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貴社に適したクラウド利用を見極めるには?クラウドインテグレーターが語る"勘所"
「Azureを活用したハイブリッド・マルチクラウドの全貌」セミナー(2)「Azureを活用したハイブリッド・マルチクラウドの全貌」セミナーでは、NECからもデジタルビジネス基盤本部の釜山公徳が登壇。釜山はセキュリティを専門とするテクニカルエバンジェリストとして活動し、クラウドセキュリティのベストプラクティスを啓蒙する「CSAジャパン」のクラウドセキュリティWG リーダーも務めている。NECが「クラウドインテグレーター」であることを強調し、これまでの多くの実績を基にしたハイブリッドやマルチクラウド選択のポイントを紹介した。
NEC (日本電気株式会社)
デジタルビジネス基盤本部 金融デジタルシフトグループ
兼 金融システム本部
兼 サイバーセキュリティ戦略本部
テクニカルエバンジェリスト
釜山 公徳
パブリッククラウドを活用するメリットとしては、ハードウェアの調達などが不要で初期投資が低減できることや、定額料金により利用できることに加え、システムリソースの柔軟なスケーリングやROIが高いセキュリティ投資が可能な点。さらに、ビジネスのアジリティ向上に貢献できることなどが一般的にあげられる。
これに対し釜山は、まず「IaaSを利用する場合、特にスケーリングに関しては、利用するインスタンスに関するリソースを増減させるスケールアップ、スケールダウンという『垂直スケーリング』とインスタンス数を増減させるスケールアウト、スケールインの『水平スケーリング』という2つの考え方があります。クラウドサービスの利用にあたっては、これらの方式をしっかりと理解し、押さえておくことが必要。これにより、コスト最適化とDDoS攻撃対策等のセキュリティ効果を得られます」と説明する。
さらにパブリッククラウドでは、グローバルで共通のコンプライアンスや、地域や国、業界団体などが定める規格などの各種認証に準拠している点が、サービスを利用する企業にとって大きなメリットとなる。例えばマイクロソフトでは、計90を超えるコンプライアンス認証に準拠。そこには、グローバル・地域に加え、米国、ドイツ、英国、インド、中国、日本など各国に固有な50以上の認証に加え、健康、政府、会計、教育、製造、メディアなど、主要産業に必要な固有の35以上の認証に準拠している。
「つまり、Azureをはじめとするクラウドをシステムインフラとして利用すれば、それらコンプライアンス認証に準拠したITサービスの提供が可能となり、グローバルに各地域や国々でのビジネス参入にかかわる障壁を下げることができるわけです」と説明する。
ただし、パブリッククラウドの利用には、システムやデータが海外に置かれるケースもあり、そうなるとユーザがデータ主権を確保できないなど、カントリーリスクといったものが避けられない。また、企業が手元にあるオンプレミス環境で稼働させているシステムに比べて、どうしても処理にかかわるレイテンシやIOPS(Input/Output Per Second)の点で制約があるという問題もある。
なぜ、今マルチクラウドか?
かねてより企業の間では、機密性の高いデータや高度な処理性能が求められるシステムをプライベートクラウドやオンプレミスに保持し、パブリッククラウドと併用するという「ハイブリッドクラウド」、若しくは単一クラウドの運用が多くみられてきた。その一方で、近年、企業の間に浸透してきているのが、例えばAzureやAWS(Amazon Web Services)、GCP(Google Cloud Platform)など複数のパブリッククラウドを併用する「マルチクラウド」での運用である。
マルチクラウド運用のポイントについては、各クラウドを適材適所で利用するということが当然重要になる。釜山は「要するに、それぞれのクラウドサービスが強みとする領域をしっかりと見極めて、自社のニーズにあわせて各サービスを適切に組み合わせて活用していくことが重要なのです」と説明する。
「例えば、Azureであれば、Visual Studioを中核とする開発系、Azure Active Directoryによる認証サービス、ファイル共有サーバなどが、他のパブリッククラウドに比べてアドバンテージを持っており、AWSならバランスに優れ、GCPならビッグデータなどの分散処理に強い。これらを適材適所で利用すればマルチクラウドの本領を発揮できます。ただし、マルチクラウドは適切なアーキテクティングでないと運用の煩雑化といったデメリットに繋がってしまうこともあり、決して容易ではありません。特に昨今、障害対策や可用性向上といった目的で利用するケースもみられるが、マルチクラウドのメリットを享受し辛いため、マルチクラウドを選択しない方が合理的と考えられます」と指摘する。
こうしたクラウド利用の形態を、自社のビジネス戦略、またそれを支えるIT戦略に沿って適宜選択していくことが重要であり、さらに、クラウド活用で成果を上げていくには、企業の側のCX(カルチャートランスフォーメーション)といったものも不可欠だと言う。
「サービスが日々進化するものであることをしっかりと認識し、サイジングは必要な部分のみ検討を行うこと。また業務をクラウドに合わせるという、いわば『クラウドマインド』を醸成できるかどうかが成功へのポイント」と強調してセミナーを締めくくった。