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ファイルサーバ全面クラウド化に「待った」!全面移行の課題と解決方法とは?
「Azureを活用したハイブリッド・マルチクラウドの全貌」セミナー(3)セミナーでは続いて、昨今検討する企業が増えてきた「ファイルサーバの全面クラウド化」に際し、移行の課題が挙げられた。登壇したのは、NEC AIプラットフォーム事業部の向井慶和。多くの企業が運用管理上のコストや手間の削減を念頭に、ファイルサーバの全面クラウド移行を考えているが、「そこには、大きく3つの課題が立ちはだかる」と言う。
NEC (日本電気株式会社)
AIプラットフォーム事業部
マネージャ
向井 慶和
まず語られた1つめの課題は、「コスト」だ。現状、企業がファイルサーバ上に保持している膨大な量のデータをクラウド側に置く場合、クラウド側のストレージ容量がかさみ、当然の帰結として利用料金が増大してしまう。2つめはパフォーマンスにかかわる課題で、これまで手近な環境で運用していたときと同等のレスポンスを得ることが難しい点。そして、3つめはセキュリティにかかわる課題で、既存のファイルサーバ環境で実施しているアクセス制御を、クラウド環境でも実現しようとすると、アクセス権を設定し直すなど多大な手間が発生してしまう問題だ。
これらの課題解消に向け、NECが提案しているのが「ハイブリッドクラウドファイルサーバソリューション」と向井は説明する。このソリューションは、3つのコンポーネントから構成されている。ファイルサーバの利用状況の可視化や整理、容量削減、アクセス権の管理など、その運用にかかわる一連の管理機能を司る「NIAS(NEC Information Assessment System)」、オンプレミス環境からCIFSやNFSといった標準的なプロトコルでクラウドストレージにアクセスするための「クラウドゲートウェイ」、そして大容量データを安価に保存するための「オブジェクトストレージ」だ。
その仕組みとしては、オンプレミスで稼働する既存のファイルサーバと、クラウド上のオブジェクトストレージとをクラウドゲートウェイ経由で接続し、その途上にNIASが稼働するサーバが介在。NIASで既存のファイルサーバの利用状況を可視化・分析して、利用頻度の低いファイルを洗い出し、それら非活性ファイルのみをクラウドゲートウェイを介してオブジェクトストレージに転送・格納する。
「このとき、非活性ファイル本体は転送されますが、ユーザからは、ファイルサーバ上にショートカットファイルがあるため当該ファイルが従前通り存在しているように見え、ファイルに対する操作も何ら変わることなく行えます。つまり、クラウド側のファイルへのアクセスが透過的に行われるわけです」(向井)。
先ほどの3つの課題に照らし合わせれば、非活性ファイルのみをクラウド側に格納することでストレージサービスのコストが抑制され、性能についてもレスポンス低下が生じるのはクラウドに転送された非活性ファイルのみで、よく使うファイルについてはこれまで通りオンプレ環境に置かれるためレスポンスに変化は生じない。さらにセキュリティについても、NIASでは非活性ファイルを抽出・転送する際に、ファイルサーバ上で設定されているアクセス権をそのまま維持。従来通りのアクセス制御が行えることになる。
5年間で約60%の関連コスト削減の見込み
すでに多くの企業がこのソリューションを利用し、成果を上げているそうだ。例えばある製造業の企業では、拠点ごとにファイルサーバが乱立。その管理負荷が問題となっていたという。ファイルサーバの容量も増大の一途で、ストレージの増設に伴うコストも大きな負担となっていた。
そこでこの企業では、乱立していたファイルサーバをNECデータセンター内に統合。NIASとクラウドゲートウェイの仕組みを用いて、過去1年間参照されていない非活性ファイルをAWS(Amazon Web Services)のストレージサービスであるS3に転送し、アーカイブする仕組みを構築した。
「その結果、このお客様のケースでは、ファイルサーバの運用にかかわる課題をトータルに解消。5年間で約60%の関連コストの削減効果を見込んでいます。そのほか、NIASにはアクセス権が不適切なファイルを特定し、一括修正する機能もあり、情報漏えい対策やコンプライアンス強化といった側面でも期待を寄せていただいています」(向井)。
ファイルサーバのクラウド化を検討する企業にとって、NECが提供するこのハイブリッドクラウド型のファイルサーバソリューションはまさに要注目である。