで違和感なく発光させるとともに、多様なインテリアにマッチするようデザイン性にも配慮した商品を開発しました。
鎌田 博行 ・山内 英明 ・斎藤 嘉宏 ・田畑 翼
近年、モバイルノートパソコンにおいては、低消費電力化のための低電力化に伴い、電力損失特性が重要視され始めています。そこで電源の変換効率を高めるために、低損失な磁性コア材“センティクス”を用いた一体成形型チョークコイル「MPCGシリーズ」を製品化しました。MPCGシリーズは、平角導体のエッジワイズ巻きコイルをセンティクスで一体成形することで、大電流通電、コア損失の大幅な低減を実現しています。今後ますます電源系への電力負荷が増加する電子機器の省エネルギー対策や発熱対策、パワーインティグリティ改善に最適なソリューションとするべく、シリーズのラインアップ強化を行ってまいります。